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第17話_1回戦終了です

試合開始から相手に初手を譲ってきたシュウだが、ここで逆に打って出た。

ひとまず魔力を使わず素の身体能力のみでの攻撃である。

それでもチートであるその能力を遺憾なく発揮されたその攻撃は相手がガードしたとしても衝撃を殺しきれるはずもなく思わずたたらを踏んでしまった。

体勢が崩れたところでシュウは更に前に出て連続で攻撃を繰り出す。

ここで一本の剣のみを使用する剣士であればシュウの攻撃を捌ききれず被弾していただろうが、幸いにも彼は2本の剣を器用に使い、防御と同時にシュウを牽制している。

そのためシュウも攻めきれず相手が体制を立て直すのを許してしまった。

もしシュウが能力を全力で使っていたり、剣技が習熟していたとすればここで試合は終わっていただろう。

剣技についてはその経験を積むために大会に参加しているのでしょうが無いとして、能力の制限についてはシュウが勝手にやっていることなのでここで決めきれないことは完全にシュウのせいである。

しかし相手にしてみればたったの一撃で体制を崩され、危ないところまで追い込まれたという事実に変わりはなく、油断していると、いや油断していなくてもすぐに勝負が決してしまうことを嫌でも理解させられてしまった。

ここで双剣の男は明らかな格上を相手に、縮こまっていた精神は逆に開放され、普段よりも動きが軽くなったような間隔に陥っていた。

完全に開き直った形だが、それでもシュウの攻撃を捌ききったことは事実であり、それが自信に繋がっていく。

適わないまでも戦えることに相手は喜びを感じずにはいられない。

そのままシュウに対して斬りかかっていくのだった。


【気のせいか動きが良くなってきたような・・・?】

【気のせいではないのう。恐らくアレが本来の動きなのじゃろう。小僧を相手に何処か萎縮したものが小僧の強さを知って逆に解れたのじゃろうな】

【はぁ、そんなこともあるんですねぇ。しかしこれは面白い戦いになってきました。ギルバートさんに勝利し、ハイエルを救ったと言われるシュウ選手を攻める攻める攻める!!さすがのシュウ選手も防御で精一杯かぁ!】


司会が言うとおり現在シュウは足を止め相手の猛攻を防いでいるだけで精一杯に見える。

しかしそれは間違いで、シュウの足は止められているのではなく自ら止まっているのだ。

つまり、シュウは敢えて攻撃を受けていることになる。

双剣相手など出来る機会は少なさそうなのでここで目一杯相手をするつもりなのである。

2本の剣がそれぞれ別の意思を持つかのような攻撃は途切れることなくシュウ目掛けて繰り出され続けている。


(よぉし、慣れてきたぞ。・・・ここだ!)


そんな相手の攻撃を刀で防ぎ、時には躱しながらシュウは自分が反撃をする隙を伺っていた。

最初こそ本当に防御するだけで精一杯だったのだが、徐々に目が慣れた結果相手の攻撃と攻撃の間に僅かな隙を見つけ刀を差し入れる。

自分の攻撃を縫って差し出された刀に驚き思わず攻撃を中止し飛び退る。

シュウの刀が当たることはなかったが距離ができてしまったことに歯噛みしつつ再び攻撃のタイミングを計り始めた。

一方のシュウだが思ったよりも簡単に相手の攻撃を掻い潜れたことに満足していた。

今までのシュウであればもしかしたら被弾していてもおかしくない攻撃だったのだが、ここ数日のフィアとの訓練により攻撃の速度だけであれば余裕で見切ることが出来る。

ただし、フィアの攻撃は相手より早いが数は勿論一本の剣から繰り出されるものでありその点では苦労した。

しかし早さにさえ慣れていればあとはチートな動体視力により見切ることが出来たのだ。


【おぉっと、シュウ選手、相手の攻撃を捌き切りましたね】

【あれは完全に見切ってから動いておるのう。しかしあの連撃をあの短時間で見切った上に反撃してしまうとは流石じゃな】


(まぁ、割とギリギリな気がしないでもないんだけどね)


