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遊園地〜観覧車〜

杉山は完全に弱っていた。茜もかなりの恐怖を味わったはずだったが、すぐに元通りの元気さに戻り、テンションはどんどん上がっていた。

「ねぇ、次はあっちのジェットコースターにしない?」いたずらに微笑みながら茜は言った。

「・・・え?」杉山は力無く聞き、茜の指さす方を見た。

恐怖レベルは遥かに劣るであろうが、絶叫系に変わりは無い。杉山は意地を張るのも忘れて、低い声で断った。ベンチにずっと座っていたかった。

「やっぱり、怖かったんだねぇ。」茜は小さなため息を繰り返す杉山を見ながら言った。

「人生で初めて、あーいう系の乗り物に乗ったよ。」前を向いたまま杉山は言う。

「えぇ!?初めてがミラクル大回転!?ありえないよー!」目を大きく開いて茜は言う。

何がありえないんだろう?杉山は思っていたがわざわざ言える気分では無かった。

2人はしばらく休み、退屈になった茜はアイスクリームを買ってきた。それを杉山は食べて、少しだけ気分が楽になった。

時間が勿体無いと思い、杉山はお化け屋敷に茜を誘った。茜は少し嫌な顔をしたが、それを見て杉山は仕返しだと思い、グイグイ腕を引っ張って行った。

入ると、廃墟のような所で、暗い長い廊下が続いている。

そこには何も無く、ただ、ピチャンピチャンと水が落ちるような音だけが聞こえていた。

2人は並んで歩き、茜が杉山の腕を掴んでいる。右に曲がる所まで来て、曲がると、2人の人が立っていた。驚いてビクッとなり止まると、相手も止まった。鏡だった。

2人は苦笑して、先を進むと、天井から人が逆さまにぶら下がり下りて来た。あまりにも気持ち悪いメイクで杉山は小さく声を出してしまった。横でクスクスと茜が笑った。

少しムッとなったが、そのままぶら下がり人間の横を通り部屋に入った。

大きな声を出しながら髪の長い人が3人走ってきた。怖いというより気持ち悪いと杉山は思い、とりあえず茜を引っ張って逃げた。

15分程で終わり、出た時にはまた杉山は疲れを感じた。

「怖がってたね?」茜が上目使いで言う。

「いや、怖くは無かったよ。気持ち悪かったけど。やっぱりさ、お化けさんが可哀想だから走って逃げてあげただけだよ。」ちらっと茜を見ながら杉山は言った。

「ふーん。」

「何だよ。つーか、茜はこういうの苦手なんじゃ無かったの?」

「全然。」クスッと笑う。

「あれ?じゃあ、さっき怖そうにしてたのは演技?」首を傾けて杉山が言った。

「えへへ。」

杉山の疲れは2割増した。


辺りも暗くなり始め、オレンジを黒が食べようとしていた。

その瞬間を少しでも上から見ようと、大勢の客が観覧車に集まっていた。杉山達も例外ではなかった。

運良く早めに並べた2人は、全てが黒くなる前に観覧車に乗れた。

「うわぁ綺麗・・・。」少し上にあがった時に茜が言った。

昼間は威張っていた太陽が、申し訳なさそうに沈んでいく。

やがて暗闇が上空を支配し、邪魔物が居なくなった空に、月と星が光り輝く。この時を待っていたかのように。

その時に杉山と茜はキスをした。恋人同士の観覧車はキスをするものだと決めつけていた2人は、12時の所に観覧車が着くと、ためらう事も無くスムーズに唇を重ねられた。

「きっと、ここに来るカップルはみんなキスをするんだよ。」杉山は言う。

「うん。」

残りの半分の時間を2人は寄り添いただゆっくりと過ごした。


2人は茜の降りる駅までやってきて、バイバイと言い合って別れた。

茜の満足そうな笑顔を見て杉山はホッとした。ベンチで休みすぎたかな?と今更後悔していた。ただ、あの時は仕方なかったかな?と思う自分もいた。

杉山も家から最寄りの駅に着き家に向かって歩いた。

空を見た。月も星も光り輝いているはずだったが、雲が太陽の代わりの邪魔者として、空を隠した。雨が降ってきた。僅かな雨がアスファルトを濡らす。きっとまだアスファルトは自分が濡れた事に気付いてない。気付く前に帰ろう、ずぶ濡れになる前に。杉山は走って帰った。

アスファルトは濡れたと気付いた。杉山はホッとした。

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