ひみつ特訓【どこでもアウトドア】 その3
いよいよキャンプイベントも佳境!
定番ものばかりを詰め込みました~。
※後半に怪談があるので一応警告です…。
楽しい時間はあっという間に過ぎてしまうんだなぁ。
晩ごはんの後、ラックチェアにもたれながらぼくはしみじみと思う。
豪華なカレーを堪能した後にぼくらは渓流で釣りをしたり
森の中に作られたアスレチックで遊んだりした。
釣りではぼくの竿だけ糸を垂らした途端に魚が釣れるという入れ食いフィーバーだった。
あまりの釣れっぷりに一緒にいた川釣り同好会からスカウトされる始末。
彼ら曰くぼくは半世紀に一度の《神童》だそうだ。
でもぼく的には神童以前に釣竿が不自然に振動してた気がするんだけど…。
最後は管理局のおじさんに乱獲防止の注意されて、大半を川へ戻した。
それでも大漁で夕飯のバーベキューにはアユやイワナの塩焼きが加わった。
そんなこんなで気づけばとっくに日は落ちて夜の帳を迎えていた。
ぼくはこの後は寝るだけかと思ってたんだけどどうも違ったらしい。
シャワーを浴びてパジャマに着替えた女子の皆様は逆にテンションが上がっていた。
「ねえねえ、トランプしようよ!」
布団を敷いたテントの中でひと際明るい声で提案したのは結衣ちゃんだ。
「いいね~ゆいゆい、でもUNOも捨てがたいよぉ~」
と相変わらず人に勝手にニックネームをつける三島さんがゆるーいトーンで話す。
というか何だろう、あの人が着てるパジャマは…。
フードに垂れ耳やひげがついていて被ると猫みたいだ。
着ぐるみパジャマってやつ?
「じゃあ、両方しましょ」
そして意見をまとめたのが及川さんだった。
◆◇◆
まずはトランプから。
お決まりの七並べ、ババ抜きときて一番盛り上がったのがこの大富豪だった。
「♠のA!」
結衣ちゃんが勢いよく場にカードを置いた。
しかし…
「ごめんね、結衣ちゃん。大人げなくて」
そう言って及川さんが出したのは【♡の2】。
先ほどまでは結衣ちゃんを気遣って彼女の援護ばかりをしていた及川さんだがとうとう攻めに出たようだ。
これに勝てるのはあのカードのみ。
だが今のところ誰も動こうとしない。
「よし、じゃあ」
確信に満ちた様子で場を流そうとする彼女に…
「ホントすいません…」
スッ…
ぼくがおずおずと【ジョーカー】を繰り出した。
漆黒の道化師【ジョーカー】が【♡の2】の効果を浄化する…!
…色んな意味でなんかゴメンネ☆
「また、もぶ太くん!?」
及川さんはまさか、という表情だ。
他の2人も、おおぉ!?と声をあげる。
うん、無理もないね。だって大富豪を始めてから5回中4回もこのカードはぼくの手札にあるんだもの。
というかさっきからカード運が良過ぎる。
最弱カードがオンパーレドの時もまるで計ったように誰かが革命をしてくれたし、
他のメンバーが勝ちそうになると絶対に阻止できた。
おかげでぼくが都落ち知らずの独走首位を飾り、大富豪は終了した。
そしてぼくには景品として賭けていたみんなのお菓子が与えられた。
流石に悪い気がしたのでそれはみんなに分配したよ。
だって結衣ちゃんが半泣きなんだもん…。ツインテールが悲しそうに揺れてるんだもん。
お次は三島さんオススメのUNOだ。
四色のカードを効率よく減らし、手札をゼロにした者が勝ち!
