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第15話_本戦初日終了です

第1試合の興奮冷めやらぬ中、次の試合が開始された。

第2試合はゴルドと短剣使いの対戦である。

ゴルドは大きな斧を使う戦士であり、細やかな動きをする短剣使いとはやや相性が悪い。

しかしゴルドはやや柄の長い斧を振り回すだけではなく、柄を使っての牽制、攻撃そらしを用いた斧術と棒術の中間のような戦いを得意としている。

この辺は同じような武器を使うリエルとの大きな差であり、仮にゴルドとリエルの2人が単純に戦えばリエルに勝ち目はないだろう。

魔力を使えば結果がどうなるかは大きく違うものになるだろうが。

そんなゴルドであるため短剣使いと互角の戦いを繰り広げていた。

もともとがランクの近い2人であったため実力は肉薄しており、あとは上手く相手を切り崩したほうが流れを掴むのみである。


何度かの打ち合いの末ゴルドが武器の本来の使い方である斧の威力を最大限に活かした攻撃を繰り出し、防御に失敗した短剣使いが吹き飛ばされる形で決着が付いた。

それでも互角の戦いを見せた2人に対して会場中から惜しみのない拍手と声援が送られたのである。

本来この武術大会本戦はこのような試合が多く、一方的な試合は中々見ることが出来ないのである。

しかし観客的にはどちらでも盛り上がれるので関係ないのであるが。


ゴルドの試合に続き今度はカイの出番である。

しかしゴルドの試合のようにお互い撃ち合い続けるようなこともなく一撃で決着が付いた。

お互いに最初の一撃から勝負に出た結果ギリギリのところでカイの攻撃が勝り相手の武器を破壊したのである。

斬撃などは放てない代わりに、ルールのある試合ではいつも通りの攻撃ができる鉄棍使いのカイが武器の性能を遺憾なく発揮した結果である。

武器が破壊されたのを見て相手は降参した。

フィアの相手のように素手で仕掛けることは出来なかったようである。

これで本日分の知り合いが出る試合が終わったためシュウたちは今日予定されている最後の試合をどちらも応援することなく純粋に観察することに終止したのである。

試合を終えたフィアも合流していたため戦い方をお互いの意見を交えながら観察していると意外と勉強になる。

真剣勝負とは実際に戦わなくても見ているだけで気づくことが多いのだ。

ちなみにこの時交わされた自分だったらどう対処するか、という会話であるが内容は非常識ながらも恐らくシュウたちであれば実現できるのだろうな、と思わせるものであり近くで聞いていたアランとイリーネが思わず思考を放棄したことは記しておく。


◇◆◇


本戦初日を終え、1回戦の半分が消化された。

明日残りの半分を消化し、明後日に2回戦全て、再び1日の休息日を挟んで3回戦と3位決定戦を行い最終日に決勝戦と表彰式という流れで武術大会が進むため、シュウとアランの出番は明日となる。

