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第17話_強いです

「今日から新しい武器だから無理はしないようにね」

「「「はい」」」


ティアナ、カエデ、リエルの3人はそれぞれ新しい武器を手に笑顔で返事をしてきた。

3人から新しい武器の要望を聞いたシュウは武器屋で材料となる鉄塊を買い求めた。

ちなみに王都の武器屋はラグスの街と違い人族であり、人族の鍛冶屋もいるのか、とシュウが思っていたがどうやらドワーフから武器を仕入れて売っているだけらしい。

やっぱり異世界で武器を作るのはドワーフだな、とシュウは謎の納得をしたが特に意味はない。

武器作成は宿屋の部屋で行うことにした。

道具や材料は収納袋に入れて持ち運べるためある程度の広ささえあれば問題なかったためだ。

作業には集中力がいるため部屋には微調整を行うためその武器を使用する仲間のみ入ってもらい、その他の仲間は別室で待機してもらうことにした。

魔鋼は既に固まった部分については修正できないのだがそこに魔鋼の砂を付着させ拡張させることだけは出来るため小さめに作れば微調整は可能なのだ。


ティアナの武器に関しては装飾が多少凝っているが基本形はただの杖のため最初に行うことになった。

当初の予定では魔鋼のみでティアナの手で握りやすい太さにする予定だったのだが、魔鋼だけで作ると黒一色になってしまうため見栄えのためにも持ち手の部分に皮を巻くことにしたのでその分細く作った。

装飾部分に後で手に入ったら付け加える予定の魔石装着部分は少し余裕を持って空けておいた。

それでもほぼ100%金属でティアナの身長ほどの長さになったので本来は相当の重さがある筈だが魔鋼の特製によりティアナでも軽々持てる程度の重さになった。

ティアナは出来に大変満足したようでニコニコと新しい武器を眺めていた。

だが実際に渡すのは狩りに出る時にする予定だ。

宿に入るときに持っていなかった物、それもかなりの大きさのものなので見咎められる可能性を考えてのことだ。

完成品はシュウの収納袋に納められたのだがティアナは物寂しそうにその様子を見ていた。

後でちゃんと渡すから、と言って次の武器作成に移った。


次は多少ギミックが凝っているカエデの篭手とすね当てだ。

すね当ては動きやすさを得るため形状はシンプルであったのでそこまで苦労せず作成できた。

問題は篭手の方だった。

大きく分けて3つのパーツから成るのだがそれぞれが生み出す隙間を埋めるため内側にも魔鋼製の板を仕込もうと思ったのだが可動部分が苦労した。

片側に穴を開け、そこに棒を通し抜け防止の返しを付けることで作成しようと思ったのだが、穴の直径と棒の直径が調度良く合わず変にガタついたりそもそも穴に入らなかったりしたのだ。

何回かの挑戦で丁度いい形状の物を数組作り出し、それぞれのパーツに魔鋼の砂を接着剤代わりにして取り付けていった。

シュウが苦労して作ったので装着後関節を曲げてみてもその下の肌が見えるようなこともなくきちんと防具としての役割も果たせそうだった。

こちらはカエデの希望により魔鋼による黒一色の仕上がりだ。

ただしさすがに作成中と同じように素肌そのままに装着するのはどうかということになり、薄手で手の細やかな動きを阻害しない、それでいてある程度丈夫な革製の肘まである手袋を追加購入し、一緒に装備することになった。

手袋の色が赤なので黒い篭手によく映えるだろう。


最後はリエルだ。

本人以外が全員驚いたその形状は所謂(いわゆる)戦斧だった。

リエルの身長より長い全長で、先端には刃が左右対象に付いた斧刃と槍のように付きだした穂先が付いていた。

斧刃は左右合わせて80センチ近くあるだろう。

穂先も長さ自体は20センチほどだが一番太いところで10センチほどある太めのものだ。

女性が持つにはあまりに巨大で凶悪な印象を受ける武器だが、案を出したリエルはご機嫌だった。

案を出した時に全員で何故その形状なのか聞いてみたのだが、帰ってきた答えは実にシンプルだった。


「だってぇ、狩りをしてても皆さんが怪我をするような獲物でもないですし、今まで持っていた杖じゃぁ殴っても対してダメージにならなかったんですよぉ?

