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第20話_護衛完了です

まさしく開いた口が塞がらないという状況を体現していたティアナと商人をなんとか現実に引き戻し、目的にへ向けて再度出発する。

ゴブリンの襲撃があった分、予定より少し遅れはしたが無事村へと辿り着くことが出来た。

商人の方はさすがと言うべきか村へ入る前にはしっかりと自分の役割を思い出し、到着後すぐに仕事へと向かっていった。

一方フィアの方はと言うと・・・


「・・・」

「なぁ、ティアナ。あれって大丈夫だと思うか?」

「多分ダメですね。すっかり慣れてしまいましたが、あなたが異常だということを忘れていました」

「ひどいね!?」


全く回復していなかった。

さすがにこのままではマズイのでシュウはフィアの真正面へと向かう。


パァン!


そして両手をフィアの前で叩く。

所謂猫騙しである。(狐の獣人なのに)


「はっ!?」

「気がついた?」

「こ、ここは?」

「目的の村だよ。ゴブリンの襲撃場所にずっといるわけにもいかなかったし、フィアが何をしても反応しないからそのまま馬車に入れて連れてきた」

「はぁ、ありがとうございます?・・・あ!シュウさん!!さっきのアレは何なんすか!?」

「あれってゴブリンを倒した時のやつ?あれはティアナの魔法だよ」

「シュウ、さすがの私でもその答えはどうかと思います。明らかにあなたの攻撃に対しての質問だと思いますよ?」

「俺の攻撃って、俺は単純にゴブリンを切り倒しただけだよ?」

「どこにゴブリンの集団に対して一切の反撃を許さず全てを一撃ずつで、それも短時間で片付けられる人がいると思います?」

「ここにいるじゃん」

「つまりあなたは異常、ということになりますね」

「さっきからひどくない!?」


シュウはティアナに酷評され落ち込みつつあったが、フィアが全力で首を縦に振っているのでその速度は加速していった。


「頑張ったのに2人ともひどいよ」

「えっと、うちはちょっと驚いただけで・・・。というか装備から同じ新人さんだと思っていたけどもしかしてベテランの方でしたか?」

「そういえばこっちのランクとか話してなかったね。俺達もEランクで新人の部類に入るから敬語はいらないよ」

「Eランク!?魔法でゴブリンを焼却できる上に一瞬で群れを全滅させられるのに!?」

「魔法で焼却できたわけじゃないです。何とか数匹倒せる程度の威力しかありません」

「それに一瞬じゃないね」

「そのへんは誤差だと思うっす!何その異常なまでの戦闘力・・・。冒険者になるにはこのくらい必要なんすか・・・」

「いえ、流石にここまでの戦闘力はすこし過剰だと思います」

「ティアナさんの格好見た時から魔法使いって珍しいなぁ、って思ってたすけどあの威力なんてお伽話の世界だと思ってたっす」

「そのお伽話を実現させるため努力したのです。ただ、目標は更に上ですけどね」

「アレで満足していないなんて・・・」

「あははは、やっぱりティアナの方が珍しいじゃないか!」

「シュウさん、あなたはそれ以上っす・・・」

「えぇ、ただ普通に戦っただけじゃないか」

「そうっすね、目にも止まらない速さで一撃でゴブリンを倒せることが冒険者のスタートラインだったとしたら普通っすね」

「むう・・・」


ティアナの魔法はそもそもが珍しいものであり、その威力がどれほどだろうと最初から知らない世界の出来事なのでまだ納得できる。

だが、シュウの方は単純な物理攻撃だ。

フィアは一流の剣士を目指しているので余計にその非常識さが分かる、分かってしまう。

しかしそれが納得できるかと言われれば全く納得出来ない。

例えばシュウがAランク冒険者となればまだ理解できるが、自分よりひとつ上のランクなのだ。

フィアの知っているどんな一流剣士でもシュウの動きは不可能なように思えた。

そうなってくるとフィアの行動は決まってくる。


「シュウさん!うちに剣を教えてほしいっす!」

「え?無理」

「うち、一生懸命がんば・・・え?」

「俺もまだ修行中だから人に教える何てできないよ?」

「修行中?あれがまだ修行中の動きなんすか!?」

「そうだよ。俺としてはもうちょっとスムーズに動けるようになりたいね」


フィアが絶句しているが実際問題シュウは人に剣を教えることなど出来ない。

何故ならエルグの訓練で多少考えながらも刀を振るようになったがそれでもまだ身体能力及び魔力による強化に頼ったものだ。

