万能惚れ薬 【婚約コニャック】
はい、サブタイ危険度MAXです!
説明は不要かと思いますが元ネタは…
食べると色んな言語が理解できるアノ【こんにゃく】です。
「ふん、ふん、ふーん、ふ、ふふ、ふふふふ、ふふふーふふーん♪」
朝の通学路をぼくは上機嫌で歩く。
著作権?ナニイッテルカボク、ワカンナーイ
え、JA〇RACKに訴えんぞ?
ちょと待ってよ、歌詞は歌ってないじゃん!
…ね?
ごほんっ…!
は、鼻歌のワケはもちろん週末のキャンプさ。
そこでの経験はぼくに大きな一歩を踏み出させてくれたんだ…。
もぶ太の顔がゆるみ、デフォルメ化される。
女子と同じ部屋の下で寝るなんて、ほんの数日前のぼくなら聞いただけでも発狂したけど。
意外と物は試しだったんだ。
確かに緊張はしたよ?でも思っていたような事態どころかむしろ楽しい時間が過ごせたよ…。
おかげでぼくは物の見方が少し変わった気がする!
あ、
前方の曲がり角から見知った背中が見えた。
あの黒髪は…!あの佇まいは!
ぼ、ぼくの運命の人、水間出しずかちゃんだ!
今までとは違う、ぼくは変わったんだ!
そう決意するとぼくは大胆にも声をかけるために自ら近づいた。
「しずかちゃーん!」
まずは元気に第一声。
しかし…
「…………」
スタスタスタ…
まるで見向きもしてくれない。
え…。
ええぇー!?
やっぱり無視された!?
そして普通にショックだ!!
…いや、これくらいでめげちゃダメだ。
ぼくは気力を振り絞って再チャレンジ。
「しずかちゃ…」
「分かったから、朝から大きな声で呼ばないで」
言いきる前に釘を刺されてしまった。
「用件は?」
澄んだ瞳でじっと見つめられる。
ううん、睨みつけられた。
うっ…。
そんな尋問みたいな~…。
ぼくは頭の中が真っ白になった。
代わりに口から意味不明の言葉がでる。
「…無いのね、じゃ」
もはや時間の無駄と思われたのかしずかちゃんは立ち去った。
「あ、ああ…」
絶対零度の女王に早くもぼくの心は折れてしまった。
結衣ちゃん達が恋しいよぉーーー!!
心の底からそう思った。
いつになく重い足取りでもぶ太は学校へ向かった。
◆◇◆
はあ…
人知れずため息をつくのはあろうことか
先ほどもぶ太を軽くあしらったはずのしずかちゃんだった。
彼女は後悔していた。
せっかくあのもぶ太くんが話しかけてくれたのに…。
あんな辛辣な態度でしか応じれない自分が憎い。
私はいつもそうだ。
別に彼だけではない、クラスのみんなに対しても無視することが多かった。
昔はこんな性格ではなかったんだけど…。
きっかけはいつだったか親友の些細な裏切りだったような気がする。
でも私にとってはそれがかなりショックで以来、人間不信に陥ってしまった。
深く関わらなければ深く傷つくこともないはず…。
私はあの時そう決めたんだ。
だからもぶ太くん、ごめんなさい。
私に話しかけないで。
私にはそんな価値ないから…。
彼女の頬にはきらりと光る雫が一つ静かにそっと流れ落ちていった。
◆◇◆
そんな彼女の葛藤があったことなど知るはずもなく
家に帰るなりもぶ太は涙で自室に水溜りを作っていた。
「ドライモーン!!」
お決まりのセリフで彼は助けを求める。
ガラッ、と押し入れが開き中からダークスーツの男が顔を出す。
「どうしたもぶ…」
一瞬で状況を理解したようだ。
素早くもぶ太に肩を貸す。
「まあ、取りあえず中に入りな…」
ドライモンは優しくもぶ太をBARへといざなった。
落着きと哀愁に満ちた装飾の店内には1980年代のクラシックが流れる。
そこのカウンター席にもぶ太とドライモンは腰かけ、
イリーナは少し離れたところでグラスを磨いていた。
カランッ…。
グラスの氷が軽快な音を奏でる。今日の彼の気分はバーボンのようだ。
そばに置かれたボトルから察するにタダのバーボンではなさそうだが。
「もぶ太、何があった」
単刀直入にドライモンはそう切り出す。そこには大人の包容力があった。
最近は気に入っているのか常に人間モードの彼は今日もシャキッとキメている。
