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第16話_新しい武器は燃えますね

「武器を作ろうと思う」


シュウが突然そんな宣言をしたのは毎朝恒例のミーティング時だった。


「武器ですか?新しい刀でも作るつもりですか?」

「今回は俺の武器じゃなくてティアナ、カエデ、リエルのを作ろうと思ってる」

「私達ですか?」

「しかし主殿よ、我らはそれぞれ自分の武器を持っているが」

「そうですねぇ。この杖で充分だと思いますぅ」

「まぁ俺達のランクにしたら充分なんだろうけど今後のことを考えると俺やフィアの武器と同じにしたほうがいいと思ってね」


シュウもただ思いつきで言ったのではなく、きちんと考えた結果だ。

王都に来てから獣狩りを行っていて気づいたのだが、シュウとフィアがそれぞれ一撃で倒すか致命傷を負わせていたのに対してティアナたちは武器を用いた際の結果が今ひとつなのだ。

ティアナとリエルは杖、カエデは篭手やすね当てを付けての近接戦闘を主なスタイルとしている。

それでもレベルが上っており、シュウの的確な指示や支援の下行っている攻撃なので現状不満が出ないのも無理は無い。

だが、今後のことを考えると今のうちから魔鋼製の武器に慣れておいたほうが良いだろう、という判断であった。

ちなみに、だが魔鋼は現状シュウしか作り出せない伝説の中の鉱物であり、魔鋼で作った武器は軽い、強い、魔力をよく通すと言ったチートまではいかないがかなりの性能を持っている。

そんな性能の武器を持っているEランクパーティなど存在しないし、トップクラスでも一握りという状況であり、今後もなにも最初から持っている方がおかしいのだが。


「でも魔鋼を作り出すにも材料はいりますよね?」

「そうだね」

「ということはお金がかかるっすね」

「むぅ、主殿よ。我らは今の武器でも充分じゃ。無理をして新しい装備にする必要もないであろう?」

「ですねぇ。材料を買うために晩ごはんが少なくなるのは悲しいですぅ」


ティアナたちは懐事情を気にしているようだ。

リエルに至っては既に晩餐のおかずが減るところまで予想したらしい。


「いや、別に無理をしようって訳じゃないだ」

「?何か良い金策でもあるのでしょうか」

「別に新しく何か始めるつもりもないさ」

「あ!分かったす。シュウさんヘソクリしてるんすね。で、それが貯まったと」

「えぇ、シュウさんずるいですぅ。そんなお金があるならもっと美味しいものいっぱい食べましょうよぉ」

「リエルは食べること以外で何かないのかな?」

「何言ってるんですかぁ。食事と睡眠は大事なんですよぉ」

「分かった分かった。とりあえずリエルの分の食事が減ることはないんだから安心してよ」

「はぁい」


いつものリエルである。

すると答えの分かったカエデが笑い出す。


「くくく、そういうことか主殿。しかしそれは最初の予定とは違うのではないのか?」

「いいんだよ。だって当初の予定より遥かに多く集まっちゃったんだもん」

「確かにの。それにしても既に我らにとって日常になっているからさすがの我でも気付くのに時間がかかったわ」

「カエデちゃん分かったんすか?教えてほしいっす」

「何、いつもの我らの行動を思い返してみよ」

「いつもの、ですか?最近は色々とトラブルが舞い込んできますがそれ以外ということですね。・・・あぁ、なるほどそういうことですか」

「えぇ?ティアナさんも分かったんすか?むむむ・・・」


フィアはすごく真剣な顔で考えている。

ふと視線をやると尻尾がフワフワ動いているかと思えば突然ピンと張り、力なく垂れるということを繰り返していた。

以前触らせて欲しいと言ったことがあるのだが、固辞された。

別に触られるのが嫌というわけではなく恥ずかしいから、と理由を赤面しつつ語ってくれたのは正直眼福だった。

その後他の仲間達の視線が少し冷たかったのだが。

そんなことを思い出しているとフィアが机に突っ伏した。


「駄目っすー!うちには全く分からないっす。教えて欲しいす!!」

「簡単だよ。狩りで得た獣をいつもより多く納めるんだよ」

「・・・ああ!」


王都で狩りを開始してから数週間、シュウたちがその日狩った獣を全てギルドへ納めるようなことは無かった。

理由は簡単であまり多く納めてしまうと注目されてしまうのでそれを避けるため、だったのだが最近の目立ち方を考えるとあまり意味があるように思えず、いっそのこと自重を少し控えてみることにしたのだ。