というお泊り定番ゲーム。
なんだか尋常でない運に見舞われているぼくは密かに勝利を確信していたんだけど…。
「うの~♪(サクサク、もぐもぐ)」
わぁ、三島さん、う〇い棒片手に随分とまったりした宣告だ~。
そしてとんでもなく強いね。
なにしろさっきからこの人は一回もパスをしていない。
しかもゆるーい顔して他プレイヤーをスキップやドロー系で苦しめる悪魔なんだ。
大富豪ではぼくの運に負けたようだったけどいつも富豪ぐらいには落ち着いていたような…。
ある意味ポーカーフェイスというか、プレイ中もほわーんとしていてどうも彼女は表情が読めない。
そのくせ的確なタイミングで
「どろーふぉー」
とお菓子を咥えた口から少しくぐもった声で制裁を下すんだよね。
だからぼくの手札は増えに増えて今ではちょっとした扇子だ。
「にっしっし…。もぶたす惜しかったね~」
通算7度目の一位通過を経て三島さんはイキイキしている。
因みにトータルの順位は
ぶっちぎりで三島さんが一位、続いて結衣ちゃん、三位にぼくで最下位は及川さんだった。
及川さんは結衣ちゃんをさりげなくサポートし続けた結果だ。
しかしそんなことは一切口に出さないで
「負けちゃった」
と笑顔を振りまく彼女はある意味で一番の勝者かもしれないね。
ぼくは素直に大人だな…と思った。
さらりと長い茶髪も2割増しでカッコよく見えるや!
そして楽しいゲームタイムも終わって歯を磨いたぼくらは明かりを消して布団にもぐりこんだ。
ぼくは出来るだけみんなから距離をとった場所を確保したんだけど…。
それでも心臓は忙しなくバクバクしている。
ぐあっ、遂に来てしまったぞこの時が…!
どうするんだ…この甘い香りが充満する狭いテントの中で、どうなるんだぼくは!
いやいやもぶ太、心頭滅却すれば火もまた涼しってドライモンもいってたじゃないか。
大丈夫だ、きっと。落ち着けぼく。
五感を閉ざせ~。おまえはもぶ太じゃない、ただの丸太だ!
ぼくはひたすら自分に言い聞かせる。
すると…
「まだ寝かせな~いよぉ~」
ふいに三島さんの声がして振り返る。
「ギャァ―!」
思わず叫んでしまった。
「キャー!」
同じく及川さんも悲鳴を上げている。
だってそこにはお化け、いや顔に下からライトを当てた三島さんがいたんだもん…。
ニヤッと笑った顔に絶妙な加減で影が出来ていて ぶ、不気味…!
「寝るにはちょ~と暑いからね~わたしが涼しくしてあげる~」
「え、ちょっと待って、怪談とか始めるつもり…?」
あれ、思いのほか及川さんの声が震えている?
もしかしてコワいのダメなパターンだろうか。
「そうだよ~じゃあさっそく、『あの盾、買っていい?』」
何それ、あんまり怖そうじゃないな…。
そう思ったぼくはバカだったんだ。
三島さんがいつもと違う低いトーンで語りだした。
★☆★
あるところにね、骨董品屋さんで働く男のひとがいたんだよね。
その人は亡くなった父の店を成り行きで継いだだけでいっつも客が来ない店番に飽き飽きしていたんだ。
そんなある日、彼のもとに一通の電話がかかってきた…。
「はい、もしもーし、〇△質店ですが…」
珍しいと思いつつも彼は受話器をとる。
すると…
『あの…たてをかっていい?』
電話の相手は30代くらいの女性だった。
前半部分はノイズがかかっていて聞き取りづらかった。
それでも彼女は【たて】と言っていた気がする。
たて?盾のことだろうか、確かにウチにはそんなものもあったけど…
「えっと、それではどんな盾をお求めで?」
と彼は尋ねたが
『あの…たてをかっていい?』
同じセリフがかえってきた。
「いや、だからどの盾ですか」
『あの…たてをかっていい?』
一点張りだ。
イタズラか?
日ごろの鬱憤もあってイライラしていた彼はついつい声を荒げてしまう。
「はいはい、分かりましたよ。あの盾でもどの盾でも買ってくださいよ!」
『………』
しばらくの沈黙。
そして
『言ったわね…』
「ええ、言いましたよ、でもこっちも暇じゃないんです。買って頂けるなら店頭までどうぞ!」
『ツー…ツー…』
既に電話は切れていた。
「クソっ!」
ガチャン!
