第21話_王宮での特訓です
2回戦が終了した翌日である。
この日は大会の休息日であり、シュウたちものんびり過ごせるはず・・・であった。
獣王により控室へ呼び出しを受けた時からこの日は王宮へ赴くことが決定していたのだがまさか朝一で迎えが来るとは思わなかった。
さあ、朝食だ、という時になって宿の前に迎えの騎士たちが到着、そのまま馬車に乗り込ませれて王宮へと向かっている。
当然朝食を食べ逃したのだがそういった配慮は一切ないらしい。
食べることに生きがいを感じているらしいリエルの不機嫌そうな顔を見ながら馬車に揺られることしばらく。
ようやく馬車が停止し、扉が開かれた。
そこにはなるほど王の住まいらしい重厚な雰囲気を持つ建物が建っており不機嫌そうな顔をしていたリエルですら関心したような声を上げている。
「さて、皆様。獣王様がお待ちです。どうぞこちらへ」
騎士たちのリーダーらしき人物に促され王宮内へと足を踏み入れた。
と、入り口を入ったところで予定通りだが予想外の人物が待ち構えていた。
「待ってたわ」
「・・・獣王様。奥で待っていてくださいと申したはずですが?」
「そんなの待ってらんないわよ」
獣王に会うことは予定通りだがまさか入り口で待っているとは予想外であった。
シュウたちの先導をするはずだった騎士はため息とともに苦言を呈するが全く効いている様子がない。
その結果にまたため息をつくが、いつもの事なのか諦めた表情を浮かべその場を後にした。
「って俺たちを残して行ってもいいんですか!?」
「何か問題ある?」
「いや、獣王様の前に俺たちみたいなのを残したまま居なくなっていいんですか?」
「別に構わないわよ。だって何かするつもりも無いんでしょ?それにアナタ達が何か使用したら騎士たちじゃあ止められないし、いいじゃない」
剛毅というか大雑把というか、それでいて筋の通っている意見を出されたため黙るしか無い。
確かに獣王の言うとおり別に何かするつもりもないのでいいのだが。
「さあ、早速教えてちょうだい」
「あの、俺たち朝ごはんを食べる前に連れてこられたので全員空腹で力が出ないのですが・・・」
「あら、そうなの?楽しみで急いで迎えに行かせたのだけど・・・そういうことならまずは朝食を用意させるわ。ゆっくり、急いで食べて技を教えてちょうだい」
矛盾していることをあっけらかんと言い放ちながら獣王は食事の用意をするように使用人に伝えた。
シュウはもう色々と諦めることにしたのであった。
◇◆◇
「さ、ご飯も食べたことだし、そろそろ教えてくれない?」
「・・・はい、分かりました。技を教える前に獣王様、ひとつお訊きしておきたいことがあります」
「何かしら?」
「獣王様は魔法に関してどのくらいの知識がありますか?」
「そうねぇ。・・・なんか物凄い、ってくらいかしら」
つまりほぼ知らないと見ていいだろう。
なのでまずは魔法を実際に見てもらうところから始めることにする。
「ティアナ、お願いできる?」
「分かりました」
シュウの言いたいことを察してティアナが獣王の前に進み出る。
「それでは今から魔法を使ってお見せします。よろしいですか?」
「構わぬ」
魔法は当然攻撃にも使用できるため、獣王などの目の前で軽々しく使うわけにもいかないため許可を取る。
「それでは・・・火よ」
ティアナの指先に火が灯る。
シュウが初めて見た時と同じ魔法なのだがあの時とは違い、ティアナはとてもリラックスした状態で火を維持できている。
そしてそのおかげか指先の火も安定しており、安心してみていられる。
「それが魔法なのね。そもそも獣人は魔法と相性が良くなかったから人族よりも魔法に関する意欲が無いのよねぇ。いいものを見せてもらったわ。で、これがギルバートの技と何の関係があるのかしら?」
「はい。ギルマスに教えたのは俺やカエデが使う魔法の簡易版とも言うべきものなのです」
「簡易版?」
「ではお見せします。広い場所に移動したいのですが?」
