第07話_予選2日目です
今回、全く集中できなかったためいつもより少し短めです。
ご了承ください。
【さあ、武術大会2日目です!皆さん昨日は眠れましたか?私は興奮してあまり眠れませんでした!!】
司会者は本日も元気なようである。
その司会者の言葉にもあるが昨日の試合の興奮が覚めなかった観客の一部が夜通し試合内容を語り明かしたらしい。
それでなくても昨日騒ぎすぎて朝会場に到着した時などゾンビのような状態の人が多数おり、少々驚いたのだ。
さて、そんな興奮に包まれた大会2日目だが本日はゴルドとシュウの予選が行われる予定である。
そして各ブロックから4人ずつ勝ち残った選手により明日1日の休日を挟んだ後トーナメント方式の本戦が開始されるのだ。
ゴルドは昨日少しほぐれた緊張が夜になって復活したらしく今朝は少し元気が無かった。
それでも今日試合であることには変わりなく、無理矢理気分を入れ替えてこの闘技場までやって来たのである。
今日試合のあるゴルドとシュウは昨日のフィアたち同様控室に入っており、観客席にはティアナ達のみが来ている。
「昨日は皆でここから試合を見ていたんすねぇ」
「そうですよ。少し遠いですし戦う人が多くて少し見づらいですが昨日のフィアさんはよく見えましたね」
「え?」
「あれだけ派手に動いたのですし、司会者の方も貴方に対する情報を流すものですから会場中があなたに注目してましたし」
「・・・なんかそう言われると恥ずかしいっすね。昨日は戦いに集中していて司会者さんの話を全く聞いてませんでしたし」
「まぁ、今日はシュウたちの番ですしゆっくり応援していればいいと思いますよ」
「そうっすね。頑張って応援するっす!」
フンス、と気合を入れるフィアだが、ティアナは全く気合の入れどころが見つからなかった。
別にシュウに対して負けてもいいと思っているわけではなく、むしろどうすれば負けるのか疑問に思ってるのである。
それもそのはずで、昨日の夕食時、フィアたちの祝勝会を開いたのだが、その時シュウが小さな声であったが呟いた内容をティアナがしっかりと聞いていたためだ。
その発言とは。
「どのくらい手加減すれば目立たないかな・・・」
という大会参加者に聞かれてしまえば吊るしあげられるような内容であった。
しかしこれにはきちんとした理由がある。
それはフィアの試合中に司会者によって流された「フィアを軽く凌駕する強者」という発言である。
これは紛れも無くシュウのことを指しており、フィアが自己紹介欄に何を書いたのか確認しなかった為に起きたある意味自己である。
フィアも悪気があって書いたわけではないだろうが、このような場で目立ちすぎる事を良しとしないシュウはいかに自分が目立たないように勝つのかを真剣に考えていたのだ。
だが、ティアナに言わせればどう足掻いてもシュウが目立たないという状況になるわけもなく、それが早いか遅いかという違いにしかならないと思っている。
それをすぐに指摘するのも憚られたのでその場は黙っていたのだが。
そんなことを思い出していたティアナだが、すぐ隣から話しかけられたので意識をそちらに向けた。
「シュウは緊張していたかい?」
「いいえ。いつも通りの感じでしたね」
「はぁ。うちのゴルドも見習って欲しいもんだねぇ。普段は豪快な性格なくせに一度緊張し始めるとトコトン固くなっちまうんだ。あれさえなければもっと頼りになるんだけどねぇ」
「そう言ってやるなよイリーネ。ゴルドだって普通の人間さ。緊張することくらいあるよ。
それを仲間の僕達がフォローしなくちゃ」
「分かってるよアラン。だから今日は目一杯応援してやるつもりさ」
ティアナがラグスにいた頃は全く気が付かなかったがゴルドは意外と繊細な性格をしているらしい。
それを悟られてしまえば失礼に当たるかと思い、顔に出さないようにしているのだが。
そんなやり取りをしているとゴルドが出場する予選Cブロックが開始される時間になった。
既に舞台上には選手たちが勢揃いしており、その中にゴルドが立っているのが見える。
【準備が出来たようなので本日の最初の試合、予選Cブロックを開始しようと思います。それでは・・・試合開始!!】
合図で一斉に選手たちが動き始めた。
さすがに昨日のフィアほど目立った動きをしているものはいないが、それなりの実力者は見かけられる。
その中にはゴルドの姿もある。
ゴルドの武器は両手斧であり、基本的には斧を振り回し敵を吹き飛ばすのがゴルドの戦闘スタイルである。
