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第14話_判決です

執事が出てきた瞬間ヴィアーノは勝利を確信した。

万が一のため執事をこの場に仕込んでおいたのだが、無駄にはならなかったようだ。

突然出てきた人物に対して周囲の人間はその素性について不思議に思っているようなので敢えて説明してやることにした。


「あぁ、彼は吾輩の執事である。だが彼は公明正大な性格をしておるのでこの場であの時の事実を説明するにはうってつけであろう」


もちろんそんなことはない。

だがこう言っておけば周囲の人間はまるっきり彼のことを無視できないだろう、という目論見だ。


「ふむ、それなら安心だの。余が許す。話すが良い」


王の許しも出た。

これで自分の思い通りにことが進むだろう。

後はこのまま生意気な小僧を処刑に追い込んで奴の仲間の女達は我輩のものだ、と心のなかでほくそ笑む。

だが、ヴィアーノの中では隠し通せているつもりの心の声だが、表情に出ており、シュウから見れば何を思っているか手に取るように分かるのであった。


◇◆◇


(さて、どうやって逃げようか)


執事が出てきた瞬間逃走を決意したシュウだが、王が発言を許したタイミングで実行するタイミングを図っていた。

とりあえず本来はジャンプしても手が届かないだろう位置に光を取りれるだろう為だろうと思われる窓が開いていた。

そこまで飛行魔法で飛んでいき、その窓から脱出するのだ。

そして宿屋まで全速力で向かい仲間たちを回収、全力で王都を脱出するのだ。

そこまで決まれば後は実行のタイミングだ。

おそらく全員が確実に執事に意識を向けるであろう彼が話し始めるタイミングで飛び出せば虚を付けるはずである。

後は精神を集中するのだ。逃げる絶好のタイミングを逃さないために。


シュウはタイミングを逃さず足に力を込め飛び立つ時の初速を少しでも稼ごうとしている。

ヴィアーノは早く自分に有利な発言をしてこの小僧を終わらせろ、と思っている。

全員の意識が集中したところで執事が話し始める。


「シュウ様の仰っていることが事実でございます」

「・・・は?」


誰の声だろうか、気の抜けた声が静寂が支配している場に響く。

この場にいる騎士たちはてっきりこの執事がヴィアーノに有利な意見をすると思っていたのだ。

それはシュウも同じで即飛び立てるように腰を落とした格好で固まっている。


「ふむ、もう一度言ってくれるかの」

「はい、シュウ様の仰っていることが事実であり、ご主人様の言っていることは全て嘘でございます」

「お、おい貴様!何故我輩に有利な発言をせんのだ!話が違うではないか!?」

「ご主人様は私のことをこの場で事実を説明するのにうってつけだと仰りました。ですので事実を申し上げた次第でございます」

「き、貴様ぁ・・・」


ヴィアーノが興奮してまた顔が真っ赤になっているが、この場で気にしている人物はいない。

ヴィアーノは無視してシュウは自分の聞きたいことを問いかける。


「執事さん?何故私の味方をしてくれるのでしょうか?」

「何度も言いますが私は事実を言うように言われましたのでそれに従ったまででございます。それに使用人は主人が間違いそうになった時それを正そうとするものだそうですからね」


それは屋敷を後にする時シュウが執事に言った言葉だった。

彼はその言葉をきちんと受け止め、この場で行動してみせたのだ。

あの時のやる気のない目をした彼は鳴りを潜め、今は自分の正しい道を進む決意をしている。

その姿はシュウとしても尊敬できるものであった。

さて、シュウが内心感動していると現状をよく思わない人物が声を上げる。


「う、嘘だ!この執事は嘘を付いているのだ!!それにやつが言っていることが事実だという証拠がないではないか!逆に我輩には奴に付けられた傷があるのだぞ?これこそ我輩の言うことが事実だという証拠であろう!!!」


