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第13話_お互いの主張です

「さて、これより此度の件についてお互いの話を聞かせてもらおうかの」


王の宣言により裁判が開始されようとしていた。

シュウは手錠こそされたままだが、特にどこかに繋がれたりはしていないので何か行動を起こそうと思えば出来そうであった。やらないが。

そうしているうちに謁見の間にさらにシュウの知り合いが入ってきた。


「少し遅れたかの」

「む、少しではないぞ。もうお主抜きで始めようと思っていたところだ」

「そうかそうか、間に合ってよかったぞい」


王の前だというのに全くかしこまる様子もなく、むしろ自身愛用の大剣を背にしたまま入ってきたのは他ならぬギルマスであった。

ギルマスはチラリとシュウを一瞥し、ニヤリと笑った。

どうやらこの状況でも彼は楽しむつもりらしい。

ギルマスはそのまま王の隣へと進んでいった。

2人を見る限りお互いの役職とは関係ないところで繋がりがあるらしい。

そうして準備が完全に整ったため裁判が開始された。


ヴィアーノはシュウの横に移動し、2人並んで王と対面しているような形だ。

アチラコチラに包帯を巻いていかにも重症を装っているが普通に自分で歩いて移動してきたので怪我人を装う気があるのか謎である。

さて、まずはそのヴィアーノの主張から始まるようだ。


「それでは吾輩から説明をさせていただく。

この小僧は我が屋敷に押し入ると我輩の部下たちをなぎ倒し吾輩の部屋までやって来た。

そして吾輩に対してこともあろうか金を要求してきたのだ。

吾輩はもちろん断り護衛たちとの戦闘になった。吾輩も勇敢に戦いはしたが腐っても冒険者であり倒すことは叶わず撃退するに終わってしまったのである。

だが、それだけではない。この小僧は逃走するさいに我が家の家宝を壊していきおったのだ!

これは最早金額に出来ないほどの貴重品であり、この小僧が有罪となり処刑されたとしても二度と戻ってくることはないであろう。

そこで吾輩としてはその埋め合わせとしてこの小僧の仲間の女達を奴隷として所有物としたい。

本来はそれだけでは釣り合わぬが吾輩は寛大なのでそれで許してやろうと思う。

小僧、我輩に感謝するように」


一気にまくし立てられたためシュウは一瞬何を言われたか理解が遅れたが要するに自分の言ったことやったことを正当化し、ありもしない家宝が盗まれたから王の権限によりティアナたちを合法的に手に入れたい、ということだろう。

よくそこまで嘘をスラスラと並べられるものだ、と逆に感心してしまったほどである。

そこまで聞いたところで王が口を開く。


「ふむ、お主の怪我はその時のものか。随分勇敢に戦ったらしいな」

「はっ」

「ぐははは、それにしては随分元気そうだがの」


ギルマスに痛いところをつかれたのか一瞬焦った表情を浮かべたがそこから体を動かしづらそうな演技を始めた。まったくもって白々しい。

その様子をギルマスだけでなく何故か王も一緒になって楽しそうに見ている。

もっともギルマスと違い楽しそうに見えるのは目だけで表情は変わっていないが。

そして次はシュウの番である。


「私の主張としましてはあの日ギルドに言ったらこの『貴族様』から呼び出しがあったと伝言を受け取り、お屋敷の方に仲間たちと伺いました」

「そうだ、そこで我輩を襲ったのだ」

「ヴィアーノよ、今はお主に発言を許しておらんが?」


ヴィアーノが割り込んできたことので王がそれを注意した。


「いいえ、王よ。最早聞くまでもないでしょう。この者は自分で我が屋敷に来たと証言したのです。これで有罪は確定。早く処刑してしまうのがよいでしょう」


なんという無茶苦茶な理論だろうか。

これにはさすがの王も呆れている。

ギルマスは相変わらず楽しそうだが。

今度はそのギルマスが口を開く。


「くっくっく・・・貴様は先程この小僧がお前さんの屋敷に突然押し入り襲ったように話していたが、この小僧はギルドで伝言を受け取り呼び出しに応じた、と言っておるぞ?

