表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法の衰退した異世界で魔法剣士をやります  作者: サムガリン
第03章_やりたいことをします
72/126

第17話_避難しましょう

「『魔族』ですと!?」

「知っているのですか?」

「・・・噂程度ですが」


魔族の襲来をまずは村の代表である村長に伝えると何やら知っているようだ。

ここに来るまでに傷を負った門番の所に寄ってフィアとリエルの様子を伺ったのだが、どうやら治療の方は終わったらしい。

門番も傷がすっかりふさがり、後は気がつくのを待つばかりとなっていた。

なので二人も連れて一緒に村長のところで事情を説明していた。


「過去の戦争で僅かに生き残りがいたようで、その者たちの子孫が今でも残っているらしいのです」

「でもあいつらは自分のことを『魔族』と言っていましたよ?過去の戦争に『魔族』なんて参加してたんですか?」

「そもそも『魔族』という種族は存在していませんでした。過去の戦争に参加していたのはエルフ族や人族、僅かですが獣人族などの一般的には魔法が得意でない種族の中で魔法を扱えるものが参加していたようです」

「じゃあ『魔族』とは一体何なのですか?」

「生き残った者達が交わりそれぞれの種族の特徴をもっているらしいです」

「長所を?」

「はい。エルフ族より短いですが長い寿命を、獣人族より弱いですが強靭な肉体を、人族には劣りますが強い繁殖能力を、といった具合にです」

「それは・・・」

「そうです。それが本当に存在するのであれば驚異的な種族です。そして魔法の行使を尊ぶべきものとして戦争を起こした者達ですので魔法の継承もしっかりと行われているのでしょう」