そして明日以降であるが、この国の王、つまり獣王が観戦に訪れるらしい。

何故今日は来なかったかというと、急な用が出来てしまい来れなくなってしまったらしい。

前もって用事があることが分かっていれば本戦開始を1日伸ばしていたが、突然だったらしくそのまま開催されたらしい。

というか自分が見たいからといって場合によっては開催日を無理矢理変更出来るとは本当にこの国の王は自由であるらしい。

それでも国民が納得するのは人徳あってこそだろうが。

そんな人物が見ている中戦わねばらならないアランとシュウだが、アランが緊張を深める一方、シュウはいつも通りであった。

別に誰に見られようともやることは変わらない、という考えである。

実際にその考えが正しく、獣王本人も参加者の全力を持った戦いを楽しみにしているのであった。

この獣王が観戦する明日以降であるが、これまたシュウが厄介事に巻き込まれることになるのだがまだ何も知らないシュウであった。


◇◆◇


「うー、疲れたっすぅ」


闘技場を出るとフィアがダレていた。

予選より激しく動いた上に相手は予選とは比べ物にならない強さを持っていたのでそれも当然だろう。

そして行動を共にしている『草原の狼』のゴルドであるが、どうやら今は喋る余裕がないようである。

彼もまた予選以上の緊張を強いられていたので精神を使い果たしており、最早歩くのすら辛そうであるがなんとか自分の足で宿へと向かっていた。

そんな様子を見ながらシュウは苦笑を浮かべていた。

明日になれば自分も本戦を戦うことになることになるのだが、ゴルドのようになる未来が見えないのだ。

しかしそれを口に出してしまうのはゴルドに悪いので出すことはしないが、表情が全てを物語っているため周囲にはバレバレである。

ゴルド本人も気づいているがそこを指摘する元気もないのでスルーしているだけなのだ。


「ところでフィア。あの人を相手にしてどうだった?」

「うーん。大きな剣を持っているのに思ったよりも小回りが効いてたっすね」

「やっぱりそう思った?」

「そうっすね。あの大きさの剣であのくらい振り回されると攻めにくいっす」

「フィアの場合速度で勝らないとあの防御は崩すのは厳しいよね」

「シュウさんならどうするんすか?」

「え?普通にぶち抜くけど」

「ちなみに我もじゃ」


シュウの回答に合わせてカエデも同調してきた。

その答えを効いてフィアは納得半分呆れ半分の表情をしている。


「2人ならそうなるっすよね」

「じゃあ今度あのタイプを相手にする場合の戦い方も特訓に加えようか」

「え゛っ!?」

「それはいい考えじゃの。勿論フィアの速度に負けないような早さで動くんじゃろ?」

「当然だね。後は隙を見せない範囲で攻めるよ」

「ふむ。それだと防御が甘くならんか?」

「その辺は適宜調整するさ」


シュウとカエデの特訓に関する会話を聞きフィアがやや青くなっている。

あのレベルの防御を維持しつつ攻撃までされてしまえば最早どうして良いか分からない状態になってしまう。

しかし盛り上がっている2人を止めることなど出来ないためフィアはなるべくおとなしい範囲で収まってくれることを祈るのみだ。


「ところでシュウ。明日はあなたの出番ですがどのように戦うつもりですか?」

「ん、んー・・・。もう隠す意味も無さそうだしある程度は全力を出すつもりだよ。あ、フィアにだけは全力を出すけど」

「出来ればうちにも多少の手加減はして欲しいっす・・・」

「とりあえず再起不能な人を出すことだけはしないでくださいね」


フィアの呟きをスルーしながらティアナがシュウへ注意事項を伝える。

この場合の「再起不能」とは怪我などのことだけではない。

仮にシュウが本当の全力を出した場合、今後戦うことを精神面から拒否するレベルのトラウマを発症しかねないためである。

自分が今まで培ってきた技術や経験が理不尽な力により根底から覆されてしまえば心が折れてもしかたがないため、その面も気をつけろという意味が十二分に込められている。


「分かってるって。ある程度の手加減はするって」

「だからうちにも手加減を・・・」

「そこが分かっているのなら構いません」


相変わらずフィアがスルーされるが気にしている人物はこの場にはいない。

それはフィアも含まれており、この程度はいつものやり取り、つまりシュウたちにとっての悪意も何もない日常なのである。

しかし、である。

実はシュウのフィアに対する手加減はしないという発言は本当であり、この部分はどう足掻いても覆らないことをフィア本人もよく分かっているため今更どうこうしようとは思ってはいない。

フィアに出来ることはシュウと当たったらほんとうに自分のすべてを出し切って一泡吹かせることだけなのである。


この後無事に宿屋についたのだが、今日はここ数日恒例となっていた宴会は開かれることなく休むこととなった。

ゴルドの疲労が限界に達していたためそういう空気にならなかったのが大きい。

よく考えると宴会のきっかけになるはいつもゴルドであり、そのゴルドが何も言葉を発せず部屋に引っ込んでいったため自然とそういうことになったのである。

シュウたちにとって何気にガルムについてから一番静かな夜となったのであった。


サラッと本戦初日が終了しました。

シュウたち以外の戦闘描写が出来るほど器用じゃないのです・・・。

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