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第21話_全力全開です

シュウ達が王都にやってきてから獣狩りに出掛けた際はほぼ100匹以上の討伐をしていた。

それも最初こそパーティ全員が疲れ果て、街に帰ってくるたびに宿屋に直行し即睡眠をとっていたが、最近はそのようなこともなく、余裕を持っての成果であった。

その中でもシュウは最初から余裕を残して狩りを終了させており、討伐数もパーティ全体の成果のうち4割程は何らかの理由がない限りシュウの個人で行ったものである。

シュウはリエルからもらったチートである身体強化に加え、魔力による身体強化及び武器強化を施しており、獣程度を相手にするのであればオーバースペックもいいところなのだ。

さらにこれまでは連戦でこそあったが、一度に相手にする数は多くても4、5匹といったところであり、シュウが負けるどころか怪我をするかどうかも怪しい状態である。

だが、今回は状況が全く違う。

王都へ向かっている獣たちはもれなく魔獣化しており、その身体能力等も一回り強くなっている。

さらに数も平原部分で1000匹ほど、つまり障害物がない状態で向かってきており、物陰に退避する戦術も使えないのだ。

もちろん、現状では1000匹全てがシュウを狙っているわけではなく、シュウを認識しているのは先頭にいるうち、さらにシュウと直線で結ばれるところにいる数十匹といったところだろう。


(それでも怖いものは怖い!)


シュウは内心でつぶやく。

こちらに向かってくる、そして自分が今まさに突っ込もうとしているのはこの世界にきてから一度も遭遇したことのない相手であり、見た目も真っ黒で赤いラインが入っているという威圧感たっぷりなのだ。

正直王都に向かっているのでなければスルーしたい相手なのだが、状況がそれを許してはくれない。

シュウも何か策があって単身突っ込んでいるのではない。

ただあのまま冒険者とぶつかるようなことになると確実に小さくない被害が出る。

ならば誰も巻き込むことのない状況で可能な限り殲滅してからぶつかったほうがいい、という単純なものである。

つまりシュウのやることは単純で、全力で大きな魔法をぶつけたら全力で退避して後は冒険者とともに各個撃破というものだ。


(さて、なるべく多くを巻き込むには群れの中心で魔法を使ったほうが良いんだろうけど、先頭グループをまるっきり無視するのもなぁ・・・)


どこで魔法を使うべきか突撃しながらもシュウが迷っていると、シュウの右後方から炎が飛んできた。

その炎はシュウの右前方にいる獣たちに直撃し、即座に命を奪うことは出来なかったが大ダメージを与えたようで足が止まり始めている。

誰がやったかは簡単に分かる。こんな魔法が使えるのは自分以外だとティアナぐらいだ。

一瞬目線をやるとティアナが杖を前に向けている。

そう思っていると今度は左前方の獣達が何の前触れもなく吹き飛んだ。

その原因を創りだしたのはカエデだ。

どうやら彼女は魔拳を連打しているらしい。

ティアナの炎とは違い、物理的なダメージを与えるそれは獣たちの肉を貫通し、その骨まで衝撃が伝わって当たりどころが悪ければ骨折しているようだ。

当たりどころが良くてもバランスを崩して転んでしまい、後続の獣に踏まれ大ダメージを負い、さらにその後続も転ぶといった感じで効果が連鎖している。

2人の活躍で先頭グループの動きが鈍り、そこに後続が詰まってきたので魔法を使うならまさしく今が最良のタイミングであろう。


「2人とも!ありがとう!!」


大声で礼を言い、シュウはそのまま地面を蹴る。

ただの跳躍ではなく飛行魔法だ。

そのまま群れの中心部分まで飛び、魔法を使う。


「行くぞ!重縛陣(じゅうばくじん)!!」


シュウが刀を持たない左手を自分の下に向け、魔法の名前を叫ぶ。

するとその下にいた獣達が伏せ始めた。

ただ伏せているだけではない。シュウの魔法により強制的に地面へと押しつぶされているのだ。

重縛陣、それはシュウが現在使っている飛行魔法が重力を操り上空、もしくは進行方向へ落ちる方向を変更するのではなく、単純にその効果を強めているのだ。

一定範囲にしか効果は無いのだが範囲内にいると重力が5倍程度になり、普通の生物であれば立っていることが困難になる。

本来シュウの真下の重力が強まればシュウも地面へと引き込まれることになるのだが、その中でもシュウは自分の周りの重力を操作して効果を打ち消しているので巻き込まれて落下するようなヘマはしない。

今回はその効果により群れの足止めをしようというのだ。

また、その効果範囲も半径50メートル程あり、群れの中心部にいる獣たちはほぼ動きを拘束されている。

中心が動けないので周囲の獣も動くに動けない状況を作り出せた。

続いてシュウは水の魔法を放つ。


嵐水(らんすい)


