第25話_ドラゴンと戦います
シュウは平均的な体格の男子高校生であった。
身長約170センチ、小さすぎず大きすぎず、太っているわけではないが痩せているわけでもない体格の持ち主である。
そんな平凡とも言える体格のシュウが10メートル程離れて対峙している相手。
羽が生えており、色も赤いが見た目はシュウの知っているトカゲが少し太ったような感じだ。
圧倒的に違うのはその巨大さである。
空中に浮いているため正確には分からないが体長は尻尾まで合わせると15メートルほどだろうか。
5階建てのビルに相当する、それも自身に対して決して友好的とは言えない態度を取っている相手に対してシュウは未だ余裕を見せていた。
「さて、まずは火から試してみようかね」
空中にいる相手に対し、刀を下から振り上げつつ地面から炎の柱を打ち上げる。
「炎柱ッ」
炎はドラゴンを直撃し、焼きつくさんと燃え上がる。
だがドラゴンは地に落ちるどころかダメージすら感じていないようだ。
「うーん、火を吐いてきたから予想してたけど、やっぱり火は効かないか・・・っと」
ドラゴンがのんきに観察していたシュウを食らわんと大きく口を開けて襲いかかってきたのでドラゴンの横をすり抜けるように躱してドラゴンの後ろへとすり抜けるシュウ。
そのまま飛び退って再び10メートル程離れる。
「よし、次は水だな」
ドラゴンが再び襲いかかるため振り向いた瞬間水の龍を打ち付ける。
「水龍ッ」
水龍が直出来すると、炎柱と違って明らかにダメージを受けたようにたじろぐドラゴン。
相性の問題もあるがドラゴンが硬い皮膚を持つため阻まれた風刃や、絶大な熱量を持つが熱に強いドラゴンであるためダメージを与えられなかった炎柱と違い、純粋な質量において両者を上回る水龍。
その質量がぶつかってきた衝撃はドラゴンにとって我慢できるものではなかった。
GUGAAAAAAAAAA!
明らかに苦しそうな咆哮を上げるドラゴン。
そんなドラゴンの様子を見てもシュウはいまいち納得出来ない。
「水龍は確かに効くけど決定打にはならないなぁ。ホント、どうしようか」
この時ドラゴンの心境に変化が現れる。
戦闘が始まって最初、ドラゴンにとってシュウは単なる「エサ」でしかなかった。
風刃によって多少ダメージがあったがかすり傷程度であり、炎柱に至ってはドラゴンにとって攻撃ですらなかった。
だが、今自分が撃ち込まれた水龍は違う。
これは明確に自分に取って危険な攻撃である。
今すぐ命を取られるような威力ではないものの、何度もくらい続ければどうなるか分からない威力を持つ攻撃などしばらく受けたことはなかった。
よってこの瞬間よりシュウを「敵」と認識し、全力を持って排除しなければならない相手と認識したのだ。
ドラゴンは先程同様大きく口を開いてシュウに突撃する。
シュウも先程同様回避行動を行う。
違いが出たのは次の瞬間だ。
その顎が躱されるのはドラゴンも予想通り。
そのままシュウの横をすり抜けながらその尻尾でシュウを打ち付ける。
「がっ!?」
シュウは顎での攻撃を躱したことで次は何で攻撃しようかという思考に入ってしまったので気づいた瞬間には目の前に巨大な塊が迫っていたのだ。
それでも魔力強化によって多少ダメージは軽減できていたが吹き飛ばされる結果に違いはなかった。
そこから更にドラゴンの追撃が入る。
吹き飛ばされる最中のためその他の行動が出来ないシュウに対して炎のブレスを吐きつけてきた。
「これはマジでヤバイ・・・」
かろうじて炎が迫っていることには気付けたが魔力で足場を作って回避する等の行動は出来そうにない。
さすがのシュウでもあの炎をまともに喰らえばただでは済まないだろう。
そうしているうちに炎はシュウを包み込みその姿が隠されてしまった。
ドラゴンも直撃したことを見ていたため勝利を確信した。
炎が全てを燃やし尽くし、消え去るとそこには焼け焦げた地面と共にひとつの影があった。
他でもないシュウである。
炎が直撃する瞬間魔法を発動するほどの時間がないことを理解したシュウは自身が持つ膨大な魔力をただ単純に放出し自分の周りに擬似的な魔力壁を出現させ直撃を避けていたのだ。
それでも全くの無傷ではいられない。
ドラゴンの炎によりシュウの左足には重症と言っていい程の火傷が刻まれていた。
(燃やし尽くされるのは回避できたけど左足がメチャクチャ痛いぞ・・・)
冷や汗を流しながらドラゴンを見ると、今の攻撃で立っていられるとは思っていなかったのかドラゴンも驚いた様子であった。
この隙に回復魔法を使うことも考えたが完全回復するには時間がかかる。
