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第06話_リエルの実力です

「ぬはははは、負けだ、負けだ。ワシの負けだ」


周囲の歓声が鳴り止まないが不思議とギルマスの言葉はよく聞こえてきた。


「しかし良い線までは行くだろうと思っていたが、まさかワシの勝つとは思わなんだ」

「いやぁ、ギリギリでした」

「くくく。ギリギリでもワシに勝てる者がおるとはのう」


ギルマスは楽しそうに笑っている。

一方シュウは正直笑う余裕などはない。

最初は魔力による強化もあまり行わないつもりだったのだが、全力を出すことを余儀なくされ、更には魔法まで使わされたのだ。

使った魔法は攻撃的なものというよりはただ光を放つだけものもだ。

だが単純故に発動が早く、魔法に対して知識のないこちらの世界の住人にとっては新鮮に映っただろう。

ただし、見学者の中でその点について考えていそうなものはおらず、ギルマスに勝った冒険者がいる、という点だけで騒いでいるようだ。

しかしあくまでも冒険者では、だ。

当然気づくものはいる。それも目の前に。


「ところで最後にお前さんの手が光ったことだが」

「あー、一応職業としては魔法剣士なので魔法が使えます」

「やはり魔法か!それにしてもワシが思わず止まるほどの威力を出すとはのう」

「威力というかただ光らせただけなんですけどね」

「たしかに単純だが、それ故に強力だわい。他にも使えるのかのう」

「えーと、秘密です」

「くくく、確かに自分の能力を全て公表する愚か者はおらんか」

「まぁ、そういうことです」


これ以上は教えるつもりはない。

バレると色々面倒くさいことに巻き込まれそうな上に余計な事を言わないように監視されているのだ。そう、今のように。


「シュウ、お疲れ様でした。・・・今日の夜お話があります」

「・・・はい」


ティアナである。おそらく戦闘中に魔法を使ったことだろう。

彼女が私利私欲で言っているのではなく、シュウのために言ってくれているのは分かるためシュウは何も反論できない。

おとなしく運命を受け入れるのであった。


◇◆◇


ギルマスとの模擬戦終了後、約束通り屋台で食べ歩きをしてその日は終わった。

その翌日からシュウたちは王都での冒険者稼業を開始することにした。

依頼を受けるため毎朝恒例のミーティング終了後宿屋を出発するシュウ一行。


「うーん、ギルドに行きづらいな」

「どうしてですか?」

「よく考えれば昨日物凄く目立った気がしてさ」

「よく考えなくても目立ってたっすよ?」

「・・・行きたくないなぁ」


ティアナとフィアに言われて余計に足取りが重くなるシュウ。

カエデはニヤニヤしながら状況を楽しんでいるようだし、リエルは道中の屋台に目を奪われている。

どうやらシュウに助け舟を出してくれる者はいないようだ。


「あのぉ、シュウさん?あちらを見ていたけますかぁ」

「どうしたの?」

「いえ、あちらの屋台なんですが近くの子供が気になってぇ」

「子供?」


リエルの視線をたどると確かに屋台を見つめている子供がいた。

その子供はお世辞にもいい格好をしているとは言いがたく、着古された服を着ており、有り体に言えば見窄(みすぼ)らしいという表現があうだろう。

その子供が屋台の店主と何か話しているようだが、店主が追い払うような仕草をすると子供はおとなしく離れていく。

どうやら屋台を順番に同様のことをしながら移動しているようだ。

てっきり屋台の食べ物に目を奪われていると思ったリエルだがどうやら今回は違ったらしい。


「あの子供が気になるの?」

「そうですねぇ。単純にお腹が空いているというよりも、何か追いつめられたような表情をしているのが気になってぇ」

「ふむ。ちょっと声を掛けてみるか」

「シュウ、依頼はいいのですか?」

「だって気になるし、ギルドに行きづらいし」


後半は紛れも無く本音だが小声で言ったため近くにいたティアナ以外には聞こえていないようだ。

ティアナがジト目で見てくるが鋼の精神でスルーして子供の方へと向かう。


「やぁ、お腹が空いているのかな」

「え?あ、いや、オイラが腹減ってるんじゃなくて皆が・・・」

「皆?他にいるのかな」


話を聞くとこの子供は王都にある孤児院で生活しているらしい。

だがここ最近は孤児院への運営資金が減っており、生活が苦しくなっているそうだ。

それで屋台街へと来て残り物や売り物にならない切れ端などを貰い、孤児院へ持ち帰り皆で分けているということだった。


「孤児院への運営資金が減るなんてことあるの?」

「孤児院は王都直営という話を聞いたことがあります。予算が削減されればそういうこともあるかと思いますが、現在の王様はそのようなことをする方だとは聞いたことがありませんね」

「ふーん、そっか。ねぇ?俺たちボアの肉とか持ってるんだけど、よかったらいるかい?」

「え!?」


シュウたちも所持金に余裕があるということはないのだが、幸い王都に来るまでにボヤやコッコの襲撃を受けており、撃退したときの戦利品としてその肉を大量に獲得していたのだ。