確かに私はプリーストという職業ですけど回復が必要ない時は前に出ようと思ってぇ」


要するに狩りの最中は自分の役職を活かせず、攻撃しようとしても大したことない攻撃ができずフラストレーションが溜まっていたのだろう。

魔鋼製の武器はどのような形状でも魔力をよく通し増幅できることは魔鋼製の刀を使っているシュウが一番知っている。

だから形状が戦斧でも問題はないのだ。

しかし問題はリエルの戦闘能力だった。

武器がいくら優れていても扱う人間に技量がなければ無用の長物となる。

それを説明したのだがリエルは決して首を縦に振らず最終的には無理に前に出過ぎない、という約束をしてシュウが折れたのであった。

リエルの戦斧も持ち手の部分には皮を巻き装飾兼滑り止めとした。

戦闘中スッポ抜けて仲間の方に飛んでこないことを祈りたい。


こうして仲間全員のメイン武器が魔鋼製となったのである。

ちなみに材料が余ったのでシュウはナイフを2振り作った。

自分用とフィア用だ。

フィアに渡した時不思議そうな顔をされたが、シュウ達のパーティ名が『黒の刃』に決定したのは仲間全員が魔鋼製の刃物を持っていたことに由来する。

しかし全員のメイン武器が魔鋼製となり、刃の付かない武器を使う者もいるためシュウは仲間の証をこの魔鋼製のナイフにしようと思ったのだ。

形状はシンプルなものでティアナたちに持たせたものと同じであった。

そのことを説明すると仲間たちから温かい目線を送られシュウが少し赤面したのはご愛嬌である。


◇◆◇


3人が新しい武器を手に獣を狩って、いや狩りまくっていた。

シュウとフィアは普段から魔鋼製の武器を使っていたため、慣れない3人のフォローをするために積極的には戦闘に参加していないのだが、そんな心配は杞憂だったようだ。

フィアは杖に魔力を通し、増幅された魔法を撃って獣たちを薙ぎ払っていた。

目に見えて威力の上がったそれはちょっと力加減を間違えると獣を木っ端微塵にしたので使いこなすには少し修練がいるだろう。

カエデは鉄鋼とすね当てに魔力を通し、そのまま獣を殴り飛ばしたり、増幅した魔力を離れたところにいる相手にも打ち込んでいた。

シュウは正直近接戦闘しか無理だろうと思っていたので、遠距離攻撃をいとも簡単に習得したカエデに驚いた。

後から技の名前を求められたので『魔拳』と名付けた。

問題のリエルだが・・・ハッキリ言って何の問題もなかった。

本来は重さで叩き切るタイプの武器なのだが魔鋼製であることでその特性は失われたのだが、代わりに魔力による強化で斧部分の切れ味が半端ない。

そして突き出せば槍の穂先が簡単に獣を貫通し、振り回せば柄の部分に当たった獣がなすすべもなく吹き飛ばされたのだ。

切れ味と貫通力は分かるのだが吹き飛ばすには相当の腕力が必要なはずであり、重さもない武器を使っているため最初は原因がわからなかった。

そこでシュウは思い出した。

リエルがラグスの街で冒険者の昇格試験を受けた際、試験官のエルグを一撃で気絶させていたことを。

てっきり当たりどころが良かったのかと思ったのだが、どうやら腕力自体も物凄かったらしい。

当たった事自体は偶然なのだろうが、あれから実戦を積んだおかげかリエルの動きはそれなりの冒険者に引けをとらないものとなっていた。

そこに腕力と武器の性能が加われば目の前の光景は当然の結果だろう。

忘れがちだがこれでも女神なのだ。決して寝るか食うだけの人物ではないのだ。


見ているだけでは物足りなくなったのかいつの間にかフィアも狩りに参加していた。

競うように獣を狩っていく女性陣を見ながらシュウは苦笑いだ。

いつもは自分も狩りに参加しているため気づかなかったのだが、獣をバッタバッタと蹴散らしてく女性を見ると怖いものがあることに気づいたのだ。それも新しい武器の性能が嬉しいのか笑顔なのも恐怖を増長させる。

彼女たちの本気の怒りが自分に向かないように気をつけよう、と場違いなことを考えてしまうシュウであった。


◇◆◇


狩りの結果はいつもより2割り増し程度になった。

1匹当たりにかける時間が武器の性能アップにより短縮した結果である。

ちなみにこの日からお金を貯める必要が無くなったためギルドへ納める数量はいつも通りに戻した。

減らした理由を尋ねられたが毎回あの量を狩るのは疲れるから、と適当に流しておいた。


宿に戻って夕食時にシュウは武器の感想を改めて聞いてみることにした。


「さて、皆。新しい武器はどうだった?」

「いつもより少ない魔力で威力の高い魔法が使えました。それに万が一近づかれても決して折れないという安心感があるので防御に使う時も気が楽ですね」

「それは良かった。でも万が一の場合折れるかもしれないから油断しないようにね」

「はい」

「我は基本的にいつも通りの攻撃法じゃったからのう。まぁ、魔力で強化した拳圧を飛ばす(すべ)を体得できたので満足じゃ」

「あれには驚いたね。今度は直接殴る時も魔力を撃ちこむイメージでやったらどうだろう?敵の内部で魔力が爆発するようなイメージでさ」

「ほう、主殿は面白いことを言うの。面白そうじゃ、今度試してみよう」


日本の漫画知識で得た発剄のイメージで言ってみたのだが思ったより好印象だったようだ。

カエデは早速イメージを膨らませている。


「私も満足ですぅ。思い通りにダメージが通って気持ちよかったですねぇ」

「リエルは・・・。うん、凄かったね」

「・・・それだけですかぁ?」

「いやぁ、思ったよりも凄かったんで感想がそれしか出ないんだよ」

「むぅ。もっと褒めてもらえるようにこれからも頑張りますねぇ」

「でも無理はしないでね?」

「はぁい。心配されるのもいいですねぇ」


リエルの発言をキッカケに女性陣がシュウに対して笑顔を向ける。

ヴィアーノ邸での一件以来たまにこのような空気になってしまうのでシュウは少しだけ気恥ずかしい思いをしていた。

確かに彼女らは大切な仲間なので本心からの言葉に間違いないが、こういう目線を向けられると恥ずかしいものは恥ずかしい。

思わず目を背けてしまう。

そんな反応をするから余計に女心をくすぐってしまうのだがそれには全く気づかないシュウであった。



女性陣の強化結果回です。

リエルの武器は直前まで悩みました。

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