さすがにその時間の間ずっとドラゴンが固まったままだとは思えないので、足に負担をかけないように空中へと浮かぶシュウ。
「さて、ホントに余裕がなくなってきたしそろそろ何とかしないとなぁ。
こういう場合ドラゴンに効くとしたらあの魔法だよなぁ」
そう呟いてから残った右足で魔力製の足場を蹴りドラゴンの頭上へと浮上する。
ドラゴンもシュウが動き出したことで我を取り戻し、追撃しようと体勢を整えるがシュウが狙いの位置へ辿り着くほうが早かった。
「よぉし、魔法じゃないけどメテオだ!」
シュウは腰につけたままだった収納袋へと手を伸ばす。
魔法により収納容量が格段に上がったこの収納袋の中には大小様々な岩が大量に入っており、シュウはどんどんドラゴンへ向かってその岩を落としていった。
巨大な体を持つドラゴンとはいえ大きいもので1メートルを超える岩を頭の上から落とされては堪ったものではない。
どんどん岩を落とされて徐々に高度が下がり始めたドラゴンを見てシュウは次の攻撃へ繋げるため、収納袋内に入っていた中でも最大サイズの岩をドラゴンの頭へ慎重に直撃させることに成功した。
先の水龍が直撃した時と同様に巨大な質量がぶつかったことによる衝撃はドラゴンが空中に留まるには無理があったようだ。
戦闘中一度も地に足をつけなかったドラゴンだがついに地面へと倒れこんだ。
致命的なダメージを与えられたわけではないので時間が経てば復活して来るだろう。
だがその時間があればシュウはとどめを刺すための魔法を準備できる。
右手に刀を持っているので左手を上に掲げる。
そのまま意識を左手に集中し、魔力を練り上げある武器の形を作り上げていく。
それは棒の先に幅広の巨大な穂先が付いた槍のような形をしている。
通常の槍と違うのはその全体が電気で出来ているようでスパークが迸っている。
「ドラゴンに雷って安易に考えてはみたけれど意外と難しいぞこれ・・・うぐぐ・・・」
単純に雷を落とすだけ、とも考えたが確実性に欠けると思ったのでそのエネルギーを凝縮してぶつけることにしたのだが、これがものすごく集中力のいる作業だった。
純粋な魔力を操った身体強化や、ただ放つだけだった今までの魔法とは違い特性を活かしたままエネルギーを圧縮する作業はシュウも初めてで一筋縄ではいかないようだ。
それでも思いついて戦闘中に実践するのは流石シュウである。
ちなみに形状が槍なのはシュウの趣味だ。
「ぐぐぐ・・・何とか出来た、ぞ」
何とか形状を安定させることに成功したが気を抜くと一瞬で魔法が霧散しそうになるので力が抜けないが何とか発射する準備が整う。
あまり長時間維持できそうもないし、時間をかけるとドラゴンが復活してきそうなので最後まで気を抜かないように発射する。
「新魔法・雷槍だ。いっけええぇぇぇぇぇぇ!」
まさしく雷速というにふさわしい速度で発射される雷槍は、岩を落とされて地に伏してた状態から体を起こしつつあったドラゴンの背中に命中し、その圧倒的なエネルギーを一気に開放した。
ドラゴンの体全体から恐ろしいほどのエネルギーを迸らせつつもその全身に亀裂を生み出し始める。
いかなるドラゴンといえどシュウが制御に苦労するほどの魔力で練り上げられたエネルギーをまともに食らってはただでは済まない。
GYAAAAAOOOOOOOOOO!
今までと違い苦しげな声を上げるドラゴンだが未だ倒すには至らなかった。
強大な魔法をまともに食らいつつもまだ起き上がってきたのだ。
「おい、まじかよ・・・こうなったら!」
完全に体を起こす前に、と魔力を通した刀を手に落下を始める。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉっ!!!!」
そのまま落下速度を利用してドラゴンの腹側を袈裟斬りに切り裂いていく。
ドラゴンが全快状態ならまず選択しない接近戦だが、魔法でとどめを刺せなかったが随分弱らせられたので最後のひと押しとして決行した。
GAAAAAAAAA・・・・
弱々しくひと鳴きしてからズズゥン、と地響きを立ててドラゴンが倒れた。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・。やったぞ!ドラゴンを倒したぞッ!!」
自信より遥かに巨大な相手を倒せた達成感と今まで感じたことのないギリギリの戦闘で感じていた緊張感から開放された安心感と疲労感からかそのまま地面に倒れ込むシュウであった。
出てくる攻撃手段やその効果はご都合主義により生産されております。




