第26話_まずは小手調べです
今回は区切りの問題で少し短めです。
7/19 23時追記
タイトルを間違えてひとつ前の物にしていました。
混乱された方、すいませんでした。
「さて、フィア。まずは最初の取り決め通り魔法無しで行くよ」
「かかって来るっす!」
試合が開始されてからまずはシュウがフィアに声をかけた。
それに応えたフィアが構える。
それを見たシュウは宣言通り魔法を使わず剣のみで斬りかかった。
シュウにしてみれば小手調べ程度なのだが、見ている会場の観衆からすると今までの試合で見せた以上の早さなのだ。
それにも驚いたがその攻撃を全て捌いているフィアにも歓声が起こる。
「やっぱり以前に比べると動きが大分良くなってるね」
「ありがとうっす!でもシュウさんの攻撃も鋭さが増してる気がするっす」
「そうかい?自分では分かりづらいけどなぁ」
「随分手加減してもらってるっすけど、以前だったらこの鋭さの時はもっとシュウさんの顔が真剣になってるっす」
「なるほどね。そう言われるとそうかもしれない。じゃあもっと速度を上げよう」
「望むところっす」
ここまでは小手調べのためシュウにもフィアにもお互い会話する余裕がある。
その会話の中でお互いが言っている通り攻撃の鋭さが増しており、それを捌く技量も上がっているのだ。
このままではただの組手にしかならないためお互いにギアを一段上げる。
先程までは断続的にキィンキィンと響いていた剣と刀のぶつかり合っていた音だが、今はキキキキィンと連続で聞こえるようになっている。
たった今ぶつかり合っていたと思った武器同士がいつの間にか離れ再びぶつかり合っている。
その音の変化で観客たちは更なる盛り上がりを見せた。
「さすがシュウですね。音が連続で聞こえます」
「まぁまだ序の口じゃがのう」
「早いですねぇ」
「・・・僕はあれと戦っていたのか」
「・・・言うな。俺はあれを捌いてるのとやりあったんだ」
「アタシから言わせればどっちもどっちなんだけどねぇ」
その観客席ではティアナ達とアラン達でかなりの温度差が生まれていた。
普段から見慣れているかの差が大きい証拠である。
「うーんやっぱり防御に余裕が出てるねぇ」
「そ、そうでも、ない、ないっす・・・よッ」
そして戦っている2人は先程同様会話を繰り広げているがフィアの方は徐々に会話をする余裕がなくなってきているようだ。
それでもこの速度に着いてこれるだけでこの大会の出場者とは大分レベルが違う。
しかしこのままではジリ貧であるためフィアは防御から一転、攻めに転ずる。
シュウの攻撃を一度大きく弾く。
普通であれば攻撃を大きく弾くにはこちらも動作が大きくなるため万が一躱されると致命の隙となる。
だがフィアの場合はそれを補えるだけの身体能力を有しているためもし躱されてもなんとかなる算段は付いている。
見事に攻撃を弾かれたシュウはやや驚きつつもすぐに体勢を整えようとした。
勿論それを黙っているフィアではなく、刀を弾いた動きからすぐにシュウに対して突きを放つ。
丁度胸の真ん中あたりを狙って放たれたフィアの突きはその速度も相まって普通の相手では攻撃を察知することは出来ても躱すことが難しい位置を狙っている。
シュウは刀による防御を諦め回避を選択した。
上半身を仰け反らせフィアの剣を躱しつつも、本来無理な体勢から刀を振るう。
仮に他の選手がシュウにこの動きをさせたとして、体勢が崩れたこの状況下でまさか刀を振れるとは思わずそのまま攻撃の餌食になること必至だろう。
だがフィアはそんなシュウの動きを読んでおり、事も無げに躱しつつ追撃を仕掛ける。
一方のシュウだが自身の攻撃が躱されることも、そして更に攻撃されることも読んでいたためフィアの追撃を自身の刀で撃ち落とす。
それでも一度体勢を崩されたことには変わらずフィアのペースで試合が進んでいった。
「ふむ。フィアのやつ主殿に主導権を奪われるように必死じゃのう」
「そうなですかぁ?」
「確かにシュウの体勢が立て直されないように動いている節はありますね」
「じゃろう?だが、それでも主殿ならば・・・」
カエデが何か言いかけるのと同時に舞台上にも動きがあった。
シュウがフィアの攻撃を防御すると見せかけてそのまま受け流したのだ。
それも防御することを見せるため一度本当に受けてからの受け流しである。
一度防御される手応えを感じたフィアはすっかり騙されてしまい今度は体勢を崩される番になった。
(マ、マズイっす・・・)
フィアは本能的に剣を自身とシュウの間に差し入れた。
その瞬間剣を通して衝撃が体に伝わってくる。
辛うじて間に合ったが直撃を貰えばそのまま倒れてしまっただろう。
それほどの一撃だったため衝撃で肺から空気が吐き出される。
「ガハッ」
「お、今のを防ぐんだ。・・・どんどん行くよッ」
完璧に一撃入ると思っていたタイミングでの防御にシュウは驚きつつも追撃を仕掛ける。
フィアは体勢を整えるべく一度シュウから距離を取ろうとする。
しかしそれをさせまいとシュウが離れてくれない。
更に速度を上げて攻撃を仕掛けてくるのでフィアとしては堪ったものではない。
本格的に追い込まれそうになったところでフィアは体に通していた魔力を上げる。
それによりフィアの速度は更に一段階上がりシュウを引き離すことに成功した。
「はぁ、はぁ・・・」
「おっと。今までは手を抜いていたのかい?」
「違うっすよ。このレベルの動きをするとすぐにへばっちゃうんで温存してたんす。まぁ使っちゃったすけど」
「なるほどね。それにしても結構魔力の使い方がうまくなったね」
「ゴルドさんやカイさんとの戦いだと常に一定の動きをしてたんじゃこっちがやられるんで色々試してたんすよ」
「ふむ。じゃあもっと動きを激しくしようか」
「ち、ちょっと待って欲しいなぁ、なんて思うんすけど」
「あははは・・・」
シュウが笑いながら攻撃を仕掛けてくる。
それも更に激しい動きで、である。
さすがのフィアも無言になり防御に専念し始めた。
最早会話をする余裕すらなく、笑顔のシュウとは真逆の、真剣そのものな表情である。
「主殿もようやく動きだけは本気になってきたようじゃの」
「フィアさんもそろそろ限界のようですね」
「あのまま終わっちゃうんですかねぇ」
「いや、それはなかろう。現に、ほれ・・・」
限界かと思われたフィアだが不思議とシュウの動きに着いてこれている。
表情に余裕こそないが動きだけであればシュウと互角のようにも見える。
これまでの戦いで得た経験によりシュウの動きが大会前より読めるようになっているための成果である。
シュウはフィアの動きに感心しながらもそろそろ魔法を使おうかなぁ、などとフィアが聞けば涙目になりそうな事を思っているのだった。




