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第19話_2回戦です

獣王襲来から一夜明け、武術大会本戦2回戦が開始される。

この日も4つの試合が行われるのだが、この日はフィア対ゴルド、シュウ対アランという知り合い同士の試合が行われるため朝からどこかピリピリした空気が漂っていた。

とは言っても主にピリピリしていたのはゴルドとアランであり、シュウとフィアは大して構えた様子もない。

シュウとフィアにとっては命のやり取りのないただの試合であり、観衆の前という緊張はあるがそれだけである。

一方のゴルドとアランは初めての武術大会な上に相手が強大すぎる。

そして観衆は明らかにシュウとフィアの勝利を確信しており、そんな中での試合ということで余計に精神が追い詰められている。

そんな4人が控室にやってくるとそこには最初に比べ大分数を減らした選手たちが待機している。

これに勝てば準決勝進出となり、その時点でかなりの賞金を得ることができるので気合の入り方が違う。

そして先に来ていた面々はシュウ達と当たらないためやや精神的にも余裕がある。

シュウ達と当たるものとそうでないもので面白いように表情に差が出ているが試合開始は待ってくれない。

今日の最初の試合に出場するフィアとゴルドが係員により舞台への呼び出しがあった。


「よし、フィア。頑張ってね」

「はいっす!」


「・・・頑張れよ」

「・・・お前もな」


最初がシュウとフィア、それについでアランとゴルドの会話である。

アラン達の会話は死地へと赴く戦友に向けられるようなテンションで交わされていたが彼らの心情的には何の間違いもない。

むしろアランが後を追うようにシュウとの試合になるのでより一層重い空気を纏っていた。


◇◆◇


【それでは2回戦第1試合を開始しようと思います。本日戦う2人の選手ですが、以前は同じ街で活動する先輩と後輩冒険者だったようです。後輩であるフィア選手がゴルド選手の胸を借りる形になります】


司会者の表現に会場中が違和感を感じる。

なぜならば明らかに舞台上の2人では先輩に当たるゴルドがガチガチに緊張しており、後輩に当たるフィアは余裕のある表情だったからである。

しかし観客は誰一人としてゴルドを笑うようなことはしなかった。

フィアの強さは分かっており、はっきり言って彼女の対戦相手には敬意を表さねばならないのだから。


【さぁ、それでは試合開始です!】


司会者の合図で2人は同時に武器を構えた。

そのまま一歩も動くこともなく睨み合っている。

だがその理由は2人でそれぞれ異なる。

フィアは完全に様子見だが、ゴルドはどう攻めるか考えあぐねているのだ。

当然先に動くのはフィアとなる。


【おぉっと、フィア選手仕掛けた!】


互いに知り合いではあるが試合なので中途半端は失礼に当たると考えたフィアは最初から全力で攻撃をする。

フィアの攻撃は早さこそシュウを凌ぐが重さでは全く及ばない。

そのためゴルドが何とか防御を間に合わせた結果辛うじてダメージを受けることだけは避けることが出来た。

しかしいくら攻撃の重さが足りない、といってもあくまでシュウたち基準のためその破壊力たるや並ではない。

吹き飛ばされることは無かったが体勢は崩されたゴルドはフィアの第二撃目を警戒していた。

しかし予想していた攻撃が飛んで来ることはなく、フィアは何か考えているようである。


「・・・どうして攻撃をしてこなかった?」

「確かに今のまま攻撃をしたらうちがかなり有利になっていたんすけど、それじゃあダメなんすよ」

「ダメ?」

「そうっす。シュウさんに言われたんす。うちの攻撃は早さだけで重さがない。だから防がれたらダメなんだ、って。だから今度は防げないように攻撃するために待っていたんす」

「防がれない、ってんなら尚更わからないな。どうして今攻撃しなかった?」

「万全の状態のゴルドさんを抜いてこそ、ってことっす」

「・・・おもしれぇ」


ゴルドはニィと笑うと武器を構える。

そこには先程までガチガチに緊張していた面影はすっかり鳴りを潜めていた。

それを見たフィアも武器を構え再び攻撃をする。

ゴルドは先ほどと同じ攻撃を繰り返されたと思い、同じように防御を選択する。

このままでは同じ攻防が繰り返されるだけなのだが、フィアも全く同じ攻撃をするほど考えが浅いわけではない。

まさにフィアの剣がゴルドの斧に当たる瞬間、フィアは手首を返すと剣を立てゴルドの斧の寸前をすり抜けるように下へと下げる。

切っ先が斧を通り過ぎたところで再び前へ倒し、そのままゴルドの体目掛けて突き出した。

来ると思っていた衝撃が来ず、いきなり目の前で軌道が変化したフィアの剣に驚きつつもその変化の分自分の体への到達までの時間が伸びたため、何とか体を捻って躱すことに成功した。