王都に到着してからは自分たちで食事の用意をすることも無かったため、移動中以外に肉が減っていないし、しばらく長期間の移動をする予定もない。

なので譲り渡すことに抵抗はないのだ。


「ほんと?ほんとにいいの!?」

「あぁ、もちろん。でも量が多いから君に持たせるわけにもいかないし孤児院に案内してくれるかい?」

「うん!分かった!!」


子供は先程までの追い詰められあたような表情から一転、子供らしい明るい表情になりシュウの手を引いて行く。

その光景を微笑ましいと思いつつ、温かい表情で見ながら付いて行く仲間たちなのであった。


◇◆◇


「ボアの肉を分けていただけると聞いたのですが本当でしょうか?」

「えぇ、王都に来るまでに大量に手に入ったのですが消費するにも仲間内だと持て余しそうなので」

「あぁ、神よ。感謝いたします」


孤児院へ着くとシュウを引っ張ってきた子供は勢い良く孤児院の中へと飛び込んでいった。

そうしてしばらく待っていると孤児院の中からいかにもシスターという格好をした女性が出てきて先ほどの会話となったのだ。

孤児院の外見だが、古びた教会のような見た目だったのでまさかと思ったが、教会が運営しているらしい。


「えっと、とりあえずどこに置けばいいですか?」

「あぁ、そうですね。肉をお持ちいただければ保存庫の方へ案内させて頂きます」

「あ、もう持ってきてるんで案内お願いします」

「え?」


どう見てもシュウがそんな大荷物を持っているようには見えないため、シスターは少し怪訝そうな顔をしたが、肉を恵んでくれるという人物なので印象を悪くしないように案内してくれる。


「えーと、ここにお願いします。・・・ちなみにどの程度の量をお分けいただけるのでしょうか」

「持っている限りで良ければお好きな量で結構ですよ。じゃあ出しますね」


そう言って収納袋へ手を突っ込むシュウ。

するとその見た目からは信じられないほど大きな肉の塊が出てきたためシスターは目を白黒させている。

そうしていうちにもシュウはどんどん肉を取り出してく。

ボア3匹分の肉を出したところでシスターが現実に戻ってきてストップを掛ける。


「ちょ、ちょっと待って下さい!それほどの量を出されても食べきる前にダメになってしまいます!」

「ん?それもそうか。じゃあひとまずこの位の量で。足りなくなったら言ってくださいね」

「あ、あの、その袋はいったい・・・」

「ん?あぁこれは魔道具ですよ。でもバレると色々面倒なので秘密でおねがいしますね」

「は、はい」


あまりの驚きにシスターは半ば意識が飛びかけているようだがなんとか会話は成立している。

シュウとしては出来ればバレたくない、程度なのであまり厳密にするつもりはないので関係ない。

そうしているうちに再びシスターが現実に戻ってきた。


「はっ!?お客様の前で失礼しました。あと、お肉をありがとうございます。これで食費を薬代に充てることが出来ます」

「薬ですか。どなか病気なのですか?」

「えぇ、ここで面倒を見ている子供が1人病気になってしまいまして。薬も買えず栄養のある食事も与えることができないでいたのですが、この量のお肉があればしばらく分の食費を薬代に回すことが出来ます。本当にありがとうございます!!」


そう言って頭を下げるシスター。

さすがに病気はシュウでもどうしようも出来ない。

この世界の魔法は万能のように見えて、イメージが上手く出来ない現象に対しては効果がイマイチなのだ。

シュウもさすがに病気の治療に関する知識は少ないので確実に治すことが出来無いので発言を控えている。


「あのぉ。もしよければ私が看ましょうかぁ?」

「リエル?病気について詳しいの?」

「うぅん、確実に治せるか分かりませんが、何もしないよりマシかと思いましてぇ」

「失礼ですが、職業の方をお聞きしても?見たところ私と同じシスターのようですが」

「一応プリーストとして登録してますぅ」

「プリーストですが。さすがに病気まで治せるプリーストはいないと聞きますが、看ていただいてもよろしいですか」

「はぁい」


そうしてシスターが病気の子供がいる部屋まで案内してくれる。

中に入ると見るからに衰弱してる子供がいた。

おそらく満足に食事も出来ないことで免疫が下がり、病気に負けてしまったのだろう。

回復しようとしても栄養が足りず病状が悪化していったのだと予想できた。

リエルはいつも通りの雰囲気でその子供の元へ行くと額へ自らの手を当てた。

どうするつもりか、と見ていると額へ当てている手が光を発し始める。

何事か、と見ていると次第にその光は弱まっていき最後には消えてしまった。


「あの、何を?」

「えっとぉ、これで治ったと思いますぅ」

「はい?」


シスターが慌てて子供の駆け寄るとその顔を見つめている。

シュウも近づいてみると、先程まで苦しそうに呼吸していた子供が今はとても安らかな顔で眠っていた。

どうやら先程よりは確実に回復したようだ。


「リエル、一体何をしたんだ?」

「えっとぉ、早く良くなぁれ、ってお祈りしただけですよ」


そんな適当なことで、と思うシュウだが、よく思い出してみると今は食っちゃ寝をしているところしか見ていなかったが、リエルの正体は正真正銘神様であり、神様ならばこの程度出来ても不思議ではない、という結論に至った。

以前シュウが回復魔法を使った時にティアナから大真面目に秘密にするよう言われたことがあるが、いざ第三者の視点から見てみるとその理由が分かるような気がする。

相変わらずポヤポヤしているリエルだが、シュウは自分に負けずチート持ちであることを再認識したのでバレないようにしよう、と再度心に決めるのであった。



腐ってもリエルは神様なのでそれなりのチートは持っています。

食っちゃ寝しているだけの駄目神様ではない、というお話でした。

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