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魔法の衰退した異世界で魔法剣士をやります  作者: サムガリン
第03章_やりたいことをします
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第06話_ラースを収穫します

アルスの村について村長宅に泊めてもらった翌日である。

男女が同室で一夜を明かした、というと変な勘ぐりを受けそうだが何もなかった。

何もなさすぎてつまらないという意見は受け付けないぞ、とシュウは決めている。

誰に対してなのかは不明だがシュウの意思は硬いのだ。


「おお、シュウ殿。よく眠れましたかな?」

「あ、村長さん。おはようございます。おかげさまでよく眠れました」

「ほっほっほ。それは良かった。もうすぐ朝食ができますので少々お待ちくだされ」

「すいません、色々してもらっちゃって」

「なぁに、構いませんよ。しかし、その代わりと言ってはなんですがまた後でお話を聞かせてくだされ」

「そのくらいであれば構いませんよ」

「ありがたいですな。どうにも村に篭っていると娯楽が少なくていけませんなぁ」

「んー、街とかにはいかないんですか?」

「いやはや、用事でもあれば行くのですが、どうにも都会には馴染めませんで」

「あー、何か分かります。そういうの」


シュウが日本で住んでいたところは決して田舎というわけではなかったが、それでも都会に出て行くのには勇気が必要だった。

一度出て行ってしまえば慣れるのだが、最初の一歩がとても重かったのを覚えている。

もう戻れない日本を懐かしく思うが、故郷の味をここでも楽しめるのだ。

そう、ラースという名の米を。


◇◆◇


「いただきまーす」


朝食が出来たため、ニアの家にお邪魔しているリエルとカエデも村長宅にやって来ている。

というか昨日の夕食からだがニアも村長宅で食事している。

全く知らない人物といるよりは、多少とはいえ付き合いの長い人物と一緒の方がシュウたちも楽だろうという村長の気遣いである。

そして朝食のメニューだが、干した魚を焼いたものにラース、そしてスープという献立である。

焼き魚とラースだけ見れば日本の朝食なのだが、スープが味噌汁ではなく野菜や魚を煮て、塩で味を整えたものなので違和感を感じる。

しかしそれはあくまで日本食を知っているシュウだから感じるもので、こちらの世界の住人は全く気にした様子がない。

なのでシュウも特に顔にも出さず黙々と食事を取っている。

いや、そう思っているのはシュウだけでラースと焼き魚のコンビネーションで口角が上がってしまうのを抑えられず、仲間の女性陣から優しい視線を受けているのであった。

そうして朝食を終えるといつものミーティングを開始する。

しかしいつもとは違い、この村でどこを見て回る?という話なので村長さんたちにも同席願っていた。


「さて、今日の予定だけど・・・」

「シュウ、言わなくても皆分かってますよ」

「え?」

「顔に書いてます。ラースの収穫を見たい、とね」

「あ、あははは・・・」

「ほっほっほ。それではニア、ご案内して差し上げなさい」

「はい」


そうしてミーティング?を終えてシュウたちは早速活動を開始するのであった。


◇◆◇


「ここがラースの群生地です」

「ここが・・・」


ニアの案内でラースが取れる場所に案内されたのだが、シュウは別に感極まっているわけではない。


「海、ですね」

「これが海っすか」

「大きいですねぇ」

「のじゃ!」


女性陣の反応の通り、目の前には海が広がっている。

いや、海しかないのだ。


「ホントに海で取れるんですね」

「まだ信じてなかったのかい」

「いやぁ、自分の知ってるのとどうしても違うので」

「アタイからしたら地上にラースが実る方が違和感あるんだけどね。ま、いいや。さて、皆。これから海に入るから着替えようか」


ニアがそう言ってひとつの小屋を指差す。

どうやら海に入る漁師はその小屋で着替えるらしい。

水着か!?と思わなくもなかったが恐らくシュウの考えるような水着はないだろうと思い直した。

着替え終わってみるとやはり、というべきか女性陣の格好は海女さんのようなものだった。

露出などほとんどない、実用性重視の見た目である。

別に残念ではない。残念ではないのだ。

そしてシュウも同じような服装に着換えた。


「よし、皆着替えたね。じゃあ海に入ろうか」

「あ、その前に。ラースってどのへんに生えてるんですか?」

「ん?あぁ、ラースね。・・・なんて言うのかな。・・・この辺?」

「随分アバウトなんですね」

「んー、まぁ入れば分かるよ」

