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”初めての償い”

作者: こいしのひとつ

私は蝉も殺せぬ少年だった。

歩道の蟻を避けて歩き、

猫がいれば抱き抱え、

黄金虫が死んでいればそっと地に降ろしてやった。


そんな私が初めて殺したものがある。


それは鳥だ。

ーーーーー

ある朝散歩をしていた私は鳥が窓硝子にぶつかっているのを目にした。

あの、鳥が窓ガラスを認識出来ずに見えざる壁を突破しようとするあれだ。

そんな事は知らぬ私が狼狽えていると、どうやら鳥が決死の特攻も虚しく地面へと堕ちてきた。

私が慌ててキャッチする。

ーーーーー

その鳥は後で知った所によると、どうやらメジロという種類らしい。

緑色に身を包み、目の周りが白く塗られているのが名前の由来だという。

そして日本の鳥で最も小さい鳥だという。


その鳥はとても小さかった。

丁度私の手のひらに収まる程度のその身体は

小さく震えていた。

今にもその動きが止まりそうな気がして、私は怖かった。

とにかく方法など分からずに、懸命に周りの家に助けを求めた。

ーーーーー

必要な物が無かったり、無駄な事をと相手にしてもらえずで、誰も援助はしてくれなかった。だが私は足掻いた。

ようやく小さな空箱と水道水を貰った私は鳥を迎えに行く。


だが、鳥の小さな命は風前の灯火だった。

ーーーーー

私は暫くして状況を理解した後にその小さな緑の身体をタオルに包み水をかけ、静かに啜り上げて泣き崩れ、鳥の死を悔やんだ。


ーーーーー

そして涙が乾いた頃に人として成長した少年の私は、鳥の図鑑をなけなしの小遣いで買い集め、鳥を研究し、そして私は獣医になった。

今思えば、あの時が人生の転機だったのかも知れない。

私の手によって沢山の動物達が息を吹き返す。それが喜びであり、私の使命だと思っている。


だが、どれだけ命を救おうと…


あの小さな小鳥の命は私の手のひらから零れ落ちた唯一の存在だ。


その事実は変わらない。

私はその事を心に留め、今日も命を救う。

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