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第16話_ランクが上がりました

「ふう、片付いた」

「シュウ?最後のは何をしたのですか?」

「ん?風刃って魔法を使ったことがあっただろ?あれを剣に纏わせてみた」

「纏わせてみたって・・・練習してたのですか?」

「いいや、ぶっつけ本番。いやぁ、成功してよかったぁ」

「・・・言いたいことはありますが今は我慢します」

「?」


ティアナが言っている意味がよく分からなかったが、2匹目のオークによって頬に付けられた傷が気になるのでそちらの対処をすることにした。

左手を頬に当ててそこから傷口を活性化させるイメージで魔力を流してみる。


「少しむず痒いけど取り敢えず血は止まったかな?」

「待ってください」

「どうかした?」

「やっぱり言うことにします。今何をしたのですか?」

「何って・・・怪我したから治療だけど?」

「治療って・・・簡単に言いますがそんなことできる人いませんよ」

「いないって、今眼の前にいるじゃん」

「言い方を変えます。こんな非常識なこと出来る人はあなたくらいです」

「非常識って、酷い言い方するね」

「事実ですので」


どうやら本気で言っているらしいティアナに対してシュウは納得するしかない。


(うーん、回復魔法ってゲームとかでは定番だからこっちの世界でも存在くらい知られてると思ったんだけどなぁ)


自分が魔法を使えるためいまいちこちらの世界が魔法が衰退していて自分が常識から外れた存在であることを実感できていないシュウであった。


◇◆◇


オークと遭遇するトラブルはあったが無事に目標討伐数のゴブリンを倒せたのでシュウとティアナは街へと戻ってきていた。


「シュウ、いいですか?さっきの約束は守ってくださいね」

「約束ってアレだろ?俺の使える魔法については誰にも言わないってやつ。

そこまでする必要あるのかね?」

「何故そこまで開き直れるか逆に聞きたいですが、アレはダメです。

この世界の常識が崩れます。というか最悪でも最後の魔法だけは秘密にしていてください」

「最後のって回ふ、分かったよあの魔法ね。そんなに重要なのか?」

「バレれば貴族や王族に捕まって飼い殺しされます」

「オーケー、絶対バレないようにする。というか貴族や王族いるんだね」

「今更何を言って・・・あぁ、記憶がないんでしたね。普段そんな素振り見せないのですっかり忘れていました」

「あぁ、うん。そうなんだよね。とりあえず気をつけるね」


もちろん、シュウもそんな設定だったことは忘れていたが説明もできないので適当に相槌を打つのであった。

そんな話をしながらギルドに到着するとまずはいつもの受付嬢のところで依頼達成報告を行う。


「あ、シュウさん、おかえりなさい。初討伐依頼はどうでした?」

「えぇ、ちょっとトラブルはありましたが何とか無事に終わらせることができましたよ」

「トラブルですか?カードを拝見しますね。・・・ゴブリン15匹ですか。依頼内容より随分多く倒したようですね・・・えっ!?

オーク!?オークを倒したのですか?それも3匹も!」


受付嬢が思わず大声を出したのでギルド内で注目を集めてしまった。

冒険者達がザワつくがシュウは無視して続ける。


「えーと、どうやらゴブリンたちはそのオークから逃げてきたようでその数でした。

オークは成り行きですね」

「成り行きでって・・・Dランク冒険者でようやく1匹倒せるオークをFランクのシュウさん達がどうすれば成り行きで倒せるんですか!」

「うーん、向かってきたから頑張ったら倒せた、みたいな?あとティアナはEランクですし」

「そこはあまり関係ありませんよ・・・はぁ、まずは無事に帰ってこれたことを喜びましょうか。・・・今回の結果を踏まえてシュウさんはEランクに昇格となります」

「昇格ですか?随分アッサリですね」

「そもそもシュウさんたちは採集依頼を数回こなしてましたし、オークを倒せる人をいつまでもFランクにしているバカはいません」

「バカって・・・上げてもらえるならそれでいいですけど」

「もし次に同じようなことがあったらすぐ逃げてくださいね?今回だってシュウさんたちに万が一のことがあれば誰も森にオークが出ることを知らないまま危険な目に会う冒険者が出たかもそれないのですから」