到底人に教えられるものではない。


「そ、そこをなんとか・・・」

「だって俺が教えるとしたら全力で突っ込んで全力で剣を振る、としか言えないし・・・」

「そんな無茶苦茶な理論であの強さなんすか!?」

「そうだね。というか無茶苦茶な理論て・・・」


どうやら今日はシュウの精神が削れる日らしい。


「むう、じゃあ正式にパーティーに入れてもらえませんか?うち、まだ全然ですけど全力で頑張るっす!」

「えーと、ティアナ?」

「・・・フィアさん、残念ながら私たちは今のところ新しいパーティメンバーを求めてはいません。

ですのであなたを迎え入れることは・・・」


ティアナが言いかけたところでフィアが爆弾を投下してくる。


「恋仲のお二人の間に入るのは気が引けるっす。でもうち、強くなりたいっす!シュウさんの側にいれば強くなるための何かがつかめるような気がするんす!」

「ここここ、恋仲って・・・・。

私たちはそんなんじゃありません!!」

「え、うちてっきり・・・。いや、今はそれよりお願いするっす!」

「~~~~ッ!・・・分かりました」

「ティアナ、いいの?」

「しょうがないでしょう。全く引く雰囲気がないですし・・・」

「ティアナがいいなら歓迎しよう。フィア、これからよろしくね」

「はいっす!」

「あ、シュウ?フィアさんの言ったことは気にならないのですか?」

「ん?俺とティアナが付き合ってるってやつ?ティアナが自分で否定した通り、俺達は冒険者パーティーであってそういうんじゃないだろ?」

「・・・」

「あー、シュウさん。勘違いしたうちが言うのもアレっすけど、そう言われると女の子は傷つくっすよ?」

「えー・・・」


女の子の扱いの難しさは日本でもこの世界でも変わらず難しいなぁ、と思うシュウであった。


◇◆◇


フィアがパーティに加入することが決定した後、村での仕事を終えた商人と共にラグスの街へと戻る。

行きと違って帰りは特にトラブルもなく順調に進んだ。


途中、ゴブリンの襲撃があった場所を通ったが、ティアナの魔法により地面が少し焦げた跡と、ゴブリンが持っていたであろう木の棒が数本残っている程度でゴブリンの死体は残っていなかった。

これが物語であるような討伐証名部位を持ち帰らない理由である。

どうやらモンスターは空気中の魔力の偏りによって出来た魔力溜まりから生まれてくるらしく、死ぬと再び空気中の魔力へと還っていくらしい。

なので基本的にモンスターの一部を剥ぎとっても時間が経てば魔力となって消えてなくなってしまうため何も残らないのだ。

それが魔法が衰退してしまったこの世界でも魔力が一般常識の知識として残っている理由のひとつでもある。

ある意味魔力が目に見える形で存在するので当然だろう。

人類の認識として魔力を大量に所有していても役に立たないが、全く無知だと命に関わる存在へと変化するという厄介なものということになっている。

また、死んでも魔力に還らず、素材として使えるモンスターも極少数だが存在している。

そのようなモンスターはあまりに希少すぎる上に大体強力な力を持っているので倒されてしまうようなことは無いのだが。


そのような事を説明されたな、と思い出しながらもシュウたちは街の方へと進んでいく。

空が夕暮れに染まる頃、一行は無事に街の中へと入ることが出来た。

商人から依頼達成のサインを貰うことが出来たのでこれで護衛依頼は完了である。

その後、ギルドへ向かい報酬を受け取ったところでフィアが口を開く。


「シュウさん、お疲れ様でした!報酬に関してはシュウさんが管理お願いするっす。

あと、うちもシュウさんたちと同じ宿に引っ越そうと思うんで部屋の方取っておいてもらえるっすか?」

「ん。了解」

「お願いするっす。じゃあ、うち荷物取ってくるっす」


そう言ってフィアは自分の泊まっていたであろう宿の方へと走っていたのだった。


「よし、じゃあ宿に戻ってフィアの分の部屋を取ろうか」

「そうですね。それと、その後で少しお話があります」

「・・・何でしょうか?」


ティアナの口調から嫌な予感がしつつもシュウは先を促す。


「ゴブリンと遭遇する前にシュウは出身地の話をしていましたが、記憶が戻ったのですか?」

「・・・あ」


うっかり口を滑らせていたことに気づいたシュウであった。


もっとフィア(の尻尾)を活躍させたいです。

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