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☆ハロウィン☆

風邪が長引いているため、お礼小説はもう少しかかりそうです…

すみません。なのでその前に、まずはハロウィンをup(*'▽')

今年はライト×ヒスイです。


「あの~。私がお願いしたのは狼の衣装なんですけれども……」

「あら~。ちゃんと奥様のご命令通りですわぁ」

「えぇ、確かにこれは狼ですよ。ですが! これじゃあ、旦那様が怖がらないじゃないですかっ!」

私は差し出された衣装を見て、そう口にした。

中庭では小鳥が餌台に置かれた餌を食べに来ているらしく、朝にふさわしい軽やかな音色を奏でている。


今日はハロウィン。

どうせなら本格的な衣装にしようと、先月よりリーチェさん達にお願いして衣装を作って貰っていた。

旦那様をびっくりさせたいので、リアルな感じの狼を!

……ってお願いしたのに、何故か用意してくれたのは明らかにメルヘンチックな可愛らしい物。

これじゃあ、旦那様が驚かないーっ!


「寝起きとはいえ、これ見ても旦那様驚きませんよ?」

「えぇ、けれども奥様にはこちらの方が絶対にお似合いになりますわ」

「それどういう意味ですか!? 十七でこの衣装は子供っぽいですよねっ!?」

幼い子供が身に纏っていれば可愛いだろう。

でも、私は大人だ! 十七歳ですってば!


「あらやだ! 奥様にぴったりですわぁ。さぁ、早くお着替えにならないと、旦那様起きてしまわれますよ?」

「あっ……」

と、私はリーチェさんの言葉に呟が零れた。たしかにそうだ。

寝起きの旦那様は、お菓子を持っていない。不意を衝いてと思っていたので、起きてしまわれると困る。

仕方ないと、私は嘆息を漏らすと衣装に着替える事にした。





「やっぱりこんなんじゃ怖くないですよ……」

鏡に映るのは、狼のコスプレをした自分の姿。

腕にはふかふかの狼の手袋。勿論ちゃんと肉球付き。そして足元は灰色の靴下とブーツ。

それから肝心の胴体が、ワンピース。

手袋と同素材の灰色の人口毛皮で出来ているのだけれども、膝上のスカート丈だ。

ワンピースには、頭上にメルヘンチックな可愛い狼の顔のパーカーが付属。こうして被っていると狼に食べられているようだ。


「まぁまぁ! さすがお似合いになりますわぁ」

「本当に可愛らしい」

口々にアイリスさん達の声が聞こえてくるが、私のオーダーはリアル狼です。

これは可愛いので、旦那様が驚きませんってば。


「さぁ、急いで旦那様の元へ。起きてしまいますわ」

「そうですね。もしかしたら、ベッドから飛び起きてしまうかもしれませんし。それにお腹もすきました」

私はそう口にすると、すぐ左手にあった扉に手をかけた。

だが、それはアイリスさんの言葉で止められてしまう。


「あら? お腹がすいていらっしゃるならば、軽食をお持ちしましたのに。どうしましょう……朝食はまだまだ食べられませんわよ?」

「え?」

振り返って小首を傾げれば、何故かアイリスさん達は笑っている。


「――だって、奥様は狼さんに食べられてしまうのですから」

「狼? うち、狼なんて飼ってましたっけ?」

「あらやだ、奥様ったら! いますわよ」

なんだかよくわからない。でも、とりあえず上に行かないと旦那様が起きてしまう。

だから私は、「行ってきますね」とアイリスさん達に向かってそう言い残して部屋を出た。





部屋に入るとまっすぐ体に馴染んだ寝具へと向かいその上に昇って座る。

すると、そこにはすやすやと眠っている旦那様の姿が。

良かった。起きてないと、手を伸ばすけれども、それも彼に触れる手前でぴたりと止まる。

それは旦那様のせい。

その寝姿があまりにカッコよくて、ついそのまま見惚れてしまいそうになっちゃったのだ。


――起こすのが勿体ないなぁ。


緩んだ顔でそれを微笑ましくみていたがなんとか首を左右に振って煩悩を追い払う。

今日はハロウィン。寝起きだからお菓子を持っていないだろうし。

悪戯をするならチャンスだから、誘惑に勝たねば!

私は覚悟を決めると、旦那様の肩へと手を触れた。


「旦那様! 旦那様! トリックオアトリートっ!」

「……ん」

寝具に眠っている旦那様だったが、揺すられたせいで起きて瞼をこすりながらもこちらへと視線を向けた。

私が起きた時にカーテンを開けておいたせいか、後方の窓から差し込む太陽の光がまぶしいらしく目を細めて、こちらを見ている。


「ヒスイさん……? おはようございます……」

「おはようございます」

狼の手袋をはめたまま、私は旦那様の頬をポンポンと軽く触れた。

するとくすぐったいのか、少し身をよじると、「その恰好は?」と尋ねてきた。


「今日はハロウィンですよー」

「あぁ、ハロウィン。ですから、狼の皮を被った子リスの仮装をしているんですね」

「していませんっ! 狼ですっ!」

もしかして寝ぼけているのだろうか。私の格好は狼のコスプレをしているのに!

