第03話_王都は大きいです
「それにしても獣の襲撃が多いね」
「むぐむぐ・・・そうですね。その分食料に困らなくていいですが」
「鳥さんおいふぃいれふ~」
「リエル・・・。お前食ってるか寝てるかどっちかだな。太るぞ?」
「ふふふ~。シュウさん知らないんですか?神様は太らないんですよぉ。もしくは栄養が胸に行きますねぇ」
「・・・シュウ。ちょっとリエルさんと二人きりでお話してきていいでしょうか」
「あれれぇ?ティアナさん羨ましいんですか~。うふふふぅ・・・ちょ、あの首根っこ掴まないでほし、あ、待って!調子に乗ったのは謝りますからぁ。ふええぇぇぇぇ」
リエルはどうやらこの世界でも日本と共通だったらしい女の子の逆鱗に触れたようだ。
南無、と手を合わせておく。
特に意味のない順位だが、カエデ=ティアナ<フィア<<<<リエルなのだ。
何の順位かは分からないが。
仲間内で唯一リエルの正体を知っているティアナだが、最早遠慮などはないようだ。
今も容赦なく、いや仲良くお話しているらしい。深くは触れないでおこう。
さて、冒頭の会話だが、シュウ達一行は鳥肉を食べていた。
調達源はもちろん襲ってきた獣だ。
見た目は日本にもいた鶏なのだが、大きさが一回りほど大きい上に何と飛んでやってきたのだ。
日本での知識があったのでシュウは驚き思わず固まってしまったが、ボアの時に活躍できなかった代わりにとティアナが頑張って撃ち落としていった。
それもいつの間に覚えたのか周囲の土を固めて針状にし、それを飛ばして仕留めたので普通に調理して食べれるくらいにキレイな撃退であった。
現実に戻ってきたシュウも一緒になって魔法で攻撃したのだが、シュウの攻撃は強力すぎて、いくら威力を弱めても鳥は爆発四散してしまっていた。
威力が高いのも考えものである、とシュウは反省し、今後はより威力の調整にも力を入れようと決めたのであった。
ティアナが撃退したコッコはフィアの手により捌かれ、そのままシュウたちの昼食へと早変わりしたのであった。
塩コショウくらいしか調味料はなかったが、それらを振りつつ直火で炙ると脂が滴り落ち、その煙が肉に纏わりつき、と凶悪なまでにいい香りが周囲に立ち込めた。
そうすると馬車で寝ていたリエルが起きてきて肉に食らいつき冒頭の会話へと繋がったのだ。
「リエルも考えて発言すればいいのに」
「あはは。シュウさん、こればかりはしょうがないっす。持つ者と持たざる者の違いっす・・・ひっ」
フィアと会話していたが途中で離れたところにいたティアナが振り返りフィアと目があったようだ。
まさか聞こえたとは思わないが変なことは言わないよう気をつけようと心に決めたシュウである。
「しかしこのコッコという鳥は美味いのじゃ。でも我も戦いたかったのじゃ」
「カエデちゃん、さすがに空を飛んでたんじゃうちらの出番はないっすよ」
「我だって空を、むぐぐぐ」
「あははは。そうだよね、飛び道具のない2人じゃきついよね」
カエデが妙なことを言う前に口をふさぐことに成功したシュウだが、それでもフィアが不思議そうな顔をしているため愛想笑いで誤魔化しておく。
そうこうしているうちに離れて『お話』していたティアナとリエルが戻ってきた。
リエルが若干涙目だが気にしては負けなのだ。
こうして何度か獣の襲撃を退けながらシュウたちの旅は順調に進むのであった。
◇◆◇
ラグスの街を出発して7日、シュウたちは予定通り王都付近へと到着していた。
「おお、あれが王都か。ここから見えるだけでも壁がラグスの街より何倍も大きいね」
「そりゃあ人族最大の街っすからね。少なくとも5倍の大きさはあるらしいっす」
「その壁の向こう側、おそらく街の中心辺りに見えるあれが王城ですね。すごく大きいです」
「観光ついでに見に行けるのかな?」
「王城の近くは流石に無理じゃないっすか?警備とか凄そうっす」
「そうですね。ヘタに近づいただけで捕まりそうです」
「うーん。じゃあしょうがないか」
「主殿。何なら我が空からむぐぐぐ」
カエデはおそらく気を利かせて言ってくれたのだと思うが、王都付近にドラゴンが出没するとなると大混乱という言葉では言い表せないような状況になりそうなので遠慮しつつ口をふさいでおく。
事あるごとに元の姿に戻ろうとするカエデだがやはり人の姿は窮屈なのだろうか、と思いある時聞いてみたのだが、帰ってきた答えは
「窮屈ではないぞ?でも元の姿のほうがカッコイイではないか!」
とのことだったので許可無く元の姿に戻らないように厳命しておいた。
やや不満そうだが頷いてくれたので信じておきたい。
「さぁ、皆さん。ようやく王都へ着きましたが、宿を確保するまでは働いてもらいますからね」
「「「はーい」」」
ティアナの号令でシュウ、フィア、カエデが返事をする。
リエルはいつもの様に昼寝中だ。
