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第14話_魔鋼製の刀らしいです

「うーん、これが魔鋼(まこう)かぁ」


シュウは自分の手にある小石程度の塊を観察している。

触っている感じ確かに石より硬そうなので金属であることは間違い無さそうだった。

元が鉄製なのだから当たり前か、と考えていると呆然としていた店主とティアナが帰ってくる。


「ねぇ、シュウ?あなたいったい何をしたの?」

「何ってさっき聞いたように砂に魔力を通して塊になるようにイメージしただけだよ?」

「しただけって・・・坊主、お前何者だ?」

「何者ってただの駆け出し冒険者ですよ?」

「あー、なんかどうでも良くなってきた。・・・よし、出来たもんはしょうがねぇ。取り敢えずその塊を貸しな」

「あ、どうぞ」

「・・・ふぅむ、こんなにキレイな黒い金属は見たことがねぇな。これが魔鋼なのか?」


店主がブツブツとつぶやきながらシュウの創りだした黒い塊を眺めたりナイフで傷をつけようとしてみたりハンマーで叩いたりしている。


「本当にこんな物は見たことがない。だが叩いてみた感じ普通の金属のような鍛造じゃあ武器に出来んぞ?

あの話が本当なら最初の砂の状態から武器にしないといかん」

「そうしようと思ったんですけど砂の量的に武器にするのは難しいかなぁ、と思って取り敢えずただの塊にしてみました」

「なるほどな。ならちょっと待ってろ」


店主が何かを考えてから店の奥に引っ込んでいった。

少し待っていると奥から剣らしき物が大量に入った樽を持って店主がやってきた。


「こいつらは折れたりして修理するよりも新しい剣を買ったほうが安いって連中が置いてったもんだ。

まったく最近の若いもんは武器を大切にすることをしねぇ・・・

つーわけで、これを全部魔鋼にしてみな」

「え、でもそれだと溶かすことも出来なくなるんじゃ?」

「どうせ溶かして固めたところでムラのある鉄にしかならん。

ならお伽話の検証に使ったほうがより建設的だとは思わんか?」

「うーん、そうなのかな?あなたがそれでいいのなら使わせてもらいますが」


そう言ってシュウは樽の中の適当な剣に触れる。

ふと思い立って樽から取り出したりせずそのまま魔力を流してみる。

すると普通の剣でやってみた時よりはるかに魔力を吸われているような気がするがそのまま流し続ける。

ある程度魔力を流すと樽の中身が一気に黒い砂に変わったのを見て店主とティアナが諦めたような表情で、だが何も言わず見つめていた。


(よし、結構な量の砂になったな。あとはこのまま・・・)

シュウはそのまま自分の思い描く武器を想像するべく自分の創りだした樽の中ほどまで入った砂に集中する。

(可能な限り強固に、それでいて軽く、魔力を存分に通せる武器に・・・)

シュウの割りと無茶苦茶なイメージでもこの世界における魔力S+というチートなステータスや現代日本で得た中途半端ではあるが洗練された技術がその無茶を現実にする。

鉄を砂状にするより遥かに多い魔力を消費してようやくシュウに若干の気だるさが現れ始めた頃、シュウの手に握られた柄には砂と化して消えた刀身の代わりに別の刃が付いていた。


「何だと!?」

店主が驚いた声を上げるが、シュウは初めて訪れる軽い気だるさによって一瞬気づくのが遅れたが、その手にはシュウ自身が創りだした黒刀が鈍く輝いていた。


「おい、坊主。お前何してんだ!?」

「え?」


シュウは驚いて樽の中を覗き込むがそこにはそれなりの量があった砂が一粒も残っていなかった。

正確には砂にならなかった剣の柄部分が残っていたが。


「あ、そうか。剣を全部使っちゃったし、剣の柄は砂にならなかったんだった!刀と変に合体しなくてよかったぁ」

「そうじゃなくてな、刀って言ったか?その妙な反りのある剣を一本作るだけで何で樽一杯に入った剣から作った砂を全部使うのか、って聞いてるんだ!」


どうやら店主は剣全てを砂にしたり、ちゃんと分別しないまま作業したことより砂の使用量が気になったらしい。


「えーと、もうこの砂の使いみちはこうやって加工するしか無いよなぁ、と思ってできるだけつぎ込んで可能な限り頑丈にしようと思ったらこうなりました」

「理屈は分かる。だがあれだけの砂をつぎ込んじまったら重くて振りませんだろう!

ちょっと貸してみろ!ほら、こんなに重・・・軽いな」

「そうですね。ビックリです」

「いや、ビックリってお前なぁ・・・まあ使っちまったもんはしょうがねぇ。

ホントなら余った分は色々実験したいこともあるし分けてもらおうと思っていたんだが」

「あ、すいません」

「構わん。元々はお前さんに譲ったもんだ。だが良ければワシの研究用にまた砂を作ってくれ。材料なら渡す」

「分かりました。それなら最初に作った塊も一緒に調べて見てください。

砂のままと塊にしてからだとどんな違いがあるのか見るにはちょうどいいと思いますし」

「なるほどな。確かに状態が違えば何か変化の差があるかもしれん」

「あと今回使った剣のお金ですが、すいませんけどちょっと待ってもらってもいいですか?

