第14話_魔道具作成です
「ところでこの『火の魔道具』ってどうやって動いてるんだ?」
「『火の魔道具』っすか?これは魔石を使ってるんすよ」
「魔石?」
洗濯に引き続き魔法の使い方を模索中に普段使われている魔道具の原理が気になって聞いてみるとシュウにとって以外な答えが出てきた。
魔石といえばドラゴンであるカエデを倒した時に残ると言われたものだ。
そんな貴重品を使っているものが一般家庭にも普及しているとは驚きである。
だがそんなシュウの考えを悟ったのかティアナが教えてくれる。
「魔石と言ってもドラゴンが落とすような貴重品ではないですよ?」
「え、そうなの?」
「というかそういった強いモンスターが残す魔石なんて大きくて家庭用の魔道具になんて使えませんよ」
「そんなに大きいんだ」
「それは勿論。それで『火の魔道具』に使われる魔石ですがスライムから取れる物です」
「へー、スライムがいるんだ。と言うかスライムって魔石を残すほど強いモンスターなの?」
「いいえ、そんなに強いモンスターではありませんよ。というか普通に人の手で育成されています」
「モンスターを育成?」
「はい。魔石はスライムの核なのですがそれを取ってもすぐには死にません。そして魔力の尽きた魔石を再びスライムの中に入れると核として再び魔力を蓄え始めるのです」
つまり充電池のような運用をするらしい。
魔力の尽きた魔石を店に持って行くと格安で新しい魔石が手に入り、それを魔道具にセットして使い、また魔力が尽きたら交換、というのを繰り返すようだ。
スライムから取れる魔石は大きさは小さいが『火の魔道具』くらいの消費魔力であれば質によるが普通に使って1ヶ月程度は持つらしい。
「なるほど」
「魔石を使うタイプの魔道具は比較的構造が簡単らしいので複製が簡単だそうです。逆にシュウの収納袋のような魔石もないのに効力を発揮するタイプの魔道具は効力の維持に必要な魔力の供給源が難しいので複製が難しいんですよ」
「へぇ。簡単に出来たんだけどな」
「・・・それが異常なんですよね」
「じゃあ魔石を使うタイプならより簡単に作れるのかな?」
「難しいでしょうね。魔石から魔力を吸い出して必要な効果を得るためには特殊な装置が必要だそうですよ?専門の技師なら簡単に作れるレベルでも素人では手が出しづらいですね」
「やっぱりかぁ。・・・うーん、何か新しく作れないかなぁ」
恐らく回路のようなものが必要なのだろう。
どうにも新しい魔道具のアイディアが出てこない。
「新しいものではなく既存のものを再現するところから初めて見てはどうですか?」
「既存の?」
「そうです。そこから新しいアイディアが生まれるかもしれませんし」
「・・・そうだね。まずは『火の魔道具』を見せてもらおうか」
いきなり新しい物を作ろうとしても難しいことを実感したシュウはひとまず『火の魔道具』の詳しく見てみることにして毎度のことながら村長に相談を持ちかけた。
「『火の魔道具』ですか?見るだけなら構いませんぞ」
「ありがとうございます」
早速許可をとって詳しく観察する。
使い方は知っているが魔石を使うことは知らなかったので気づかなかったのだが、魔石を入れるための穴があった。
蓋をされていたので開けてみるとビー玉大の魔石が紫色の光を放っていた。
「この紫のが?」
「そうです。それが魔石ですね」
「へー。火属性だから赤いのだと思ってたけど」
「魔石に属性はありませんよ。純粋な魔力が溜まっているだけですし」
「ふーん」
この世界では常識であるが異世界から来たシュウはそんなことも知らない。
もしこの会話を聞かれれば変な目で見られるため、こちらの世界の住人としては唯一秘密を知っているティアナと小さな声でやり取りをしている。
そこへ村長が割って入ってきた。
「この村では魔石を扱っている王都の店までは遠いので数ヶ月に一度来る行商人からまとめて魔石を購入しております」
「あ、そうなんですね」
仮に魔石が1ヶ月で切れるとして、確かにその度に2週間かけて王都まで往復するのでは効率が悪いどころの話ではないだろう。
「しかし前回行商人が来られた時に買う量が少なかったようでもうすぐ魔石が切れてしまいそうでして」
「あ、もしかして俺たちが長い間滞在してるから・・・」