「はぁ」


そう言ってニアはシュウを促す。

シュウはとりあえず海へ入るべく歩き出した。

ちなみに整備された砂浜のように歩きやすいものではなく、いかにも漁場という岩場なので注意しないと転んでしまいそうだがシュウは危なげなく進む。

そして海へ入って行くと丁度水が膝くらいまで来たところで足に何かが触るような感触があった。

まぁ、海なので海藻くらい生えているか、と思い更に歩を進める。

するとまた足に何かが触る。気にせず進むとまた、といった具合に常に何かが触るのだ。

いくらなんでも生えすぎじゃないか?といい加減に鬱陶しく思い始めた当たりで水が腰より上に来たので思い切って息を吸い込んでから潜ってみる。

この海は地球のように何かの排水が流れこんだりしている訳ではないので驚くべき透明度だ。

しかしその透明度よりもシュウは目の前の光景に驚きを隠せずにいた。


(な、なんだこれは!?)


海に潜ったままシュウは驚いてしまい、せっかく貯めこんだ空気を思い切り吐き出してしまった。


「ブハァッ」

「あははは。見たかい?」

「なんですかあれは一体?見える限り同じ海藻が生えてるんですが・・・」

「言っただろ?その辺に生えてるって」

「え!?ということはあれが?」

「そう、あれがラースさ」


言われた瞬間、シュウは再び海に潜っていた。

潜ってから海藻をひとつ抜いて浮上する。


「プハッ。・・・これがラース?」


浮上したところで手にした海藻を観察してみる。

形としては海ぶどうに似ているだろうか。

粒が沢山付いているが、そのひとつひとつがよく見ると精米済みの米の形をしていた。

粒を触ってみると炊いた米とは違った柔らかさを感じたためそのまま口にしてみる。


「・・・うわ、まっず」

「あははは。そのまま食ったらマズイに決まってるさ」

「だってもう食べれそうなくらい柔らかかったから」

「ラースは収穫したら一回乾燥させなきゃ美味しくならないんだよ」

「へぇ、そうなんですか」

「乾燥は1日もあればできるから取り敢えず今日は取れるだけ取って帰ろうか」

「はい!」


元気よくシュウが返事をする。

それを見てニアも含めた女性陣が思わず吹き出した。


「な、何?」

「だってシュウ。あなたがどれほどラースが食べたいのか分かっちゃうじゃないですか」

「・・・あ」

「あんなにすごい戦い出来るシュウさんがとても可愛くなる瞬間っすね」

「か、可愛い!?」

「シュウさん可愛いですぅ」

「くくく、主殿と一緒にいるとやはり飽きないのう」

「むう・・・」バシャン

「あ、シュウさんが逃げたっす!」


全員から目線を向けられいたたまれなくなったシュウは海へと逃げた。

今はラースの収穫に集中することにして。


◇◆◇


「よーし、いっぱい取るっすよぉ」

「なるべく根本から取ってね。結構したの方まで実がなってるからさ」

「分かりましたぁ。シュウさんのためにもできるだけ多く取りたいですねぇ」

「むぅ、足がつかんのじゃ」

「カエデさん、無理はしないでくださいね」


女性陣は女性陣で盛り上がっている。

カエデはその体躯の小ささが災いしてあまり深いところまで行けないようだ。

それでもカエデの足がつく範囲でかなりの量のラースが実っているため取れないことはないだろうが。

さて、シュウである。

最初こそ正直に潜って収穫、息継ぎをして潜って、の繰り返しだったがどうにも効率が悪いように思えていた。


「むぅ、一度に取れる量が頑張ってお茶碗一杯分か・・・。もっと一気に取れないかな」


そこで試しに魔法を使ってみる。

使うのは攻撃的なものではなく、水を操作するものだ。

幸い自分の足元については細部までは分からないが何かある、くらいまでは見える。

なのでそこへ向かって魔力で海水を固めながら伸ばすイメージをする。

そのままラースの根本を掴んで一気に引き上げる。

結果シュウの手元にはラースが乗っていた。


「やっぱり魔法って万能だな。よぉし、次は複数いってみよう」


今度は範囲を広げてラースの根本を掴む。

そして一気に持ち上げ、先程とは違い自分の手元へ集めるようにする。


「おっと・・・。これ以上集めようとすると手から零れそうだな」


さすがに自分の手だけでは持てるラースの量に限界が有るためこれ以上一気には無理そうだ。

しかし無理、となると燃えるのがシュウである。

さらに魔法を改造していく。

見る人が見れば魔法を使って何をしている、と言われそうだがシュウに自重する気持ちは一切ないのであった。

シュウのテンションが上がってきました。

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