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カウントダウン〜ユメの父親〜

体調を崩してから更新がなかなかできませんでした。

徐々にですが書いていきたいと思います。

軽く夕食を食べ、風呂に入った杉山は、何も考えたくないと、逃げるように眠る事にした。

しかし、睡眠妨害スパイラルが杉山を現実の世界から逃がさない。夢の国は夢のまた夢のように感じられた。産まれて、思考している事を確認してからは、人間は安易に考える事を放棄出来ない仕組みになっていると、以前杉山が思った事がこの時に頭に蘇った。

仕方なく色々考えてみる事にした。

茜もユメも好きなんだと自覚し、そこからどうすればいいのかを考えた。

ユメの事は昨日まで何とも思っていなかった。ユメを家に送り届けてから急に杉山の心に入り込んで来た。なぜなのかは分からない。昔、ユメの家に遊びに行く事があった。その時の記憶が前面に押し出され、その頃に抱いていた恋心も一緒に出てきたのかもしれない。

いや、それなら、ユメが学校に来た時に昔を思い出したのだから、今更なんておかしい・・・。

自分のわからない感情に揺さぶられるのはすごく不愉快だったが、抜け出す術を杉山は知らなかった。知らない間に杉山は眠り、朝をむかえていた。


学校にユメは来なかった。杉山は体調がまだよくないのかと心配になったが、ユメの携帯の番号も、アドレスも知らなかったので、聞けなかった。友達に聞こうかとも思ったが、さすがに怪しまれるかなと思い諦めた。

それから数日が過ぎてもユメは学校に来なかった。クラスで色んな噂がたち、みんな心配しているようだったが、結局は何が原因なのか解らなかった。


茜に用事があり放課後地元の駅で降りて1人で歩いていた杉山は、どこか見覚えのある男性を見かけた。

男性も杉山に気付き驚いた表情で足早に歩いて杉山の方へ向かった。

「あ〜、杉山くんだよね!全然変わってないねえ!」明るく男性は言う。

「・・・あの・・。」温度差を感じながら杉山が言う。

「また、ユメがお世話になったね。」

「あ・・・。」数回しか会ってなかったので杉山はユメの父親をあまり覚えていなかった。

「なんだ?もしかして誰かわかってなかったのか?」笑いながらユメの父親は言った。

「あ、いえ・・。そんな事は・・。」杉山は視線を外しながら杉山は言った。

「この間は家まで送ってくれてありがとう。最近ユメはよく体調が悪くなってたから助かったよ。」

「あの、幸村さんはどこか悪いんですか?」

「ん・・・。やっぱりユメは言わなかったんだね・・・。きっと君なら見舞いに来てくれると思ってたのにおかしいなと思ってたんだ・・。ユメは・・・入院してるんだ。」ふいに表情を曇らせてユメの父親は言った。

「入院・・・。」体調がよくないというのは想像したりしていたが、まさか入院しなければいけないほどユメの体調が悪いとは思っていなかった。

涼しい風が杉山に当たったが、杉山はその風をものすごく冷たく感じた。

近くにあった喫茶店に杉山は連れて行かれた。

適当にメニューを奨められたが、杉山の頭は考える事を考えてて意味がわかなくなっていた。コーヒーは飲めるか?との問いにだけ反応して首を横に振った。

ユメの父親は紅茶とコーヒーを頼んだ。

「杉山くん。君は今、彼女はいるかい?」突然ユメの父親が切り出した。

「・・・はい。」軽い返事だなと杉山は思った。

「そうか。じゃあ、ユメの見舞いには来ない方がいい。」水の入ったコップを両手で包みながらユメの父親は言った。

「なんで・・・ですか?」少し大きな声で杉山は言った。

「君には彼女がいる。・・・・・・。もう・・・・長く生きられないかもしれない女を見たら、君は・・・君はきっとユメに少しでも感情を移してしまうと思うんだ。」手をコップに添えながら体だけが地面に吸い込まれるように俯き、声と空気の境目辺りの声でユメの父親は言った。

杉山は思考回路にたくさんの結び目を感じた。わけがわからなかった。

明るく陽気だったユメの父親は気丈にふるまっていただけなんだと杉山は思った。少しでも悲しい顔をしてしまうと戻れなくなるんだなと。だから笑うしかなかった。混乱したりどこか冷静になったりしながら杉山はユメの父親を見ていた。ウェイトレスが紅茶とコーヒーを持ってやってきた。2人はなるべく普通を装ったが到底無理だった。

「俺たちは嘘が下手みたいだな。」赤い目をしたまま小さくユメの父親は笑った。

「そうですね。」下手な笑顔で杉山も笑った。

「すまなかった。単刀直入に言う。ユメの病気は・・・白血病・・・なんだ。助かる見込みは限りなく0に近いらしい。ユメの母親も同じだった。あいつらはそっくりだが、病気まで似なくてもいいのにな。」所々にため息を混ぜながら、俯いてゆっくり言い、ユメの父親は薄く笑った。

杉山は何も言えなかった。この人はどれだけ辛い思いをしているんだろうと、ただそれだけを考えていた。

「俺は最低の旦那で父親だ。妻の病気にも気付いてやれず、同じ病気の娘も気付いてやれなかった!もっと早く気づいていれば2人とも助かったかもしれないのに!」続けてユメの父親は言うと鼻をすするだけで何も言わなくなった。

「あの・・俺、お見舞い行きますから。」しばらくの沈黙をやぶって杉山は言った。

「幸村さんも、あなたも、俺の彼女も関係ないです。俺が行きたいから行きます。感情とかそんな事はどうでもいいんです。俺は俺が行きたいから・・。」杉山は真っ直ぐユメの父親を見て言った。

「・・あぁ・・そう言ってもらえると・・・。きっとユメも喜ぶと思う。でも・・・小学生の時と君の性格が変わっていないとしたら、ユメから聞いていた君の話が本当なら君は優しすぎる。間違いなく君は辛い思いをしなくちゃいけない。」

「いいんです。俺がそうしたいから。」

ユメの父親は大粒の涙を流した。しばらくただ泣くだけだった。そして涙がおさまると杉山を真っ直ぐ見た。

「ユメが・・・1日でも長く生きれるように、1日でも長く笑えるように手伝ってほしい。あの子は誰にも心配されたくないと言って入院の事は内緒なんだ。杉山くん、君にしか頼れない。私だけではあの子をたくさん笑わせてやれない。もう私はどうしたらいいかわからくなってたんだ。恥ずかしい話だが、父親失格なんだ。どうか、どうかあの子を最後まで笑わせてやってくれ。お願いします。」深々と頭を下げてユメの父親は言った。

「はい。」すぐに短い返事をして杉山は下手に笑った。

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