第15話_初めての討伐です
「よし、武器も手に入ったし討伐依頼をやってみようか!」
「そうね、まずは簡単なところからやりましょう」
武器を手に入れた翌日、シュウとティアナはギルドに来ていた。
目的はもちろん討伐系依頼を受注するためである。
「んー、今の俺達だとどのあたりが妥当なんだ?」
「そうね。今の私達だとゴブリンの討伐なんていいんじゃないでしょうか?
ゴブリンはいつも採集で行ってる森の更に奥にいるモンスターです。
とは言っても街の近くだし、定期的に狩られているから数としてはそんなに多くはないですけどね」
「なるほど。じゃあこれだね」
ゴブリン5匹討伐の依頼書をボードから剥ぎ取って受付に提出する。
「これ、お願いします」
「はい。あら、シュウさん。討伐依頼って初めてじゃないですか?いつも採集で森の方には行っているようですが」
「そうですね。ちょっと自主鍛錬しててそろそろいいかな、って思ったんで挑戦してみようかと」
「張り切りすぎて怪我でもしないようにしてくださいね?
あら?そういえば武器変えたんですか?確かこの間まではギルドにあった中古の剣を使ってましたよね?」
「えぇ。実は自主鍛錬中に剣が折れてしまって。それで今まで少しずつ溜めたお金で新調したんですよ。なので一気に金欠で討伐依頼に手を出そうと思ったっていうのもありますね」
「ふふ。それじゃあより一層頑張らないとですね。それにしても剣が折れたのですか・・・
そこまで壊れやすいものは新人に渡さず処分していたと思いますが・・・」
「たまたまじゃないですか?それよりも依頼の方はこれでいいですかね?」
「あ、すいません。問題なく受注されました。ちなみに討伐依頼はいつもの採集依頼と達成するための条件が異なっているのは覚えていますよね?」
「あー、そういえば銅のギルドカード貰った時に説明されましたね。
たしか討伐結果が自動的にカードに記録されていくんでしたっけ?
・・・魔法が無いのに随分ファンタジーだな」
最後のつぶやきは受付嬢には聞こえていなかったようでシュウとティアナは無事依頼を受注し、初討伐依頼へと出発したのだった。
◇◆◇
森へ入る頃にシュウとティアナは今回の動きを確認する。
「今回は基本に忠実に俺が前衛、ティアナが後衛でいこう。
ティアナの魔法も順調に威力が上がっているし上手く当てればゴブリンの動きを止めれるだろうし、俺の刀があればよっぽどのことがない限り致命的な状況にはならないだろうからね」
「それでいいです。・・・いずれゴブリン程度一発で倒せるだけ魔法の威力を上げてみせますが」
「地道に努力していこう。あ、あと今回は森のなかだから火の魔法はお互い禁止ね。火事になっちゃうし」
「ものすごい短期間で高威力の魔法を放てるようになったシュウに地道にと言われても納得出来ないところはありますが火の魔法については分かりました」
話しながらも周囲を警戒しつつ森の奥へと進んでいく二人。
いつも採集するために訪れる森の浅い部分と違って陽の光が届きづらいのか少し薄暗いが周囲の様子は普通に見えるし草の陰に隠れていないかぎりは離れていても充分発見できるだろう。
(それでも今後のことを考えると周囲の様子を把握する術は身につけておいたほうが良さそうだなぁ。
あと道具をしまっておくアイテム袋的なやつ。
ゲームの主人公とかよくあれだけの荷物を持って行動できるよなぁ・・・
ん?なんだあれ)
現代日本で培ったライトオタクとしての思考にふけりつつも警戒をしていると進行方向から何かがやってくるのが見えた。
「ッ!ティアナ、前方から何か来るぞ!」
「あれは・・・ゴブリンですね。ですが数が多い!どうしますか?流石にあの数は少し危険があるかもしれません」
「とは行っても逃げてる最中に追いつかれて変なところで戦闘になるより今いるこのあたりなら少し開けているしここで迎え撃とう!俺も魔法を使うから遠距離から出来る限り仕留めるぞ!水龍ッ!!」
「分かりました。・・・風よ!」
前方からおそらく全力と思われる速度で向かってくるゴブリンに向けてそれぞれ魔法を放つ。
シュウの放った水龍が先頭のゴブリン数匹をまとめてなぎ倒す。
倒れたゴブリンに突っ込む形になった後方のゴブリンが体勢を崩したところで特訓により威力を増したティアナの風魔法が襲いかかり、次々と転んでいく。
さすがに全力疾走からの転倒はゴブリンにそれなりのダメージを与えたのか痛みに苦しんでいるようだ。
それでもシュウたちの近くまでゴブリン数匹がやってくる。
(近くで見るといかにもゴブリンって感じだな。俺の半分くらいの高さしか無いし肌が緑だし服?がボロボロで棍棒っぽい物を持ってるし)
流石にここまで近づかれるとシュウも近接戦闘を選択せざるを得ない。
黒刀を抜き放ち自己流だが油断なく構え、体と刀に魔力を通わせる。
身長差やリーチの差を理解できないのかゴブリンはギャギャギャと鳴き声を上げながらも襲いかかってきたがシュウは余裕を持って回避しそのまま黒刀で斬りつける。
ゴブリンは全く対応できずそのまま斬り裂かれ緑色の血を出しながらも倒れた。
シュウはそのまま残るゴブリンへと向かっていき全てのゴブリンを倒したのだった。
「ふう、これで全部かな?」