依頼をこなしてすぐ支払いに来ますので」

「その金ならいらんよ。さっきも言ったがあれはお前さんに譲ったつもりの物だ。

それにいくら金を積んでも手にはいらん貴重な物を貰えるんだ。

これ以上は受け取れん」

「あー、それじゃあありがたく頂いておきます」

「あ、待て」

「やっぱり少しでも支払ったほうがいいですか?」

「そうじゃない。お前さんの作ったそれが本当に魔鋼製の武器だとするのなら魔力を通してみてくれんか?

魔力を通したらまた砂状になったんじゃお前さんらも困るじゃろう?」

「確かにそうですね。じゃあやってみますね」


シュウは黒刀に魔力を通し始める。

すると普通の剣に通すよりスムーズに、かつ先程よりも少ない魔力で剣全体に魔力が行き渡る感覚が訪れた。

だが実戦で突然また砂になられても困るので耐久力を調べる意味でも念のため更に多くの魔力を注いでみる。

感覚的には魔力を行き渡らせた分の2倍程を注いでみたが黒刀は砂になる様子が一切なく、それでいてなんとなくだがより鋭く、さらに黒刀も自分の体の一部ように馴染むような不思議な感覚が出てくる。


「すいません、今度は鉄の固まりとかありませんか?

今度は多分砂にならないのでちょっと貸して欲しいんですが」

「鉄の固まりだと?武器を作る用にあるにはあるが何に使うんだ?

さすがにその状態の鉄を使えなくしたら金を請求するぞ?」


そういいながらも店の奥から2キロ程の鉄の塊(インゴット)を持ってきてくれる。

シュウはそれを受け取り、一応念のため端から1センチほどの所に刃を合わせる。

そのままゆっくり刀身を塊に降ろしていくと鉄がまるでバターのようにキレイに切り落とされた。


「「は!?」」


ティアナと店主の声がまたしてもキレイに揃い、この二人息ぴったりだなぁ、などとシュウが考えていると、


「待て待て待て!今度は何をした!?」

「何って魔力を通したら切れ味が上がったような気がしたので鉄の塊をスライスしてみたのですが」

「スライスって・・・シュウ、あなたどこまで非常識なの?」

「非常識って失礼だなぁ。一応これでも常識を持って行動しているつもりだけど?」

「行動っていうか最早あなたの存在が非常識に思えるわね」

「全くだ」

「失礼な!」


とシュウに対して若干引いたような二人がいた。

ちなみにこの世界でも剣を使って敵の鎧を切り裂くことの出来る剣士は数こそ少ないが存在している。

だが、鉄の塊をバターのように切り裂ける腕を持った剣士も、それを可能とする剣も存在しないはずなのだ。

それを目の前でアッサリとやってのけたシュウとシュウの創りだした黒刀に対して引くなという方が無理だろう。

それでも年の功か、現実に戻ってきたのが早かったのは店主の方である。


「あー、ワシも長年色々な武器を作っているがこれほどまで切れる剣は初めてだ。

いや、刀だったな。おそらく形状を見るに切ることに特化しているんだろう。

それでも普通の材料だと鉄の塊は切れそうにないがな」

「そうですね。刀は敵を切ったり突くことに優れていますね。一応俺の出身地の方で(昔は)普通に使われていますし」

「なるほどな。いや、いいもんを見せてもらった!

ところで今気づいたんだが、お前さんその刀どうやって持ち運ぶつもりだ?

普通の革製の鞘だと入れた瞬間切り裂きそうだが?」

「あ!そうか。鞘も作っておけばよかった・・・刀本体のことしか頭に無かった」

「やはり考えていなかったか。じゃあお前さんが今切った鉄塊の大きい方を使って作るといい。

刀身と違って簡単に切れない程度の強度でいいならその量でも充分だと思うが?」

「え、でもこの量の鉄塊って結構値が張るんじゃ?」

「いや、いいもんを見せてもらった礼だ、使ってくれい!そのかわりと言ってはアレだが小さい方の塊も砂にして置いていってくれ」

「それじゃあありがたく頂きますね」


もらった鉄塊でシュウは刀を作った時と同様の手順で鞘を作る。

重量が少ないためか使う魔力も少なく済んだがそれでも刀をしっかりしまえる軽量の鞘が出来た。

(あれだけ量のあった砂を全部使って刀を作ったことといい、その刀をすっぽり納めれる鞘が明らかに刀身より少ない量で出来たり質量保存の法則とかないのかな?)

と考えてみるがもちろん答えは出ないので難しくは考えないことにした。

深く考えたら負け、の精神である。


異世界で魔力を使って黒刀を作りました。

まさしく中二病です。

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