第13話_武器を調達します
剣が突然黒い砂になってしまったのを呆然と見ながらティアナが先に現実に戻ってくる。
「シュウ!いったい何をしたのですか!?」
「い、いや、剣に魔力を通してみただけだよ。剣に魔力が行き渡ったと思ったら剣が砕けたんだ」
「ふーむ、その剣は新品を買ったのですか?」
「ギルドからもらった中古品だけど?」
「では元々傷があったので魔力が注がれるのに耐えられず砕けたのでしょうか?」
「それだけでただ砕けるだけじゃなくて砂みたいになるの?」
「魔力を武器に注ぐ事自体今は誰も使わない技術なのでなんとも言えませんね。
分かるのは剣が無くなってしまったので新しい剣を買わないといけないですね」
「あ・・・」
アランたちにお金を返すのが遅れること(そもそも催促されていない)が決定した瞬間であった。
◇◆◇
シュウの武器が壊れた翌日、シュウとティアナは街の武器屋に来ていた。
「はぁ、ようやく少しでもお金を返せると思ったのに・・・」
「壊れてしまったのはしょうがありません。できるだけいい武器を手に入れて討伐依頼でもこなしてお金を得ましょう」
「そうだね。今までは採集系依頼しかやってこなかったからそろそろ討伐依頼もやってみるか」
様々な武器を見ながらティアナと今後の相談をする。
買うものは以前のものと同じような剣なのだが柄の太さや全体的な長さなど選択肢はそれなりに多かった。
すると奥から店主と思われる人物が出てきた。
背は低いが筋肉がしっかりと付いており、ヒゲを生やした姿はシュウの知っているドワーフそのものだった。
「おう、坊主ども。剣を探しているのか?」
「はい、そうなんです。前の剣はちょっと折れちゃって」
「ほう、折れた剣は持ってきていないのか?場合によっちゃあ直せるかもしれんが」
「あー、結構粉々になっちゃったんでおそらく修理は無理かと思ってそのままにしてきちゃいました」
「粉々だと?どんなモンスターと戦ったらそんなことになるんだ?」
「戦いで壊れたわけじゃなくて訓練中にそうなったというか」
「訓練中だと!?それ以前にどんな使い方をしてきたんだ?」
「どんな、と言われても。冒険者ギルトに登録した時に貰った中古の剣でしたので」
「あぁ、なるほど。余程変な剣を貰っちまったわけだ。その点ワシの店でならどの武器でも一級品とまではいかんがそれなりの品ばかりだ。どうだ?ワシが見繕ってやろうか?」
「ありがたいのですが予算がこれしかなくて」
「ふぅむ、銀貨1枚か。それならこの辺の棚の剣だな」
「すいません。まだ駆け出しなもので」
「構わんよ。この街はベテラン冒険者もいるにはいるがどちらかと言えば周囲にモンスターも少ないんで初心者冒険者が多くいるんだ。この店にあるのはそんな連中用の武器さ」
「なるほど。・・・あ、この剣いい感じですね」
「ふむ、その剣か。それは銀貨1枚からだと少し足が出るな」
「じゃあ無理ですね。えぇと他に良さそうなのは・・・」
「まぁ待て。足が出ると言っても少しだけだ。今回はまけておいてやる」
「え?良いんですか?」
「その代わりと言っちゃ何だが、今後武器を買い換える時はワシの店に来い。その時は思いっきりふんだくってやるわい!」
「あはは、じゃあお言葉に甘えさせていただきますね」
「おう!そっちの嬢ちゃんは何かいるものはないか?」
「私は今のところ大丈夫です。でも何か必要になったら寄らせてもらいますね」
「わははは、待っておるよ!」
気さくな店主のおかげで良い剣が手に入り、シュウはホクホク顔で武器屋から出る。
「良かったわね。いい剣が手に入って」
「ああ!これで討伐依頼もバッチリさ!」
「でも今日も採集系に行きましょ?それでいつもの岩場で剣の具合を確かめて討伐系は明日からにしましょう」
「そうだね。慎重に行こうか」
武器が手に入り、浮かれたまま討伐系に出掛けるのは危険だということで今日はいつも通りに採集を行うことにしたシュウ。
それでもいつも通り岩場に行ってからの楽しみがありいつもよりワクワクしながら採集のため森へ向かうのであった。
◇◆◇
「で、お前たち何をしに来た?」
新しい剣を手に入れた翌日、シュウたちは再び武器屋に来ていた。
「えぇとですね。実は昨日頂いた剣なんですけども・・・」
「・・・」
シュウは言いにくそうに、ティアナに至っては素知らぬ顔であさっての方向を見ている。
「その剣が訓練中に折れてしまいまして・・・」
「それで文句でも言いに来たのか?」
「ち、違います!ただ中古でもいいので安く剣を譲っていただけないかと思いまして」
「・・・その前に、だ。折れた剣は持ってきたのか?」
「一応可能な限りかき集めて袋に詰めて持ってきました」
「かき集めてだと?随分粉々になったような口ぶりじゃないか」
「粉々といいますか、粉といいますか」
「?取り敢えず見せてみろ」
「これです」
シュウは小袋と剣の柄を差し出す。
「うん?この小袋に収まるようなサイズに折れちまったか!?」
「見ていただいたほうが早いと思います。」