「いえ、先程の魔法でまだ死んでいないゴブリンがいるから止めを刺しましょう」
「あー、うん。止めね」
ティアナは持っていたナイフを抜いて魔法で倒れたゴブリンへと油断なく向かっていく。
元々は威力の低い魔法で牽制しつつナイフで斬りつけるというスタイルでEランクになっただけあってその扱いには全く迷いがない。
シュウもただ見てるだけでは悪いと思い油断しないように黒刀を構えゴブリンに止めを刺しに向かっていく。
(そういえばこのサイズの生き物を殺したのって初めてだなぁ。
もっと嫌な気分になって吐いたりするのかと思ったけどそうでも無いなぁ。
いい気分でもないけど)
実は女神リエルに貰った胃腸が強くなる加護によってストレスによる胃腸へのダメージにも強くなっており、気分は悪くなっても物を吐いたりすることは無くなったりしている。
ストレスが掛かる=胃腸が痛くなる、という理論なら逆説的に胃腸が痛くならない=ストレスにも強い、でいいじゃんという適当な神様理論が関係してそうな気もするがシュウが気づいていないので今後誰も気にしないだろう。
◇◆◇
「よし、これで全部かな?」
「そうですね。それにしても数が多いのが気になりますね」
「全部で15匹か・・・普通の群れってもっと少ないの?」
「ゴブリンの巣に行けばそれ以上いたりしますが森を歩きまわってるようなのは普通多くても3匹ですね。
それが15匹、それも周りが倒れてもそのまま向かってきました。
慌てて何かから逃げてきたような印象を受けますね」
「で、逃げてきた先に俺たちがいて戦いになったのか。
お互いなんとも運が無いな。というかゴブリンが逃げてきた要因がこの先にいるってことかな?」
「確定は出来ませんが、可能性としてはあるでしょう。
何かしらの以上がある場合、一応ギルドに報告しないといけませんし少しだけ調べてから帰りましょうか」
「そうだね。・・・あー、ちょっとまずいかも」
「どうしました?何かいまし、た・・・か?」
会話の途中シュウの目に飛び込んできたのはゴブリンのやって来た方向から近づいてくる大きな3つの物体だった。
「オーク・・・それも3匹も・・・」
「あれがオークか。強いの?」
「ランクDの冒険者なら勝てますね。一対一の場合ですけど」
「あれがオークね。イノシシタイプなのか」
「なにを冷静に言っているのか分かりませんが流石にマズイです。
普通なら1匹で行動するはずのオークが複数向かってくるなんて・・・
さすがに無理です。逃げましょう」
「逃げたいけど、やっぱり足は遅くないみたいなんだよね。
よし、ちょっと全力で戦ってみるからティアナは離れてて。
危なくなったら逃げてね?」
「何を言っているのですか!?
いくらシュウが強いと言っても鉄を切り裂ことや岩を砕く魔法を放つことが出来るとしてもオークに勝てるとでも・・・勝てますね」
「でしょ?でもどんな影響が出るかわからないから離れててね?」
「分かりました。でも危なくなったらちゃんと二人で逃げますよ?」
「当然。こんなところで死ぬつもりはないよ」
多少腕に自信がある程度では完全に危険な行為だが、この世界において規格外なシュウなので納得出来るところもありティアナはおとなしく離れることにした。
万が一の場合でも見捨てるつもりはないが。
「さーて、まずは全力の水龍かなッ!」
ゴブリンの時同様水龍を放つシュウ。
しかし全力という言葉通りゴブリン相手にはなぎ倒すだけだった水龍が数倍の重量を誇るであろうオークを吹き飛ばす。
軽く数メートルは吹き飛んだオークは木にぶつかり折れた木と共に倒れて動かなくなった。
その様子を見ていたティアナは思わず吹き出しそうになった。
一緒に訓練していた時のシュウはこれほどの威力を出したことは無かった。
それが今目の前でとんでもない威力となって出てきたのだ。
驚くなという方が無理だろう。
そして驚いていたのはティアナだけでなくシュウもだった。
(あれぇ?なんでこんなに威力出るんだ?確かに全力でやってみたけど・・・
あ!もしかして刀握ってるからか?ゴブリンの時は抜いてなかったし、魔鋼製の武器って魔法の増幅器の役割も果たすのかな?)
戦いの最中だというのに思わず考えこむシュウ。
しかしそれは致命的な隙であることは言うまでもなく残ったオークの1匹がシュウの直ぐ側まで迫っており、手にした棍棒を振り上げていた。
「シュウッ!!」
「ッ!」
ティアナの声で状況に気づいたシュウはかろうじてオークの攻撃を躱すことが出来た。
それでも僅かにかすったのか頬から血が出ていた。
「ティアナ、助かった!」
お礼を言いつつも今度は黒刀に魔力を通しオークに斬りつける。
オークは棍棒で防御しようとしたが流石に相手が悪くそのまま斬り裂かれた。
(あと1匹!)
今度はすぐに意識をまだ少し距離のある最後のオークへと移し、魔力を通した刀に風の魔法を纏わせ振り上げる。
「風刃ッ!」
刀を振り下ろすと同時に風刃を発動するシュウ。
それはまさしく飛ぶ斬撃だった。
最後のオークは何の抵抗もすることが出来ず倒れたのだった。
書きたかったチート無双です。
ただ、アッサリと終わってしまったので今後機会があれば書きたいテーマです。




