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第19話_調査します

(あね)さん方、おはようございます!」

「おはようございます。そんなにかしこまらなくても大丈夫ですよ?」

「いえいえ、姐さん方には調子に乗った僕を諌めてもらった恩があります。これからはこういう風に接させてもらいます」

「くくく、良きに計らうのじゃ」

「はい!」


エドリックを軽く(?)伸してから彼はシュウ達一行と会うとこのような態度で接してきている。

ティアナたちはこの接し方に慣れないようだがエドリックがやりたいと言っているためあまり強気には注意できないようだ。

ただし、カエデはこの状況が面白いのかノリノリだが。

シュウ達一行への接し方だけでなくギルドからの依頼である獣狩りも真面目にこなしているようで特に不利益になるようなこともないためシュウはこのままでも良いと思っている。


さて、周辺の街や村からも腕利きが集まって獣狩りを行っているが一向に数が減ったようには見えない。

ギルドの方でも調査はしているようだが、森へ行くとどこもかしこも獣だらけで原因調査が進んでいないようだ。

なので本日、シュウ達一行は狩りを休み、シュウが単独で調査に赴くこととなった。

当然仲間たちは素直に聞き分けることは無かったが調査は空を飛んで行う予定の為、空を飛べない仲間たちがいるとそもそも調査が出来ないのだ。

それを説明した所、渋々とだが仲間たちは了承してくれた。

だが、宿屋で待っているということはなく、森の入口まで同行し、その場でシュウの帰りを待つということで落ち着いた。

そこまでであれば稀に獣が出てくることがあっても今の彼女らであれば何の問題もないと判断し、シュウは付いて来ることを了承したのだ。


「よし、じゃあちょっと行ってくるよ」

「気をつけてくださいっす」

「うん。皆もこの辺でも獣は出てくるんだから油断しないようにね」

「獣が出てきても私がバーンとやっちゃいますぅ」

「あー、うん。気をつけてね」


リエルがバーンとやると言うのなら本当に獣がバーンと宙を舞うのだろう。

それを喜々として行うリエルを想像してシュウは微妙な顔で頷くしか出来なかった。


仲間のもとを離れ空を飛ぶこと数分、シュウは当たりを見渡していた。

場所が森のため決して見通しは良くないが、それでも見える範囲では獣がひしめき合うようにしているのが確認できた。

正直この状態が正常だとしたらこの森の食物は既に消滅しているだろう。

現に食料が足りないのか他の獣を襲っている所も目撃した。

これは明らかにこの森のキャパシティを超えた獣が生息している。

自然の状態であればこのような状況になる前に他の場所に移るなりの動きがあるはずである。

それがないということは本当に異常事態が偶然起きているのか、それとも人為的にこの状況が作り出されているのでは、という考えが思い浮かぶ。

だが、異常事態にしては範囲が限定的だし、人為的に起こしたにしては方法もその理由も全く分からない。

さて、どうしたものかと考えながら更に飛んでいると森が少し開けた場所に獣が密集しているのが見えた。


「おー、あそこも沢山いるなぁ。今までで一番じゃないか?・・・ん?集まってるっていうかあそこから出てきていないか?」


獣たちの動きを見ると広場に集まっているというよりは広場の中心から外側へと移動しているように見える。

全体がそんな動きをしているので本来であれば広場は中心からどんどん開けていくはずだが一切そのようなことは起きない。

不思議に思ってシュウは目を凝らすと広場の中心に変なものが鎮座していることに気づいた。


「何だあれ?何か光っているような・・・!?」


シュウが見つめているとその物体から獣が出てきた。

さすがに驚いたシュウは更に観察をしてみる。

するとその物体からどんどん獣が出てくるではないか。

例えばそれが地下からの出口であり、地下に獣の楽園でもあるのであればそこからどんどん出てきたとしてもまだ納得できる。

だが、穴のような物が地面にあるでもなく、円柱のような物体から平地をそのまま歩いてきたかのような格好で出てくるのだ。


「うーん。あそこから獣が出てきているのは分かったけどどうしようかなぁ。

・・・調べてみるか」


シュウはそう言うとその物体の上へと移動する。

獣たちもシュウに気づいたのか注目してくるのは分かったが、シュウがいるのは獣たちの身長より高い物体の、更にその上なのだ。

見上げるだけで手を出せずにいる。

それでも今まで外側に向いていた動きが止まり、逆に物体の方へという流れに変わる。

シュウはこの円柱から出てきたのであれば入ることも可能なのでは?と思ったが、円柱には触るはあっても中に入ることはないようだ。

逆に出てきた獣とぶつかっている。


「なるほど。一方通行なのかな?