彼は受話器を叩きつけるように電話を切った。
「けっ、とんだ迷惑だぜ。まったく…」
悪態をつき、煙草を吸おうとライターに手を伸ばし咥えた煙草に火を付ける。
…ハズだった。
ん?
彼は違和感を感じる。
喪失感と言うべきだろうか。
なぜなら…あるべきものが無かったからだ。
そう、彼の右手が。
肘から先が忽然と消えていた。
服の袖には血が滲んでいる。
遅れて鋭い痛みが走った。
「イ、いぎぃィっ!?」
驚き、もだえる彼の背後で声がした。
「だから言ったでしょ…『あなたの手を刈っていい?』って…」
そこには血の滴る鎌と彼の手首を持った女がいた。
★☆★
「いやぁぁ!」
ぼくはみっともない声をあげてしまった。
でもしょうがないよね。
怖い、こわいんだよ、普通に!!
…もうガクブルだよ!
「良い反応だよ、もぶたす~。要は人の話はちゃんと聞かなきゃダメってことだね~」
阿鼻叫喚のぼくをよそに普段のペースに戻った三島さんが何の気なしに言う。
ええ、これってそういう教訓なの!?
一方、及川さんは結衣ちゃんをギュッと抱きしめた状態で震えていた。
しきりにコワイコワイコワイと繰り返している。
だが意外にも結衣ちゃん自身はそこまで怯えてなくて
「こわかったけど、面白かった!」
と勇者発言。
え?今の話に面白い要素なんてあったっけ…?
でも今の口調はムリしてなかったし…。
結衣ちゃんって肝が据わってるんだな~…。
ぼくは結衣ちゃんの度胸に関心した。
そうして日付が変わる境界時刻にやっと就寝を迎えたんだけど、
さっきの話が思い出されてぼくはなかなか寝付けなかった。
今は隣に誰かがいることだけが唯一の安心だよ…。
いつの間にか女子と同じ空間で寝るという偉業を達成していることにも気付かなかった。
◆◇◆
夜更けの高台。
そこでは電子機器の発する光とランプの明かりが僅かに漏れていた。
「あら、随分楽しくやれてるみたいですね」
「アレにも何か仕掛けを?」
監視カメラの映像を確認しながらイリーナが問う。
「いや、俺が仕掛けたのは釣竿で最後だ」
椅子に座り目を閉じて一服するドライモンはガウン姿で首を振る。
それに合わせて銀の軌跡がきらきら光った。
「え?でしたら…」
イリーナは少し意外そうな顔をして小首をかしげる。
「ふっ…。イリーナ、あいつは確かに気弱だが根本的にダメな訳じゃねぇ。
ただ、無いもんにまでいちいち怯えまわってるだけなのさ」
眼下の景色を見つめながら
ゆっくりと吐きだされた煙が月明かりに反射して、幻想的な光景を生み出す。
「だから実はほんの少し自信を付けさせてやるだけで十分なんだ」
心なしかドライモンの目は優しげだ。
「あいつは…やれば出来るやつなんだよ…自覚が無いだけでな」
彼は少し誇らしげにそう言うと短くなった煙草を靴の裏で鎮火し、静かに椅子から立ち上がる。
「なるほど…だからドライモン様はきっかけを与えていたと」
「そういうコトだ。だから今夜はもう心配いらねーよ…」
寝るか、とドライモンは耳元で囁く。
そしてそんな彼にイリーナはますます魅かれるのであった。
ふい~、今回は長い割にツマンなかったような…。
後で読み返してみたら『もぶ太良かったねー』ぐらいの感想しか浮かばなくて。
思わず『で?』って自分でツッコんでしまいました。
軽く反省ですf^_^;
なんでやっぱり皆さんの意見が欲しいです。
ほっとくと僕はいっつも暴走してしまうんで…(汗)
感想お待ちしておりま~す!m(_ _)m