第22話_王都へ戻ります
昨日消してしまった分を何とか書き直せました。
「かなり滞在が長引いちゃったね」
「そうっすね。でも最後の宴会は楽しかったすね」
「・・・フィアさんはまた酔っ払って寝てましたけどね」
「ご飯いっぱいでしたねぇ」
「お土産も沢山貰ったしいい村だったのじゃ」
シュウたち一行は一路王都へ向けて歩いていた。
魔族撃退後シュウが村人を迎えに行って村に戻ってきた後、それは盛大な宴会が開かれた。
主役は勿論魔族を撃退したシュウ達と無謀と知りながら村民のため村に残った村長である。
村民が戻ってきて最初に駆け寄ったのは勿論村長のもとであり、特に村長の奥さんはそれはそれは感動的な再会をしていた。
何でも村長が一人で村に残るときにドラマのワンシーンのような別れをしたらしく再び無事に会えたことで気恥ずかしさもあったようだがそれよりも嬉しさが勝ったらしい。
数百年経ってもアツアツな2人を見ながら村人たちは宴を開きシュウたちに代わる代わるお礼を言っていった。
その度に酒を注がれ、律儀に飲んでいたフィアは勿論すぐ撃沈。
その他のメンバーも順次休んでいったのだが朝起きても飲み続けている人が多いことに驚いたものだ。
どうやらこの世界ではエルフも飲兵衛らしい、と感想をもった後、これまた盛大に見送られながらシュウたちは村を後にした。
今回の襲撃をいち早く王都へ報告し、護衛のためにも兵士などを派遣してもらうためいち早く王都へ戻る必要がある。
とは言っても数日中という話でも無いのでこうして歩いて向かっているわけだが。
アルスへ向かう時はニアが商いに使っていた馬車に乗せてもらったため自分の足で歩くことはなかったのだがニアは村に残るため帰りは徒歩である。
しかし荷物はほぼシュウの収納袋に入っているため所持品は武器など必要最低限だ。
馬車の速度はそれほど出ていなかったため徒歩でも移動時間的には変わらない。
むしろ冒険者として訓練も重ねているためこの程度の移動であればスムーズに進めるため徒歩のほうが都合が良かったりする。
体力的には余裕なのだが、ただ歩くだけでは精神的に疲れるため雑談しているのである。
「あ、そうっす。シュウさんからカエデちゃん、いやカエデさんの事を聞いてないっす」
「フィアよ。今までどおり『ちゃん』で構わんぞ?」
「え、あ、いや。そんな恐れ多い・・・」
カエデの正体を知ってからフィアはカエデに対してどこかよそよそしい。
この世界において災厄とまで言われるドラゴンが正体と言われてしまえばその態度も分かるのだが、最初から正体を知っていたシュウとティアナは苦笑してしまう。
カエデ本人も今まで通りでいいと言っているので時間はかかるだろうがいずれ元通りになるだろうと思っている。
ついで、とばかりにシュウとリエルの秘密も話した。
こちらもティアナは知っているので初めて聞くのはフィアとカエデの2人なのだが。
「「はぁ」」
という反応で終わってしまった。
まぁ様々な伝承があるドラゴンと違って、いきなり「神様です」等と言われてもリアクションに困るのは理解できる。
しかも、今ここにいる理由が「間違ってシュウを元の世界からこの世界に送り込んでしまい、罰として神界から落とされた」というものでは神聖さなどあったものではない。
むしろリエルの正体が女神だった、ということよりシュウが元いた世界について詳しく聞かれた。
しかし機械だとか科学だとかの説明がうまく出来なかった。
『高度に発達した科学は魔法と区別がつかない』という言葉を聞いたことがあるがまさしくである。
例えば「離れた所の相手と会話できる機械がある」というと「魔道具?」と聞かれるだろう。
イメージしたのは電話なのだが原理がよくわからないので違いを全く説明できないのだ。
なので「魔法が衰退しているとかではなく一切存在しない世界」という説明に留めておいた。
こうして王都までの道程は特にトラブルも起きず順調に進んで行ったのであった。
◇◆◇
「あら、シュウさん。お久しぶりですね」
「どうも。色々とありましてね。ギルマスはいますか?」
王都に戻ってすぐギルドに顔を出しギルマスへ報告することにした。
幸いすぐに会うことが出来たため事の顛末を詳しく説明した。
「ほう、魔族のう。昔の戦争の生き残りがおったとはのう。しかも新しい種族と言っていいほどの存在になっているとは驚いた」
「アルスの村長も噂程度にしか信じていませんでしたね。実際に俺が戦った相手は噂通りの強さでしたし」
「わっはっは。そんな敵を相手にほぼ無傷で勝ってしまうとはのう」
ほぼすべての出来事を話したのだが、カエデの正体についてだけはぼかしておいた。
ギルマスの性格を考えると確実に厄介事になるための処置である。
「とりあえずアルスの村の事お願いしますね」