「じゃあ中庭に行きましょ」
さすがに場内でそれなりの規模の魔法を使うわけにいかず、場所の移動を提案して受け入れられる。
一行はゾロゾロと連れ立って王宮内を移動する。
その先導をしているのが他の誰であろうこの王宮の主なのだから豪華である。
城に勤める獣人たちはそんな王の姿を見て頭を下げるが別に驚いた様子がない。
獣王自ら客人の案内をするのは日常とはいかないまでもそれなりの頻度であるようだ。
少し進むと開けた場所に出た。
どうやらここが目的の中庭らしい。
「さ、ここならいいでしょ?見せてちょうだい」
「分かりました。それでは・・・」
シュウは少し離れた所に行って手を地面につける。
そのまま魔力を流して的を作り上げた。
「・・・あれも魔法なのかしら?」
「そうですよ。シュウは魔法の練習をするときああやって土の的を作り上げたりするんです」
「さて、獣王様。的が出来ましたのでこれから刀を使って攻撃します。よろしいですか?」
先ほどの魔法と同じ理由で獣王に問いかける。
そして同じように許可が出たので刀を抜き構えた。
その段階になってシュウは自分の刀が没収されていないことを思い出した。
普通謁見するときは武器などを没収されそうなものだが入り口で獣王が待ち構えていた上にそのままなし崩し的に謁見となったのでそんな暇がなかった。
しかし普通の謁見者であれば明らかにこの獣王よりは弱いことになるためその辺がゆるくなってもしょうが無さそうである。
そんなことを考えながらシュウは剣に魔力を流し上段に構えた。
別にこんなにゆっくりと動作を行う必要もないのだが、獣王にじっくり見せようと思い意図的にゆっくりと動いている。
そしてそのまま魔力を前方に放つように刀を振り下ろす。
最初期に開発した魔法『風刃』である。
これをカエデは魔力で強化した拳を突き出し、拳圧とともに魔力を飛ばしているし、ギルマスのそれはそのカエデの手法を剣で行っている。
色々と遠回りしているがもとを正せばシュウの『風刃』に行き着くためそこから見せることにしたのだ。
シュウがう振り下ろした動きに合わせて風の刃が撃ちだされ土製の的に当たる。
魔力で作られたとは言え所詮ただの土なので『風刃』の直撃に耐えられるはずもなくそのまま斬り裂かれた。
離れたところからの斬撃に獣王は口を開けたまま驚いていた。
「すごいわね・・・。ギルバートがやってみせたのはいかにも力技って感じで威力もここまで綺麗には切れなかったわ・・・」
「まぁ、こっちが本元ですし」
「それでは次は我が見せようかのう。主殿、スマンがまた的を頼めるかの?」
今度はカエデが前に出る。
彼女の言うとおり的を再び生成するとカエデが中腰に拳を構える。
やや集中しているように見えるがいつもはもっと素早く打ち出しているのでシュウと同じ理由でのことだろう。
そして拳を的に向けて撃ちだす。
今度は切れることなく拳大に的がへこんだかと思うとそこから全体にヒビが入り崩れ去ってしまう。
「これが我が主殿の魔法から思いついた技じゃ」
「正直さっきのと何が違うかわからないわね。いえ、斬撃と打撃だっていうのは分かるんだけど」
「飛んでいった物の種類が違うんですよ。俺のは魔法でカエデのは魔力で強化してますけど正体はただの拳圧です。ギルマスはこれを剣で行ってるんです」
「・・・なるほどね。ちなみに私は槍を使うのだけれど今のは出来るかしら?」
「槍、ですか。それでは突きを飛ばす感じになりますかね?飛ぶ刺突みたいな」
「飛ぶ刺突、ね。面白そうね。早速教えてもらえるかしら」
「分かりました。それでは・・・」
技の方向性が決まったところで早速技の習得に入る。
ちなみに獣王の槍はいつの間にか家臣が持ってきており、彼が日頃からどう過ごしているか少し分かった気がするシュウであった。
オネエキャラのインパクトって強いよなぁ、という安直な考えで獣王のキャラを決めたのですが、これほど扱いづらく、暴走しやすいとは思いませんでした・・・