いつもシュウたちは狩った獣のうち5匹程度をギルドに納めている。

それだけでシュウ達一行が贅沢こそ出来ないが普通に生活する分は報酬を得ることが出来る。

だがシュウたちはそれ以上、というか毎回100匹近い獣を狩っており、それらは孤児院へ渡していた分を差し引いてもかなりの分量が収納袋の中にあることになる。

ちなみに孤児院の方は資金を横領していた貴族がいなくなったため以前のような生活に戻ることが出来たらしい。

それでもたまには狩った獣を持って行こうとは思っているが。

つまりただでさえ狩る量が多いのに消費先が無くなってしまったので肉が大量に余ることになる。

その余剰分を値崩れしない程度にギルドへと多めに納め、報酬を貰ってそのお金で武器の材料となる鉄を買うというのが全容である。


「そういえば最近は慣れたのか狩りが楽になったんで狩った量までは意識してなかったっす」

「そうですね。・・・いえ、慣れたと言ってもあの量を毎回狩っているのはどうなのかと思いますが」

「まぁ、シュウが率いる我らなのじゃ。多少のことは気にするまい」

「それで済ませることが問題だと思うのですが・・・」


このミーティングの結果、シュウたちは数回に分けてギルドへいつもよりも多く獣を納め、そのお金で武器の材料を買うことにしたのであった。

ちなみに慣れによる弊害として、毎回大量に狩りが出来るということは狩っても獣の数が全く減っていないということなのだが現状誰も気づいていない。

シュウ達以外の冒険者は馬車等の積載量の関係で森の表面くらいで引き返しており、わざわざどの範囲で狩りを行ったかも報告していないのでギルドの職員も今年は獣の数が例年より多い程度の認識しか無かった。

それが表面化するまでもう少し時間がかかるのだった。

そして途中から全く会話に参加していないリエルだが、自分の食事に脅威が無くなったと判明したのでスヤスヤと居眠りをしていた。

これに誰も突っ込まないのもいつものこと、という慣れの結果であろう。


◇◆◇


ミーティングを終え、シュウたちは狩りに出掛けた。

狩った総数としてはいつも通りだが、今回はカムフラージュのため馬車を借りて出掛けたため王都へ帰った時にはいつもの3倍ほどの獣と一緒だ。

馬車を借りたと言っても他の冒険者のように馬車で森へ入るようなことはしない。

森へ入る前に目立たない場所に馬車を隠し、いつも通りシュウたちだけで森へと入った。

そして収納袋へいつも通り獲物を入れていき帰るときに馬車の中へ移したのだ。

収容量は他の冒険者と同じだが、森へ馬車を持ち込まなかった分行動が迅速となった。

そうして王都へ入るとそのままギルドへと向かった。

ギルドでは予定通り馬車に入っている分全てを納めたのだが、量が多いためか受付嬢が驚いていた。


「え?今日は随分沢山持ってきましたね」

「ええ。今日は馬車を借りて出掛けたのでその分多く持ち帰ることが出来ました」

「えっと、いつもシュウさんたちは1日いっぱい使って5匹程度だったと思ったのですが・・・。いくら馬車があるからといってこの量を狩ったということはだいぶ無茶をされたのでは?」