「いえいえ。単純に前回行商人の方が来てから間隔が大分空いてしまっているのですよ。恐らく王都であった魔獣の襲撃が原因かと思うのですが」
「あー、なるほど」
確かにあんなことがあっては行動も慎重にならざるを得ないだろう。
しかし困った。
このままでは便利な道具が使えなくなってしまうのだ。
さすがにそれは見過ごせないので何か出来ないか、と周りを見渡す。
すると台所の隅に小さな袋が置いてあることに気づいた。
「あぁ、それは使用済みの魔石を入れているのですよ」
「ちょっと見させていただいても?」
「構いませんが・・・特に変わったものは入っていませんが?」
村長にとって当たり前のものでもシュウにとっては珍しいのだ。
袋を開くと『火の魔道具』にセットされていたものと違い、黒光りしている石が数個入っていた。
どうやら魔力を使い果たした魔石は黒くなる、といか元の色が黒らしい。
手にとって観察している最中、ふと思い立ち魔力を流してみた。すると。
「お」
「は?」
シュウの声と村長の声が重なる。
原因は単純で、一瞬前まで黒かった魔石が今はぼんやりと紫の光を放っているのだ。
「シュウ、一応聞いておきます。何をしたのですか?」
「ん?普通に魔力を流しただけだけど?」
「だけ、って・・・」
「んー、多分だけどティアナにも出来ると思うよ?」
「無理でしょう。これは本来スライムの生態を利用した方法でしか出来ないんですよ?シュウのような非常識が出来るはずがありません」
「非常識て・・・。まぁいいからやってみてよ」
「はぁ、やってみますが無理で・・・嘘」
ティアナが驚いた理由は単純である。
彼女の手には黒ではなく紫色の魔石が握られていた。
「やっぱり」
「え、嘘。だってこれはスライムの・・・」
「やってみて分かったんだけど、これって結構単純な仕組みなんだよね」
「単純ですか?」
「ティアナもやってみて分かった思うけど、ただ魔力を流しただけだったでしょ?」
「はい。確かに特殊なことはしていませんね」
「要するに何らかの方法で魔力を流せば魔石が吸収してくれるんだよ」
「で、でも今までこんなこと出来た人がいるなんて聞いたことありませんよ!?」
「そりゃそうだよ。皆が俺達みたいに魔力を扱えるわけじゃないし、ティアナみたいにこれはスライムしか出来ない、って考えてたんじゃ試してみる人もいないんじゃない?」
「そ、そんな簡単なことだったなんて・・・」
この後フィアにもやらせてみたが彼女も魔力の充填に成功する。
しかしシュウやティアナが充填したものよりも輝きが鈍く、満タンになっていないことが分かる。
この辺は魔力量と扱いの熟練度による差だろう。
ちなみに村長だが、あまりに簡単にこの世界の常識が打ち破られたものだから久々に固まっていた。
結果からも分かるが常識とされてしまった事象は再検証が行われづらいのである。
この世界の常識を知らないシュウだからこその発想であった。
◇◆◇
村長宅にあった空の魔石全てに魔力を充填した後、シュウたちはこの結果を元に新しい魔道具のアイディアを話し合っていた。
「魔力を集める魔道具って面白そうだなぁ」
「魔力を集める、ですか。集めて何をするのですか?」
「んー、特に決めてないけど、魔石に充填したり他のことに転用できないかな、って」
行き当たりばったりなシュウらしく手段のみ考えて目的があやふやである。
ちなみに全く考えていないわけではなく、魔力を集めて撃ちだす『魔力集積砲』とか格好いいよなぁ、とオタクらしい思考をしている。
しかしそれを言ったところで魔法のほうが確実に効率がよく、理解してもらえるはずもないので完全にロマンに走った考えであるため秘密にしておきたい。(機会があれば絶対に試す、と心に決める)
「他に何か思いついたことない?」
「そうですね・・・」
「あっ、こういうのどうっすか?」
こうしてアイディア会議はそれなりの盛り上がりを見せていたのだが、この場で何か決定するようなことはなかった。
それでもこの時のアイディアはシュウの中でどんどん熟成されていくのだがそれが形となって出てくるのはまだ先の話である。
ちなみにこの話し合いの間、村長はずっと固まったままで、夕食の時間になって帰ってきたカエデと起き出してきたリエルが不思議そうな表情で見るのであった。
『集積砲』とつくと何故かワクワクします。




