第07話_食料を確保します
「「「いただきまーす」」」
食堂に子供たちの声が響く。
シュウたちが孤児院に寄付した食材を使って子供たちの昼食が作られた。
その食事をシュウたちもお礼にと、一緒に食べることになった。
子供たちの中には先程リエルが病気を直した子も含まれており、隣の子と話しながら美味しそうに食事を取っている。
シュウも料理を楽しんでいるとシスターが話しかけてきた。
「シュウさん、本当にありがとうございます。子供たちがこんなに楽しそうに食事をするところなんて久しぶりです」
「お役に立てて良かったです。ところで最近運営資金が少なくなっているという話なのですが」
「お恥ずかしながらその通りなのです。ここ最近いただけるお金が少なってきていまして。ですが頂けるものに文句も言えませんので・・・」
「なるほど・・・」
シュウはチラリと仲間たちを見る。
その視線を受けてティアナたちは何も言わなくても分かっている、という風に頷く。
「あの、もしよかったらこれからも食材を届けてもいいですか?生憎と私達もそれほど余裕があるわけでも無いですし・・・」
「大変ありがたいのですが・・・本当によろしいのですか?」
「ええ。我々も王都の外での依頼を受けるつもりなので、途中で獣を見たら狩ってくるつもりなので」
「それでしたらありがたく頂こうと思います」
「まぁ、獣が出てこなければ狩ることも出来無いので、確実に、とは言えませんが」
「そのお心遣いだけでありがたいです」
シュウの言った通り王都の外で獣を見かけたら狩ってくるだけなので特に苦労をするつもりはない。
それに持ち運びもシュウの作った収納袋があるので何の労力も払うつもりこともない。
なのでシュウたちは軽い気持ちで提案したのであった。
◇◆◇
「・・・順調、なのかな?」
シュウは思わず、といったように呟いた。その呟きに対する返答は誰からもない。
別にシュウが単独行動をしているわけではない。いつも通り全員一緒に行動しているのにも関わらず、だ。
ハッキリ言って予想外の事態が起きたのだ。ただしそれはシュウたちにとって致命的に危ない状況かと言われるとそうではない。そうではないが仲間たちの現状に結びつく事態なのだ。
それがどのような状況かと言うと、
「獣・・・多くない?」
そう、遭遇する獣が多いのだ。半端無く。
そもそもギルドで受けた依頼も最近王都周辺で獣が多いので数を減らす、という内容だった。
狩った獣は冒険者が好きにしていいという内容のため荷馬車を持ちだして狩っては積み込んでいる冒険者も少なくない。
運搬という点については他の冒険者に比べ圧倒的に優れた手段を持つシュウたちなので狩っては収納袋にしまい込み、どんどん王都近くの森の奥へと進んでいった。
他の冒険者は荷馬車がいっぱいになると王都へ引き返すし、そもそも森の奥へは荷馬車が進むのが困難ということもあり、奥のほうが効率よく狩れると判断したためだ。
その判断は正しく、数匹の群れを狩ったそばから次の群れを見つけることができている。
最初は良かったのだ。苦労せず次の獲物が見つかるので調子よく狩ることが出来た。
問題が明確化したのは狩り始めて数時間経った頃だった。
その時点でボア換算で100匹程度の量は狩り終わっている。だがまたしても次の獲物が見つかる。それを狩ってもまた次が、という風に連鎖するためハッキリ言ってやめ時が分からなくなっているのだ。
最初は可食部を多く残すためとリエルの魔法は使わなかったのだが現在は火の魔法以外はバンバン使って狩りを行っている。
他のメンバーも現在では獣に対する遠慮という物を完全に失っており、狩りがただの『作業』と化している。
シュウの呟きは確実に仲間たちの耳には届いてるが、『作業』として条件反射で動いている彼女たちを止めるには足りないようだ。
シュウはしょうがないな、と思いつつもこのまま続けると疲れで隙が生まれかねない、と強制的に彼女たちを現実に引き戻す。
パァン!
