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第07話_森から現れた者です

「さて、こんな森の奥から出てくるなんて誰だと思う?」

「普通に考えれば冒険者の可能性が高いですが・・・」

「でもこっちに向かってくるのは1人なんすよね?」


フィアの言うとおりシュウの魔法に引っかかっているのは1人だけである。

そしてその1人は怪我をしてゆっくりと進んでくるわけでも、何かから必死で逃げるために走ってくるわけでもなく、普通に歩いてるようである。

1人で普段はモンスターが多数出てくるこの森をそんな風に歩けるということは相応の実力があるということであるが、今はモンスターがいないので不自然ということはない。

しかしシュウはどうにも嫌な予感がしている。

もしかしたらこの森の状況と作り出した張本人なのでは、と。


「何にせよ警戒だけは怠らないように。でも偶然居合わせただけっていうのも考えられるから武器は抜かないでね」


仲間たちはシュウの話に頷きだけで返す。

遠目ではあるが木々の切れ目からその人物が姿を現したためだ。


「・・・女の子?」


シュウは驚きを隠せなかった。

森の奥から現れたのはシュウと同い年くらいの女の子であり、見た目には武装という武装を纏っていないのである。

紫の髪に同色の目、服装はこの世界の女性が着るような普段着ではなく、どちらかと言えばドレスに近い意匠を凝らしたものに見える。

一応裾を引きずるような丈ではなく膝くらいの高さのスカートであるし、履いている靴もヒールがそこまで高くない物なので歩いていても不自由は少なそうである。

それでも森のなかから出てきたことを考えるとチグハグな印象を受ける。

そしてその目はシュウたちに向いているようでどこか遠くを見ているように見える。

正直いって警戒するな、と言う方が無理である。

だがこのままお互い向き合っていてもしょうが無いのでティアナが最初に口を開いた。


「すいませんがこの森で何をしていたかお聞きしても?」

「・・・」


しかしその少女はティアナの質問に答えない。

無視しているというよりは聞こえていない、といったほうが正しいような感じを受ける。

回答が得られないためティアナが重ねる。


「もう一度言います。こんな場所で、そんな格好で、何をしているのですか?」

「・・・」


言葉を区切りつつ強調しながら聞く。

だが返ってきたのは無言である。

さすがに気を悪くしたのかティアナが一歩踏み出しつつ更に聞く。


「ですから、この場所で「危ないッ!」」


今度の質問は最後まで紡がれることがなかった。

途中でシュウがティアナを横に突き飛ばしたためだ。

しかしその突然の行動に文句を言う者はいなかった。

何故ならさっきまで一切の動きを見せなかった少女が自身の右腕を進んできたティアナの方へ突き出して来たのである。

それだけでは突き飛ばす理由にはならないのだが全員の警戒度が上がっているので突き飛ばされたティアナもすぐに現状を把握した。

何しろその突き出されている右腕からはとてつもない圧力が発せられており、それがティアナに向かって何かしようとしていたことは明白である。


「・・・」


それでも少女は無言である。


「・・・魔法、いや魔力か」


シュウの指摘通り少女から突き出されている右手には明らかに魔力が宿されているのである。

それも通常では考えられない濃さで、つまり意図的に右腕に集中させているのが明白なのだ。

この世界にきてこれほど魔力の扱いに長けている者はシュウたち以外ではそんなにいないがシュウには心あたりがある。

過去に会った、いや、戦った相手である。


「魔族、か」

「・・・」


先程までと全く変わらないようだが『魔族』という単語を出した瞬間、少女の目がほんの僅かであるが動いた。

それだけで回答としては十分である。


「こんな所に魔族がいるなんて聞いてないけどね。ちなみにここまで来る間に何かした?モンスターが一切出なかったんだけど」

「・・・何も」


ようやく少女が声を発したがとても端的であり答えにはなっていない。

だがこの少女が何かしたのはシュウの中で確定している。

しかしそれが少なくともシュウたちの通ってきた範囲、それも短くても前日からその状況が続いているとなれば異常と言わざるを得ない。

実はシュウが森に入ってから展開してる『索敵』の魔法に殺気でも混ぜれば同じような効果を生み出せるのだが気づいていないだけなのだが。


「・・・あなた達は誰?あたしを連れ戻しに来たの?」

「連れ戻す?」

「・・・あたし絶対帰らないよ。また皆であたしをいじめるんでしょ?」

「・・・?」


どうにも会話がおかしい。

通じないというか一方的に勘違いを受けているようである。

だが少女の目に今までにない感情がやどり始め、それがとてもではないが友好的な物ではないのを感じ取ったシュウはとっさに叫ぶ。


「散開ッ!」


シュウの言葉に合わせて即座にそれぞれ違う方向へ飛ぶ仲間たち。

そしてその直後、仲間たちがいた当たりの地面が吹き飛んだ。

少女がシュウを攻撃し、その余波が襲ったためである。


「ッ!?」


あまりの衝撃に息が詰まる。

ガードは間に合ったがとっさのことで完全には抑えきれなかったのだ。

油断していたとはいえシュウのガードを突き抜けるなどよほどのことであり、それを見ていた仲間たちは驚きを隠せていない。

だがシュウはすぐに立て直し号令をかける。


「こいつはヤバイ!全員気を抜くなッ」


シュウに言われるまでもなく相手の異様さを肌で感じとったティアナたちはそれぞれ武器を構え戦闘態勢になった。

シュウは多少のダメージを受けたが既に自身の持つ回復能力で全快に近いところまで回復しており戦闘に支障はない。

しかしあくまで防御した結果であり、まともに喰らえばただでは済まないことは確実である。

さらに恐らくだが少女は全力ではなく、所謂(いわゆる)癇癪(かんしゃく)を起こした結果の副産物であり、これが全て攻撃として振るわれていればシュウへのダメージはもっと深刻なものになっていたかもしれない。

なのでシュウはギアをいきなり全開にする。

つまり武術大会の最後にフィア相手に出した魔力を全身に纏わせ防御力と攻撃力を爆発的に向上させる戦闘スタイルである。


「俺が前に出る!皆は援護を!」

「「「「了解!」」」」


シュウが魔力を集めだしたところで何をする気なのか察した仲間たちは一斉に援護を出しやすい位置へと移動する。

勿論少女への警戒は怠らない。

シュウがほんの少しでも油断していたとはいえダメージを与えるような相手に自分たちが気を抜けるはずもないのである。


「・・・」


全員から警戒されている少女はキッと効果音の鳴りそうな目つきでシュウ達を睨んでる。

確実に敵認定をしているようである。

今更だがここでの戦闘が避けられないようだ。


魔族?の少女が出てきました。

そしてこの話で本格的な戦闘に入るつもりが次話になってしまいました・・・

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