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第20話_黒い群れです

森での出来事をギルマスへ報告した翌朝、ハイエル王都は喧騒包まれていた。

シュウ達が恒例のミーティングを行うため宿屋の食堂に集まった時、ギルドの職員が宿へ飛び込んできた。

宿の受付をしていた店主が対応した。


「朝早く失礼します!こちらの宿に宿泊されている冒険者の方にギルドへ来るよう伝えてくれますか!?」

「それは構わないが・・・何かあったのか?外も騒がしいようだし」

「緊急事態です。まずは冒険者の方をギルドへ。そしてその他の皆さんは決して王都の外に出ないようにお願いします」


それだけ言うと職員は再び走って出て行ってしまった。

残されたのは固まっている店主と職員の様子からタダ事ではないと感じているシュウ達である。


「何かあったらしい」

「そうですね。ギルドへ行ってみましょう」


会話もそこそこにシュウたちはギルドへと急いだ。

ギルドへ到着するとシュウ達と同じく招集されたらしい冒険者達がザワザワと何があったのか話していた。

その中でシュウ達と関わり合いのあるエドリックが目ざとくシュウたちを見つけ、話しかけてきた。


「姐さん方!」

「一体何があったのですか?」

「それが僕も呼ばれたばかりで良く知らないんです。姐さん方ならなにか知ってると思ったんですが」

「残念ながらうちらも知らないっす」

「そうですか・・・。でも厄介事なのは間違いないみたいですね」


シュウも同意見である。

冒険者を集めた上、一般人は王都の外へ出ないように、という注意が出ていることを考えると王都の外で何か起こっているようだ。

問題はそれが何か、だ。


「うーむ・・・。タイミング的に昨日のやつと関係あるか?」

「昨日というとシュウが破壊したという獣を生み出していた物体ですか?でもそれは壊してしまったのでしょう?」

「うん。でもあれは恐らく人為的に置かれたものだ。それを壊しちゃったんだから・・・」


そこまで言うと集まっている冒険者がシーンと静まり返った。

ギルマスが登場したのだ。


「早くから集まってもらい感謝する。早速本題に入るが、集まってもらったのは王都の方へ獣の大群が押し寄せてきているためだ」


そこまで聞いて冒険者が再びざわつく。

確かに王都の近くの森で最近獣が増えているのは事実だ。

そのため近隣から腕利きを集めて討伐を行っており、その成果もあってか森から大群で出てくるようなことは無かったのだ。

それがいきなりの変化である。

全員戸惑いを隠せない。


「これは朝早く王都へやって来た商人からの情報だ。どうやら獣たちはまっすぐに王都へ向かっているらしい。幸いなことに大群であるため全体としての速度はそれほど速くない。

