表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
83/126

第06話_フィアの戦いです

休憩後Bブロックの戦いが開始される時間になった。


【さて、本日の最終戦、予選Bブロックを開始します!選手の皆さんは準備よろしいですか?】


司会の音頭に合わせて歓声が上がる。

舞台上には既に選手たちが立っており、フィアは先ほど端の方に立っていたアランとは違い、中央付近で開始の合図を待っていた。


「フィアがどんな戦いをするのか楽しみじゃな」

「そうだね。そういえば聞いてなかったけどカエデから見てフィアはどう?」

「技、力ともに主殿には遠く及ばんが中々いいものを持っておるの。王都での王亀戦でも思ったのじゃがあの素早さだけは主殿でも及ばんじゃろう。あとはそれをどう活かすか、だの」

「カエデから見てもあれは厄介?」

「我の場合王亀と違ってそのままでも硬さがあるからの。すぐに切られることはないだろうがこちらも攻撃が当たらんからのう。じゃが体力の差で勝つのは我に違いあるまい」


カエデが中々厳しいことを言っているようだが、実際ドラゴンと比べられてしまえば大抵の人間は手も足も出ず敗れる、ということも加味すればフィアの強さは現段階でもかなりのものらしい。

本当に何の心配もいらなそうだな、と考えたところで司会者が再び声を発した。


【それでは予選Bブロック、試合開始!】


司会者の号令により試合が開始された。

選手たちはそれぞれ近くにいた他の選手と打ち合っているのだがフィアだけは誰とも剣を打ち合ってはいなかった。

それもそのはずで、そもそも女性の参加者自体がかなり少ないのだ。

Bブロックではフィアしかいない。

そのため回りの男性陣はフィアを最初から攻撃すると後から弱いものを先に狙った、という評価を受けいそうなため最初は避けることにしたようである。

当然それを面白く思わないのがフィアであり、自分から攻撃を仕掛けることにしたようだ。

と言っても誰かと打ち合ってるのを後ろから、というのは卑怯だし、そんなことをすれば「正面から正々堂々」が好きなカエデからどんなお説教を受けるか分かったものではない。

なので他の人間の決着が着くのを待ち、相手がこちらを認識してから行動を開始した。

多少距離はあるものの相手が自分に向かってくるのであれば女性とはいえ戦いを避ける事はできないため、剣を構えるフィアの目標。

フィアは相手に駆け足で近づいていき、あと少しでお互いの間合いというところでより前のめりに体を倒し一気に加速した。

シュウたちのように観客席から俯瞰的(ふかんてき)に見ていればその動きを見ることは可能だが、それを真正面からやられてしまった相手の目にはまるでフィアが突然消えたように見えるだろう。

フィアはそのまま剣を横薙ぎに払い、相手の腹部を思い切り殴打した。

いくら刃の付いていない剣とはいえ身体強化の上、フィアの加速により威力が倍増した一撃を食らっては踏みとどまることが出来ず、場外まで吹き飛ばされる相手。

それを見ていた他の選手が唖然とする中、フィアは次の目標、つまり目のあった相手に突進する。

さすがに全く同じ手は二度通用せず、相手が反撃のためフィアの動きに合わせて剣を振るってくるがフィアはそれを軽く躱し、そのまま同じように弾き飛ばす。

最初は女性と見くびっていた選手たちはここでようやく理解した。

手加減や遠慮などして勝てる相手ではない、と。


「やっぱりフィアさんは早いですね」

「そりゃそうだよ。純粋な早さ勝負じゃ俺だって負けるもの」

「私もぉ、模擬戦の最中に気づいたら目の前にフィアさんがいて何度もびっくりしましたぁ」

「なにせ最近は我を相手にしてもいい勝負をするようになってきたからのう」


フィアの強さを知る仲間たちはその動きを改めて評価しているのだが、それが出来ない人物が3人。

予選Aブロックからシュウたちとともに観戦していたイリーネ、ゴルドとそのAブロックで戦っていたアランである。


「えっと、シュウくん?あれってあのフィアさんで間違いないよね」

「え?ええ。そうですよ」

「アタシの目が可笑しくなったんじゃなけりゃとんでもない早さで動いてるように見えるんだけど」

「まぁフィアの武器はあの早さですからね」

「・・・坊主どもはどこまで強くなってるんだ」


最後にゴルドが絞りだすよう呟いた言葉はアランたちの心情をとても良く表現していた。

ラグスにいた当時からフィアのことは知っていた。

しかしそれはシュウと共に行動する駆け出し冒険者としての姿であり、とてもあのような強さを発揮するような人物ではなかったのだ。

最後に見てからこのガルムで再会するまで数ヶ月程度の期間はあったのだが、普通の人であればあそこまでの成長をするには明らかに時間が足りないはずなのである。

だが結果は目の前で繰り広げられている一方的な展開である。

最早フィアを無視できている選手は一人もおらず、全員がフィアに意識を割かねばそのまま敗退が決定するような強さなのだ。

ちなみにフィアがよくカエデに指摘されていた「一撃の軽さ」なのだが、あくまでシュウたちを相手にした場合であり、普通の相手であればあの早さで強化された体から繰り出される一撃は軽いものではない。

