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第03話_参加します

「そういえばお前ら、大会の参加申し込みはしたのか?」

「まだです。今ついたばかりなので」

「それなら急いだほうが良いな。一応明日までの期限になっているが念の為に、な」

「そうですね。あ、でも宿も抑えないと」

「それなら僕達がやっておいてあげるよ。僕達と同じ宿でいいよね?」

「あ、それでお願いします」


シュウたちは葛藤(かっとう)から復活したゴルドのアドバイスにより宿の確保をアランたちに任せ大会の参加申し込みに向かうことにした。

意外とギリギリの到着になってしまったが間に合ったので良しとしよう。

受付は街の中心にある闘技場で行えるらしい。

大会もその闘技場で行われるので当然といえば当然だが。

時間は昼すぎなので本日分の受付はまだ行っているだろうが余裕ぶっていると締め切られる可能性があるため急いで受付を済ませるため少々早歩きである。

荷馬車はアラン達が代わりにギルドに返却してくれるそうなので身軽なこともありすぐに闘技場に到着することが出来た。

と、そこには人だかりが出来ていた。


「うわー、すごい人だね。これ全部参加者かな?」

「違うと思いますよ。だって明らかに一般のかたもいるじゃないですか」


思わず参加者の数がこれだけいるのだと考えてしまったが、どう見てもごく普通の主婦のような人までいるので参加希望者ではないらしい。

とは言え今はただの受付期間であり闘技場に一般人が押し寄せる理由はないはずである。

いや、今まではなかった、という方が正しいだろう。

ここは獣人の国であり、獣人の風習として強いものに惹かれる、という本能があるらしい。

そしてこの国に『竜殺し』、つまりはシュウのことだがそのような強者が入り、そして大会に参加するという噂が一瞬で広まり、ひと目見ようと民衆が押し寄せたのだ。

しかし『竜殺し』の名と功績(こうせき)は広まっているのだがその姿形までは広まっていない。

張本人であるシュウだがどう見ても普通の冒険者でありドラゴンを倒せるほどの強者とは一見しただけでは分からない。

ここでシュウが『竜殺し』だと判明すると確実に集まった民衆に揉みくちゃにされるのだが先の条件によりスルーされている。

勿論シュウはそんなことに気づいていないのだが。

受付を済ませるため闘技場の中にはいろうと民衆の中からぬけ出すと一瞬視線が集まるが容姿だけをみて『竜殺し』では無いと判断されたためすぐに視線が散る。

不思議に思いながらシュウたちは闘技場の中へを足を踏み入れたのであった。


◇◆◇


「すいません、武術大会への参加申し込みをしたいのですが」

「はい。それでは参加される方はこちらの用紙に記入をお願いします」


シュウは転生時にチート能力の1つとしてこの世界の言語理解が出来るようになっているため苦もなく必要事項を記入した。

記入するのは名前、得意な武器、冒険者である場合はランク、そして自己紹介文というものだった。

自己紹介文だけは意味がわからなかったので受付の人に聞くと予選はバトルロワイヤルで本戦はトーナメント形式となるらしい。

その本戦になると試合前に司会者から軽く戦士の説明があるのだがその際に使用されるらしい。

勿論無記入でも良いのだがその場合は適当なことを創作で言われてしまう可能性があるので記入したほうがいいとのことだ。

変な紹介はされたくないので無難な文章を書いておいた。

隣を見るとフィアも書き終わったようだ。

2人揃って受付に用紙を渡す。


「ありがとうございます。それでは参加費用として銀貨一枚をいただきます」

「え、参加費用が必要なんですか?」

「はい。ですが本戦に残れば返却されますし、勝ち上がるごとに賞金が増えます。予選に数だけ増えても困りますのでそのための措置となっております」


なるほど、冷やかしなどで参加され大会の質を下げられるの嫌ってのことらしい。

必要であればしょうがないので二人分で銀貨2枚を支払った。

安くはないが今のシュウたちであれば決して払えない額ではないのだ。


「確かに受け取りました。こちら参加証になります。紛失しても再発行は出来ませんのでお気をつけ下さい。予選は明後日の朝から行われます。あ、大会用の武器はお持ちですか?」