すると群れにだけ雨が降り始める。

だがその威力は普通ではない。

ゲリラ豪雨よりも強く水が打ち付けてくるのだ。

元々この魔法は広範囲に雨を降らせ、風を起こすことを目的としている。

最初開発した時は『雨を降らせ、嵐を呼び出せればあのPVをいつでも再現できるのでは?』というシュウの遊び心から生み出された。

しかし実践しようとしたところでティアナにバレてしまい、軽い気持ちで災害を起こすな、と厳重注意を食らって封印していた魔法なのだ。

それを今回は範囲を絞ってより雨の量を多くしている。

重力により動けない獣たち以外にも群れ全体に降り注いでいく。

だが10秒ほどで突然雨が止んだ。

シュウの魔力が尽きたわけではない。これで充分なので止ませたのだ。

そもそも遊びで作った魔法なので殺傷能力という点では即効性が全く無いのだ。

今回重要なのは嵐を起こすことより獣に水を浴びせることだった。

重縛陣の効果はそのままにシュウは自身の高度を更に上げる。

群れ全体がよく見える高さまで上がると魔力をさらに練り上げる。

ここで重縛陣の効果がやや弱まるが、ダメージが抜けないためか獣たちはすぐに行動できない。

そうしているうちにシュウが魔法を完成させる。


千雷(せんらい)


獣たちの頭上に雷と轟音が降り注ぐ。

シュウが練り上げた魔力はカエデと戦った時に使った雷槍(らいそう)より少し少なく、それを分散させて発動させているため一つ一つの威力は比べ物にならないほど弱くなっている。

それでも雷であることには変わりなく、直撃を食らった獣は一瞬で絶命した。

さらに、雨によって濡れた地面を通り、運良く直撃しなかった獣にも影響が及ぶ。

名前に千とは付いているが本当に千本も降らせることはない。

というか本当に千本も降らせてしまうとこの辺り一帯が焦土と化してしまうため出来ないのだ。(魔力的には恐らく可能)

数秒間に及ぶ落雷が止んだ後、地上はモヤで覆われていた。

濡れた地面から水蒸気が立ち上っているようだ。

少し離れた所に着地して目を凝らしてみる。

すると黒い物体が地面に倒れている姿が多数見える。

というか見える範囲すべてがそれだ。

中には煙が出ている個体もあり、雨で濡れていたはずの地面はすっかり乾いていた。

これである程度減らせたと確信したシュウは冒険者の所に戻る。

しかしここで問題が起きていた。


「皆!いったいどうしたんだ・・・」


シュウが戻ると冒険者達も地面に倒れていた。

この辺りは地面も濡れておらず、雷も範囲外で一切降っていないはずである。

それなのに冒険者が倒れているということは想定外の敵に襲われた可能性がある。

シュウは倒れている冒険者の中から仲間を見つけ出す。


「ティアナ!フィア!皆!一体誰にやられたんだ・・・」

「・・・シュウ?」

「ティアナ!良かった。無事だったのか!」

「・・・」

「ティアナ?どこか調子が悪いのか?」


目覚めたと思ったティアナが何もしゃべらない、というかシュウを睨んでいるような気がしてならないのだが、それを訝しんだシュウは声をかけ続ける。

シュウは気付かなかった。自分の後ろに迫った影を。


ゴンッ


頭に衝撃を感じシュウはたたらを踏んだ。

慌てて振り返るとそこにはギルマスが拳を振り下ろした体勢でいた。


「ギルマス、一体何を・・・?」


突然攻撃されたことで戸惑いを隠せない。

まさか誰かに操られているのでは?と日本のゲーム知識全開で予想を立ててみるが、答えは他ならぬギルマスから発せられた。


「貴様はアホか!?あんなものをぶちかますつもりなら最初から言って行け!!!」

「はい?」


ギルマスの言いたいことはこうだ。

まず、シュウが突っ込む直前、ティアナとフィアが動き出したと思ったら目の前から巨大な炎が飛んでいったため近くにいた冒険者が腰を抜かしてしまった。

それが獣に当たったと思ったら今度はシュウが飛び始め、獣たちの動きが鈍くなった為これがシュウの狙いだったのだろうと思い突撃をかけようとした。

そう号令を出す直前雨が降り始め獣たちだけに降り注いだ。

これで更に獣の動きが鈍くなると判断し、状況が有利になったため今度こそ号令をかけようと思った。

するとシュウが更に高度を上げたためまだ何かする気かと号令を思いとどまった。

と思ったら雷が降り注ぎ、直接的な影響こそ無かったが轟音により集まった冒険者一同完全に腰を抜かし倒れこんでしまった。

何かすると言っても一発だろうと思っていたら連続での魔法、さらに最後は謝って近寄っていればこちらまで確実に被害が及ぶレベルだったので突撃するタイミングのについて何か言って欲しかった、ということらしい。


「あー、何かすいませんでした。あっ、そうだ。早く残ってる獣を倒さないと!」

「・・・おらんよ」

「え?」

「見てみろ。お前さんがやったことで獣たちは全滅しておる」


ギルマスに言われて見渡すと、先程まであった水蒸気が消え去っており、後には倒れている獣のみで動いているものはひとつもなかった。

シュウ以外誰も戦っていないのに獣は全滅、そして冒険者はもれなく地面に伏せているか悪いものは気絶しているという状況。

こうなるとシュウが言えることはひとつだった。


「・・・任務完了!」

「アホかぁ!!」


そう言ってギルマスに再び殴られるシュウであった。



なんというかこう、大量の敵を一瞬で殲滅ってロマンがありますよね?

手抜きではありません(震え声

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