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第18話_控室でのやり取りです

「さて、鬼が出るか蛇が出るか」


一回戦の試合が終わった後控室で待機するように伝えられたのでそれに従い控室でやってくるであろう『誰か』を待つ。

すると通路側から誰かが近づいてくる音がした。

しかしその近づいてくる人物についてはシュウもよく知っていた。

というかシュウの仲間たちであった。


「お疲れ様です、シュウ」

「やぁ、ティアナ。どうしてここに?」

「それがうちらの所にも係員さんが来てここで待つように言われたんすよ」

「そうじゃ。最初はフィアだけかと思ったのじゃがどうやら我らも、ということだったので来たわけじゃ」

「早く帰ってご飯食べたいですねぇ」


全員来た理由は分かった。

リエルがいつも通りなのはスルーしてどうやら自分をここに待たせている人物は自分たちのパーティに用があるらしい。

さて、メンバーが全員控室に揃ったわけだが肝心の呼び出した張本人について全く予想が出来なかった。

一瞬ギルマスか、とも思ったのだがそれならば昨日の段階で呼び出しがあったであろうし闘技場の控室である必要性がない。

さらに実況席にいたのだから彼が直接呼びかければよかったものを司会者に言わせていたとすれば疑問が残る。

そうなると果たして誰が?となったところで再び外から誰かが近づいてくる音が聞こえてきた。

足音からして重装備の人物が、それも複数でありガチャガチャと音を立てながらなのでシュウたちでなくても気づいたはずである。

さて、その音を立てている一行が控室の扉の前までやって来て止まった。

そして力強いノックを室内に響かせた。


「あ、どうぞ」


ノックに反応してシュウが入室を促す。

すると一拍置いて扉が開く。

そこに見えたのは近づいてきた音の通り重装備に包まれたいかにも騎士といった者達であった。

さすがに一瞬顔が強張るシュウだがすぐに表情を戻す。

なぜならば騎士たちが左右に別れると間から鎧は着ていないが騎士たちとは比べ物にならない威圧感を放つ獅子のような男性が出てきたのである。

その人物は緩やかな服を着ているが、その上からでも分かるほど鍛えられた肉体を持っており、周りの騎士たちよりも強そうな雰囲気を漂わせている。

威圧感は感じるが敵意などは感じられないためシュウも特に緊張感を持たずに済んでいる。

敵意こそ感じないが目の前の人物は立っているだけで周囲を自然とひれ伏させるような威厳に満ちた態度でありシュウたちでも、特にフィアなどは同じ獣人としてよりいっそうその空気を感じておりどうすれば良いのか分からないような表情を浮かべていた。

その人物はそんなシュウたちを一人ずつゆっくりと観察していき、最後にシュウを見たところでゆっくりと口を開いた。

何を言うのか、とやや身構えていると予想外の発言が飛び出した。


「あらぁ、この子たちそんなに強そうに見えないのに只者じゃない空気を感じるわぁ。んもぅ、どうして昨日急に予定なんか入るのよッ!こっちの狐の娘の試合も見たかったわぁ」


・・・空気が、凍った。


◇◆◇


「それにしてもあなた凄く強いのねぇ。ギルバートがアナタの話をするもんだからどんな男なのかと楽しみにしてたらぁ・・・予想以上の強さで驚いたわぁ」


どうやらこの人物はこの国の王、つまり獣王であるらしい。

そしてこの話し方だが一緒に来た騎士たちが何も反応しないところを見るとこれがいつも通りであるらしい。

見た目は巨躯を持つ獅子顔の、何も知らない子供が見たら思わず泣き出してしまうような風貌の男なのだが、しゃべり方が特徴的、というかオネエである。

そのギャップで目を白黒させながらシュウは話しかけられたので答える。


「ありがとうございます。・・・ギルマスは一体どんな話を?」

「そうねぇ。アナタが失われた魔法を使いドラゴンや魔獣の群れ、何よりギルバートを倒しちゃったって聞いた時は驚いたわぁ。なにせあの男とは以前何度も戦って勝敗は五分五分だったからねぇ。そんな奴に勝てるなんて是非ともこの目で見たいじゃない?だから来ちゃった」