口からヨダレを飛ばしながらヴィアーノが叫んでいた。

だがそんな彼の様子をこの場にいる全員が冷ややかな目で見ていた。

それに気づかないのかヴィアーノは更にヒートアップしている。

しかしそれも長続きしなかった。再び執事の言葉で状況が変わる。


「王よ。この場を借りてもう一つ皆様にお話しておきたいことがございます。許可をいただきたい」


その言葉を聞いてヴィアーノが矛先を執事に向ける。


「ならん!この男は嘘しか言わん!誰かこいつをつまみ出せ!!」

「いいや、聞こう」


王が発言を許可したことでヴィアーノは更に喚こうとしたが騎士たちにより押さえつけられ口を塞がれた。


「ありがとうございます。私が話したいのはこの王都にあります孤児院のことです」


執事の言葉でヴィアーノは顔を青くしておとなしくなる。

孤児院と聞いてシュウは自分が関わっているあの孤児院を思い出す。

そういえば孤児院は王都が経営しており、最近その資金が少なくなってシスターが苦労して子供たちの面倒を見ているのだ。

その孤児院についてどんな言葉が飛び出るかシュウも気になる。


「皆様もご存知とは思いますが、あの孤児院は王都直営でございます。

毎月運営資金として一定額が渡されておりますが、ここ最近は経営が苦しいようで子供たちが屋台で残り物を集めているそうです」

「ほう。だがあの孤児院はここ最近子供が急激に増えたり建物を修理したりと言った大きな金額が動くようなことはないと報告を受けておる。

なのにいつもと同じ金額で突然経営が苦しくなるなどありえるのかの」

「いつも通りの金額でしたら何の問題も無かったでしょう。ですがここ最近、孤児院へ渡される資金が少なくなっていたのでございます」

「なんと。それが本当であれば差額はどこに行ったのだ?」


王はいかにも驚いた、という声を出すがその表情はまるで既に聞いたことがあるようにも見える。


「その差額を着服していたのが我が主、ヴィアーノ様です」


全員の視線がヴィアーノへ向く。

その視線を受けてヴィアーノは青かった顔が今は蒼白となっている。


「ふむ、それが本当であれば此度の件を凌ぐ大問題だの?どうじゃヴィアーノ?何か言うことはあるかの」


ヴィアーノは最早しゃべることはおろか呼吸も怪しいような状態だ。

これは今聞くだけ無駄だと判断したのだろう、王は執事の方を向く。


「お主が言っていることが本当だという証拠はあるかの?」

「はい、コチラでございます」


そう言って持っていた書類を差し出す。

それを文官らしき人物が受け取り目を通していく。

そして王に近づき何か耳打ちをした。


「なるほどの。貴族の立場を利用してヴィアーノを通して資金が動くようにしていた、と。

そして中抜した資金を孤児院に渡していたわけか。これは最早言い逃れできんな。

ヴィアーノを連れて行け。もはや其奴は貴族でも何でもない。ただの罪人じゃ」


数人の騎士が意識を保っているかすら怪しいヴィアーノを連れて、いや引っ張っていく。

そうして謁見の間から姿が完全に消えるとそれを見送っていた執事が再び王の方を向く。


「では私も主の愚行を止められませんでしたので同罪でございます。裁きをお与えください」


そう言って頭を垂れる。

その顔は処分を言い渡される恐怖に満ちたものではなくどこか満足気なものであった。


「分かった。其奴も連れて行け。だが、事実を正直に話してくれたのでその分減刑するのでそのつもりでな」

「・・・感謝いたします」


再度頭を垂れた執事は騎士に連れ添われ謁見の間を出て行くのであった。


◇◆◇


2人が出て行った後、謁見の間に残された人々に対して王が声をかける。


「皆の者ご苦労であった。下がって良いぞ。あぁ、ギルドマスターとシュウは残れ」


なんだか分からないが自分に対する処分がないようだ、と安心していたシュウは残るように言われて再び不安に思う。

次々と退室していく中で残されてしまうと秘密裏に処分されるのだろうか、と考えてしまう。


(何だ?やっぱり逃げたほうがいいのか?)


不安そうに眉をひそめたシュウを見て、その不安を解きほぐすように王が笑う。


「ほっほっほ。心配せずとも良い。お主と少し話がしたいだけじゃ」

「そうだぞ、シュウ。こいつは自分の権力を利用してお前と話したいためだけにこんな茶番をしたんだ」

「おい、仮にも王に向かってこいつ、とはなんじゃ?」

「ふん、ワシとお前の仲だ。これくらい構うまい」

「まぁ、の」


そう言って2人で会話をしているがシュウはどうしても気になることがある。


「あの、茶番とはいったい?」

「あの貴族のことじゃよ。あやつは日頃から黒い噂が絶えなかったが上っ面を繕うのは得意での、中々尻尾を出さなかったのじゃ。

余としても頭痛の種だったのじゃが今回の件で表から調査に踏み込むことが出来たのじゃが、そこであの執事が証拠を提出してくれたのじゃ。

今回お主が騒ぎを起こしてくれたからあの男を失脚させることが出来たので一応感謝の言葉でも、と思っての」

「それでしたらあの執事さんがやってくれたのであって私は関係ないのでは?」

「あの執事が言うにはお主の言葉で目が覚め、告発しようと思ったらしいぞ?

それにお主が暴れたおかげで簡単に証拠の書類が手に入ったとも言っておったしの」


シュウがヴィアーノを全力で威圧した際、その魔力が吹き出す影響で部屋中の書類が飛び散り数枚程度無くなっても気づかれなかったということらしい。

だがそう言われてもシュウは何の実感もない。

あの時は仲間に対する侮辱を受けたので頭に血が昇ったことによる衝動的な行動だったし、この裁判中には逃げる算段までつけていたのだ。

とても褒められたことではない。

どうやってそれを伝え、大事になる前に退散するか再びシュウの後ろ向きな計算が開始されるがギルマスによって中断させられた。


「ふん、さっさと本当の要件を言ったらどうだ?」

「はて、何のことかの?」

「要件がないならさっさと帰せばいいだろう?全くお前は昔からそういう所がある」

「そう言うな。余の楽しみなのだ」


ギルマスは本当の要件というものの検討が付いているのだろうが、シュウはもちろん分かるはずもない。

面倒なことになりそうだ、と考えずにはいられないシュウなのであった。



何とかなりましたが王様との話は続きます。

王様とギルマスの口調が安定しないのは仕様です。(主に投稿者の気分による)

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