これが駆け出しレベルの冒険者であればこのやり取りで勝敗は決していたがゴルドはラグスの街でそれなりの年月を冒険者として過ごしてきた経験があり、ギリギリでの回避であった。

しかし攻撃をかわされたフィアよりもゴルドのほうが旗色が悪い。

なぜならばフィアにしてみればたった今初めて挑戦した動きであり、躱されるのは当然、と思っているのに対し、ゴルドは本当に運良く回避が成功したにすぎない。

次に全く同じ攻撃が来ても今度も躱せる保証がないので思わず冷や汗を流している。


「やっぱりゴルドさんってすごいんすね。今のを簡単に躱すなんて」

「・・・へっ。これでもお前たちよりは冒険者稼業が長いんだ。このくらい何とかならぁ」


完全に口からのでまかせだが出さずにはいられなかった。

はっきり言って単純なフィアの強さは自分の上を行っている。

しかしここで謙遜しないのは自分の冒険者としての矜恃である。

こうなったら全力で防げるだけ防ぐ、とゴルドが心に決めたところでフィアがそんなゴルドの心を折るような発言をしてくる。


「じゃあ次はもっと早くいくっす!」

「ちょ・・・」


ゴルドが何か言う前にフィアの姿が消えた。

正確にはゴルドの目には消えたように写った。

と、自分の背後に気配を感じ、武器を背中に回す。

すると衝撃が自身の背を襲い、すぐに離れていった。

ゴルドが目線だけを向けるとそこには一瞬フィアの姿が映るが再び見失う。

背後に意識を割いた隙に今度は真正面へとフィアが回り込んでいた。

そのまま剣を振り降ろしてきたがまだ何とか防御が間に合う。

間に合うと思っていたのだがそれは無駄に終わった。

何故ならフィアは今度は剣の軌道を変えるどころか振りぬくこともせず途中でピタリと動きを止めたのだ。

衝撃も受けず、再びすり抜けてくることも頭に浮かんでいたゴルドはただ止まったフィアに対して思考が働かず本当に体が停止してしまった。

その隙を逃さずフィアは体を前傾姿勢に倒すとそのままゴルドの斧をくぐり抜け、手にした剣の柄を彼の鳩尾付近に叩き込んだ。

さすがのゴルドも急所にそのような攻撃を受けては立っていることが出来ずそのまま倒れてしまった。


【これは・・・ゴルド選手戦闘不能!よって勝者はフィア選手!!】


司会者の宣言によりフィアの勝利が確定した。

と、観客席では今のやり取りに疑問があるティアナが口を開いていた。


「カエデさん、ゴルドさんは何故あの攻撃をする直前硬直していたのでしょうか?」

「あれはフィアの作戦勝ちかのう。その前のやり取りで剣の軌道を変える動きを見せていたじゃろう?ゴルド殿の頭にはその動きが刻まれていたはずじゃ。最後のやり取りでその動きが来ると思ってしまったため、予想に反してフィアが動きを止めたものだから思わず硬直してしまったのじゃ」

「なるほど。でもそれであればわざわざそのようなやり取りをせずとも最初の攻撃時にそのまま攻撃しても同じだったのでは?」

「最初のやり取りはフィアの攻撃に対してゴルド殿が力ずくで体勢を崩されただけじゃ。我や主殿を相手にすればそのような真似はほぼ出来んじゃろう。だから力ではなく技で相手の動きを止める術を模索したのじゃろう」

「そうなのですね。それで攻撃が来ると思わせて硬直させたのですか。・・・フィアさんがどんどん強くなっている気がします」

「気、ではなく本当に強くなっておるの。じゃがまだまだ我や主殿には及ばんよ」


2人の間で繰り広げられる会話を間近で聞いていたゴルドの仲間、イリーネはどこかボーっとしながらもその内容を頭に染み込ませていた。

シュウが相手でなければもう少し善戦すると思っていた彼女だが、その予想は外れ、結果だけを見ればフィアの完勝で試合が終了していた。

こうして彼女にシュウたちの内自分たちが勝てる者はおらず、そして負けることが決定してしまっている自分が大会に出場しなくて良かった、と思っているのであった。


フィアが順調に勝ち進んでいますね。

実はゴルド戦はもっとアッサリ終わるはずでしたが、それではあまりに可哀想なためやや盛ってみました。

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