武器屋の店主は袋を開けてみる。しかしそこには剣の破片などひとつも入っていない。
入っているのは黒い砂だけだった。
「おい、剣の欠片も入ってないじゃないか。こんな砂を見せてどうしようってんだ?」
「あー、その砂が剣なんですよ」
「バカを言うな。これは剣じゃなくてただの砂だろ?仮に剣の欠片だとしても剣は銀色のはずだ。黒じゃない」
「えーと、剣の欠片が変色したというか」
「・・・最初から詳しく聞かせろ」
シュウは昨日あったことを説明する。
まず剣を手に入れてから採集のために森へ向かい、無事依頼にあった物を採集完了した。
その後いつも通り岩場へ向かい剣の具合を確かめることになった。
軽い素振りをして問題なかったので前の剣同様に魔力を流してみた。
新品なので問題無いと思ったが魔力が行き渡ったと思ったら砕けて黒い砂になった。
取り敢えず地面に落ちた砂をかき集め小袋に入れた。
入れた理由としてはあまりの出来事に呆然とし特に理由があるわけでもなく集めた。
そうして一晩経ったあと剣が無いとマズイので再び武器屋に行くことになり今に至るということだった。
「・・・まず言いたいのは剣に魔力って何だ?そんなことする奴は初めてだ」
「えぇと、昔は魔法戦士という職業の人が杖に魔力を纏わせて戦っていたと聞きまして、剣でも同じように出来ないかと思って試していたんです」
「魔法戦士か・・・そういえばそんな職業があったらしいな。なるほどそっちの嬢ちゃんは魔法使いの格好していると思ったらホントに魔法使いだったわけだ。で、坊主は嬢ちゃんから聞いてやってみた、と」
「そうです。でもティアナは教えてくれただけで実際にやったのは俺でして」
「あぁ、別に嬢ちゃんを責めてるわけじゃねぇ。ただ確認しただけだ。
それにしても魔力を流す、ねぇ。誰もやらねぇ事をやったから剣が誰も知らねぇ状態になっちまったわけだ。
魔力で黒い砂・・・あー、まさかな」
「何かご存知なんですか!?」
「いや、これは昔話ってよりもお伽話の世界だ。参考にならんだろうよ」
「それでも聞きたいんですが・・・」
「あくまでお伽話で真に受けないってんなら聞かせてやる。
昔は金属に魔力を流すのはよくやっていたらしいんだ。
で、ある程度の魔力が流れると金属は黒い砂になっちまう。
そしたらその砂に魔力を流しながら自分の欲する形を思い描くと砂がその形になるらしい。
そうやって作られたものは魔鋼と呼ばれ、魔鋼製の武器は魔力をよく通し、更に普通の金属製の武器よりずっと軽くて切れ味や耐久性が上がるってんだ。
ただし実際にこれを作り上げた奴はワシの知る限りいない。
そもそもどの金属にいくら魔力を通そうが砂になりそうな兆候すらなかったんだからな」
なるほど、確かにお伽話のような話だ。
流石に誰が魔力を通しても砂にならなかったという事実があるのならそれが真実なのだろう。
ここでシュウは違和感を覚える。
金属を砂にするにはある一定の魔力が必要で誰がやっても再現出来なかった?
まさか、とシュウはある考えが浮かぶ。
「ねぇシュウ、もしかして」
「あぁ、俺もそう思う」
「ん?何か気になることでもあるのか?」
「あの、何か鉄くずとかありませんか?無くなってもいいようなやつ」
「あるにはあるが・・・何をするんだ?」
「ちょっと確かめたいことがありまして。良ければ譲ってもらえませんか?」
「どうせ溶かして他の鉄と合わせんと使いみちのないようなやつだから構わんぞ?ほれ」
元はナイフだっただろう鉄片を受け取り、一昨日や昨日剣に対して行ったように魔力を注ぎ込む。
元の大きさが小さいせいだろうか、剣よりも早く魔力が行き渡った感覚があったあと手にしていた鉄片が音も立てず黒い砂へと変わる。
「なっ!?」
「やっぱり・・・」
「おい坊主!いったい何をした!?」
「何って鉄片に魔力を流しただけですよ」
「何だと!?今までいろんな奴が試したのに一回も出来た試しが無いんだぞ?」
「その人達の魔力ってどのくらいかわかります?ちなみに俺はS+でした」
「なっ!?」
シュウは証拠にとギルドカードを提示する。
武器屋の店主はカードを食い入る様に見つめ、ため息をつく。
「まさか出来たことがない理由がそんな単純なことだったなんて」
「まぁ、そういうものでしょうね。ところでシュウ、さっきの砂と持ってきた砂を混ぜて何をしているのですか?」
「え?さっきの話だとここから更に魔力を注ぐと別の形に出来るらしいからやってみようかと」
「さすがにS+とはいえシュウでも難しいのでは?昔一般的とまで言わなくてもそれなりに普及していた技術だったとすれば今の時代で誰も再現出来ないのはおかしいです。おそらく専用の魔法があったので・・・は・・・?」
「うん、出来たね」
「「は?」」
店主とティアナが声を揃えて見つめるシュウの手には先程までの砂は一粒もなく小石程度の黒く輝く塊が鈍い光を放っているだけだった。
異世界の武器屋と言ったらドワーフですね(偏見)