「わかっておる。ワシから王へ話を通しておこう」
性格はアレな部分があるがギルマスとしての仕事ぶりは信頼をおける。
後のことはギルマスに任せシュウたちは宿屋へ向かった。
運良く以前泊まっていたのと同じ二人部屋が2つ、一人部屋が1つ借りれたのでシュウは久々に1人でゴロゴロ出来ていた。
「そういえばここでゴロゴロしてた時に白米が食べたくなって、結局アルスに行ったんだよなぁ」
ゴロゴロしながら考え事をしていると、ふと今後のことに考えが至る。
出来る限りラースをもらってきたが食べていればいずれは尽きる。
その時に歩きだと往復半月以上、シュウが1人で飛行魔法を使えば往復1週間かからないくらいでアルスに行くことが出来るのだがどちらにしても問題がある。
ただ食べ物を買いに行くだけで長期間活動しないのも問題があるし1週間程度だけでも単独行動するのは今回の件から考えると得策ではない。
そこまで考えたところでシュウにあるアイディアが浮かぶ。
思い立ったが吉日とばかりに早速行動を開始する。
ティアナにちょっと出かけてくる事を伝え、そのまま王都の外へと向かう。
そして獣を狩りまくった森の奥、丁度召喚石があった森の開けた場所に到着した。
絶対にこの場所でなければならない理由はないのだが人目につかず、ある程度のスペースが確保できる場所ということでここを選んだのだ。
到着するとシュウは早速アイディアを形にし始める。
両手を突き出し集中を開始する。
少しするとシュウの目の前の空間が揺らぎを生じ始める。
そのまま蜃気楼のように目の前の景色が変わり始めた。
シュウが今いる場所は森の奥であり、木々や硬い地面が広がっているはずなのだがシュウの目の前だけは柔らかそうな砂浜と大きな水たまりが見えた。
その出来栄えに満足しつつ、シュウはその景色の方へと歩き始める。
まっすぐ進むとある点を超えた瞬間周囲の景色が全て変わった。
つい先程まで森のなかに居たはずなのだが今は砂浜と大きな水たまり、つまり海辺になっている。
上手くいったことに満足しながらシュウは後ろを振り返り一部分だけ木が見える場所に向かって歩き始める。
そして森のなかに出たところで海が見えている部分に意識を集中した。
すると今まで海とつながっていた空間はすっかり元の森に戻ったのであった。
「予想外に上手くいったな」
全てうまく行ったのでシュウは思わず満面の笑みだ。
シュウが行ったこと、それは所謂空間転移の魔法だ。
今この場所からつなげたのはアルス近くの砂浜である。
最初はベニアルドがやってみせたような一歩も動くことなく移動するタイプも考えたのだが周囲の様子が一切わからない状況で行うには危険があるため一度繋げ、その場所の様子を把握した上で自らのタイミングで移動できるこのタイプにしたのだ。
砂浜にしたのは人が居ないだろうという予想があったのと、その場所で多くの魔法を使ったのでなんとなく自分の魔力が漂っている気がしたためである。
気がした程度なので普通は何の根拠にもならないのだが、そのような思い込みやイメージの強さが魔法の成功に繋がるこの世界においては大事なことである。
転移魔法が成功したことで今後ラースや味噌の調達が気楽に行えることになった。
これはシュウにとってとても重要なことなのだがそれを夕食時に喜々としてメンバーに言うと全員引きつった顔になってしまった。
シュウの非常識さは理解していたつもりだが片道1週間かかる距離を一瞬で移動出来るように、しかもきっかけがラースの調達という個人的な趣味によるものである。
すごい魔法を開発した、と褒めれば良いのか、そんなことのために常識を壊すな、と説教すれば良いのか悩みつつもティアナが主導でシュウへの注意をしたのである。
ちなみにこの魔法だが、応用すれば人の家に忍びこんだりすることも可能なためいらぬ嫌疑を掛けられてしまう。
そのためこれまでの魔法以上に人に知られてはならないのである。
注意を受けつつも今後ラースや味噌の買い付けが気楽にできることになったのでシュウは内心ニコニコである。
魔族により完全に狙いをつけられているシュウだが、魔族が使っていた魔法から新たな魔法を思いつき、しかもそれをラースの買い付けの為に使用しようとしているなどとは魔族も思っていないだろう。
どれだけ強くなろうと、誰に狙われていようとも一切自分のペースを乱さないシュウなのであった。
これでこの章は終了となります。
当初の予定ではこの章は存在せず、次の章がそのまま始まる予定でしたが説明が弱かったため急遽挿入した章でした。
そのため色々とガタガタでしたが読んでくれる皆様のおかげで何とか書き切ることができました。
明日から新章となりますがこれからもよろしくお願いします。