いたずら成功、といった表情を浮かべる獣王だがシュウたちにしてみれば強面の人物がウインクしているのを見て何とも微妙な気持ちになる。

それでも相手は獣王なので顔には出さないように気をつけている。


「ところでぇ、どうしてアナタたち見たいな強者が揃ったのかしらぁ。実際に戦いを見たのはアナタ達のリーダーだけだけど、全員かなりの強さを持っているでしょう?そんなアナタ達がどうやって出会ったのか気になるわぁ」

「俺たちは・・・たまたまラグスの街で出会ったんですよ。偶然です、偶然。」


全員ラグスで出会ったことには違いないのでそう答えておく。


「あ、あと、もともと強かったのはシュウさんだけっす。うちらはシュウさんに鍛えて貰ってもらったんす」

「そうです。最初にシュウと出会ったのは私ですが冒険者としては落ちこぼれと言っても過言ではありませんでした」

「うちもそうっす。駆け出しでパーティも組めなかったうちが初めて声をかけたのがシュウさんでした」

「まぁ、2人との出会いはそんな感じですね。素質としてはいいものを持っていたので俺はただキッカケを与えただけですが」


仲間になった順としてはティアナ、フィア、カエデ、リエルであり後者2人は元からかなりの強さを持っていたが、そもそもこの世界において人外という扱いなので今は黙っているようだ。

そんな会話を目の前で繰り広げられた獣王だが徐々に顔つきが険しくなってきていた。

シュウはそれを見て何かやってしまったか、と思ったのだがどうやら違うらしい。


「キッカケ、ね。それをギルバートにも与えたのかしら?」

「ギルマス?」

「そうよ。あいつこの国に来た時私の所に挨拶に来たの。その時何をしたと思う?・・・あの男、自分から離れた所に置いた的をその場から動かず真っ二つにしてみせたのよッ」


魔獣騒ぎの後ギルマスに教えた技だがどうやら完成させていたらしい。

そんな技を誰かに自慢したかったらしいギルマスは他の誰であろう獣王にやらかしたらしい。

未知の技を見せされた獣王は驚きもあったようだが羨望も多分に感じたようである。


「あの男と互角だったのに、あれじゃあ私が負けちゃうかもしれないじゃない!悔しいわ。だからあの技を私にも教えなさい!!」

「え、あ、あの・・・。教えるのはかまいませんが我々も試合があるので・・・」

「明日の試合が終われば明後日は休みでしょ!その日に教えなさい!!」


完全に獣王のペースで会話が進む。

さすがのシュウも困惑が隠せない。

獣王とともに来た騎士たちに助けを求めるが彼らの目は「諦めろ」と雄弁に語っており、シュウには最早諦めるしか道がなかった。


「分かりました。明日の試合で何事もなければ明後日お教えします。どこに行けば良いのでしょう?」

「王宮に来なさい。中庭なら充分な広さがあるわ」


シュウの答えに満足したのか獣王はお供を連れて颯爽と控室を後にした。

残されたシュウたちは獣王のインパクトによりしばらく呆然としていた。

と、何とか意識を取り戻したシュウが口を開く。


「はっ、皆大丈夫?」

「う、うむ。さすがは獣王と言ったところかの。あまりの衝撃に我まで固まってしまったわ」

「そうですねぇ。びっくりしましたねぇ」

「獣王さまがあんな性格をされていたなんて知らなかったっす」

「技を教える約束をしてよかったのですか?」

「ああでもしないと納得してくれなかったじゃないか。言っちゃったものはしょうが無いから明後日行ってくるよ」

「私達も行きますよ。シュウ1人で王宮に行かせるのは不安ですし」


王の住む所にシュウ1人で、というハイエルであったシュウの裁判を連想してしまう事態を避けるためティアナが提案してきた。

この意見には全員賛成している。

正直1人でも良かったのだが仲間たちの心遣いをムダにしないためにもその提案を受け入れ王宮には全員で向かう予定とする。

最後の最後にとんでもない来客があったのだが、こうして武術大会の1回戦は終わりを迎えたのであった。


獣王が登場しました。

どんなキャラ付けにしようか悩みましたが何故かオネエキャラになってしまいました。

不思議ですね。

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