だがもし王都へたどり着いてしまえば被害が出ることは間違いない。

なのでこれより王都を出て可能な限り離れた場所で迎撃を行う」


確かに王都の側で戦うよりは動きやすさの面でも利便性は高いだろう。

だがそれは逆に不利な状況になってしまえば籠城策が取りにくいことも意味している。


「ギルマス!獣たちの数は分かりませんか?」


最悪の事も考えねばならないため、シュウはギルマスへと質問をぶつけた。


「うむ。正確には分からんが1000には少し届かない程度らしい」

「1000ですか・・・」


思ったより数が多い。

今まで狩ってきた獣はボアやコッコと言ったラグスの街からの移動中に遭遇したものに加え、狼のような『ウルフ』、熊のような『ベア』と呼ばれるものだった。

ベアで相対するに冒険者ランクはC程度あれば何とかなりそうな強さだった。

恐らく今回来ている大群も平均値で見れば今集まっている冒険者だけでも対応は可能だろう。

だが、問題はその数だ。

冒険者は多く見積もっても200程度、つまり獣たちの5分の1しかいないのだ。

1人で複数相手取った場合、どうなるかは想像に易い。

それは集まった冒険者全員が思ったのか表情が晴れない。


「確かに数はあちらが上じゃ。だが今回はワシも出る」


それは下を向いていた冒険者たちが顔を上げるには充分過ぎる言葉だった。

王都のギルマスといえば人族最強であると言っても過言ではないのだ。

そんな人物が一緒に出てくれるのであれば多少数が多くても何とかなりそうな気がする。

冒険者達はギルマスの発言に押されるように歓声をあげた。


「だいぶ士気も上がったようじゃな。それでは行くとしようか」


簡単過ぎる出陣の言葉だが、獣が王都に到着するまでそれほど時間も無いため、行動は迅速に行う必要があるのだ。

先頭にギルマスが立ち、冒険者がその後を付いてく。

途中不安そうな王都の住人を見かけたりもしたが、先頭にギルマスがいるのを見てホッとしたような表情を浮かべるものが多かった。


「こうしてみると、ギルマスって結構人気なんだな」

「そうっすね。ギルマスといえば最強の代名詞、みたいなところもありますし。

・・・それに勝っちゃったシュウさんが異常なんすよねぇ」


フィアの言葉にティアナが賛同している。

このコンビは時々シュウに対してチクリと言葉を刺してくるのだ。

しかし状況が状況な上、いい加減慣れてきたシュウはその言葉をスルーして歩き続けるのであった。


◇◆◇


「獣が見えたぞー!」


斥候役の冒険者の声が響く。

シュウたち集められた冒険者は王都を出て可能な限り戦闘が行い易く、王都から離れた場所で戦闘準備を進めていた。

シュウたちはギルマスのいる先頭近くに陣取り、その時を待っていた。

獣の襲来を伝える声で全員が武器を抜き、目標を見据えていた。

それはシュウも同様で、やって来た獣たちを見ているのだが・・・どうやら様子がおかしい。

今まで討伐してきた獣たちはそれぞれが体毛を持ち、それぞれの色を持っていたのだ。

それが今やって来た獣たちからは見て取れない。

というかすべてが黒かった。

真っ黒な体毛で覆われ、ところどころ赤い線が入ったような獣しかいないようだ。

まるっきり初めて見る獣かと思ったが、形そのものは大体これまで討伐してきた獣と共通点が見受けられた。

大きさがもれなく一回りは大きいのだが。


「ティアナ、あれなんだか分かる?」

「あれは・・・。いえ、そんなはずは・・・」

「なにか知っているの?」

「黒い体毛に赤い線、これは魔獣化した獣の特徴に似ています。ですがあれほどの群れなど聞いたこともありません」

「魔獣化?」

「獣はモンスターと違い普通に親から生まれるっす。その獣は一般的には魔力を持っていないんす。でもたまに獣が魔力溜まりに触れることでモンスターみたいに魔力を持つことがあるっす。それを魔獣化って言うんすよ」

「そうなんだ。でもそれってあんなに大群になることもあるの?」

「普通は無いっす。というか魔獣化した獣が配下の獣を従えることはあっても魔獣同士で群れを作るなんて難しいんすよ。魔獣化自体珍しいですし。

ちなみに魔獣化した獣はその強さが最低一段階は上がってるっす」

「それがあんなに沢山、それもこのタイミングでか・・・」


シュウはどうしても昨日の出来事とつながっているような気がしてならない。

だが考えていても魔獣は消えないのでとりあえずは目の前の群れを何とかすることにした。

獣の群れだとして計算していた戦力差が魔獣の群れだったことで大幅に狂ってしまっている。

冒険者の中には既に戦意を失いかけている者すらいる始末だ。

だが、そこで再びギルマスが火をつける。


「はっはっは。魔獣の群れとは珍しい!これは燃えるのぅ。なぁ皆?」


いつも通りのギルマスである。

だがそれを見た冒険者達は折れかかっていた心がギルマスの態度で修復されている。

ギルマスさえいれば自分たちが崩れることはない、というある種信仰にも似た気持ちさえ浮かべている者が少なくない。

そんな冒険者達の姿を見ながらシュウは1人思考を巡らせている。


(いくらギルマスがいるからってこの状況は厳しい・・・。

数で負けている上に強さも上がってるなんて何の冗談だよ。

これは出し惜しみしてる場合じゃ無さそうだなぁ)