しかしそれだけでやっていられるほど冒険者稼業は甘くない。
ゴルドの強みは両手斧を振り回すだけのパワーファイターではなく、小回りを効かせ両手斧の刃と柄を用いた連撃なのである。
連撃で相手の防御を固めさせ、動きが鈍ったところで両手斧の本来の使い方である振り回しで防御の上から吹き飛ばすのである。
言ってしまえば単純な戦い方だが、単純故に崩すのが難しく、相手にしてしまえば厄介この上ないようだ。
元に既に数人の選手がその餌食になっており、開始時にあったゴルドの固さはすっかり解けて今は普段通りの戦いが出来ているようだ。
ゴルドの戦いを間近で見たことがあるのはシュウだけであり、ティアナたちはわからなかったのだが、そこはシュウよりゴルドの戦いを知っているアラン達が教えてくれた。
そのアラン達もゴルドが普段通りの戦いを出来ていることに安心した様子である。
「ようやくあいつらしい戦いが出来るようになったじゃないか」
「そうだね。あれでこそうちの先陣を切るゴルドだ」
2人が安心しながらゴルドの戦いぶりを見ているのでティアナ達も一安心していた。
シュウの心配が全くない分、ティアナ達もゴルドの方が気にかかっていたのである。
むしろ今日このあと試合のあるシュウも心配していたほどである。
いかにゴルドが緊張していたか分かるというものである。
さて、試合の動きであるが、昨日のフィアの試合のように急激に選手が減っていくことはないが、着実に舞台上にいる選手の数が減っている。
ゴルドもそうだが、比較的強い者は他の強者とのぶつかりを避けている節がある。
乱戦で不意打ちのように倒してしまうより本戦で正々堂々と真正面からぶつかり合うための暗黙の了解のようなものだ。
それでも比較的弱いものを数人で相手にするような事も無いので運次第だが全員にチャンスが残っている。
ゴルドはその中でも比較的強い部類に入るようで牽制されこそすれ、この場で積極的に潰されるようなこともないようである。
そうしているうちにBブロックよりは時間がかかったが4人の勝ち残りが決定した。
最後の方で体力が切れかけたのか少々危ないところもあったのだが、ゴルドも無事本戦へと進むことができた。
「これで全員本戦に進めるね」
「アラン、シュウのことを忘れてないかい?」
「シュウくんが予選落ちすると思う?」
「・・・それでも一応は心配してやりなよ」
アランとイリーネがそんなことを話していたが、ティアナは全面的にアランに賛成である。
「ティアナさん、ティアナさん」
「どうしました?」
「実際シュウさんが負ける可能性ってどのくらいあるんすかね?」
「・・・正直負ける場面が想像すら出来ませんね」
「お主ら・・・主殿が聞いたらまた凹んでしまうぞ・・・」
「でもぉ、そういうカエデちゃんはシュウさんが負ける所って想像できるんですかぁ?」
「・・・回答は控えさせてもらおう」
最早答えを言っているも同様のカエデである。
ティアナたちの会話が聞こえたのかアランを窘めていたイリーネが何とも複雑そうな顔をしている。
ランク的には自分たちと同じ、そして冒険者としての活動期間は自分たちのほうが遥かに長いのに強さに差がありすぎるのだ。
先輩冒険者としてのプライドもあるので素直に認めたくない部分がある。
ちなみにそう思っているのはイリーネだけであり、アランとゴルドは認める、いや諦めている。
シュウに張り合うことほど無駄なことはない、というシュウとしては褒められたのか貶されたのかよくわからない評価をされているのである。
仮に面と向かって言われても多少顔が引き攣るくらいでそれほど傷つきはしないだろうが。
やはりティアナたちに言われるのとそれ以外の人に言われるのとではシュウも受け取り方が大分違う。
信頼している仲間から言われると捉え方が大分違うらしい。
いずれにせよシュウは控室で待機しているのでこんな会話が繰り広げられているのは知る由もない。
ゴルドが勝ち進んだ喜びもふとしたはずみで何とも言えない空気になっていしまった。
休憩を挟んだ後、この空気の発生源となっているシュウの試合があるのだが、結果が分かりきっているのに、展開が全く予想できないため、ティアナは少しだけ頭を抱えるのであった。
ゴルドの戦いぶりは正直悩みました。
というか斧ってどうやって戦うんですかね?
リエルのように多少無茶苦茶なご都合主義の攻撃方法しか思い浮かびません。




