第19話_ぼっちは寂しいです
あれからも戦闘訓練を行い、エルグから「もう来なくていいだろう!というか俺が限界だ!!」と言われるまで通い詰めた翌日、シュウたちはギルドへと来ていた。
また訓練場に行ってエルグを困らせてみることも考えたが、流石に恩を仇で返す形になるためやめておいた。
今日は普通に依頼を受ける予定だ。
「お、オーグの調査依頼がまだ残っているんだな」
「そうでしょうね。あくまでも調査依頼なのでそこまで報酬も多くないですし、ヘタするとオークの戦闘になることを考えると中々受ける人はいないでしょう」
「ふーん。まぁ、ランクが条件に達していないから俺達には関係ないな。えーと、今日はどれを受けようか・・・」
依頼板の前で2人が悩んでいると後ろから話しかける人物がいた。
「あ、あの!」
「「?」」
「ッ!」
シュウとティアナが同時に振り返ると話しかけてきたと思われる狐耳獣人の少女は何故か慌てたような表情を浮かべていた。
「あ、あのですね!受ける依頼はお決まりっすか!」
「えっと、まだですけども」
何やら決意を決めたように話しかけてきたのでシュウも多少警戒しつつも話を聞く。
「もしよければ一緒に護衛依頼を受けませんか!?条件が3人以上なのでうち1人じゃ受けれないんす!!」
「えーと、詳しく聞かせてもらえますか?あともう少し力を抜いていただけるとこちらとしても助かるのですが」
「ッ!?す、すいません!!」
◇◆◇
ギルドに併設されている休憩コーナーに移動したシュウ達は取り敢えず売店で買った果汁水を飲みながら依頼板のところで話しかけてきたフィアと名乗る少女の話を聞いていた。
「えーと、つまり君は冒険者になってFランクになったはいいけど採集依頼しか受けてなくて、ギルドの人から討伐か護衛任務を受けるように言われたんだね?でも」
「はい、そうなんです。でも討伐は1人じゃ怖いので誰かと一緒に入れる護衛なら出来るかなぁ、と」
「それで近くの村までの護衛任務を受けようとしたら3人以上必要だと言われて俺達に声を掛けたわけだね」
「えっと、そうなんです。報酬は3等分なのであなた方パーティとして考えればメリットはあるかなぁ、と」
「うーん、どう思う、ティアナ?」
「いいんじゃないでしょうか?いつかは護衛依頼も受けなきゃならないので経験を積む意味でもちょうどいいですし」
「本当すか!?あ、あの、精一杯頑張りますのでよろしくお願いします!」
フィアはそう言ってフサフサの尻尾を振りつつも明日の約束を取り付け去っていったのでシュウはふと思う。
(そういえばフィアのランク聞いただけでこっちの話してないや。まぁ、明日話せばいいかな)
本来、冒険者同士ではお互いの手の内を完全にさらけ出すことはしないが、臨時でもパーティを組む相手同士は最低限情報共有をするのが普通だ。
だが、お互い新人同士な上にシュウは未だこちらの常識には疎いので軽く考えていた。
◇◆◇
フィアの頼みを了承した翌日、護衛対象の商人とギルドで合流し、シュウ達3人は出発することになった。
目的地はスムーズに進めば夕方には街に帰ってこれる距離の村でいつもは護衛を雇うことはしない場所、最近モンスターの動きがやや怪しいということで念のため護衛を雇うことにしたそうだ。
シュウ達3人は商品とともに馬車の荷台に座っており「思ったより楽だなぁ。馬車の後を徒歩でついていくよりはマシだけど」などと考えていた。
ゲームや物語だと確かに徒歩でついていくパターンもあるのだが、その分全体の行進速度が落ちてしまうし、護衛用に馬車を別途用意するような余裕もないので、いつもより荷物は少なくなるがしょうがない、という証人の判断であった。
「うーん、黙って座ってるだけってのは楽だけど、馬車に揺られてお尻が痛いや」
「シュウ、これも慣れですよ」
「あははは、早く慣れたいね。フィアは大丈夫?」
「え?えっと、大丈夫っす」
「もしかして初めての護衛依頼で緊張してる?」
「それもあるんですけど、初対面の商人さんもいるから落ち着かなくて・・・」
「もしかして人見知りするほう?」
「はい・・・」
「それでよく俺たちを誘えたね」
「えっと、ギルドの職員さんに言われて必死だったっすから」
「あー、それも慣れだね」
「はいっす」