仮に自分たちがここで負けてしまえば魔獣は王都へ襲いかかるだろう。

そうすれば魔法学校で勉強しているユリスたちや、孤児院の子供たちが無事でいられる保証はない。

シュウたちは最悪シュウの能力さえあれば脱出自体は可能なのだろうがそれは絶対にあり得ない選択肢だ。

そうなればヘタに能力を隠している場合ではなく、この状況を乗り切ることに全力を出す必要がある。

だが能力がバレると自分だけでなく仲間にまで迷惑がかかることになる。

シュウは仲間たちの方を振り向く。


「皆、今後ちょっと厄介事が増えそうなんだけど・・・」

「それ以上は言わなくても分かります。ですがそんなことを言っている場合ではないでしょう?」

「そうっすね。とりあえず今はガンガン行くっす!」

「そうですねぇ。頑張りますよぉ」

「全力で薙ぎ払おうぞ。なんなら我も元の姿に戻って・・・」

「それは別の問題が大きくなりすぎるんで勘弁して下さい」

「言うのが早いぞ主殿!?」


カエデが危ないことを口走りそうだったので言わせる前に止めておくが、シュウは仲間たちが快く今後起こるであろう厄介事を一緒に背負ってくれるというのは正直ありがたかった。

いい仲間を持てた、と思いながらも決心を固める。


「ギルマス!」

「お前さんか。今回は期待しておるぞ?」

「そのことなのですが、まず自分が群れに突っ込みます」

「何じゃと!?さすがにそれは許可できんぞ」

「大丈夫です。全力の魔法をぶち込みます」

「魔法じゃと?・・・それほど強力なものが使えるのか?」

「はい。ですが詳しい説明は後です。魔法に巻き込まれないように全体の突撃は少し待っていてください」

「しかし・・・。いや、ここはお主に任せたほうが良さそうじゃな。お主のタイミングに合わせて突撃しよう」

「ありがとうございます。それでは行きます!」


そう言ってシュウは1人飛び出した。

ギルマスとの話が聞こえていないものがほとんどなので、突然のシュウの行動に驚いている。

ギルマスは声を張り上げ、自分が指示を出すまで動かないように命令を出す。

さすがにギルマスに真っ向から刃向かえる者はおらず、全員突撃するシュウの背中を見送ることしか出来なかった。


◇◆◇


時は少し戻って冒険者の斥候が魔獣の群れを見つけた頃、その様子を少し離れた場所で見ている人影があった。


「くそ、本来であれば同士討ちや冒険者に狩られることを考えてもあの数倍は魔獣化させられたものを・・・。

だが用意していた魔力が余った分より強力な個体も生み出せたのは不幸中の幸いというやつか」


その人影は昨日シュウが壊した円柱の所にいた人物に他ならず、その時つぶやいていた計画を早めた結果が今の状況だ。

シュウが円柱を壊したことで獣をこれ以上送り込めなかったため今森にいた分を魔獣化させ王都へと向かわせているのだ。

予定よりは数が少ないがそれでも充分な被害は与えられそうな個体も生み出せたので良しとしている。

後はこれ以上予定が崩れないようにこの場で観察していれば良いはずであった。

まだ自分たちの存在が明るみに出るとマズイため直接手出しは出来ないが、もしまた問題が起きた際、実際に見ていることが出来れば今後の対処もしやすくなるためという判断である。

そして冒険者と魔獣の距離が充分に縮まり、いよいよ戦闘が開始されるかという時に冒険者側が予想外の行動を起こした。


「な!?1人で突っ込むだと!?」


もちろんシュウである。

予想外ではあったが1人の暴走だろうと予想出来たためすぐに多少冷静になることが出来た。

だがそれはシュウの次の行動で再び予想が覆されることになるのであった。



魔獣化した獣=魔獣です。

念のため。

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