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第13話_予想外の性質です

「風刃で斬れない?」

「まさか・・・」


魔法による斬撃が効かないとは思ってもみなかったシュウが困っている。

通常の斬撃と同じ威力を持つ風刃が効かないとなると『神樹』を伐採出来ないということになる。


「ん?待てよ・・・。『神樹』って数は少ないけど流通はしてるんだよね」

「そう言ってたっすね」

「でも今の一撃で傷すら付かないものを普通の人が切り倒せるのかな?」

「・・・言われてみるとおかしいですね。シュウの刀は普通の斧よりも高い切れ味を持っているのですからそこから放たれる魔法で傷が付かないものだとすれば伐採できるはずがありません」

「・・・ちょっと試してみるか」


シュウはそういうと刀を持ったまま『神樹』に近寄った。

今度は魔法を使わず魔力による武器強化を行いつつ直接斬りつけるつもりのようだ。


「ふっ」


小さな呼吸音とともに振りぬかれた刀だが、先ほどと同じような音を響かせつつまたしても一切の傷が付かないのであった。


「魔法だから、じゃなくて直接でもダメか・・・。じゃあ・・・」


小さく呟くと再び刀を構える。

しかし今度は先ほどの一撃のような鋭さはなく、軽く当てるように振るわれる。


カッ


今度は金属のような鈍い音ではなく、本当に小さくだが刃が『神樹』に食い込んだ。


「何をしたのですか?」

「いや、魔法も魔力による強化も全くなしで当ててみたんだ。結果はこの通り」

「・・・魔力が関係すると一切の攻撃が効かないのでしょうか?」

「多分そうなんだろうね。まさかこんな性質の物質があるとはね」


要するにこの木を伐採するには魔力を一切使わず、腕力だけで行う必要があるということだ。

この世界の場合、魔法が衰退していることもあり魔力を運用できる者がほぼ存在しないため、この性質が問題になることはなかったのだろう。

しかしシュウたちは魔力を前提とした戦い方、武器の使い方をしているためいざ魔力の使用禁止という現実を突きつけられた場合困ったことになるのである。


「さて、とりあえず切り倒すには腕力と武器の切れ味だけが頼りなんだろうね」

「そうなると私は戦力になりませんね」

「我もそうだろうのう」


ティアナとカエデが自ら戦力外通告をしてくる。

確かに彼女らの武器は杖、もしくは近接格闘用の物なので『切る』事が重要な今回の場合全く役に立たないだろう。

それが分かっているので誰も何も反論しない。


「うーん、うちもあまり『切る』のは得意じゃないっすねぇ」


フィアもおずおずと発言する。

彼女の場合、武器は長剣を使うが戦闘スタイルは一発での切断ではなく早さで翻弄しつつダメージを重ねていくものである。

そのため普通の太さの木であれば何とかなっても『神樹』のような極太の木が相手では分が悪い。

幾度と無く切りつければ伐採は可能だろうが効率が悪すぎる。

これはシュウにも言えることである。

彼の武器や戦闘スタイルはフィアと違い一撃での切断を可能としているのだが今回の場合対象が対象である。

絶対に一撃では切り倒すことは出来ない。

しかし消去法から自分かリエルが作業するのが適切であると判断したためリエルに対して指示を出す。


「リエル、そっちの神樹をお願い。俺はこっちをやるから」

「わかりましたぁ」


間延びした答えを返しつつ自らの武器を構えるリエル。

本人含めて誰も何も言わないが今回の作業で一番適しているのはリエルである。

刃が左右2枚付いていたり先端には長めの槍の穂先が付いていたりするが、リエルの武器は紛れも無い斧に分類されるそれであり、木を切るという点においては一番しっくり来る。

