第21話_勝った後のあれこれです
ドシャ
『水龍』によって吹き飛ばされたヴァレスが地面に墜落した。
もともとが魔力も体力も尽きた状態でまともに食らったので受け身など取れるはずもない。
地面に附したまま動く気配が無いので完全に気絶しているようだ。
軍勢の方も主にカエデの活躍により鎮圧が完了しており今回の戦いは完全勝利と言ってもいいだろう。
しかしシュウには気になることがある。
と、その気になっていた人物が再び目の前に現れた。
「まさか我々が負けるとは思わなかった」
「お前が参加してればもう少し結果が違ったかもしれないがな。どこ行ってたんだ?」
「あのドラゴンがいては結果は変わらんだろう。なので少し離れたところから観察させてもらったのだ」
「それで、俺達の弱点でも見つけた?」
「一人ひとりに付け入る隙はあっても全員が揃うと厄介だな。特にあのドラゴンとお前がな」
途中から姿の見えなかったローブの人物が現れ、このまま戦闘に突入かとも思ったのだがもう戦意が無いらしいので少し会話してみる。
「評価どうも。次にまた来たらお前もまとめてぶっ飛ばすぞ」
「そうはなりたくないな。心配せずともしばらくは動けんだろう。お前たちのせいでな」
「全く、どうしてこんなことをしやがるんだ」
「知れたこと。我らは我らの誇りのために戦うのだ。魔法を使える選ばれし我らの祖先を滅ぼした者共、そして我ら同様選ばれた素質を持つのに我らに賛同しなかった者共を滅ぼすのだ。そしてその者達の保有する魔力を奪い我らの力とする」
「つまり戦争で勝った側とこの村のエルフ族のように魔法を使えるのに使わなくなった種族への八つ当たりか」
「ふん。なんとでも言うがいい」
「それで人族や獣人族の俺達に負けてるんじゃ意味ないな」
「・・・」
ただの会話だがシュウはいつでも斬りかかれるように隙を伺っていた。
だが全くその隙が生まれないので挑発して激昂させて隙を生み出そうとしたのだが意味がなかった。
これ以上の挑発は無意味として話題を変えてみる。
「せっかく魔法を使えるのなら人の役に立つことに使えよな」
「それこそ無駄というものだろう。魔法を使えぬ種族のためにどうやって魔法を使えと言うのだ。魔法とは支配に使うべきものだ」
「違うな。魔法は生活を豊かにするもだ」
「・・・なに?」
「俺はここに来て海産物の収穫をしたり娯楽の為に魔法を使った。皆驚いてたけど喜んでくれたぞ?」
「・・・どうやらお前とは価値観が合わないらしいな」
「そうか、残念だ」
「今日はこれで引く。まずはお前たちを排除しないと我らの計画が進まぬようだ」
「何度でも邪魔してやるさ」
「次はお前たちを最優先で排除する。安心していられる日が長く続くとは思わぬことだな」
ローブの人物は踵を返しこの場を去ろうとして、だが途中で止まると振り向きシュウに再度口を開いた。
「そういえばまだ名乗ってなかったな。我が名はベニアルド。魔将軍の一人だ」
「へー。じゃあこっちも。俺はシュウ。しがない冒険者さ」
「次に会う時は必ず仕留めるぞ」
「返り討ちにしてやるさ」
ベニアルドはニヤリと笑うとその場から掻き消えるように姿を消した。
そして周囲に倒れこんでいた魔族も一人残らず姿を消したため辺りには戦闘の跡が残るばかりとなったのであった。
◇◆◇
「シュウ殿!無事ですか!?」
「あ、村長さん。そちらも大丈夫でしたか?」
「ワシは隠れていたので何ともありませんよ。それよりドラゴンが現れませんでしたか!?」
「え・・・と、どうして?」
「村の奥からこの辺りにドラゴンの頭が出たのが見えたのですよ。まさか魔族がドラゴンを持ち出すとは・・・。そしてそのドラゴンも倒れるのが見えました。さすがはシュウ殿ですな!」
「あ、いや・・・」
「あの軍勢に加えてドラゴンまでも!やはりシュウ殿は強いですなぁ」
「・・・なんとかなりました」
カエデの正体だとか戦いの顛末だとか説明しだすとキリがない上に色々と厄介なことになりそうなので適当に流しておく。
