第12話_魔法の練習をしながら頑張ります
ティアナに魔法を教えてもらってからの数日、シュウは依頼をこなしつつもティアナとの魔法練習を行う日々を過ごしていた。
ティアナとはお互い都合がいいということでパーティを組み、朝一で受注した薬草採集等の街の外での仕事をこなしてから岩場に移動し魔法を練習、夕方には街に戻り依頼達成報告をしている。
シュウがFランクなのでパーティとして受注できるのがFランク依頼しか無かったが依頼達成後岩場で魔法練習を行うため同じく近場の森で達成できる採集依頼は特に文句無かった。
また、街の外へ出るので多少危険があるということで自分の持てるフル装備で出掛けはするのだが街から近いこともあり一度もモンスターとは遭遇していないので揃えた装備や習得した魔法を実際に使うことはなかった。
ちなみにティアナは討伐依頼も行ったことがあるが今はシュウに合わせて無理に討伐に行くことはしない。
そしてその間にシュウは火魔法以外にも水と風の魔法を使えるようになっていた。
「風よ」
魔法を発動させるとシュウの掌から勢い良く風が吹き出す。
火魔法同様に空気を取り込みつつ吹き出し口を絞ったエアダスターの要領で勢いをつけている。
威力に満足したシュウはそのまま次の魔法につなげる。
「風刃!」
それまでただ吹き出すだけだった風が形を刃に変え岩へと叩きつけられる。
直撃を食らった岩はその半ばまで切れ込みが入る。
切り口はひび割れが発生し切断しなかったので切れ味としてはまあまあであるが生物に直撃した場合を想像すれば爆発する火球同様にオーバーキルであることは間違いない。
風魔法の威力を確かめたシュウは水魔法も使ってみる。
「水よ」
先程まで風が出ていたシュウの掌から今度は水が溢れだす。
これだけではただの水が噴き出しているだけだがその水を操り魔法を繰り出す。
「水龍!」
シュウの合図で全長5メートルほどの蛇に短い手足が生えたタイプの龍へと形を変えた水が先程風刃で切れ込みの入った岩へと体当りしていく。
もともと半ばまで切れ込みの入っていた岩なので水竜の質量を受け止めきれるはずもなく真っ二つになってしまう。
ただの体当たりだが、高いところからプールに飛び込んだ時にお腹を打ち付けるとメチャクチャ痛いのと同じ原理で当たった瞬間はものすごく硬い。
それでいてそのあとは通常の水と同じように相手を包み込むことも可能なので地上で溺れさせることも可能という凶悪な代物となっていた。
ちなみにこの水はシュウが空気中から不純物を取り除きつつ生成したものなので恐ろしく澄んでおり、飲水としても優秀という便利仕様となっている。
「ふう、ちょっと威力が高すぎるかな?」
「高すぎというか凶悪すぎますね。こんな威力の魔法は昔話で聞いたことしかありません」
ちなみにシュウの魔法の威力が高いのは現代科学を用いたイメージのせいもあるが魔攻A+という魔力S+の影に隠れ気味だがこちらも規格外のステータスによるものが大きい。
これはあまりの威力の高さで手加減しないと生物相手には使えそうにないぞ、という贅沢な悩みをシュウに与えたりしている。
「気になっていたのですが水の魔法を放つ時形が変わりますよね?あれはなんです?」
「ん?あれはそのまま飛ばすんじゃ芸がないから竜の形にしてみたんだ。ドラゴンって知らない?」
「竜やドラゴンは分かりますが、私の知っているものとは形が違いますね」
「ちなみにどんな形?」
「なんといいますか、羽の生えたトカゲのような形ですね。大きさは比べ物になりませんし遭遇したら諦めろとまで言われています」
「あー、そっちのタイプか。俺の出身地の方では大きな蛇みたいな形の龍もいるんだよね」
もちろんお伽話の中である。
毎日そんな話をしつつもシュウは色々とイメージを変えながら実戦を想定した魔法を練り上げていた。
ティアナも最初に比べると指先から出る火の威力が上がっており、自分の成長を喜んでいるようであった。
ただし、毎日保有魔力ギリギリまで使うため最後はグッタリとしており街に帰る前に休憩しないといけない日もあったりするが。
話の流れでティアナのステータスを聞くと魔力はC-らしく、この世界では高い方のステータスらしい。
そんなティアナが指先から火を出す練習だけで限界ギリギリであるのにシュウはさすが魔力S+というべきか、明らかに高威力の魔法を連発しているのに魔力切れを起こす兆候すら見られない。
シュウとしてはいざという時のため自身の限界を知っておきたいのだがその機会は一向に訪れないので手加減の必要性同様に多少悩んでいたりする。
色々と考えるべきことはあるがそれでも魔法については日々練習あるのみなので今焦ってもしょうがないと気持ちを切り替える。
