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第01話_旅立ちます

ドラゴンと戦ってから一ヶ月が過ぎた。

決着はドラゴンに勝ったシュウが色々な誤解が合ったことに気づき傷ついたドラゴンを治療した結果、付いて来ることに決めたドラゴンが人の姿に変わりシュウと行動を共にするようになった。

更にはシュウをこの世界に送り込んだリエルも何故か地上に来ており、シュウの周辺はより賑やかになった。

リエルには何故地上に来たのか尋ねたが、


「私の権限以上の能力をシュウさんに授けてしまったので、その罰としてシュウさんが能力を悪用しないように監視と間違えて転生させてしまったお詫びとして出来る範囲で手助けするように、と言われましてぇ」


と笑顔で言われてしまった。

手助けはともかくとして監視まで言ってよかったのかと思ったが藪をつついて蛇を出すようなことになりそうだったのでスルーした。

というかリエルから貰ったにはしてはチートが過ぎると思ったがやはり権限を超えていたか、と納得はできた。


さて、他の仲間達はというと、


「むむむ」

「うへへぇ、この黒い輝き素敵っすぅ。うへへへ・・・」


とそれぞれである。

ちなみに唸っているのがティアナで、ブツブツ言いながら剣に頬ずりしているのがフィアだ。

フィアには以前約束していた通り魔鋼で剣を作ってあげていた。

武器屋の店主がドラゴンから街を救ってくれたお礼だと鉄塊を譲ってくれたので作成はアッサリと出来た。

形状としてはフィアが元々持っていた長剣と同様だが切れ味は全くの別物になっている。

流石にフィアが魔力を通してもシュウのように鉄をスライス出来たりはしないが、それでもこの世界においてはトップクラスだろう。

剣を作ってあげてから日数は経ってもフィアは暇があると剣に見惚れてブツブツと怪しい呟きを繰り返していたのでシュウは少し不安な気持ちになっている。

ついでに、とシュウは仲間たち全員に魔鋼製のナイフを渡しているがそのような状態になったのはフィアだけなので、やはりフィアが特殊なのか、と考えるようになった。

一方ティアナだが、カエデとリエルが行動を共にするようになってからたまに唸り声を上げながら何か葛藤をしているようであった。

それは主にカエデとリエルがシュウに擦り寄っている時に起こるのだが、その理由についてはシュウは全く気づいていない。

むしろティアナも自分の行動についていまいち原因が分かっていないのでシュウを攻めるようなことは出来ないだろう。

ティアナが唸り声を上げているということはシュウの横にはリエルとカエデがいる。

2人は暇があるとシュウにかまって欲しくて擦り寄っていくのだ。

リエルは素で、カエデについては何か面白いことがあるのか少し黒い笑顔で擦り寄ってくるのでシュウとしては違和感を感じている。

ちなみに擦り寄ってきながらティアナを見ているが、その因果関係には全く気づいていない。


あの騒動からもシュウ達一行は依頼をこなしている。

と言っても相変わらずモンスターが出てこないので受ける依頼は採集系か近くの村への護衛くらいだ。

特にトラブルも起きず依頼自体は順調にこなせているが、簡単な依頼だけなのでシュウたちのランクは上がっていない。

カエデは見た目年齢でギルド登録出来ていないが、リエルはシュウからお金を借りてプリーストとして登録が完了しており、現在Fランクとなっている。

つまりリエルはGランクの依頼(街の中でのお使い)をこなしたということなのだが、それが一筋縄ではいかなかった。

シュウを間違ってこの世界に送り込んでしまったことから分かってはいたがリエルはものすごいドジなのだ。

荷物の配達依頼を受ければ道に迷い、ゴミ拾い依頼を受ければ逆にゴミを散らかし、工事の手伝いをすれば完成したばかりの壁をぶち抜くなど1人ではまともに依頼をこなすことが出来なかった。