本当に食事の時以外は寝ているやつだ、と思いつつも夜の見張りはキチンとしているらしいので文句も言いづらい。
「リエルは・・・、まぁいいか」
シュウの発言は全員の総意であった。
◇◆◇
王都へ入るため門のところで身分証明証か保証金の支払いを求められたが全員冒険者ギルトのカードで何事もなく入ることが出来た。
カードを持っていないカエデだが、シュウのカードに特記事項としてカエデのことも書いてあったので問題なかった。
万能カードである。
「やっぱり街中もラグスの街より活気があるね」
「そうっすね。人が多いし皆忙しそうっす」
「2人とも。話してないで宿を確保しに行きますよ」
「了解。宿を確保したらギルドには・・・明日でいいか。今日はゆっくりしよう」
「賛成ですぅ」
街についた途端起きだしたリエルだが、いちいち構っていてもしょうがないのでスルーしておく。
一行は馬車を停めれる宿に無事部屋を取ることが出来た。
ちなみに部屋割りはラグスの街と同様に一人部屋をひとつと二人部屋をふたつだ。
シュウが一人部屋で固定で二人部屋は女性陣がその日の気分で交代しながら、としていた。
宿代はその分掛かるが大部屋ひとつではシュウが落ち着かないためこのようにしている。
荷物を置いたシュウたちは早速王都観光へと出掛けることにした。
王都『ハイエル』は人族の同名国家の首都である。
人族の国家といってもフィアのような獣人やドワーフのような亜人と呼ばれる人々も普通に生活しており、あくまで祖は人族が、という歴史らしい。
ラグスの街もハイエル王国の中で王都に次ぐ大きさの街らしい。
現在の王の先祖が中心となり、人族がこの辺を跋扈していたモンスターや獣を追い払い土地を開拓したのが国の始まりということだった。
だが、国の起こりが人族によるものでも物語によくあるような王族や貴族の全てが人族至上主義という国風ではなく、様々な人種を受け入れているらしい。
それでもごく一部はそれに反対している派閥もあるようだが、本当に少ないらしく獣人のフィアが危害を加えられるようなことはまず無いと聞いて安心した。
ちなみに聞いた話では他に獣人が中心の国、亜人が中心の国と様々あるようなのでいずれは行ってみたいがまずは人族の国を満喫することにする。
王都ということもあり流通が盛んで様々な食品類も多く集まっており単純に屋台の食べ歩きをするだけでも数日は楽しめそうだ。
現にリエルなどはシュウからお小遣いを貰って屋台へと突撃していった。
他の仲間達も突撃まではいかなくてもイソイソと好きなモノを買って食べながら王都を楽しんでいるようだ。
シュウも目についた屋台で何かの肉の串焼きを買って食べてみる。
道中はシンプルな食事が多かったが、買った串焼きは何やら複雑なタレが塗ってあり、それが肉の脂と絶妙なハーモニーを奏でており口角が上がるのを止められない。
「これ美味いっすね!」
「お、坊主。なかなかいい舌してるじゃねぇか。こいつはカウムって獣の肉で俺様特製のタレとバッチリ合うんだ」
「ホントに美味しいや。もう一本ください」
「よし、特別に美味いの焼いてやる!」
気分は祭りの屋台での会話だ。
ふと日本が懐かしくなるシュウだが日本へは戻れないのでその懐かしさはそのまま寂しさへと変わる。
その様子に何か感じ取ったのか屋台の店主はより明るく振るまいいつもより少し多く肉を刺した串焼きをシュウへと手渡してくれたのだった。
世界が変わっても人の優しさは変わらないな、とシュウは温かい気持ちになる。
こうしてシュウ達一行は王都初日を楽しく過ごすのであった。
◇◆◇
「皆おはよう」
「「「「おはよう(ございます)」」」」
王都で迎える最初の朝である。
今日シュウ達一行は王都に来た目的を達成するためギルドへと向かう予定だ。
「さて、じゃあ早速ギルドへ向かおうか」
「昨日食べ歩き中に見つけたあの大きい建物ですよね」
「そうそう。王都自体も大きいけどギルドも大きいんだね」
「それは一応ギルド本部っすからね」
「早くギルドへ行くのじゃ。そしてまたご飯を食べに行くのじゃ」
「ご飯ですかぁ。私も行きますぅ」
「はいはい。じゃあ行くよ」
ちなみにカエデの食事だが普通に人間と同じものも食べれる、というか昨日はものすごい勢いて食べていた。
昨日の夜魔力を与えている時に聞くと、食事はあくまで嗜好品という扱いらしく食べなくても魔力だけで生きていれるそうだが、美味しいものを食べるというのは辞められない、と笑顔で話していたのが印象的だった。
何にせよ楽しく日常が送れているのはいいことだ、と思っている。
あとリエルだが本当によく食べる。
胃腸が強くなるという謎の加護を与えるだけあって本人も相当なものらしい。
これは早くギルドでの用事を済まさないと食欲魔神と化した2人が暴走しそうだ、と苦笑しながらシュウはギルド本部へと向かうのだった。