それはリエルも十二分に分かっていることなので否はない。

リエルに対して指示を出し了承を得たシュウは自分の目標とした神樹に向かうため背を向ける。

どう頑張っても一撃では切断できないが、それでも可能な限り切断面を綺麗にしたいので少ない回数での切断を目指す。

そのため一回一回の切る深さを可能な限り大きくする必要があるため自らのこれまでの経験や武器の性能を信じて迷いなく振り抜こうとした・・・その時である。


ドゴォオオオン


シュウの背後から爆発音にも似た大きな音が聞こえてきた。

慌てて振り返るとシュウの後ろではリエルがいつも通りニコニコしながら武器を振りかざしている姿があった。

そして彼女が武器を振り入れようとしている箇所には既に全体の3分の1程切れ込みの入った神樹がある。

この状況から推測されることは1つ。

リエルが一度武器を撃ち込んだことによりあれほどえぐり込んだのであれば、二度目では恐らく神樹が自立していることが難しくなるだろう。

そうなれば根と繋がっている部分はあるだろうが、そんなのは関係なく重力に従い倒れてくる。

その際に神樹が不必要に自らの枝を傷つけて倒れることになり、下手をすればその衝撃で幹にヒビや亀裂が生じ、『飛行艇』作りにも支障が出る可能性がある。

それだけは避けたいためリエルを止めるために声を発しようとした・・・ところで再び爆音が森に響き渡る。


「ヤバイ!皆、神樹が倒れる方向には入るなよ!!」


シュウがメンバーに指示を出しつつゆっくりと倒れ始めた神樹に向かい1人走っていく。

いくらシュウが非常識な魔力や身体能力を持っていたとしても重さの検討もつかない倒れこんでくる『神樹』に対しては何が出来るのが検討もつかないので仲間たちは不思議そうにシュウを見守っている。

と、手にした刀を走りながら構えたシュウは倒れてくる『神樹』の、その未だ根の部分と繋がっている箇所に向かい振るう。

黙っていても勝手に千切れそうなものだが、何故シュウがそんなことをしたのかというと、無論考えなしの行動ではない。

しっかりと根と幹を切り分けたことを確認したシュウは即座に刀を納め、腰からあるものを取り出した。

それはあまり容量が大きくなさそうな袋であったが、このような状況で出すのだから当然ただの袋ではない。

可能な限り袋の口を大きく開けたシュウは倒れつつある『神樹』にその口を押し付ける。

すると袋の口に接した部分が袋の中へと引きずり込まれ始め、まるでうどんをすするがのごとく袋の中へと吸収されていく。

当然木の上の方には生い茂る枝や葉などもあるのだが、そんなことは一切関係ないとばかりに袋の中に収まっていく。

時間にして数秒ほどでリエルの切り倒した『神樹』がその根だけを残して消え去ってしまった。


「ふぅ、間に合った・・・」

「えっとぉ、何をしたんですかぁ?」

「あのままだと地面に倒れた衝撃で木が傷つくかもしれなかったから切り離してこの収納袋に納めたんだよ」


シュウが取り出したのはここまでの旅の中で何度も活躍している彼謹製の収納袋である。

一見すると小さな袋だが、その収納能力たるや想像を絶しており、どんな大きさのものでも生物でなければ出し入れが自由な上に、収納中は時間経過による変化も起こらないという優れものである。

今回の対象がそれまで普通に地面に生えていた木であろうとも、切り離してしまえばモノ扱いとなるらしく普通に収納が可能なのだ。

さらに以前クラーケンを収納した時に、袋の入り口より大きなものが入らないという欠点が発覚したので、その部分はキチンと改良されている。

袋の入り口を対象物に押し当てれば大きさに関係なく中へと引きずり込むようにしているのである。

その結果今回のような大木であろうともそのまま収納が可能となったのだ。


「本当はもっと時間がかかるだろうと思ってたんだけど、まさか2発で切り倒すとはね・・・」

「えっへん、ですぅ」

「ちなみにどうやったの?」

「どうもなにも普通に武器に魔力がいかないようにしながら身体強化だけをして、あとは全力でぶつけただけですよぉ」


リエルはその豊満な胸を張り、自らの功績を訴えてくる。

確かに忘れがちだがリエルの腕力はそのままでも驚異的なものであり、そこに身体強化が加われば恐ろしいまでの威力が発揮される。

さらに、普通はそんな力で振り回されれば斧のほうが保たないのだが、そこはシュウ作の魔鋼製の戦斧であるので力に負けるどころかむしろその切れ味を遺憾なく発揮した結果なのだろう。

シュウにしてみれば予想外ではあったが、これで大分効率が良くなることには変わらないので文句は言わない。

そもそも最初から全て説明することをしなかったシュウが悪いのである。


「じゃあ、リエル。悪いんだけどあっちのもお願いできる?俺がやるよりリエルの方が早そうだし」

「任せて下さいねぇ」


リエルはそういうと張り切ってシュウが切り倒そうとしていた『神樹』へと向かって行った。

その後、今回同様に2発で巨大な『神樹』を切り倒し、シュウが仕上げをして無事に伐採作業を終えるのであった。



『神樹』の伐採が終わりました。

リエルが活躍しましたが、彼女の本来の役割はプリースト、つまり回復役です。

それが何故斧を持ち始めパワーファイターとして活躍しているのか・・・投稿主にも分かりません(笑)

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