・・・これって自然のものじゃないよなぁ。この辺とか明らかに人の手が入ってるし」


そう言って注目するのは円柱の縁部分だ。

意味は分からないが何らかの呪文のようなものが刻まれている。

自然にできたにしてはあまりに規則的なそれは円柱の縁をぐるりと回って元の地点まで戻ってきている。

空中に浮かんだままその模様を観察するが、シュウは不用意にも更に高度を下げ、円柱に直接触れてしまった。

すると円柱は拒絶反応を起こしてシュウに対して軽く攻撃してきた。

攻撃というにはあまりに弱小なものだったが敵を倒すと言うよりは自己防衛用の機能のようだ。

シュウは攻撃されたことそのものよりもその手段が気になった。


「これって・・・魔法か?」


そう、シュウを攻撃したそれは物理的なものではなく魔法、正確には魔力を用いたカエデの魔拳のようなものだった。

威力こそ低いがシュウの感じたものは明らかにそれである。


「ふむ、獣がどんどん出てくる上に防衛手段として魔法を自動で撃つのか・・・。

明らかに獣が出てくる原因も魔法っぽいな」


そう結論付けるとシュウの動きは迅速だった。


「よし、これ以上獣が増えるとやばそうだし壊そう」


やばそうだから壊す、まさに単純である。

シュウは少し上空に向かうと腰に差していた黒刀を抜き、魔力を込める。

今回使うのは風刃だ。

炎柱は森のなかなので火事が怖いため使えない。

水龍は要するに水の体当たりなので材質が何かわからないものを壊すには威力が足りない可能性がある。

カエデと戦った時に生み出した雷槍は威力は高いが使う魔力がハンパではないため最初に使うには少々重すぎた。

なので使いやすく、これまで様々な物を切り裂いてきた風刃を使うのだ。

もちろんこれで駄目なら雷槍を使うことに抵抗はない。

魔力を込めつつ範囲を極限まで狙い絞っていく。


「・・・風刃ッ!」


刀を振りぬくと放たれた風の刃は一瞬円柱から生み出された魔法により威力を削られたが円柱そのものを切り裂くことには成功した。

すると真っ二つになると予想していたその円柱は突然粉々になって砕けてしまった。

それを見たシュウは多少警戒しながらもその破片を拾ってみる。


「・・・ただの石?」


そう、シュウが先程まで観察していた時はそれなりに滑らかだった円柱が砕けるに当たりその片鱗すら感じられないほど劣化し、ボロボロになっていた。

一応、とシュウはその破片のうち大きなものを幾つか回収し、収納袋へと収めた。

この一連の破壊活動の中で周囲にいた獣たちは本能的に危機を悟り、この場から逃げ去っていた。

シュウは誰もいない広場で砕けてしまった円柱の観察を続け、気が済んだのか空へと飛びだった。

念のため、と他の場所を見て回るが、更に幾つか同じような円柱が発見できた。

その全てを破壊し、獣が増えないことを確認したシュウは仲間たちが待っている森の入口へと戻っていくのであった。


◇◆◇


仲間と合流したシュウはその足でギルドへと向かった。

今日調べたことを報告するためだ。

だが、いつも通り受付嬢に話をする訳にはいかない。

確実にどうやって調べたか聞かれるためだ。

ギルドとして確証を得られない情報をそのまま信じることは出来ないことは分かっているので受付嬢の予想される対応については文句ないのだが、不特定多数に聞かれることは避けたかった。

