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魔法の衰退した異世界で魔法剣士をやります  作者: サムガリン
第03章_やりたいことをします
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第15話_招かれざる客です

アルスの村にやって来てから既に10日ほど経過している。

本当であれば長くても1週間程の滞在予定だったのだが手に入る食材が魅力的すぎてついつい長居している。

しかしいつまでも村長のお宅に厄介になっているのも悪いのでそろそろ王都へ戻ろうか、という話も出ている。

いざとなればシュウは飛行魔法があるので最初よりも短い時間でアルスまで辿り着くことができるので食材が尽きたらまた遊びに来ることが出来る。

なのでシュウの懸念事項は何一つ無いと言っていいのだ。

帰ることはまだ村長やニアには言っていないが帰る前日にでも話せばいいだろう。

そうと決まれば最後に村の中を見て回ろう、ということになった。

ラースを取った岩場、皆で遊んだり特訓した砂浜、モンスターがやって来た時に行った港を見て回る。

そうしているうちに村の入口にたどり着いた。

すると最初に来た時にいた門番が今日も立っていた。


「お、シュウさんたちじゃないか。こんなところでどうしたんだい?」

「あ、いえ。そろそろ王都に戻ろうか、となったので村の中を見て回っているんですよ」

「そうだよなぁ。あんたら冒険者をいつまでも村に縛っておいてもダメだよなぁ。あんたらがいれば色々と楽しいんだが」

「ありがとうございます。またいずれ越させてもらいますね」

「いつでも来いな!」


まだ出発するわけではないのだがなんとなく別れの言葉になってしまう。

これで出発するときにまたこの門番さんがいると気まずいよなぁ、とシュウが考えていると外から人がやってくるのが見えた。


「あれ?誰か来ましたね」

「お、本当だ」

「あれが村長さんの言っていた行商人さんっすかね?」

「それにしては荷物が少ないようじゃのう」

「じゃあ旅人さんですねぇ」

「んー、この村に旅人が来るなんて珍しいなぁ」

「そうなんですか?でも実際に来てるじゃないですか」

「そうだなぁ。まずは話を聞いてみるか」


そう言うと門番はその場を離れてその旅人へと走って行った。

門番が門から離れて良いのか、と思わないでもないがシュウ達がいれば問題無いだろう。

そう思っているうちに門番が近づいてくる人物の元へたどり着き、何か話しているようだ。

だが徐々に様子がおかしくなっている。


「あれ、何か揉めてませんか?」

「そうっすね」

「主殿、あの旅人何かおかしくないかの?」

「うん、ちょっと様子を見に行って、なぁ!?」


シュウが様子を見に行こうとしたまさにその時。

何とその旅人が突然門番に襲いかかったのだ。

いや、襲いかかる、というのは表現として正しくないだろう。

門番はその旅人の一撃で倒れてしまったのだから。

シュウの強化された視力は一連の流れ全てをしっかり見ることが出来た。

旅人は武器を持たず、手刀の一振りで門番を倒したのだ。

恐らくただの手刀ではなく魔力による強化が施されていたようだ。

と、そこまで考えたところで今はそれどころではないことに気づいた。


「リエル、門番さんを!」

「はぁい!」

「フィアとカエデはリエルの護衛、ティアナは援護をお願い!!」

「了解っす!シュウさんは?」

「俺はあいつを何とかする!行くぞッ!!」


シュウの号令で一斉に行動を開始する。

その中でやはりというべきか一番早いのはチートの身体能力を魔力でさらに強化したシュウだ。

全力で走ったシュウは他のメンバーが半ばまで来る前に旅人の前に立っていた。

その際倒れている門番に目をやると傷は深いが息はあるようで安心した。


「おい、お前!いきなり何をするんだ!!」

「あー?そいつがゴチャゴチャうるさいから黙らせたんだが?」

「何だと?」

「何をしに来た、って聞くもんだから正直に答えてやったっていうのによぉ。・・・この村の奴らを皆殺しにするってなぁ」

「ッ!?」


どうやら門番は危険な発言をする目の前の男を止めようとしたため襲われたらしい。


「何物騒なことを言っているんだ。そんなこと許されるわけ無いだろ」

「お前もうるさいなぁ。さっきの奴みたいに殺しちゃうよぉ?」

「クッ!?」


言うが早いか男が襲いかかってくる。

恐らく門番にやったのと同じで魔力を込めた手刀だ。

魔力を込められたことでただの武器よりも鋭さのある攻撃であるがシュウであれば同じく魔力を込めて防御することは可能である。


「おぉ、アンタやるねぇ。この俺様の攻撃を受けて平気とはねぇ」

「いきなり何するんだ!」

「くくく、何ってアンタを殺そうとしただけじゃん。なぁに怒ってるのぉ?」


言葉が通じる相手ではないらしい。

頭がおかしいとかそういったレベルではない、狂気のような物を感じる相手だ。

そうこうしているうちに仲間たちが門番の所にたどり着き、回復魔法を使い始めた。


「へぇ、あっちの女の子回復魔法が使えるんだぁ。・・・いい土産が出来そうだなぁ」

「く、こうなったら」


