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第08話_魔法使いと知り合いになりました

突如現れた魔法使いのような格好をした人物-ティアナに話があると言われ近くの定食屋に入ることになった。


この定食屋は安くて上手いこともありシュウも何度か訪れており、今日も早めの夕飯と思えば別段問題なかった。

本日のおすすめとなっていたよくわからないモンスターの肉を使った料理を注文して完成までの間ティアナのティアナの話をすることにする。


「突然で申し訳ないです」

「いや、こっちも夕飯どうしようか考えていたからちょうどいいと言えばちょうど良かったよ」

「それなら良かったです」


ここに来るまで人柄を多少なりとも観察してみたが悪い人物では無さそうなので少しは安心できる。

しかしこれから話す内容によっては警戒の必要が出てくるかもしれないので完全に気は抜かないでおく。


「じゃあ話を聞く前に確認しておきたいんですけど、あなたの魔力がSというのは間違いないでしょうか?」

「正確にいうとS+だけどね。ただ受付さんから魔法が継承されていなくてあまり魔力や魔攻が役に立たないって聞いて微妙な気持ちだけどね」


役に立たないのあたりで少し不機嫌になったようだが一応そのまま話をしてくれるようだ。


「魔法が継承されていないというのは違いますね。実際に私は魔法が使えますから」

「その格好を見れば魔法使いだってのは分かるよ。でも目くらまし程度にしかならないって聞いたけど?」

「悔しいけどその通りです。ただそれは魔法が継承されていないからじゃないです。魔法の知識が継承されていないのです」

「魔法の知識が継承されていない?魔法が継承されていないのとは違うの?」

「魔法は継承されています。だから私は魔法が使えます。だけど魔法の知識が継承されていないから威力が出ないのです。つまり目くらまし程度にしか使えません」

「なんとなく分かるような分からないような」

「今現在は威力の低い魔法しかないと思ってもらえればそれでいいです」


今現在は?魔法の威力を高める方法があるのかな?と不思議に思っていると更にティアナは続ける。


「あなたの思っている通りです。魔法の威力を高める方法は存在します。そのためにあなたに声をかけたですし」

「そこの繋がりがわからないんだけど?」


魔法の威力を高めるために自分に声をかけたと言われても自分はステータス的に高い魔力と魔攻の値を持ってはいるが魔法そのものは全く使えない。

どういうことだろうと思っているとティアナは答えを教えてくれる。


「簡単です。今の魔力と魔攻で威力が出ないならそれらを底上げすればいいのです」

(魔法使いだけど脳筋なのかな?)


シュウは割りと失礼な事を考える。

それを声に出さないだけマシであるが。


「何ですかその目は?失礼なこと考えてませんか?」


バレバレである。

話題をそらすために話を続ける。


「それで何で俺に声をかけたのかな?」

「あなたの魔力が高いからその鍛え方を教えてもらおうと思いまして」

(やっぱり脳筋かな?)


再び失礼なことを考えるとティアナの目が徐々に怪しげなものに変わってきた。

これ以上はマズイと思いまた話を続ける。


「えっとさ、確かに俺の魔力は高いけどそれは特に鍛えたとかそういう訳じゃなくてさ。

自分でも何でこんなに魔力が高いのか不思議なんだよ。

俺はちょっと記憶がなくて突然街の外で困っているのを草原の狼っていう冒険者パーティに助けてもらったんだ」

「記憶が?」

「うん。だから何で魔力が高いかはわからないんだ」


実際は女神にそう願ったのだからだが流石にここで言うと話が複雑になるので隠しておく。

話をするとティアナは希望が絶たれたような、それでいてどこか羨むような表情を浮かべている。

確かに自分にない物を持っている人が何故持っているのかわからないと言われてしまえば自分でもこういう表情になるだろうな、と思いつつ自分がある意味チャンスを掴みかけていることに気づく。


「何でこんな高い魔力を持っているかわからないけど、持っているからには使ってみたいんだよね」

「え?」

「だからさ、魔法を使ってみたいんだ」


ティアナは目を見開いている。

それもそうだろう。この世界では魔法使いになろうと考えるような人は基本的にいない。

いるとすればそれは余程の物好きか変人であろう。

ティアナ自身も昔話に出てくる魔法使いに憧れ、魔法を使うために書物を漁ったり魔法使いには直接師事を受けられなかったが魔法を見たことがある人から必死に情報を引き出そうとしたものである。

そのたびに変人扱いされ肩身の狭い思いをしたが念願かなって威力こそ低いものの魔法を使えるとこまで来たのだ。

そんな自分の経験があるからこそ目の前の人物が魔法を使えるようになりたいと言ってきたのは驚きもあったが、自分と価値観の似た人に会えたのかもしれないという喜びも大きかった。


「魔法を使ってみたいって・・・本気ですか?」

「一応本気だよ」

「それなら教えてあげないこともないです」


自分ではクールに言っているつもりであろう。

だが口角がピクピクと上がりつつあったり目尻が下がっていたりするので喜んでいるのを隠すのは不可能だった。


(喜んでくれたのなら何よりだ。それに俺も威力が低くても魔法を使いたいってのは嘘じゃないし)


「教えるにしても人目もあるし街の外での方がいいですね」

「それだと冒険者ランクをFに上げてからの方がいいかな?」

「そうね。そのほうが良いわね。あとどのくらいかかりそうです?」

「今日でGランク依頼の10回目を達成したから後は報告して試験を受けるだけだよ」

「なるほどね。それならあまり待たずに済みそうでよかったです」

「じゃあ試験に合格したらお願いするよ。ちなみにどんな魔法があるの?」


単に興味本位から出た質問だった。

シュウとしては魔法を教わるのは後日の予定となり、ただの世間話程度のつもりだった。

だがこの世界で変人扱いされながらも魔法を習得するほど魔法好きな人物に対しては単なる世間話となるわけはなく、いかに魔法が素晴らしいか、過去にはどんな魔法があったのか大演説を聞くことになったのだ。

それは注文した料理が届いても、それを食べている間も、食べ終わった後もひたすらに続いたところで今日の分の依頼達成報告は明日になりそうだなぁ、とシュウは苦笑するのであった。



ヒロイン(予定)が登場です。

魔法が衰退している世界で数少ない魔法使いが主人公の目の前に現れるのはこの物語の根底に「ご都合主義」が潜んでいるためです。

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