なのでこの場合は王都に来てから得た人脈を使うことにする。


「すいません」

「あら、シュウさん。今日は早いんですね。納品ですか?」

「いえ、今日は違うんです。ギルマスはいますか?」

「いますけど・・・何の御用でしょうか?」


いきなりギルマスに会わせろと言われてそのまま通すようでは受付の意味がないのだろう、その対応だが、シュウは予想済みだ。


「極秘事項です。私からだとギルマスに取り付くだけもしてくれませんか?」


シュウは努めて真面目に語る。

それが伝わったのか受付嬢は頷く。


「・・・分かりました。少々お待ち下さい」


そう言って奥へと向かう。

そして数分もしないうちに戻ってきた。


「ギルマスがお会いになるそうです。奥へどうぞ」


そう言って案内してくれる。

王都に来た最初に来た時と同じギルマスの部屋へ通された。


「おう、お主らいったい何の用じゃ?また戦ってくれるのかの?」

「いえ、違います。ギルマスに報告があってきました。確定情報ではないので今はまだ内密にお願いします」


顔を合わせた瞬間戦いを連想するなどどれだけ戦うのが好きなんだ、と突っ込みたくなるが我慢する。

シュウたちの真面目な雰囲気にギルマスも真面目な表情になる。


「ふむ、聞かせてくれ」


シュウは今日見つけたものについて話した。

獣が湧き出てくる円柱を見つけたこと、その円柱から湧き出ることはあっても入ることが出来ない事、見つけた分は全て破壊したことを伝えた。

その途中どうしても調べ方に付いて語らねばならず、他言無用で、と念を押してから空をとべることを教えた。

さすがのギルマスも驚いていたが、話が進むに連れ眉間にしわが寄っていく。


「なるほどの。獣が湧き出る円柱か。そんなものがあったのではいくら狩っても数が減らんわけじゃわい」

「はい、見つけた分は全て破壊しましたがそれでもあの森には多くの獣が存在しています。今後も注意が必要でしょう」

「それでも原因の幾つかは潰れたと見ていいじゃろう。働きに感謝する」


王の前では無理やりギルマスの職務を押し付けられたようなことを言っていたが職務に対する責任感はあるようで頭を下げてくる。


「当然のことをしたまでです。礼を言われることではありません」

「いや、これ以上この状況が続くようでは何か深刻な事態が起こったかもしれん。その可能性を少しでも潰してもらえたのだから礼を言うのは当然じゃ」

「・・・分かりました。謹んでお受けします」

「更に追加するようで悪いが森が落ち着くまで狩りの方も続けて頼む」

「もちろんです」


そう言って退室しようとするが、シュウは円柱の破片を持ってきたことを思い出す。

ギルマスに渡すと調査を請け負ってくれた。

何か分かったら再度連絡をもらう約束をしてシュウ達は宿へと戻ったのだった。


◇◆◇


シュウが円柱を破壊したその夜、円柱があった広場には1人の人影があった。


「なんということだ・・・。まさかこれが破壊されるとは・・・」


その人影は崩れ去った円柱の残骸を見てつぶやいている。


「普通の攻撃じゃあ魔力障壁は突破出来んはずだ。それをこうも見事に、それも設置した分すべてを壊されるなどありえん・・・」


つぶやきつつも右往左往しながら考えをまとめようとしてる。

だがそもそも獣が多く森の奥までたどり着けるような者がそう多くいるとは思えず、たどり着いても円柱に施してあった魔力障壁に守られた円柱をどんどん増える獣がいる状況で壊されるなど想定外もいいところだ。


「くそっ、こんなはずでは・・・。これでは計画が狂ってしまう。いったいどうすれば」


壊された原因よりも、壊されたことによる今後への影響へ考えが及んだようだ。


「こうなっては仕方がない。計画を早めるしか・・・。このままでは当初の予定よりも被害が少なくなってしまうがないよりはマシだろう」


何やら怪しいことをつぶやきながらその場を後にする。

円柱の残骸に背を向け歩き出したと思った瞬間、今まで誰かがいたなどと嘘のように忽然と姿が掻き消える。

後には残骸と獣の鳴き声が木霊するのみであった。


そろそろ話が動き出しそうな感じがします。(動くとは言ってない

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