「なるほど。そういう考え方もありますね。じゃあ次からは気をつけます」


まったく反省してい無さそうなシュウを軽く睨みながらも受付嬢は手続きを進める。


「あとこれは今回の依頼達成の報酬とオークの討伐報酬です。

オークは人間、特に女性にとって危険なモンスターなので依頼を受けていなくても討伐者には特別報酬を渡すことになっています。お疲れ様でした」


そう言って受付嬢が渡してきたのは銀貨4枚であった。

元々ゴブリン5匹討伐で銀貨1枚だったのでオーク1匹銀貨1枚という計算になる。

銀貨1枚あればティアナと二人分の宿代、食事代を支払っても少し余りが出たため今まではその余りを貯金してアランたちに返すお金にしようとしていたが、一気に銀貨3枚ほどの貯金ができたことになる。

これ以上受付にいてもすることがないので二人は宿に向かうことにした。


「じゃあティアナ。銀貨1枚は今まで通り生活費に当てて、もう1枚は念のためのパーティ共通貯金にしよう。

で、残った2枚を1枚ずつ分けようか」

「待ってください」

「ん?何か欲しいものある?もっと分けたほうがいいかな」

「そうではありません。確かにゴブリン討伐分の1枚についてはいつも通り生活費に当てることに否はありません。問題はオークの分です。

私は何もしていないので今回は全てシュウのものです」

「えー、だってティアナには危ないところを助けてもらったじゃないか」

「・・・じゃあ1枚はシュウの言うとおり共通貯金にしましょう。でも残りは受け取ってください!」

「分かったよ。今回はそういうことにしておこう」


シュウとしては少し納得いかないところもあったが、ティアナの剣幕に受け取らざるを得ないのであった。


◇◆◇


シュウの取り分の使いみちだが、1枚を更に共通貯金の方に回して残りはアランたちに渡されるのであった。

もちろんアランたちは受け取ることを拒んだがシュウも全く引かず、その日の酒代ということで消費されることになった。

ティアナとパーティを組む前は何も気にすること無くアランたちと食事できたが、流石に今は自分だけというわけにもいかず、自分のパーティ紹介も兼ねて一緒に宴会をすることになった。


「そうか、シュウ君はEランクに上がったのか」

「えぇ、あの時拾っていただかなければ今こうしていなかったかもしれません。

本当に感謝しています」


食事の最中、アランにランクが上がったことを報告すると最初の酒を飲み干したゴルドが店員さんにおかわりを頼みつつ絡んできた。


「だが坊主、ランクが上がるの少し早くねぇか?」

「そうだね。僕達がEランクに上がったのってもっと時間経ってからだったよ?」

「ええっと、実は初めての討伐依頼を受けたんですよ。内容はゴブリン5匹を倒すってやつ」

「まぁ初めてにしては妥当なところだな。あっちのイリーネと話してるお嬢ちゃんはEランクって話だし余裕だったろう?」

「そうですね。実際はゴブリンが一気に15匹襲ってきましたけど」

「15匹!?よく無事だったな」

「ティアナと2人でしたしそこまで苦労はしませんでしたよ」

「いや、2人だって15匹は苦戦すると思うんだけど」

「そこはほら、ティアナは見ての通り魔法使いなので遠距離から攻撃してもらってそのまま斬り込んだんですよ」

「おい坊主。魔法ってのはほんの少し牽制に使える程度でダメージはほとんどないって話だぞ?流石の俺でもそれくらいは知ってる」

「嘘は言ってませんよ?実際ティアナの魔法はゴブリンの体勢を崩して地面に激突させてましたし」


嘘は言っていない。


「魔法の威力については実際に見ていないから何とも言えないど、それでもそれだけでランクが上がるとは思えないんだけど?」

「実はそのゴブリンたちはオークに追われていたんですよ。で、ゴブリンを倒したあたりでオーク3匹と鉢合わせました」

「「オーク!?」」

「えぇ、そうです」

「おいおい、オークって俺達でも準備してなきゃ手こずる相手だぞ!?しかも3匹だと?」

「少し危ない場面もありましたけど何とか倒せましたね」

「少しで済んだんだ・・・。もしかして僕たちはとんでもない人物を拾ったのかもしれないね」

「確かにそうだな。こりゃあ俺達もすぐ追いぬかれちまいそうだ!

がははは、細かいことはこの際気にしねぇ!取り敢えず飲むぞ!!」


ゴルドはそう言って運ばれてきた酒を一気に流し込んだ。

それに続くようにアランもジョッキに口をつける。

2人で話していたティアナとイリーネもどうやら打ち解けて楽しく飲んでいるようだ。

こうして5人の宴会は夜が更けるまで続いたのだった。


ちなみに、その日の飲み代は銀貨1枚では足りなかったためアランたちと割り勘ということになり全くお金を返せていないことに少し頭を悩ませるシュウであった。


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