シュウは掌に空気を集めるとそのまま圧力を加え破裂させた。
その音はさながら風船を割った時の音のようで、『作業』を続ける彼女たちを止めるだけの音量を持っていた。
彼女たちは突然の音に『作業』をやめるが、フィアは獣人の特性か音に敏感なようで、その尻尾が全力で逆立っていた。
「はっ。シュウさん、今の音はなんすか?」
「魔法でちょっと、ね。それより今相手してる分を片付けたら王都へ戻るよ」
「へ?あ、もう夕方じゃないっすか!全く気づかなかったっす・・・」
他のメンバーを見ても同じような状態らしい。
「さすがに連戦に次ぐ連戦だったから時間の感覚がおかしくなってたね。でももう十分な数を狩れたし、今日はこの辺にしておこう」
「はぁ、気がついたらお腹が減ってきましたぁ」
「じゃあ早く王都へ戻ってご飯を食べないとね」
ご飯という言葉にリエルだけでなく仲間全員が反応し、現在相対していた獣たちを一瞬で片付けたのだった。
◇◆◇
「はぁ、疲れたっす」
最後と決めた獣を倒してもすぐ別の群れを見つけたが、また無限ループに入ることが目に見えて明らかだったため放置して王都へと帰還したのが1時間ほど前。
そのまま冒険者ギルドへと行き、本日の成果を報告したのだが、報告した討伐数は5匹ほどにしておいた。
理由はあまりに大量の報告をするとまた目立ちそう、ということと、そもそもどうやって持ち運んだのか、という話になるのを防ぐためだ。
5匹程度であれば仲間内で協力すれば持ってこれる量だったので、ということもある。
それに自分たちのランクではこれだけの報告でも生活出来るだけの報酬を得られる、ということもあり、厄介事を引き込みたくないという全員の総意の現れでもある。
報告した5匹もギルドで買い取りしてもらい、それなりの報酬となった。
これで狩った分全て買い取りしてもらえば一財産までいかなくてもそれなりの金額になる、と思ったりしたのだが当初の予定通りにした。
仮に買い取られてしまうと孤児院へ持っていく分がなくなる、ということもあるが。
また、手続き中に受付の担当者に獣が多いのは王都周辺ではいつものことなのか、と質問したのだが、返ってきた答えはそんなことはない、というものだった。
どうやらここ数ヶ月で一気に増えたらしい。
同時に王都以外の地域での獣の目撃情報が激減しているらしく、その関係を調査中、とのことだった。
シュウたちもそこまで詳しく知りたいと思ったわけでもなく、単純に疑問に思った程度だったのでそういうこともあるのか、程度で流したのだが。
手続きが終わるとシュウたちは寄り道することもなく宿屋に帰ってきた。
王都に付いた時から疲労感がどっと押し寄せており、食べ歩記する元気も無かったため本日の夕食は宿屋に併設されている食堂で取ることにして、席についた瞬間フィアがテーブルに突っ伏しながら呟いたのだ。
「ほら、フィア。行儀が悪いよ」
「うぅ、さすがに体裁を整える元気ないっす」
「シュウ、今日くらいは勘弁して下さい」
見るとティアナもフィアと同じような状態だった。
ティアナの場合、狩りの最中は体力だけでなく魔法を使っていたため精神力もすり減っていたようで疲労の色が濃い。
そこまで状態がひどいのはこの2人だけだが、リエルは先程から半分ほど寝ているように静かだし、カエデも余裕を見せてはいるがいつもより元気が無いように見える。
「というかシュウさんは何でそんなに元気なんすか・・・」
「え?うーん、・・・なんでだろうね」
「何かずるいっす」
元気な理由はリエルから授けてもらったチート能力だろう、と予想しており、まさにその通りなのだがフィアにはまだ言っていない内容のため適当にごまかしておく。
そのやり取りを聞きながら全て知っているティアナからは恨みがましい視線を送られてきたがそちらもスルーする。
正直この状態を見越して貰ったわけではないが、助かった、と思うシュウであった。
◇◆◇
何とか食事を取り各自部屋で休むことにした翌日。
毎朝恒例のミーティングだが、昨日の状態で今日も狩りに行くことは難しいと昨日の段階で判断しており、今日はゆっくり休む事を事前に伝えてあるので全員まだ寝ているようだ。
そんな中シュウだけはいつも通りの時間に起きだして1人朝食を取っている。
1人きりでの食事はラグスの街でティアナと行動を共にする前に数回した程度なので新鮮な気持ちだ。
だが、同時に寂しさのようなものも感じており、やっぱり食事は誰かと一緒のほうが楽しいな、と仲間の大切さを再認識していたりする。
この日からしばらく1日狩りを行い、次の日は休み、また次の日は狩りを、という形で数日を過ごす事になった。
休みのたびにシュウは1人で、もしくは起き出してきた仲間の誰かと一緒に孤児院を訪れ、食料を差し入れしていた。
シュウが差し入れするのは肉ばかりなのだが、孤児院の方では野菜を中心に購入しており栄養のバランスは取れているらしい。
そこまで考えていなかったシュウだが、上手くいっているようで安心したのだった。
基本的に事をあまり荒立てたくはないが、厳密に情報を管理することをしないシュウだがラグスの街ではそれで十分だった。
だが、ここはラグスの街より大きく、人の多い王都なので今までどおりのやり方では全く通用していなかった。
当事者同士でやり取りしていたことでもどこかで誰かが見ていたり聞いていたりしており、それが世間話やうわさ話として広まり、全く知らない人物の元へと流れることはよくある。
その結果がシュウたちへ悪い形で返って来るまで長い時間は必要なかった。
作業ゲーになるとやめ時が分からなくなりますよね。




