再会〜小学生1〜
まだまだ初心者で読みにくいと思いますがよろしくお願いします。なるべく早く続きをどんどん書けるように頑張ります。
「はじめまして。幸村ユメです。宜しくお願いします。」黒いショートヘアの少女が言った。
B北高校の2年7組の男たちはその少女に見とれていた。その時に杉山雄一郎は違和感に包まれていた。なにかが引っ掛かる。
「なんか、知ってる気がするんだよな・・・。」杉山は呟いてみた。すると、霧がゆっくりはれるように、ぼやけていた輪郭が現れるように、記憶が鮮明になり、転校生の少女に繋がった。
「あっ・・。」杉山が声を漏らすと同時に、数名が杉山に目を向けたが、俯き加減のままで動かない杉山から、すぐに転校生の少女に視線が戻された。
杉山だけは、これを知っていた。記憶という箱の隅に追いやられていた過去が、いとも簡単に箱の真ん中に移った。
幸村ユメという名前も黒いショートヘアも、自己紹介の発言の時に少し左下を見る事も杉山は見た事があった。
「じゃあ、幸村は廊下側の後ろから二番目の空いてる席に座ってくれ。」担任の先生が言った。
幸村が席につくと、後ろと横の男がチラチラと見ていた。杉山の席は廊下側とは逆でグラウンド側の一番後ろだった。
「では、授業を始めるから教科書の47ページを開いて。」
担任の声で生徒は授業モードに切り替わった。しかし、ユメの後ろと横の男、そして、ページをめくりながら昔の記憶を辿る杉山は除かれた。
「はじめまして。幸村ユメです。よろしくお願いします。」黒いショートヘアの少女は左下を見ながら言った。D南小学校の3年3組の生徒は転校生が来てもいつも通りうるさく、何度担任が注意しても騒いでいた。そんな中、杉山は目が少し悪かったが、その少女に黙って注目していた。不安そうな少女は今にも泣き出しそうになっていた。そんな時にふと、杉山と少女の目が合った。軽く杉山は笑った。微笑んだ杉山が少女を不安から引きずり出し、また少女も微笑した。
ユメの席は教室の真ん中より少し右の少し前の方だった。杉山は同じ列の一番後ろで、間には3人の子供が入っていて、ユメは見えなかった。なんとなく、杉山はユメが溶け込めるのか心配だった。それで、耳を澄まして会話が無いか聞いた。
「幸村さんって〜・・・」隣の席の女の子が声をかけて、一緒に笑い声も聞こえた。なんとなくの不安が洗い流されて杉山はホッとした。
それから騒がしいクラスメイトに迎えられたユメは、すぐにクラスの雰囲気に溶け込んだ。
少し大人びた杉山よりもみんなと仲良くできているみたいだった。
「朝の自己紹介のとき嬉しかったよ。」昼休みに塾の予習をしていた杉山にユメが言った。
少し驚いた杉山はボーっとユメを見ていた。
「あ、うん。」満面の笑みのユメから目をそらして杉山は言った。ちゃんと顔がわかる距離で見るとユメの顔はすごく愛らしかった。
「みんな、私の話・・聞いてくれてなかったから・・・。」
「このクラスって男も女もほとんどみんなうるさいから。」少し微笑んで杉山は言う。
「私が前にいた学校もうるさかったけど、こっちの方がすごいよ。」
「幸村さんってどこに住んでたの?」えんぴつをクルクルさせながら杉山が言う。
「埼玉にいたんだよ。パパのお仕事でこっちに来たの。杉山君はどこに住んでるの?」
「僕の家は学校の坂をおりた所に郵便局があるんだけど、そこを右に曲がって少し行くと公園があるんだ。その公園を超えてすぐに左に曲がれば右側に僕の家。」
「え!?・・私の家はその公園を曲がらずにすこし行った所にあるマンションだよ!」嬉しそうに少し興奮してユメは言った。
【え!じゃあ、すごい近いね!そこなら走れば1分もかからないよ。】杉山も少し興奮気味に言った。
「じゃあさ、じゃあさ、一緒に帰らない?」ユメは後ろに手を組んで前かがみになった。
「・・・いいよ。」顔が近付いて、少し照れくさそうに杉山が言った。
「約束ね!」そう言って満面の笑みでユメは外に遊びに行った。教室には顔が熱くなった杉山だけが残された。鉛筆が落ちて転がったが、気付かなかった。
午後の2時間の授業を終わらせ下校の時間になった。いつも郵便局まで一緒に帰る友達3人には用事があるから先に帰ると伝えて、教室の後ろ側の扉を見ると、ユメが手招きしていた。
2人で走って靴を履き替え、学校を出た所で止まった。
「みんな2人で帰ったって気づいたかな?」杉山が聞いた。
「わかんないけど、バレてたらちょっと恥ずかしいね。」ユメはペロっと舌を出した。
それを見て杉山はまた顔が熱くなった。
「杉山君、顔が赤いけど大丈夫?」舌を引っ込めてユメが1歩近づいた。
「走ったからだって・・・。」そう言って前を向いて杉山は歩きだした。慌ててユメも歩きだし、ゆっくりと並んで坂をくだった。
ゆっくり歩いていたはずなのに郵便局はすぐに左に消え、公園もすぐに見えてきた。
ユメの前の学校の事や3組のみんなの話をしていたらお互いの家はすぐそこまで来ていた。
もっと話をしたいし公園で遊んだりしたかったけど、杉山は塾があった。
2人はバイバイと言い合って家に帰り、杉山は塾に行ったが、目で見る文章は頭に入らなかった。明日は何を話そうかという考えが頭を巡り、家に帰ってもそれは続いた。
それから1ヶ月が過ぎた。夏の暑さも消えてきて、涼しい風が葉をオレンジや赤に染めていった。その1ヶ月の間は学校のある時は2人で学校を出るまで走って、出ればそこからゆっくり帰る日々だった。休みの日は友達の誘いを断ったりしながら公園で遊んだりした。
突然の夕立ちで滑り台の下で暗くなるまで雨宿りをして、結局止まなくて、びしょ濡れになりながら帰った事もあった。遅くまで遊んで両親に怒られた事もあった。だけど、そうやって2人はどんどん仲良くなっていった。
この日も学校が終わり下校の時間が来て、いつも通り走って学校を出た瞬間にユメがつまずいて転んだ。左の掌だけ擦りむいていて、ちょっとだけユメは涙が出た。
「大丈夫?立てる?」痛そうに左手を見てるユメを見て心配そうに杉山は言った。
「うん・・・。」そう言ってユメが立とうとした時に目の前に杉山の左手があった。
ユメはすごく嬉しそうに笑った。
「あ、でも杉山君・・私がケガしたの左手だから、右手じゃないと痛くて掴めないよ・・・。」そう言いながらユメは右手で杉山の左手を掴んで立ち上がった。
「あ、ごめん・・・。」苦笑しながら杉山が言った。
そのまま手を握りなおしてユメが左、杉山が右側に立ってゆっくりと坂をくだっていった。
「痛いの痛いの飛んでけ〜!」そう言って杉山はギュッと手を握って笑った。だけど、緊張している杉山はあんまり上手く笑えなかった。それでも、ユメは痛くなくなったとおどけて見せた。
もういちど杉山は笑ったが、今度はドキドキした鼓動がユメに聞こえていないか、不安になった。でも、鼻歌を歌いながら、楽しそうに歩いているユメを横目に見て、不安を忘れて杉山も一緒に歌った。
この日の事は絶対に忘れないだろうなと、杉山は自分が握っているユメの手を見て思った。今日からもっとユメと仲良くやっていけるのだろうと・・・。