特に黒を基調としたスタイルに対し、首に巻かれた白いスカーフが良いアクセントだ。
彼に差し出されたハンカチで涙をぬぐい、もぶ太は口を開いた。
「うぅっ、あのね。思い切ってしずかちゃんにね、あ、朝、話しかけたんだ」
「ほう、あのもぶ太の思い人の…」
僅かにドライモンは切れ長の目を見開く。
「うん、でもね…。無視された上に虫けらみたいに見られて…」
そこでもぶ太のメンタルは限界を迎え、再度涙のシャワー。
ドライモンは彼の背中をさすりながら
「分かった、良く頑張ったな。後はまかせろ」
「イリーナ、アレを持ってきてくれ」
と言うと、『アレ』の意味を知っているのか彼女は無言で頷きカウンターの奥へと姿を消した。
しばらくして戻ってきたイリーナの腕にはしっかりと封をされた琥珀色のボトルが抱えられていた。
ボトル自体がクリスタル製で細部には宝石をちりばめた黄金細工が施されている。
「…それ…ぐす、なに?」
もぶ太はどう見ても高級酒にしか見えないそれに質問した。
「コイツはな、あくまで保険として取って置いたものなんだが…」
そこでイリーナがドライモンに変わり説明を始めた。
「もぶ太、コレはね、タダのお酒じゃないのよ。見た目は普通のコニャックなんだけど
実際は一滴でどんなカップルもゴールインさせてしまう程に強力な惚れ薬なの」
「ほ、惚れ薬!?」
急な展開にもぶ太は声が裏返る。
だからあんなに厳重な密閉を…。
「そうだ、その名も【婚約コニャック】だ」
一瞬の間をおいて静かにドライモンはそう言った。
「簡単に言えば飲んだヤツの魅力を上げる薬だ」
名称はともかく、いや大変なんだけども
それ以上にもぶ太は驚愕した。
「な、なんでそんなもの…」
「嫌か?」
「や、そうじゃなくて」
もぶ太は、らしくないと思った。
いつも信じられるのは自分だけ、と言っている彼がこんなドーピングまがいなものを薦めるとは…。
すると彼は神妙な顔つきでもぶ太を見据える。
「躊躇う気持ちは当然だ。けどな、お前は今朝勇気を出してあの子に話しかけた…」
「ところがどうだ、何か進展はあったか?あの子の態度は変わったか?」
なぜか今日のドライモンは少し熱い。
「そ、それは…」
「だろう?それにこの薬は用量を間違えば危険な代物だが、薄めて使えば問題はない」
「ふ、心配するな。会話が出来る状況を作る程度だ。それともお前は一生このままでいいのか?」
そこまで言われてしまうと、もぶ太は頷くしかなかった。
「うん、わかった…ありがとうドライモン」
しばらくして、カウンターテーブルには一つのグラスが用意された。
「さあ、飲め」
調合を終えたドライモンがもぶ太にグラスを手渡す。
「う、うん」
大丈夫、せめて無視をされないためなんだ!
そう自身に言い聞かせ、一度ツバを飲み心を落ち着かせる。
そしてもぶ太は薄められて水にしか見えないグラスの中身に口を付けた。
ごくんっ…!
………。
……ッ!!
最初はなんともなかったが徐々にじわじわと体の芯が熱くなってくる気がする。
勇気が湧き上がる、考えがまとまる。
何だこれ!
「ぼく、しずかちゃん家に行ってくる!」
もぶ太は意志のこもった声でそう言うと、勢いよくBARを飛び出した。
「上手くいくでしょうか…あの程度で」
イリーナは少々不安そうに呟いた。
彼女は調合をしていない為、薬をどれくらいに薄めたかを知らなかったが
さっきのグラスの見た目から、少な過ぎるのでは?と感じていたのだ。
しかし対する彼は動揺の欠片も見せていない。
「さあな、場は作った。全ては…アイツ次第だ」
そこでドライモンは胸元から何かを取り出した。
一見ネックレスに思えたそれは銀の十字架だった。
「結果は神のみぞ知るってヤツだな…」
そう言って十字を切ると彼はニヒルに笑う。
…ス、ステキ過ぎます~!!
その姿に、もぶ太のことなど頭から吹っ飛んでしまうイリーナであった。
ドライモンはクリスチャンでした。(何だその設定)
次話のサブタイもヤベェですぜ~…(汗)