同じ冒険者ということでフィアと最初よりは距離が縮まったように思えたが、完全に打ち解けられたわけではないようだ。
この辺は徐々にだな、とシュウは思っている。
◇◆◇
朝に街を出発して日も少し高くなった頃、行程の半分ほど来たということでシュウ達一行は休憩することになった。
「うーん、ホントにお尻痛いや。次護衛依頼受ける時はクッション買っておこう」
シュウがなれない乗り物に苦労しながらも順調に進んでいた。
「シュウ、休憩と言っても私たちは護衛をしているのだから気を抜きすぎないでくださいね」
「はいよっと。このまま順調に行けばお昼ころには目的地に着くんだっけ?」
「そうらしいっす。うちも行ったことのない場所だから商人さんが言うには、ですけどね」
「何事も無く依頼達成できそうですね」
「あっ、それフラグ」
「「?」」
ティアナとフィアが揃って首を傾げるが、シュウは嫌な予感がしたので周囲を見渡している。
「・・・あー、やっぱり来たか」
「来たって、何が来たのですか?」
「ほら、あっちを見てみて。何かこっちに向かってきてるでしょ?」
「ひっ。あれってゴブリン!?しかも多い!!どうしよう、うち戦えるかな・・・」
「俺の出身だと、ああいう風に無事に済みそう、とか言うと良くないことが起きるって言われてるんだよね」
「え?」
「そんなことよりほら、商人さんに教えてあげなきゃ」
ティアナが何か言いたそうにしていたがゴブリンが大勢押しかけてきているので悠長に話している暇は無いと判断し、シュウが指示を出す。
ティアナも状況が状況だけにそれ以上追求をせずに指示通り商人へゴブリンが来たこと、逃げる準備をするように伝える。
しかしいくらこちらが馬車といっても、商品が可能な限り積まれている状態では中々速度を出すことが難しいのでシュウは時間稼ぎのため多少攻撃をする決断をくだす。
「この距離じゃあ馬車に追いつかれるかもしれない!俺が足止めしてみる」
「ふぇ!?無理っす!あんなに沢山向かってきてるすよ!?逃げましょう!」
「いいえ。時間稼ぎのためにも攻撃するのはありです。というかシュウ、あなたなら一瞬で何とか出来るのでは?」
「うーん、商人さんとフィアもいるし余り派手にはやりたくないなぁ。・・・突っ込むか」
「分かりました。それじゃあ私は援護しますね」
フィアが完全に逃げ腰で狐耳がソワソワと動いているがシュウとティアナには関係ない。
ティアナは先制とばかりに火の魔法を放つ。
「火よ。降り注げ!」
ティアナの手から放出された火が、ゴブリンの頭上から降り注ぐ。
ティアナは火の魔法だけはある程度の威力を保ちつつ遠距離攻撃を可能にしていた。
それでもシュウのように単節で、とはいかないがそれでも充分実戦で使える速度である。
この魔法の衰退したヒースの世界でこれだけの威力を出せる魔法使いがどれほどいるのか不明だが、それでもティアナは決して下位のほうではないだろう。
そんなティアナの攻撃をまともに浴びているゴブリンは堪ったものではない。
だが攻めてきたゴブリンの数の多さもあり、倒せたのは5匹ほどだろう。
残りはダメージを追ったが動ける者、運よく範囲外だった者達が合わせて20匹以上はいる。
「魔法!?でもまだいっぱい残ってるっす!」
フィアが何か騒いでいるがティアナはあえて無視する。
「シュウ!後はお願いします!」
「了解!」
ティアナの放った火が消えきらないうちにシュウが飛び出す。
魔力による身体強化と刀身強化済みだ。
エルグでさえ捌くことの出来なかった身体強化に合わせて刀の切れ味が増す刀身強化によりゴブリンたちはなすすべなく一撃で斬り倒されていく。
フィアや商人がいるので魔法を使わないようにしているシュウだが、魔力による強化だけなので傍目にはただ単純にゴブリンを斬っているように見える。
それでもその速さは充分異常だが。
5分も経たないうちにゴブリンの全滅に成功した。
「ふう、これで全部かな?」
「お疲れ様です。シュウ」
「はい、お疲れ。フィア、そっちは大丈夫だった?」
「・・・」
あまりの出来事にフィアは硬直しておりすぐに返事できる状態ではないようだ。
(うーん、これでも他の人から見ると異常なのかな?)
自分の仕出かしたことだがどこか他人事のように考えているシュウであった。
新キャラ登場です。
ちなみに投稿主は獣耳より尻尾のほうが好きです。