あくまでシュウたちのような強者か上位のモンスターを相手にした場合に問題がある、というものである。

と、そこでシュウはフィアの動きであることに気づいた。


「うーん、一方的に見えるけど、フィアが攻撃するのを避けている選手がいるね」

「え?本当ですか?」

「うん。ほら、あそこに双剣を持った人がいるでしょ?あの人への攻撃をしないようにしているね。というか近づこうとしていない」

「・・・確かにそうですね。あの人が近づくと距離をとっているように見えます。・・・何故でしょうか」

「多分あの人かなり強いね。それと、ほら、あっちの大剣を持ってる人にも近づこうとしない。あの人も強そうだ」


フィアが意図的に攻撃を避けているのはその2人のようだ。

双剣の方は一本の剣で相手の攻撃を捌きながらもう一本で攻撃するスタイル、それもかなりの練度のようでフィアの攻め方だと攻撃を捌かれ反撃される可能性が高い。

そしてもう一人の大剣の方はAブロックでアランが倒したハンマーを振り回していた男のようにパワーファイターのようだが、その剣捌きは実に繊細であり、相手の攻撃を実にうまく捌いている。

こちらもまた今の攻め方だと分が悪そうだ。

しかし全く対処できないかと言われれば決してそうではなく、あくまで今のような乱戦では分が悪い、ということである。

一対一であればやりようはいくらでもあるのだ。

それに1つのブロックから4人まで勝ち上がれるので無理に相手にするひつようもないだろう。

そこまでティアナに説明していると再びアランが質問してきた。


「シュウくん。一応聞いておきたいんだけど、君たちの冒険者ランクって今どのくらいだい?」

「今ですか?今は俺はDでフィアはEですよ」

「あれでEって・・・。どうやら僕達はとんでもない人たちと知り合いらしい」


シュウは内心何を大げさな、と思っていたのだが、今回はアランの考えが正しい。

この世界においてEランクとは駆け出しから抜けきっていないランクであり、間違ってもフィアのように次々と相手を弾き倒せるような事はできない。

それが出来るのは一概にシュウ達が率先してモンスターを狩ろうとはせず、むしろ自分たちの好きなことを脇道にそれながら全力で行い、それでいてこの世界の常識にとらわれない魔力を用いた戦闘術と強くなるための特訓は欠かさなかった結果である。

そしてそれがこの場で発揮されたことでどうなったかというと。


わああああああぁぁぁぁ


会場中から割れんばかりの歓声である。

この時観客たちはフィアの強さからあれが『竜殺し』では?という認識が生まれつつあった。

フィアが知れば全力で否定するであろう認識だがその強さと動きの派手さで完全に会場中を魅了していた。

今までは大きな動きを見せた選手がいた場合にそれで観客を煽っていた司会者であるが、この状況となるとフィアを中心とした解説となっており、本来は本戦に出場してからとなるフィアの情報を読み上げる異例の事態となっていた。


【っと、ようやくここであの女性剣士の情報が入ってまいりました。お名前はフィア、元はラグスという人族の街で冒険者をしておりこの大会を知って仲間たちと参加しに来たそうです。そして冒険者ランクは・・・え、嘘!?あれでEランクなの!?】


司会者の動揺が会場中に伝わる。

それは先ほどのアランと同様の感想を会場中にもたらしたのだ。


【・・・えー、更に驚くべきことに彼女のお仲間も参加されているそうなのですが、その強さは彼女を軽く凌ぐそうです。あれより強いって嘘でしょ・・・】


最後は完全に素の反応だったのだが、それは会場中の観客も参加している選手も同じ意見である。

いきなり槍玉に上げられたシュウだが周囲には自分がフィアの仲間であることはほぼバレていないので大した騒ぎになっていないのが幸いである。

しかしそれを知っている者は違う反応を見せた。


「司会者が言っていたのってシュウくんのことだよね」

「多分そうですね」

「・・・フィアさんより遥かに強いって本当?同じくらい強い、じゃなくて?」

「勿論主殿はフィアよりも遥かに強いぞ」


カエデが会話に割って入り、胸を張って主張してきた。

見た目が少女であるカエデのそんな反応は本来微笑ましく見られるものだがアランたちにはそんな余裕がない。

シュウが強いことは元々分かっていたがそれでも今のフィアと同じくらいだろう、と思っていたためそれほどまでに差があるということは自分たちとはどれ程の差があるのか考えてしまったのだ。


「なんか緊張していた自分が馬鹿みたいだ。・・・よぉし、絶対勝てないならやるだけ足掻いて綺麗に負けてやるぜ」

「おぉ、ゴルドが開き直ったよ」


シュウの告白はゴルドの緊張を解きほぐす効果もあったようだ。

・・・一周回って考えるのをやめた、とも捉えられるのだが。


観客席の一部でそんなやり取りがあったが試合の方は無事にフィアが勝ち残る形で決着が着き、大会初日は無事?に終了したのであった。

この後、司会者の口から出た「フィアより遥かに強い参加者」とは一体どのような人物なのか、そしてその人物が『竜殺し』なのか、という議論が遅くまで街のいたるところで繰り広げられ、翌日寝不足に陥る人が多数出るのだがそんなことは関係なく、純粋にフィアが勝ち残った事を喜ぶシュウたちであった。


フィアが無双しています。

彼女はシュウたちの中ではあまり強さが目立ちませんが、普通に比べたらかなりの強さを持っていたりします。

あと、フィアが攻撃を避けていた人物に関しては後で出そうか迷っていますのでどうなるかは未定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