第07話_正しい?魔法の使い方です
「それでこれは何ですか?」
「収穫したラースです」
「私がそれで満足するとでも?」
昼近くになって一度全員海から上がり、各々の収穫量を見せあっていた。
女性陣はそれぞれニアから渡されていた袋ひとつ分といったところだ。
一方のシュウであるが収穫量は同じく袋ひとつ分である。
・・・袋の大きさが最初の数倍になっているが。
あまりの突っ込みどころの多さに久々にティアナのお説教モードである。
「まずこの袋ですが、どこから出したのですか?」
「最初からありました」
「正直に」
「・・・魔法で大きくしました」
「はぁ・・・」
「ちょ、ちょっと待って。魔法ってそんなことも出来るの?」
今いるメンバーの中で唯一シュウの魔法を間近で見たことのないニアだけがこの会話に戸惑っている。
「ニアさん、最初は大変だと思いますがシュウの魔法はこういうものだ、と諦めてください。結構な期間一緒にいる私だって戸惑っているのですから」
「はぁ・・・」
「で、シュウ?具体的にはどうやって?」
「いやぁ、最初は俺の収納袋と同じような感じにしようと思ったんだけど後で返すことを考えるとあまり派手に出来ないじゃん?だから単純に大きくしたんだ。後で戻しやすいし」
「・・・袋については分かりました。では次にラースの収穫量なのですが」
「頑張りました」
「いや、頑張っただけって言う割には取り過ぎだと思うんすけど」
「私達も頑張りましたけどぉ、シュウさんほどは取れませんでしたぁ」
「主殿、さすがに言い訳が苦しいと思うがの」
「・・・魔法を使いました」
シュウが正直に白状した。
しかし今度は魔法と言われても納得しがたい部分がある。
「どんな魔法を使えばあれだけ取れるのですか・・・」
「えーっと、じゃあやってみるね」
そう言って1人海に入るシュウ。
両手を海につけ、魔力を練り上げる。
まずは海水を操って範囲内のラースを引き抜く。
範囲だが、試行錯誤の結果半径5メートルほどになっている。
その範囲から一気に引きぬかれたラースが浮上してくるがそのまま手元に引き寄せても持つことは出来ないため次の魔法を使う。
海水の操作で渦を作り、その中心へラースを集める。
全てが一箇所で回転し始めたところで海水の操作から風の操作に切り替え、海から引き上げ旋風で袋までラースを運び、一気に回収した。
「こうやって」
「・・・魔法ってすごいんですね」
「ん?魔法が凄いってティアナ自身が一番良く知ってるんじゃない?」
「いや、こういう魔法は予想が・・・もういいです」
ティアナが諦めた顔をして会話を締めくくった。
他のメンバーは苦笑しながら現実を受けていれているが、ただ一人、シュウの非常識さを初めて見たニアがどうすればいいのか困った顔をしている。
「魔法ってこういうこともできるんだね・・・」
「ニアさん、これは例外です。気にしないように」
「例外って・・・。これほどの規模に作用する魔法なんて初めて見たのにその目的がラースの回収だなんて・・・」
ニアの心境も分からなくもないティアナたちは自分たちも最初はこうだったなぁ、と懐かしい物を見る目を向けているのだった。
◇◆◇
「なんと!魔法と使ったと?」
「いや、村長、なんというか・・・その」
「ニア、何故ワシを呼ばんのじゃ!」
「えっと、突然の事だったので・・・」
「むう・・・。シュウ殿!一体何に対して魔法を使ったのですかな!?モンスターでも出ましたか」
「ラースです」
「え?」
「ラースの収穫です」
「あ、はははは。シュウ殿も冗談が上手いですな。それで本当は何に使われたので?」
「だからラースの収穫ですって」
「えー、ニア?」
「・・・シュウさんは魔法を使ってラースを大量に収穫していました」
「・・・魔法って何でも出来るもんですな」
「そうですね」
村長が諦めた顔をして納得?しているのを見てシュウはいい笑顔である。
「それでこれからどうしますか?」
「んー、俺の用事はラースだからもう済んだんだよな。ティアナは何かしたいことある?」
「そうですね・・・。海を見ながらのんびりしたいですね」
「それいいっすね!たまにはそういうのもありっす!」
「じゃあアタイは収穫したラースを乾燥させておくからあんたらだけでのんびりして来るといいよ」
「あ、その作業がありましたね。ニアさん、私達も手伝いますよ」
「いいよ別に。大した作業じゃないしアタイ1人で十分さ」
「でもシュウがあれだけ大量に・・・というかあんなに取って大丈夫なんですか?」
「あのくらい大したことないさ。それに一ヶ月もあればまた実るからね」
「え?一ヶ月で復活するんですか?俺のところだと確か数ヶ月はかかるし、秋ごろしか収穫できなかった気がするんですけど」
「へぇ、アンタのところのラースは随分ゆっくり何だねぇ。こっちのは一ヶ月で実るし一年中取れるんだよ」