どこにリスの要素があるのだろうか。

ちゃんと狼なのにっ!


「狼です。危険極まりない凶悪な狼ですよ。旦那様なんて一噛みです」

そう告げれば、旦那様は笑いをかみ殺しているらしく体を震わせている。

それも我慢できなかったのか、噴き出して笑い始める始末。

それにはポスポスとふかふかの手袋で旦那様の体を叩けば、その手を取られてしまう。

私の手首をいとも簡単に覆ってしまう大きな手に、どきっと胸が高鳴った。


「一噛みですか?」

「えぇ。頭から足の先まで全て食べちゃいますよ?」

「……んー。それは無理そうです。リスは肉食ではないので」

「私はリスじゃないですっ!」

「いいえ。リスです。今は人間ですけれども」

「違っ……ええっ!?」

反論しようとしたら、急に視界が反転。

私が旦那様の上に居たのに、いつの間にかそれが逆転し旦那様の下になっていた。

そのため天井と一緒に旦那様が視界に入っている。


「あれ……?」

「ヒスイさん。男はみな狼なんですよ? だから頭の先から足先まで食べられてしまうのはヒスイさんの方です。寝起きにこんなに美味しそうな御馳走ヒスイさんがあるなら、男心として頂戴します」

「……え。ちょっと!? 旦那様」

頬を撫でられたかと思えば、旦那様が屈みこむの見えた。


――嘘っ!? どうしてそんな方向に!?


私としてはこんな色気の方向に行くとは思ってもいなかった。

ましてや、旦那様は今日お仕事。

それに、朝だし。私だし。


徐々に私の唇へと綺麗な形をした旦那様の唇が近づいてくる――

それに対して、覚悟を決めてぎゅっと目を閉じかけた時だった。


「ぎゅるるるるる」

そんな場違いな音が響き渡り、私は目を見開き顔を真っ赤に染め上げてしまう。

それもそうだろう。こんなにいい雰囲気なのに、お腹が鳴ってしまったなんて。

もう穴に入りたい。今なら木の穴でもいい。


「……え?」

きょとんと眼を丸くさせている旦那様から、私は目を反らした。

だ、だってこれはあまりにも恥ずかしい。

色気がない……なさすぎる……

もう少し可愛げのあるお腹の音ならよかったのに……


「今のは?」

「お、狼の遠吠えです……」

消え入りそうになりながらそう誤魔化せば、旦那様はそっぽを向くと肩を震わせてしまう。

そして押し倒していた私から退くと、我慢できなかったらしく声を上げて笑い始めてしまった。


「……はー、笑いました。では、下で食事にしましょう。ヒスイさんのお腹……いえ、遠吠えが……っ」

旦那様は口元を押さえて笑いをかみ殺しているが、漏れてしまっている。


「お腹空いたんですっ! そんなに笑わなくてもいいじゃないですか!」

「すみません。でも……――」

旦那様は二、三回咳き込むと、ゆっくりと息を吐いた。


「朝からこうやって笑えるなんて、幸せですね」

「え?」

「僕の可愛い妻は、面白い妻です。結婚なんてと思っていましたが、結婚して良かったとまた改めて思いました。一人ではこんな風に笑えませんし」

「……旦那様」

「結婚して下さってありがとうございます」

「大げさですよ。私のお腹がなっただけで……でも、確かに旦那様が言うように朝から笑えるって幸せかもしれません。それが些細な事だったら、尚のこと」

なんでただお腹が鳴っただけなのに、こんなに心にじんわりと温かいものが広がっているのだろうか?

きっとそれも旦那様が言って下さった言葉のおかげだろう。

こんな些細な日々積み重ねていって、大切な思い出になる。

勿論、楽しい事ばかりじゃないかもしれない。

そんな色々な事を乗り越えて夫婦として形になっていくんだって、そんな風に思った。


――でも、願わくば楽しい事で溢れる日々でありますように。


「旦那様が帰って来てから夜にみんなでゆっくりやりましょう! ハロウィンパーティー! いっぱい楽しい事をやっていきましょうね」

私はそう言いながら旦那様へと抱き付けば、彼は顔を緩めて頷いた。そして私を抱きしめ返す。


「そうですね。楽しい思い出をいっぱい作りましょう」

「はい」

「お兄さんとアリーさんも呼んではどうですか? 急ですが、もしご都合が合えばご一緒に」

「はい。声かけておきますね。ニクスやアクセラ様達も!」

「そうですね。でも、その後は二人で……」

「二人で?」

「えぇ。一緒にお菓子のように甘い夜を――」

旦那様はそう告げると、私の唇へとキスを落としてくれた。



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