仕方なくシュウたちが陰ながら見守り昇格試験を受けるための条件は揃えることが出来た。

しかし昇格試験本番はそうはいかない。

確実に時間がかかるだろうとシュウたちは思っていたのだが、なんと一発で合格してきたのには驚きを通り越してしまった。

聞くと適当に武器を振り回したら試験官のエルグに偶然当たってしまい、しかも当たりどころが良かったのか一発で気絶させてしまったそうだ。


「まぁ、私にかかれば当然ですぅ」


とは試験直後のリエルの言葉だ。

正直イラっとしたので軽く頭にチョップしておいた。

ちなみに負けたエルグは本気で落ち込んでしまい、シュウとティアナが数日掛けて復活させたりと中々忙しい毎日を送っていた。


◇◆◇


ある日、シュウが毎朝恒例のミーティング中にふと思ったことを言い出す。


「しかしそろそろ討伐系の依頼を受けたいんだけどなぁ」

「何かあるのですか?」

「いやぁ、貯金を増やしたいんだけど簡単な依頼ばかりで報酬が少なくてさ」

「うちも討伐したいっす!この新しい剣の切れ味を試したいんすよぉ。うへへへぇ」

「我ももっと派手な依頼を受けたいぞ!」

「お金をいっぱい溜めてぇ、美味しいものいっぱい食べたいですぅ」

「確かに言っていることは分かりますが、モンスター自体が出てこないのではしょうがないのでは?」

「うん。だから最悪この街を離れて別の街に行ってみようかな、と思っているだ」

「え?旅に出るんすか!?急に言われても何の準備もしてないっすよ」

「別にすぐじゃないんだけど、この状況が続くようなら選択肢のひとつとしてありかなぁ、と」

「そうですね。別にこの街にこだわる理由がある人がいるわけでもないですし、それもいいかもしれませんね」

「ま、もう少し経過を見てみてからね」


何気ない会話だったがこの話が事実になるのには時間がかからなかった。

詳しく言えばその後ギルドに行った時に、だが。


「え、王都ですか?」

「はい。王都からシュウさんたちへ招集がかかっています」

「・・・何か呼び出し受けるようなことしましたっけ?」

「知らないようですから言っておきますけどドラゴンを撃退したという噂に尾ひれが付いて最近じゃシュウさんの事を『竜殺し』と呼ぶ人が増えているんです」

「『竜殺し』ですか?」

「はい。その噂を聞きつけた王都にあるギルド本部のギルドマスターが会ってみたいから、と職権乱用しまして」

「はぁ」

「もちろん気が乗らなければこの話は断っていただいて構いません。そもそもあの人はいつもいつも・・・」


ブツブツと独り言を言い出した受付嬢は一旦置いておいてシュウたちは軽く話し合う。


「どうする?」

「今朝の話が現実になりそうですね。私としては王都に興味もありますし行ってみてもいいと思います」

「うちも王都には一度行ってみたかったす」


全員に意見を聞くが特に反対意見は出なかった。

なのでシュウは了承の意思を伝えるため受付嬢を現実に引き戻す。


「あの!さっきの話ですが」

「はっ!申し訳ありません。つい独り言を」

「いや、それはいいんですが。さっきの話ですが受けようと思います」

「本当ですか?言ってはなんですがギルドマスターに会うとすごく疲れますよ?」

「ちょうど他の街にも行ってみたい、と話していたとこなんですよ。

ギルドマスターに関しては顔見せだけしておく感じでいいんですよね」

「それで構いません。正直受けていただけなかった場合ギルドマスターがこの街に押しかけてきそうだったので助かります」


職権乱用で招集をかけたり、仕事を放り出して押しかけようとするとはどんな人物なんだ、と思ったがいずれ会うだろうと今考える事はやめておいた。

旅立つにしても日本でのように簡単には移動出来ないのだ。

それなりに事前準備が必要なので出発は4日後として各自準備を進めることにした。

移動手段はギルドマスターからの招集ということでギルドの馬車を使えることになっており、準備は1週間ほど掛かる移動中の食料がメインになる。

シュウはそれに加えて、最初に護衛を受けた時に考えた通り馬車移動用のクッションを購入しており、それを忘れずに容量が天元突破している収納袋につめ込むのであった。


◇◆◇


アラン達にも王都へ行くことを告げたら宴会を開いてもらったりと色々あって、いよいよ出発の日となった。

馬車が停まっているという門のところまで来たシュウ達一行だが、そこには馬車以外にも様々な人影があった。

ギルドの受付嬢をはじめ、武器屋の店主やアラン達草原の狼一行、エルグといったこの街でお世話になった人々が揃っていた。


「シュウくん。王都までは整備された道とはいえ充分気をつけるんだよ?」

「おうアランよ、坊主たちが危険に巻き込まれたとしても何事もなかったように突破するとしか思えんのだが」

「それでもキチンと挨拶するのが礼儀ってもんじゃないか。全くゴルドはいつもいつも・・・」

「イリーネさんもその辺で。実際シュウさんたちならなんとかなるというのは事実ですし」

「ローニャよ、お前も中々だぞ?」

「坊主!次に会う時までに例の砂については研究しておくぞい」


それぞれが挨拶をしてくる。

ちなみに受付嬢がローニャという名前なのは初めて聞いた。

いつもお世話になっていたくせにシュウもなかなか薄情である。


「皆さん、見送りありがとうございます。しばらくは王都で過ごすつもりですが、いつかこの街に帰ってきますね」


シュウが代表して挨拶する。

するとローニャという名前が判明した受付嬢がそれに返す。


「シュウさん、皆さんもお気をつけて!私たちは皆さんの・・・あれ?」

「どうしました?」

「そういえば私、シュウさんたちのパーティー名を聞いていないような」


その言葉に全員が気づく。

そう、パーティを結成してからそれなりに時間が経って、最初は2人だけだったパーティも今では人数が増え、依頼も順調にこなしているのだが未だにパーティ名を決めていなかったのだ。


「あー、それも近いうち決めときます・・・」


全員苦笑いである。

なんとも締まらない挨拶だったがシュウたちは見送りを受けながら王都へと旅立つのであった。


ここから2章に当たる部分となります

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