第26話_ドラゴン戦の真実です
グルルルッ
「ってまだ生きてるのかよ!?」
倒したと思っていたドラゴンだが、弱々しいが声が聞こえて来たので飛び起きた。
「あれで倒せないとかどうすればいいんだよ・・・」
『いや、あれは効いたぞ。さすがの我もあまり長くは保たんじゃろう』
「えっ!?」
突然聞こえてきた、いや頭に響いてきた声に驚く。
どこから聞こえてきたのかと周囲を見渡すが、この場には自分とドラゴンしかいない。
「ってことはお前喋れるのか!?」
『うむ。念話という方が正しいがのう』
「・・・まだ戦うのか?」
『いいや、さっきも言ったが我にはもう戦う力は残っておらん。せめて最後に謝りたくてのう』
「謝る?一体何を?」
『そもそも我はお主と争うつもりはなかったのだ』
「は?」
シュウはドラゴンがとんでもないことを言い出したので混乱する。
『我のような存在はそもそも人間を襲ったりはせん』
「だってお前俺達のいたところへ向かってきたじゃないか」
『お主達、というよりお主に向かっていたことは否定せん』
「俺?」
『うむ。我は人を食ったりする存在とは次元が違う。我が食すのは魔力じゃ』
「魔力を食べる?肉食じゃないのか」
『そうじゃ。肉を食べることもできるが基本的には魔力溜まりなどを食って生きておる』
「魔力溜まりってモンスターを生み出すっていうあれか」
『その魔力溜まりじゃ。じゃが最近は中々魔力溜まりを見つけられんで少々腹が減っておったのじゃ』
「ふむ」
『そうしたら離れたところに高濃度の魔力が漂ってきての』
「・・・ふむ」
『空腹には耐えられずフラフラと飛んでいってしまったのじゃ』
「・・・」
『そしたらお主たちがいて、攻撃されたので怒りで我を忘れてのう。すまんことをした』
ダラダラと冷や汗が止まらない。
このドラゴンの言い分をまとめると、いつも以上に身体強化をしようと魔力を練り上げたことでドラゴンに感知され呼び寄せてしまった、と。
そして空腹で多少我を忘れていたとしても悪気のなかったドラゴンに攻撃してしまい更に我を忘れさせてしまった、と。
更には全力をもってボコボコにし、長くは保たないと言わせるほどの致命傷を負わせてしまった、と。
最後にはそのことで悪いことをしたと謝られた、と。
(あれ?これって完全に俺が悪者のパターンじゃ・・・)
ドラゴンと話が通じるとは思っていなかったし、あの雰囲気では戦う以外の選択肢が出ないのも仕方ないとしても謝られてしまうと物凄く居心地が悪い。
『しかし、我に勝つとはのう・・・。長く生きたが最後に面白い体験が出来たわい』
「ストップ!やめてくれ!!」
シュウは罪悪感で押しつぶされそうだ。
『ん、なんじゃ?お主ら人間は我のような存在を倒せば英雄と呼ばれるのではないか?』
「そうかもしれないが勘違いで悪さをしていないドラゴンを倒して持て囃されて喜べるほど俺の精神は強くない!」
『不思議な人間じゃのう。くははは、本当に面白い。
じゃがお主が我を倒したのは紛れも無い事実じゃ。誇るがいい。
あ、そうじゃ。我が魔力に還ったあと魔石が残るはずじゃ。
我を倒したお主に持っていて欲しい』
ドラゴンの遺言を聞いた人間などこの世界に何人居ただろうか。
貴重な体験をしつつもシュウは全く喜べない。
「むぅ、これだけ体が大きいとどうなるか・・・」
『む?何じゃ?』
シュウが倒れているドラゴンに手を当てる。
そのままある魔法を発動する。
『おぉ?おおおおおおおお!』
「ぐ、戦闘後にこれはキツイ・・・」
シュウの発動した魔法、それは回復魔法である。
以前使った時は簡単に治ったとはいえ、ほとんどかすり傷程度だった上に治るまでほんの少し時間が掛かったのだ。
それが戦闘中に自身の左足を治さなかった要因でもある。
時間が掛かるということはそのまま必要な魔力が増えるということであって、ただでさえ巨大なドラゴンの、さらにその生命を奪う直前までいっている傷を治すには雷槍につぎ込んだ以上の魔力が必要であった。