リエルがターゲットにされそうなのでシュウの方から攻撃する。

とは言っても武器を使わず強化された身体能力のみを使った近接打撃だ。


「喰らえ!」

「おぉ、アンタも魔力使えるんだねぇ。意識的に使っているのかはわからないけど大したもんだよ」

「うるさい!掴まえて王都の衛兵に突き出してやる」

「それは怖いねぇ。じゃあ俺様も本気だすよぉ」


男は先程までの純粋な魔力を用いた攻撃とは違い、火の魔法を放ってきた。

それも充分な威力があることは見た目から分かる。

とっさに躱すことに成功したが、自分の横を通り過ぎる魔法の威力は自分の使うものと比べても遜色ない熱量を持っていた。


「躱すとは驚きだねぇ。普通なら魔法を見たら固まっちゃうのにねぇ」

「まさかこのレベルの魔法を見ることになるとは・・・」

「やっぱり魔法には驚くねぇ。そうだよねぇ、これは俺様たちのように選ばれた者にしか使えないんだからねぇ」

「選ばれた?」

「そうだよぉ。でもそっちの回復魔法の女の子とかは俺様たちの仲間になる資格があるんで連れてくねぇ」

「させるわけ無いだろ!」

「抵抗しても無駄だよぉ。俺様強いからねぇ。・・・んん~?そっちにも魔法使いっぽいのがいるねぇ。でも格好だけかなぁ?格好だけの魔法使いってムカつくから殺しちゃうねぇ」


突然ターゲットがティアナに移る。

先程と同じ魔法を今度はティアナに向かって放つがシュウよりも距離がある分、ティアナは余裕を持って防御できた。

相手が火の魔法なので水の防御壁を張ったようだ。


「おぉー、当たったと思ったけど防がれちゃったねぇ。そっちの女の子もそれなりに魔法が使えるんだぁ。こりゃあ帰ったら褒められるねぇ」

「この程度で驚いていてはシュウの相手にはなりませんよ?」

「何を言っているんだいぃ?」

「油断大敵、というやつです」

「んん~?ブベッ!?」


男はティアナに意識を割いていたため、シュウの攻撃準備が整っていたことに気付かなかった。

シュウはティアナに魔法が飛んでいった瞬間、あの程度であればティアナだけでも問題なく対処できると判断し、攻撃準備を始めていたのだ。

今回使ったのはただ魔法を放つだけでは躱されるか防御されてしまうし、刀を使えばそのまま斬り裂いて殺してしまいそうだったので火の魔法を纏わせた拳で殴った。

防御する暇もなく顔面に拳が吸い込まれ、インパクトの瞬間小さく爆発を起こした。

シュウ命名『爆炎拳(ばくえんけん)』である。

今回は命を奪うほどの威力は必要ないので、熱と衝撃で意識を飛ばせる程度に抑えてある。

シュウの攻撃を認識した瞬間、男は魔力で防御を行ったようだが顔面に食らったのでは気絶は免れないだろう。・・・普通であれば。


「・・・ククク」

「ッ!まだ意識があるのか」

「クフフフフ・・・フフフフ・・・ヒャーハッハッハッ」


倒れこんだと思ったら突然大笑いを始めた男に警戒心が一層強まる。

幸いにして門番の治療はこの場でできる応急処置は終わり、フィアとリエルの2人で村に運び込んでいた。

この場にはシュウとティアナ、そしてカエデがおり、相手はただ一人。

数の上でも戦力の上でも充分優っているはずなのだが男の笑い声は不安感を煽ってくる。


「ヒーッヒッヒッヒ。いいぞぉ、お前らとてもいい!」

「チッ、さっきのを食らって倒れないだと」

「あぁ、思わず俺様も倒れちまったがこんな楽しい時間を終わらせるには早過ぎるだろぉ」

「楽しい、だと?」

「ククク、ホントはこの村に住む裏切り者どもを始末してお終いって退屈な仕事だったんだが状況が変わったぜぇ」

「裏切り者?」

「あぁ、そうさ。この村に住んでる連中は昔俺様たちを裏切った卑怯者さぁ」

「言いがかりはやめろ。この村の人達がそんなことするわけ無いだろ!」

「それが本当なんだからしょうがないだろぉ?この村の連中は俺様たちの先祖を裏切り、戦争にも参加しないでこうして今のうのうと暮らしてやがるんだ。許せるわけ無いだろぉ」

「戦争?」

「知らないとは言わせないぜぇ?俺様たちのような魔法が使える選ばれた者に従ってりゃあいいクズどもがふっかけてきた戦争さぁ」


その話なら何度か聞いたことがある。

それもその内一回はこの場にいるティアナから、である。

そのティアナがまさか、といった表情を浮かべながら口を開いた。


「まさかあの戦争の生き残りが?」

「そうさぁ。あの戦争を生き残った俺様たちの先祖は再起の時を待ってたのさぁ。そして準備が出来たからこれから復讐を始めるのさぁ」


シュウは話を聞きながら納得していた。

この男の話が事実であれば魔法が使えるのも理解できるしその厄介さも分かってしまう。

復讐という狂気に取り憑かれ長い年月を過ごしてきたのであれば代を重ねるごとに精神が蝕まれ何をしでかすか分からない存在になってしまっている、と。


「おぉっと、そういえば名乗ってなかったなぁ。俺様はヴァレス。『魔族』のヴァレスさぁ」


こうしてシュウは『魔族』と初めての邂逅を果たしたのであった。


狂ったような人物の発言を表現するのは難しいです。

上手くできているでしょうか・・・

あと、魔族についての説明はいずれ出てくる予定です。

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