実況席で繰り広げられている会話に対して心のなかで加わってみた。

見切ることは出来てもそこに反応できるかどうかは結構ギリギリだった。

この辺がチートな能力を完璧には使いこなせていない事が現れた結果である。

しかし再び同じ攻撃をされても同じく見切る事ができるし攻撃を差し入れることも可能だろう。

シュウも成長しているのである。

それが普通であれば考えられないスピードで、考えられない成長幅で行われていることは今は関係ないのである。

さて、とシュウは考える。

相手の様子を見ると今の攻撃でかなりの体力を使ってしまったらしい。

いくら双剣で使うために軽量化の工夫がされているとはいえ片手に一本ずつ剣を持ってアレだけの速度で振り回せば体力がものすご勢いで減っていくだろう。

必死に息を整えようとしているがそれを待っていると時間がかかりすぎる。

経験を積むために一撃で終わらせてしまっては意味が無いのだが、逆に時間を掛けてまで行うこともないだろう。

なので再び攻撃を開始した。

先程よりもチート能力多めで、である。

相手の選手は息こそ荒いがそれでもまだ充分動けるため呼吸を整えながら再度攻勢に出るまでの時間稼ぎの意味も込めて先ほど動揺シュウの攻撃を捌こうとした。

しかし初撃を捌いた瞬間それが間違いであることに気付かされた。


【・・・ほう】

【ギルバートさん?どうしましたか?】

【いや、小僧が攻め方を変えたらしいのでな】

【攻め方、ですか?・・・先程と同様連撃を放っているように見えますが】

【ならば相手の動きを見てみるがよい】

【・・・あ、一撃ごとに体勢を崩されていますね】

【そうじゃ。あれは恐らく小僧が一撃一撃に込める力を強めていっているのじゃろう】

【力ですか】

【ほれ、よく見てみろ。小僧の剣が当たった相手の剣が大きく弾かれているじゃろう】

【・・・本当ですね】


この二人の会話は正しい。

シュウは最初の連撃より強く刀を振るっている。

そのため相手の剣は大きく弾かれ目に見えてシュウに押され始めている。

この時シュウは相手の剣を破壊しないよう、それでいて大きく弾けるように力を調整している。

これも手加減を覚えるための修行なのだが相手にしてみれば堪ったものではない。

何とかシュウの攻撃を止めたいが剣を大きく弾かれるため攻めに回ることが出来ないのだ。

そして攻撃を弾かれるだけではなく、その衝撃で徐々にではあるが握力も奪われてしまい剣を握っているのが辛くなってきている。

シュウはそのことを既に把握しておりわざと一瞬の隙を作る。

普段であればそのわざとらしい隙につられたりはしないのだが状況が状況だけに思わず飛びついてしまった。

左手の剣をシュウに向け振り下ろしてきた。

わざと作った隙なのでシュウはその攻撃を予想しており、予定通りの反撃に出ることにした。

普通であれば相手の剣の本来刃が付いていた部分に対して自身の刀の刃だったり腹の部分を当てて防御するのだが敢えて横から相手の剣の腹の部分に刀の腹を当てた。

そのまま手首のひねりを利用して相手の剣を巻き取り上空に弾き飛ばした。

剣道でいうところの『巻き上げ』という技からヒントを得ている。

シュウがわざと作った隙なので攻撃の予測をしており、それ以前の攻撃により握力が減っている状態ではなすすべもなく剣を取られてしまった。

観客にしてみれば双剣の男が反撃仕掛けたところでいきなり剣が宙を舞ったのだ。

何が起きたのか完全に把握出来た観客はほぼいないのだがそれでも勝負が決したことを悟り爆発したような歓声が巻き起こった。

相手にしてみればまだ剣が一本残っているため戦おうと思えば戦える。

しかしそれで逆転できるかと言われればそれは絵空事でしかなく最早無駄なあがきと言われてもしょうが無い状況である。

なので素直に降参することにした。


「降参だ。もっと行けるかと思ったんだがなぁ・・・」

「いやぁ、こっちも危なかったですよ」

「嫌味にしか聞こえんな。言うだけ無駄かもしれんが優勝しろよ」

「はい。頑張ります」


試合中こそお互い無言だったが終わってしまえば普通に会話できる。

相手はシュウに負けたがどこか晴れやかでやりきったような表情をしていた。

激励を貰ったのでそれに応えると、相手は満足した笑顔を浮かべ舞台を後にした。

シュウも舞台を降りようとしたが最後に実況席に視線を向けた。

そこには当然ギルマスが座っているのだがニヤニヤとしながらこちらを見ている。

試合の前に色々と暴露されたので恨みがましく視線でも送ろうとしたのだが見事に失敗した形だ。

ため息をつきつつ舞台を降りようとしたのだがそこに「待った」が掛かった。


【おっと、ここで何か情報が入ってまいりました。・・・シュウ選手、お疲れの所申し訳ありませんが控室の方で待機をお願いします】


司会者からシュウに対して待機命令が出される。

ただ待機して欲しいのであれば舞台から降りた後係員からでも伝えればいい。

それをせずにわざわざ観客も含めた全員に聞こえるように言ったところに何か作為的な物を感じる。

嫌な予感を覚えながらそれに従うことにしたシュウであった。


これで1回戦が全て終了しました。

ですがこの日はまだ何かあるようです。

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