「それが今回来たあいつらだ、と」

「ワシの知る『魔族』だという証拠はありません。ですが強力な魔法を使ったというのが本当であれば可能性は高いかと」

「『魔族』・・・か」

「これから襲撃されるのであれば村民に避難を促しましょう」

「そうですね。本当に『魔族』かどうかは別として避難はお願いします」


あの2人が『魔族』かどうかはともかくとして恐るべき力をもった者が襲ってくるのは事実なのだ。

いち早く避難をすることは間違いない。

村長が村民全員に知らせるべく家を出て行った。

その後、シュウたちは対応の話し合いを始めた。


「それで、シュウ。私たちはどうしますか」

「可能であれば村を守りたいんだけど・・・」

「シュウさん!どうして絶対に村を守るって言わないんすか!!」

「フィアよ。主殿にも訳があるのじゃ」

「訳って何ですかぁ?」

「それは・・・」

「シュウ、私から話します」

「でも・・・」

「シュウが言いづらい理由も分かります。私から言ったほうが説得力もあるでしょう」

「・・・」

「ティアナさん!どうしてなんすか!!」

「フィアさん。私たちはシュウに出会う前に比べて強くなりましたよね」

「そうっす!うちらは強くなったんす!だからこの村を守ることが出来るっす」

「・・・ではお訊きしますがフィアさんが1人で私とカエデさんの2人と勝負して勝てますか?」

「え?さすがに2人相手だと少し難しいですね」

「それではシュウさん1人には?」

「無理に決まってるっすよ」

「私とカエデさんは2人で魔族1人に負けました。そしてシュウが何とか勝てるような強さを持っています」

「だからシュウさんとうちらが一緒に戦えば確実に勝てるっす!」

「相手が1人ならそうでしょう。ですが相手は最低でも同じような強さを持つものが2人。そしてその配下が軍勢と言われるほどの規模でやってくるんです」

「・・・」

「はっきり言いましょう。私達がいたのではシュウの足手まといにしかなりません」

「ッ・・・」

「そして今回の相手はシュウでも1人では厳しい規模になるでしょう。なので戦いを回避できるのであれば回避したほうが得策です」

「でもっ!」

「フィアよ。今回ばかりは主殿でも無理というものじゃ。お主も無駄に果てるのは本望ではあるまい」

「・・・でもっ」

「聞き分けよ。魔獣の群れを一掃できる主殿でも今回ばかりは相手が悪い。今は耐えて次は足手まといにならぬように強くなるのだ」

「・・・」


フィアは悔しそうに唇を噛んでいる。

自分が弱い、と言われたのだ。しょうがないだろう。

シュウとしてはそこまで言わなくても、と思ったのだが、あえてはっきり言うティアナの優しさも感じられたので黙っていた。

ここで言わないとフィアの性格上単身突撃して取り返しの付かない結果になる可能性もあるのだ。

そしてシュウ本人もチートな能力を持ちながら今回は何も出来そうにない自分に苛立ちを覚えていた。

『黒の刃』結成以来順調だったがここに来て初めて暗い空気が一行を包むのであった。


◇◆◇


「必要最低限の荷物だけもって王都へ向かうのだ!」


村長の号令によって避難が着々と進んでいった。

エルフは見た目が20歳程度までは人族と同じように成長するが、それ以降は老化するまで長い時間を要する種族である。

そしてその寿命故か子供を残す意欲が他の種族よりも弱いせいか、村の中には子供や老人の姿がなかった。

それが幸いして避難する動きがスムーズであり、初動は早さがあった。

恐らく村内で一番動くのに支障があるのは魔族により傷を負った門番であろうが、リエルの回復魔法により1人で歩けるまでには回復していたのでこちらも問題はない。

この避難におけるシュウたちの役割だが、殿(しんがり)を務め背後からの襲撃を警戒することになった。

この村を守ることは難しいのでせめて一番危険なところを受け持つため自ら請け負った。

村長やニアが何か言いたそうだったが、一番逃げきれる可能性が高い選択肢であり、反対することも出来ずにいた。

せめても、と可能な限り行動を早くして追いつかれる可能性を低くしたいがため声を張り上げて誘導を行っているのだ。

その様子を見ながらシュウたちは避難時の動きを確認していた。


「可能な限り早く動いているけど、恐らく追いつかれるだろう」

「そうですね。相手には恐らく任意の場所に現れる能力があります」

「あれは対応が難しいのう。いつの間に消えたのか分からんかったわ」


魔族と戦った3人は直接見ていたので恐ろしさは身にしみている。

ローブの人物が突然現れヴァレスと共に消え去った、恐らく転移魔法と思われる魔法が厄介なのだ。

あれがもし軍勢全てに適用されるのであればいくら逃げたところで逃げきれるものではない。

仮にローブの人物とヴァレスが2人でやってくるだけで全員無事で済む保証がなくなるのだ。

最悪自分だけで戦い、仲間を逃がすことも選択肢に入れているが自分だけを残して仲間が素直に逃げてくれることは無いだろう。

仲間を庇いながら戦えるか不安ではあるが逃げ切ることを優先すれば可能性はあるだろう。

今はマイナスな事を考えるより出来ることを行い、全員で無事に逃げ延びることを最優先に考えることにした。


◇◆◇


シュウが考えていた同時刻。

村から少し離れた場所に魔族の2人の姿があった。


「おぉい、どうしてあそこで戦わなかったんだよぉ」

「あのまま戦えば2人のうちどちらかは致命的なダメージを負っただろう」

「はぁ?戦いなんだから当たり前だろぉ?」

「・・・我々の目的を忘れたのか。戦うことが目的ではないだろう」

「ちぃ」

「・・・お前の目から見てあの人間はどう写った?」

「あぁ?あいつらぁ?魔法は使えるしそれなりに強かったねぇ」

「女達ではなく、あの男だ」

「あいつはいいねぇ。久しぶりに本気になっちまったよぉ」

「お前が本気、か」

「魔法もかなり使えるようだしぃ、接近戦でもまともに喰らい続ければ間違いなくやられるねぇ」

「やはり、か」

「なにぃ?お前あいつらのこと知ってるのぉ?」

「・・・お前にも教えてあっただろう。王都を魔獣に襲わせる計画をほぼ1人で防いだのがあいつだ」

「へぇ。じゃあやっぱり強いんだぁ」

「だがその強さにもムラがある。王亀クラスの魔獣には多少手こずっていたな。・・・最後はアッサリと斬り裂いていたが」

「ふぅん。あいつが本気になるには時間がかかるのかなぁ」

「ほう?何故そう思う」

「だってぇ、俺様と戦ってた時最初より最後のほうが明らかに威力上がってたんだもん」

「ふむ。そうだとすれば調子の出ていないうちに叩くのが得策か」

「ダメだよぉ。あいつは全力を出した上で俺様が叩き潰すんだからぁ」

「・・・勝手にしろ」


ローブの人物は疲れたようにため息を付いた。

そもそもヴァレスと組みたくて組んでいるのではないのだ。

2人は魔族の中でもそれなりの地位を与えられているのだがヴァレスはどちらかと言えば戦闘力のみで評価さている節がある。

本来であれば戦略を考えるのが得意である自分と組むことはお互いの長所を引き出せる、はずなのだがヴァレスがあまりに戦闘を好むため作戦がことごとく崩れ去るのだ。

なのでヴァレスを組むことは嫌なのだが命令であったため今回は仕方がない、と諦めている。

そもそも、それなりの時間を掛けて準備した王都襲撃計画がイレギュラー1人のために潰されてしまい、魔族の中で自分の立場がやや怪しくなっているため命令に従うしかないのが現状なのだ。

その点ではシュウに恨みもあるのだがそれに執着して今回も失敗しては目も当てられない。

なので最悪ヴァレスのことは無視して作戦の遂行を目指そう、と決めたのであった。


恐らく村人は避難を開始しているだろうが自分の能力があればある程度の人数であれば任意の位置に送り込むことが出来るし、足止めをしているうちに本隊が追いつけばそれだけで殲滅は可能なのだ。

ただ暴れるだけであればヴァレスがいても問題ないので先に送り込み、自分は本隊を率いて逃げ道を無くすように動けば村人の命を一人残らず奪えるだろう。

さすがにシュウ1人だけいたとしても物量で押しつぶせるのだ。

本隊の数こそ魔獣の千に比べれば百弱と少ないが一人ひとりの練度は比べ物にならない。

しかも全員が魔法を使えるとなれば通常の軍隊がどれだけいても相手にならないのだ。

魔族の宿願を果たすためにも今回の作戦は成功させなければならない。

ヴァレスという不安要素はあるが自分の立ち回りさえ気をつければ問題ないと結論を出し侵攻のための準備を進めるのであった。


魔族に関する説明回っぽくなりました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