そしてワシはギルドマスターなのでその証言については正しいことを証明出来るのだが?」


ヴィアーノは更に表情を歪ませた。

というか何故ギルドを通して呼び出したことをギルマスの前で隠せると思ったのか疑問である。

反論が終わったことを見て王が続きを促してきた。


「では続きを聞かせてもらおう」

「はい、屋敷に通された後客間のようなところで待つように言われました。少し思ってこの『貴族様』のお部屋に通され、そこで初めて顔を会わせました」

「ふむ、そこでこのヴィアーノが言うとおり突然襲ったのかの?」

「そうだ「いいえ、違います」」


ヴィアーノがまた割り込んでこようとしたので重ねて発言する。


「そこで自分の傘下に入るように勧誘を受けました。

ですが私たちは冒険者です。誰かに縛られる生活が嫌なので丁重にお断りさせていただきました。

すると部下と思われる人相の悪い方々が現れまして私達を包囲してきたのです」

「ふむ、なるほどの。そこでその者たちを即座に打ち倒したのかの?」

「いいえ。私たちは冒険者でありますが粗暴なことは好みません。ですので穏便に済ますため再度丁寧に退出の意思を伝えたのですが、それが癇に障ったようで。

ですが寛大な『貴族様』の判断により私の退出が許されたのです」

「それで帰ったのならヴィアーノの怪我が説明できんの」

「ええ、そうですね。そのまま退室できたのであればよかったのですがそこで仲間の女性たちを置いていくように言われまして」

「確かにこいつの仲間たちは美人が揃っていたな」

「お前はまだ黙っとれ」


黙っていたギルマスが突然会話に入り込んできた。

どうやら退屈になったらしい。子供か。


「大事な仲間たちなので、何故そのようなことを言われるのか確認した所、貴族である自分と一緒にいたほうが彼女らも幸せだろう、ということを言われました。

というか仲間の女性たちが目的で呼びだされたようですね。

人の幸せは人それぞれですのでそのような押しつけを受け入れることは出来ません。

なのでお断りして全員揃って退出したいと伝えました。

すると冒険者風情が意見するな、仰っていましたね」


そこでギルマスの目が釣り上がりヴィアーノを睨みつけた。

冒険者の代表である彼としてはその発言は許せない部類に入るのだろう。

ヴィアーノが小さく悲鳴を上げるが構わず続ける。


「仲間の女性陣からも断る旨をお伝えしたのですがそれは聞き届けていただけませんでした。

そしておとなしく自分に飼われろ、と仰られまして」


今思い返してもムカムカしてくるがひとまず抑えておく。


「さすがにその発言だけは許せずに思わず威圧してしまいました。

すると手元にあったナイフを投げてこられたので掴まえてそのまま投げ返しました。

その時少し掠ったのか怪我をされたようですね」

「王よ!聞かれましたか!今この小僧は自分の罪を白状しましたぞ!さぁ、処分を言い渡していただきたい」


興奮して前に出ようとしたが近くにいた騎士により抑えられている。

どうにも自分よりこの貴族の方を警戒していないか?と思わないでもなかったが目で続きを促されているので従うことにする。


「その後『貴族様』は失禁され気絶されてしまいましたね。いやぁ、随分勇敢でしたよ」


そこで王に睨みつけられたので余計なことはこれ以上言わないことにした。

だが話としては大体これでお終いだ。


「これが私から見た当日の流れです」

「ご苦労。さて、お互いの意見がだいぶ違うようだがどちらが正しいのかのう」

「それはもちろん吾輩である。まさか平民風情と吾輩のような貴族を比べて平民が正しいなどとは仰りますまい?」

「そうは言うがの。平等に裁かねば王族として余の誇りが傷つくからの」

「ですがこのままでは証拠がありますまい。であれば貴族である我輩を優遇するのは当たり前というものではありませぬか?」


平民風情、と冒険者を侮るような発言をしないのはギルマスの目があるためか。

これでお互いの主張が終わったがヴィアーノは貴族としての権限をフルに使いこちらを有罪にしようとしている。

冤罪を受け入れるつもりはないがこのままでは地味に旗色が悪いのは事実だ。

ヴィアーノの態度を見る限りこれしきのことは何度も乗り越えてきたような雰囲気を感じる。

この世界では新参者のシュウは貴族というものの影響力をいまいち理解していないがここまで堂々とされるとほんの少しだけ不安が出てくる。

無論有罪にされたとしてもそのまま仲間を連れて王都を力ずくで脱出するつもりなので処刑されることはないだろうが出来れば選びたくない手段だ。

この場では唯一シュウと良い縁のあるギルマスも何故か楽しそうは雰囲気は崩していない。

彼が貴族の権力により冤罪を着せられそうな人を楽しく見ているような性格だとは思わないが、現状助け舟を出さないでいることは事実なのでシュウは起死回生の一打を探していた。

仲間たちを連れて来てもらって自分と同じことを入ったとしても仲間だから、ということで信憑性が高まることもないだろう。

というか王都に来て知り合った人たちは皆平民なのでこの場で意見を通せるような人物はいない。

要するに絶望的な状況、というやつらしい。

シュウは現状の打破を半ば諦め王都からの脱出計画を立て始めようとしていた。

すると王が名案を思いついたとばかりに口を開く。


「おお、そうじゃ。第三者の意見も聞いてみればどちらが正しいのか分かるの。誰か事の顛末を知る者はおらんか?」


そのようなことを言われても先ほど考えた通りこの場で貴族を抑えて意見を通せるような人物など知り合いにはいない。

シュウがそんなことを考えていると騎士の後ろから初老の男性が現れた。

シュウは彼を知っている。

・・・ヴィアーノの屋敷にいた執事であった。

ヴィアーノは彼に最初から伝えていたのだろう。こうなった時は即座に前に出て自分を擁護するように、と。

事実ヴィアーノは彼が出てきたことを何の疑問に思っていないどころか自分の価値を確信したような表情だった。


(ホントにマズイな。・・・隙を突いて逃げ出そう)


全力で逃走することを決めたシュウであった。



大まかな流れは決めているのですが、細かいネタがそろそろ尽きてきました。

アイディアの神様、投稿者の頭に降臨してください!

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