さすがのシュウもこれは堪えるらしく、先ほどの冷や汗とは違い脂汗が額に浮かんでる。
だがその効果は抜群だった。
『おぉ、我の傷が癒えていく』
「はぁはぁ、これで傷は塞がったと思う。でも失った体力はそのままのはずだから無理しないでね」
『くくく、せっかく倒したドラゴンの傷を癒やす人間か。本当にお主は面白いのう』
「だってこっちも勘違いで攻撃しちゃったわけだし流石にこのまま死なせるのは悪いと思って」
『その勘違いさせたのも我だろうに・・・。よし、決めた。我はお主に従うことにした』
「え?」
『我はお主の獣魔として従うと言ったのじゃ。ドラゴンを獣魔にするなど前代未聞じゃぞ?』
「いや、何言ってるのさ。せっかく治ったんだから住処に戻りなって」
『断る。お主の側におった方が面白そうじゃ!』
「断るって・・・。それにそんな巨体じゃあ目立ってしょうがないよ。だから諦めてってば。魔力なら分けてあげるからさ」
『ぬぅ、ここまで頑なに断られるとは・・・。しかし目立たねば良いのじゃな?』
「いや、この巨体じゃあどうしたって目立つでしょう」
『くくく、我とて伊達に長生きはしておらん。こういうことも出来るのじゃ』
そういって光に包まれるドラゴンの巨体。
眩しさで手を目の前にかざしながら様子を伺っていると光が徐々に小さくなっていく。
光が小さくなって丁度人間の子供くらいの大きさになったところで光がやみ、その姿があらわになる。
先程まで目の前にあったドラゴンの巨体はどこにもなく、シュウの目の前には12、3歳位に見えるワンピースタイプの服を着た人間の女の子が立っていた。
「え!?」
「どうじゃ、驚いたか。我は人化の術が使えるのじゃよ」
「っていうことはさっきまで目の前にいたドラゴン!?」
「そうじゃよ。くくく、お主の驚いた顔が見れて我は満足じゃ」
赤い髪に褐色の肌、目は金色に輝いておりどこか人間離れした雰囲気は感じるものの見た目は人間の少女であり、先程まで話していたドラゴンと言われてもすぐは信じられない。
だが、状況的にそうとしか思えず、本人(本竜?)もそう言っているのでそうなのだろうと考えるシュウ。
「とりあえずこれで目立たずお主に付いていけるの」
「確かに目立たないけど・・・。いや、付いて来るの許可してないよね!?」
「お主が嫌と言っても我は無理矢理にでも付いて行くぞ?む、主従関係ならば主殿と呼んだほうが良いかの」
「やめてってば!いきなりこんな子連れて行ったら仲間からなんて言われるか・・・。というか何で少女なんだよ!?」
「何でって我は主殿たちの分類でいけばメスに入るし、ドラゴンとしても若い部類に入るからのう」
「あの大きさで若いのか・・・。世界にはどんだけデカイのがいるんだよ」
「我はドラゴンの中でも上位種じゃからのう。その分体も大きかったのじゃ。
歳を重ねても我より小さい個体や、そもそも知性のない個体もおるから安心せい」
「何一つ安心できないんだけど」
特に知性のない個体というのがヤバ過ぎる。
あれだけの生命力を持って本能のまま暴れられるとか厄介では済まされない。
戦闘中よりもこの会話のほうが疲れる気がする、と思うシュウであった。
「あぁ、とりあえずその姿については分かった。ところでホントに付いて来るの?」
「我はいつでも本気じゃ!」
「・・・はぁ。わかったよ。付いて来てもいいけど君がドラゴンだっていうのは内緒ね。
バレたら絶対厄介なことになるし」
「うむ!主殿が言うならば従おう」
「・・・。ところで君の名前はなんて言うの?いつまでも君、じゃあ困るしさ」
「我に名前なんぞないぞ?主殿が好きに決めてくれ」
「む。そうだなぁ・・・。カエデ、なんてどうかな。葉っぱが赤くなってキレイな植物なんだ」
「うむ、カエデか。気に入ったぞ主殿!」
「じゃあカエデ、とりあえず街に戻ろうか。あ、その前に俺の足も治さないと。あいてて・・・」
驚きの連続で自分の怪我のことをすっかり忘れていて、思い出した瞬間痛みがこみ上げてきたため顔をしかめるのであった。
のじゃロリは義務。