「えーと・・・。ああ、そうか!いえ別に無理はしていませんよ」

「そうですか。それでは計算しますので少々お待ち下さい」


受付嬢の疑問はもっともだ。

いつもは1日掛けて5匹狩ってくる程度だったパーティが同じ時間で3倍もの獲物を持ち帰ったらそれは不審に思うだろう。

狩った総量としてはいつも通りだったのだが。

そうこうしているうちに受付嬢が報酬渡してくれた。

金額的にはいつもの3倍だがここから馬車のレンタル料を支払ったりしたので純増ではない。

だがいつもより遥かに多いのは事実であり、シュウたちはこの差額を溜めて武器の材料を購入しようとしている。

普通の冒険者ならばいつもより多く収入があればいつもより豪華な食事などですぐに散財してしまうのだが日本人としてシュウは可能な時のためにも貯金することにしている。

ラグスの街で購入した剣を即日魔鋼の砂にして使えなくなった経験もあるためいつ武器が壊れても良いようにする気構えだ。

もっともシュウがこれから作ろうとしている魔鋼製の武器は余程のことがあってもめったに壊れることがない性能を持っているので考えすぎという面もあるのだが、今それに気づく者はいないため誰も指摘しない。


こうしてシュウたちはここから数日、狩りに出るたびに馬車を借り、連日大量の獣を持ち込んでかなりの額を生む出すことに成功した。


「よし、これで材料の鉄が買えるな。今回はフィア以外の皆に作るつもりだけど、新しい武器のアイディアはまとまってる?」


シュウは今回の武器作成にあたり、各人にどのような武器が良いか決めるように言っていた。

とは言っても魔法使いのティアナがいきなり槍を持つような変更があるはずもないので形状や装飾についてのアイディアについてだ。


「はい。私はこういう杖が欲しいです」


そう言ってティアナは自分の欲しい杖のイメージを書いた紙を渡して来た。

形状としては地面に着く先端部分から真っ直ぐに伸びて徐々に太くなり、ティアナの胸より少し下の部分で握るのに最適な太さとなり、そのままティアナの身長と同じくらいの高さで広げた翼のような意匠が付いて先端に何か取り付けられるようになっていた。


「この上の部分は?」

「最初は何も無しで。いずれ良い魔石を手に入れられたらここに嵌めたいです」

「なるほど、了解」

「では次は我のじゃ」


カエデが出してきたのは予想通り篭手とすね当てだが、その形状はすね当ての方は動きやすさを活かすため足の前面を覆う形状だったがコテの方が少し変わっていた。

この世界で流通している篭手は完全なグローブタイプか手首から上を保護するタイプだ。

だがカエデが希望した物は大きく分けて肘から手首、手の甲、人差し指から小指の第三関節部分までの3つに分かれており、指にかかる部分は分割されておらず指の形に沿って丸くはあるが一枚で作られているようだ。


「これでいいの?これだと指先が保護されてないし、指にかかる部分が繋がってるから指を開く時少し引っかかるかもだけど」

「うむ。指先が空いていればいざという時細かい作業が出来るじゃろうし我の戦い方だと指を大きく開くこともないから殴りやすい形状のほうが良いかと思っての。

あ、指の付け根の所の丸い出っ張りは忘れるでないぞ?本来は鋭くしたいところじゃが街中とかで装備して歩くには少々危ないのでの」

「むー、カエデちゃんが戦うのはやっぱり違和感があるっす・・・」

「くくく、フィアよ。まだそんなことを言っておるのか?出会った時より我の強さは見せておるはずだがの」

「カエデちゃんが強いのは分かるっすよー。でも子供が戦ってるのを見るとつい、っす」

「フィアの意見も分かるけど今後のためにも良い装備は必要でしょ?」

「シュウさん・・・。むー、でもなるべくカエデちゃんが前に出なくて済むようにうちが頑張るっす」


フィアはカエデの正体を知らないのでたまにこんなことを言うが、正体を知っているシュウとしては苦笑するしかない。

だが子供を戦わせたくないというフィアの優しさはとても好感が持てる素晴らしいものだと思う。

カエデの案を了承し、最後にリエルの方を向く。


「リエル。君は決まっているかい?」

「はぁい。これでお願いしますぅ」


そう言ってリエルは紙を差し出してくる。

それを見た一行は図らずも同じ反応をすることになった。


「「「「・・・は?」」」」


こうして色々とあったがメイン武器が魔鋼で無かったメンバーの武器が更新されたのであった。



本当はラグスを出る前に武器の更新をしておきたかったのですが、すっかり忘れていたことに気づいたのでここで挿入してみました。

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