村長は一人で盛り上がっているため一旦放置しておきシュウは仲間たちのもとへと走り寄った。
ちなみに村長が言っていたドラゴンが倒れた、というのはカエデが戦闘終了時に再び人化したため姿が見えなくなったことを指している。
「おぉ、主殿。どうじゃった我の戦いぶりは!」
「すごかったよ。っていうか俺と戦った時より明らかに強くなってない?」
「それは主殿と特訓したおかげじゃ!この人の姿で魔力の使い方を学んだからの。おかげでドラゴンの姿でも効率よく魔力を使えたわい」
「そりゃよかった」
「シュ、シュシュ、シュウさん!!」
「フィアどうしたの?」
「あ、あの!カエデちゃんがドラゴンでドラゴンがカエデちゃんで・・・」
「ちょっと落ち着こうか。はい、深呼吸。吸ってー・・・吐いてー・・・」
カエデが褒めてほしそうにやって来たので褒めていると、フィアがとても慌てた様子でシュウに詰め寄ってきた。
とりあえず深呼吸させて落ち着かせる。
何度か繰り返させるとようやく落ち着いたようなので話を聞けるようになった。
「それで一体どうしたんだい?」
「いや、逆になんでそんなに落ち着いてるんすか!?」
「え?何でって・・・」
「シュウ、フィアさんにはカエデさんの正体を教えてなかったじゃないですか」
「あれ、そうだっけ?」
「そうっすよ!どうして教えてくれなかったんすか!!」
「・・・まぁいいじゃないか。魔族も何とかなったんだし」
「よくないっすよ!ちょ、シュウさん!」
「ティアナ後よろしく!」
「って私ですか!?」
フィアが詰め寄ってくるがなんとなく面倒なのでスルーして途中で会話に参加してきたティアナに全て任せひとまず逃げることにしたシュウである。
ただし、逃げるといっても全て放り出してしまうのではなく、自分にしか出来ないことをするためだ。
それは王都へ向けて避難しているアルスの村人たちに追いつき魔族の襲撃が失敗に終わったことを伝え村へ戻ってきてもらうことだ。
飛行魔法を駆使すれば日が暮れるまでには追いつくことができる。
合流したら村へ戻る人々の護衛をしつつ二日もあれば戻ってこれるだろう。
それをカエデとリエルに伝え飛行魔法を使用する。
彼女たちにはこの村で待機してもらうことになるが魔族を撃退できた今は危険もない。
興奮するフィアをティアナに丸投げしたため帰ってきた時に小言をもらうことを覚悟しつつシュウは避難している村人の元へと飛んでいったのであった。
◇◆◇
シュウが何事も無く避難していた村人を村に連れ帰った頃、魔族の拠点ではヴァレスがようやく目をさましていた。
「あ・・・ここはぁ」
「ようやく目が覚めたか」
「ベニアルドかぁ・・・。俺様はいったいどうしたんだぁ?」
「お前と戦っていた人族の男、シュウに負け気絶していたのだ。それを私が連れ帰った」
「・・・くそがぁ」
「次からは私の言うことも聞いてほしいものだな。情報もなしにあの男と戦うのは危険過ぎる」
「うるせぇ!次はぶっ殺すぅ!!」
「・・・はぁ」
ベニアルドは溜息をつくとヴァレスが治療を受けている部屋を出た。
そしてシュウのことを考える。
(あれは我らに匹敵する、いや我らを上回る魔法をつかえるようだ。
策もなしに挑んではまた同じ結果になろうだろう・・・。
しかしどれだけ数だけを揃えてもあのドラゴンがいる限り標的が増えるだけで意味をなさぬだろうな。
さて・・・)
魔族は戦争直後より数を増やしたとはいえ他の種族に比べると絶対数は少ない。
その分一人ひとりの強さはかなりのものなのだが、それすらシュウの前では霞むのだ。
当初の予定より目的の達成が難しそうだ、と冷静に計画を立て直すのであった。
一応魔族との戦いはこれで決着です。
ようやくローブの人物の名前を出せましたがそこまで引っ張るような設定でなかったな、と反省しております。
次の話なのですが、書き上がっていたデータを間違って削除してしまうという致命的なミスをやらかしたため明日更新できるか不明です。
毎日更新を目指していただけに悔しいですが、間に合わなかったらすいません。