「大会用?」

「はい。ある程度の怪我はしょうが無いですが、さすがに死人を出すわけにはいかないので剣などは刃引きした物の使用のみ許可しております」

「あ、なるほど。んー、ない場合ってどうなります?」

「その場合運営側より武器の貸出が行われます。ですが、長さや重さなど種類は余りありませんのでその点はご了承ください」

「そうなんですね・・・」


確かに本当の武器で勝負すると死人が出かねない。

そのための措置としては納得出来る。

だがそうなると困るのは普通の鉄製の武器だとフィアはギリギリ良くてもシュウは全く本気が出せない。

本気の魔力強化をすると武器が全く保たないのだ。

正直手加減しながら勝ち進めるとは思わないので出来れば魔鋼製の武器が欲しいところだ。

そこまで考えたところでシュウの答えは決まった。


「自分で用意します。何か規定はありますか?」

「刃物の場合は刃引きされていれば大丈夫です。あとは・・・そうですね。殺傷能力に特化されてなければ基本大丈夫ですね。」

「殺傷能力特化って・・・。まあ分かりました。ありがとうございます」

「はい。ではご武運を」


受付から離れひとまず今日の予定は完了したのでアラン達が取ってくれているはずの宿に向かう。

とそこでフィアが話しかけてきた。


「シュウさん、武器の調達ってどうするんすか?今の武器を変形させるんすか?」

「魔鋼製の武器って一度形を決めると変形出来ないんだよね。出来るとすればそこにさらに追加するくらいで。今の武器の刃の部分に新しい魔鋼つけると取れないし硬すぎて削れないからそっちは弄らないで新しいの作るよ」

「え!?わざわざ新しいの作るんすか!?」

「だっていつものと同じじゃないと調子でないでしょ?それに俺も本気出せないし」

「いや、シュウさんは本気じゃなくても十分強いと思うんすけど・・・」

「ま、そんなわけで明日作っちゃうから何か要望あれば今日のうちに考えておいてね」

「それならいつものと同じ感じで良いんすけど・・・、考えておくっす!」


新しい武器を作るといっても大会用の刃を潰したものだ。

普段の冒険者稼業ではほぼ出番が無いので今回専用となるだろう。

くず鉄からでも一級の武器を作り出せるシュウだからこその選択である。


「とりあえず今日は宿に行こう。久しぶりにゆっくり出来るぞー」


両手を上げ、伸びをしながらシュウが宿に向かって歩き出した。

それに習って仲間たちも歩き出した。

野営の度に水で濡らしたタオルで体を拭くなどして体を清めてはいたのだがやはり宿屋でしっかりと洗えるのなら洗いたいのだ。

歩いて行くとアランたちに教えてもらった宿屋はすぐに見つかった。

高級そうではないが比較的大きめの宿で恐らく武術大会が開催されるこの街なのでこういった宿も必要なのだろう。

宿に入るとアラン達が受付の前で待っていた。


「あ、アランさん。受付してきましたよ」

「調度良かった。こっちも部屋が取れたところだよ。だけど・・・」

「何かありました?」

「・・・実は部屋数が少なくて大部屋1つしか取れなかったんだ」

「あー・・・」


どうやらアルスの村長宅と同じ状況になるらしい。

とは言えよく考えれば大会が近い状況で部屋が取れただけでもありがたいのだ。

それに。


「まぁ、しょうが無いですね」

「そうっすね」

「皆で夜までお話できますねぇ」

「それは楽しそうじゃの!」


女性陣がノリノリなので断ることも出来ない。

というかついこの間まで同じ状況だったので今更何を楽しもうというのか。


「女性陣が良いと言っているのでそれでいいですよ」

「そうかい?もし良かったらイリーネが部屋を変わると言っているんだけど」

「ギリギリになって来た俺らが悪いんで構いませんよ。イリーネさんの部屋取るのも悪いですし」

「アタシは別に構わないんだけどさ。まぁあんたらが良いならそれでいいさ」

「わははは。話は纏まったようだな。よし!今日は再会を祝して飲むぞぉ!!」

「アンタはいつも飲んでるじゃないか」バシッ

「いてぇなぁ・・・」


話が決まったと見るやいなやゴルドが宴会を提案してきた。

事あるごとに飲みたがるのはラグスにいた頃から全く変わってないらしい。

イリーネが強めのツッコミを入れるが表面だけ反省したふりをしているがその目は全く宴会を諦めてはいないようである。

それが分かっているためかイリーネも一応突っ込んでおきました、という表情だ。

ひとしきり反省したふりを終えたゴルドはニカッと笑ってシュウの肩に腕を回し宿の食堂に連れて行こうとする。


「あ、ちょ。ゴルドさん?俺たちまだ荷物を置いてないんですが」

「そんなの後々!今日も飲むぞー!!」

「はぁ。今日も、でしょ・・・」

「明後日から大会が始まるんだから程々にね」

「なぁに。どんだけ飲んでも1日あれば酒は抜けるって」

「1日残るだけは飲むんだね」


ゴルドに引きづられたシュウがどれだけ飲むつもりなんだ、と内心怯えつつも何も出来ずズルズルと付いて行くしか出来ない。

仲間に助けを求めるがスッと目をそらされてしまう。

どうやら今日はテンションの高いゴルドにトコトン付き合わされるらしい、と諦めるしかないシュウであった。


参加申し込みだけで一話が終わってしまいました。

そして次もあまり話が進みそうにないです・・・

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