魔法練習と同様に毎日こなしている依頼だがFランクとは言え日々の宿代等生活費を払いつつも少しずつ貯金出来るようになっていた。
普通の冒険者は貯金したお金で良い装備を揃え、より高難度で報酬も高い依頼をこなそうとするのだがシュウはゆっくりと焦らずコツコツやっていこうと思っているので最初の使い道としてアラン達へ返そうと思っている。
もちろん今まで払ってもらった様々なお金のことを考えると全く足りていないのだが誠意は見せておきたいという気持ちの現われであった。
ちょうどこの日、依頼をこなせば非常用に残しておこうと思っているお金とは別に銀貨1枚分は余裕が出るのでそのままアランたちに渡そうと思っている。
何事もなく目的の採集は終わり、いつも通り岩場で魔法練習の休憩中、シュウが魔法で出した水を飲みながらティアナが口を開く。
シュウとは何度も依頼をこなし魔法練習もしていることでだいぶ打ち解け今は呼び捨てであった。
「そういえばシュウは今剣士の装備ですが魔法使い装備に変更しないのですか?」
「うーん、確かに俺は魔法を使えるけど専門になるつもりはないんだよ」
「そうですか・・・」
「でも魔法は使うよ?だって俺の目指すのは普通の剣士じゃなくて魔法剣士だし」
「魔法剣士、ですか?初めて聞く職業ですね。どのようなものでしょうか?」
「普通の魔法使いって後衛でしょ?魔法剣士は前衛で戦いつつも出の早い魔法も使って戦うんだよ。だから使い勝手の良さそうな魔法を試行錯誤しているのさ」
「通りで最近威力や規模より速さを重視した魔法を使っていると思いました。でも魔法剣士ですか。昔話に出てくる魔法戦士みたいですね」
「魔法戦士?それは魔法剣士とは違うの?」
「そうですね。魔法戦士が使うのは剣ではなく杖だったらしいです」
「杖?それじゃあ魔法使いと同じじゃないの?ほら、ティアナも杖持ってるしさ」
「ただ杖を使うだけじゃなくて杖や自分の体に魔力を通して強化しながら戦ったようです」
「ちょ、それ詳しく教えて!」
「は、はい。えっとですね・・・」
思わぬところで自分の戦い方の参考になりそうな話が出てきてテンションが上がるシュウ。
ティアナは若干困惑しながらも魔法戦士について知っている限りのことを教える。
魔法戦士とは魔力で強化した体と杖を使って敵と戦うということ。
強化された体は敵の攻撃が通じず、強化した杖は通常の状態とはかけ離れた強度を誇り、さらには魔法を纏った状態で攻撃出来たということ。
ティアナの知っていることはその程度だったがシュウにとっては何よりもありがたい情報だった。
火を纏った剣で戦えるとしたらそれこそシュウの憧れた魔法剣士そのものであり是非とも使ってみたい戦い方であった。
「この程度しか知りませんがお役に立てますか?」
「これで十分さ!早速やってみるよ」
シュウはティアナが座っているところから少し離れて、まずは体を魔力で強化するイメージを行う。
(体に魔力を通すってことは血液みたいに全身を循環させれば良いのかな?それでその場所場所を強化する感じで)
自分の体を血液と一緒に魔力が循環するイメージをすると多少ぎこちないが全身に力がみなぎるような感覚がある。
その状態のまま、まずは腰に下げていたギルドからもらった中古の剣を抜き振ってみると以前ギルドランク昇格試験のときとは比べ物にならない速さで振ることが出来た。
(お、まだ慣れないけどこれは強化出来てるんじゃないだろうか)
そうしてシュウは自分の動きを確かめていく。
ただしこの状態ではティアナはシュウの動きがいつもより少し早いかな?程度にしか認識出来ていない。
「シュウ、上手くいっていますか?」
「うん。いつもより早く動けるみたいだ。でもまだ慣れないからスムーズにはいかないけど」
「そうですか。剣の方には魔力を通していますか?」
「いいや、まだこれからさ」
そう言って剣にも魔力を通してみる。
イメージは剣が自分の体の一部だとイメージしてみる。
この辺は日本にいた頃マンガやアニメでよく行われていた事なのでそれを参考にする。
すると徐々に手から剣へと魔力が伝わっていっているような感覚がやってくる。
(少しずつ魔力が通っているような・・・?もう少し先まで伸ばしてみよう)
シュウは更に魔力を剣に伸ばしていく。
すると突然剣に変化が現れた。
「「え?」」
シュウとティアナの言葉がキレイに重なる。
魔力を通していた剣の刀身が突然砕け真っ黒な砂鉄のようになって地面へと落ちていくのを見ながら。
ティアナとパーティーを組むところにドラマを盛り込みたかったのですが、全く思いつかずサラッと流しました。