「そうなんですね。ということは収穫したラースが無くなったらまた来れば?」
「いくらでも取っていいと思うよ。といっても今そこで呆けている村長の許可はいるだろうけどね」
「それじゃあその時は飛んできますね」
「あははは。随分勢い良く来るつもりなんだね」
「そりゃホントに飛んできますからね」
「あははは」
ニアとシュウの会話が微妙にチグハグなのだがそれに気づいているのはシュウの仲間だけであろう。
シュウは本当に飛べるし、ラースのためなら使用を厭わないだろう。
しかしニアがそれを認識するのはもう少しあとになる。
今はニアの言葉に甘えて海で遊ぶことにする。
◇◆◇
「ラースが生えてた場所と違ってこっちは砂がいっぱいあるっすねぇ」
「これは砂浜って言うんだ。ここなら遊んでて怪我する心配がないね」
「そうですね。ゆっくり遊んでいきましょうか」
「何して遊びますぅ?」
「うむ・・・。主殿、何か遊びのアイディアはないかの?」
「うーん、何も遊び道具ないしなぁ」
遊び道具を持っていない、という意味ではなく、シュウの知っているような遊び道具がこっちの世界にはない、という意味である。
ボール遊びをしようにもボールがない、ボート遊びを使用にもボートがない、海に入ろうにも水着がない、そしてパラソルがないから日差しが熱い。
水着に関してはさっきの海女さんのような服装があるし、パラソルに関しては適当な木陰に入れば代用は可能。
しかし遊び道具がないことには変わりない。
さて、どうするかとシュウは悩んでいるとある情景が思い浮かぶ。
「・・・走る?」
「走る?それは遊びかの?」
「いや、遊びじゃないんだけど、俺の故郷だと砂浜を走って特訓っていうのがあったんだ」
「ただ走るだけの特訓っすか?」
「砂浜だと足が取られて負荷がかかるんだ。だから単純に走るより訓練になるんだ」
「そうなんすか!じゃあちょっと行ってくるっす」
言うが早いかフィアが飛び出しそのまま走って行ってしまった。
「あ、行っちゃった・・・」
「はぁ、遊びに来たというのに特訓してどうするんでしょうね」
「そうだね。まぁフィアが楽しそうならいいんじゃない?」
「それもそうですね。じゃあ後は各自自由行動にしますか」
「よし、じゃあ夕方まで自由行動!ただし危ないことはしないように!解散!!」
シュウの号令で女性陣は行動を開始した。
といっても海を眺めながら歩いたり、フィアの後を追ってみたりと各々思い思いの行動をする。
それを見ながらシュウは自分はどうするかと思い周囲を見渡す。
しかし目の前には白い砂浜に青い海が広がっているだけだ。
「うーん・・・何しようかな・・・。砂浜、海・・・。あれやってみようかな」
そう言うとシュウは海に向かって歩き出した。
そしてラース収穫時と同じで海に足を浸ける、かと思いきや水の表面で足を止めていた。
否、止めているわけではない。
その証拠にもう片方の足が上がり、その先へと出している。
そして再び水の表面で止まり全く濡れるということがない。
「おぉ、意外と出来るな」
シュウがやっていることは単純。
水に浮かんでいるだけである。
しかし飛行魔法を使っているわけではない。
ラース収穫の時に水を操る技術は習得している。
その応用で足元の海水を固めてその上に立っているだけである。
そして。
「よっと・・・。おお、いい眺め」
今度は海水を上空へ伸ばすイメージで水のタワーが出来る。
その上に立っているシュウは当たりを見渡し、魔法の成功に満足していた。
「あー、シュウさんが何か面白そうなことしてるっす!」
「シュウさんずるいですぅ。私達も一緒にお願いしますぅ」
「はぁ、シュウのやることはいちいち突飛で困ります」
「そうじゃのう。じゃがそれはそれで飽きんで済むわい」
女性陣がシュウの建てた水のタワーを見て集まってきた。
それを見たシュウはタワーを下げ、女性陣を乗せて再度浮上する。
「うわー、いい眺めっすね」
「高いですぅ」
「落ちないように気をつけてね」
フィアとリエルが興奮して身を乗り出しているのをシュウが注意している。
もちろんそう簡単に落ちないような高さに手すりを付けたので安全だが確実ではない。
その後一度全員で海女さんスタイルに着替えて水のタワーの上から滑り台のように遊び始める。
タワーの一部の水流を操作して自動で昇ってこれるようにしている。
女性陣は滑り台で海へとダイブ、そして昇ってきての繰り返しで実に楽しそうに遊んでいる。
一方のシュウはタワーに更なる追加機能を付けるため日本にあったプールなどでのアトラクションを思い出す努力をしている。
こうして夕方になるまでシュウたちは海で楽しく遊んでいるのであった。
久々に魔法の正しい使い方をしましたね←?




