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半強制結婚宣言っ!~女々しき王子と花屋の少女~  作者: 歌月碧威
最終章 偽りの終わりと青薔薇が囁く始まり
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騎士は守る。今日も今日とて平和のために(アクセラ視点)

ライトの弟アクセラ視点です。


まだ雪が降らない季節だというのに、今夜はめっぽう冷える。

きっと今年の冬は寒くなるだろう。

そんな事を想いながら城までの道のりを進めていく。


首もとに巻いているマフラーに顔を埋めたいが、今はそれよりも後ろにいる人物が気になって仕方がない。

まだ夜明け前の皆か寝静まった時だというのに、何の前触れもなくいきなり太陽が出始めても今はきっと驚かないだろう。

そんな日常の常識すらもぶっとんでしまうぐらいの出来事が、ほんの数分前に起こったのだ――



いつものように俺が部下と町を深夜巡回していると、不審者を発見。

そいつは双眼鏡を手にし、建物の物陰から探るようにとある一軒家を見ていた。

しかも頭からすっぽりと被るようなフード付の厚手コートで、姿形を誤魔化している。

かろうじて身長で男ではないかと推測できるレベルだ。


部下に目を配らせれば、奴らもそう思ったのか首を楯に振る仕草を見せた。

あきらかに不審すぎるその男に声をかけた。「おい、そこで何をしている?」と。

だがそれも後悔している。あの時尋ねた自分へ伝えたい。

声なんてかけない方がいいという事を。


振り向いたその男は実の兄――ライト兄上だったのだ。

その上彼が所持していたのは、暗視双眼鏡と双眼鏡。

しかも軍事用。しかもヴァン国ではない、他国の代物で最新式。

一体どこで手にいれたというのだろうか……聞くのも恐ろしい。


なんとなく事情を聞くまでもなく、あの小さいリスのような可愛らしい姉上が関わっていると言うことだけは本能的に理解できた。メサイアの件はこちらにも報告が上がっていたから。

そして伺えば、案の定そうだった。


どうやら姉上があの兄上が覗いていた民家にいるらしい。しかも、姉上を口説いたアルフレッド様も。

それにもダブルで驚いた。まさか、相手があのアルフレッド様だとは…


心情的には理解出来る。だが、このままこんな寒い場所に居たら兄上がお風邪を召されてしまう。

町の平和を守るのが騎士の役目。

それにさすがに通報されでもしたらマズイ。

そのような理由から、兄上を城へと一時的に連れて行く事に。


「兄上、寒くはございませんか?」

そう言葉を話しながら、後方を振り返れば、兄上……ライト兄様の姿が。

いつもと様子が違い、珍しく怒りを露わにしている表情だ。


「寒さ? そんなもの感じませんね。それよりも妻の安否の方ですよ」

「大丈夫です。この時間です。姉上はぐっすりと夢の世界ですから」

「それはあの男と同じ屋根の下の方が、ヒスイさんが安らげると!?」

「……いえ、そういうわけでは」

もうなんと言葉を交わして良いのかわからない。

どんな台詞を兄上にかけても俺は自滅するだろう。


「こっ、ここでライト様が風邪でも引かれてはヒスイ様がご心配なさいますよ」

「そうですよ。明日の朝に出直しましょう」

おおっ! 困惑する俺をフォローするように、部下がそう声をかけてくれた。

さすがだ、お前達!

俺は心の中で部下達に賛辞を讃えた。


「……心配して頂けるのでしょうか」

「え」

兄上のその台詞には、さすがに言葉が詰まった。無論、全員だ。

急に体感温度が下がった気が……


「だ、だいっ、大丈夫です! ですよね!? アクセラ隊長!」

やめろ、俺に振るな! と叫びたかった。

だがしかし、ここで慰めなければもっと大変な事になるかもしれない。

あの檻発言を聞いているから、それは尚更だ。

全力で励ますのが兄上、そしてひいては姉上のためでもある。


「それは勿論です。ご心配なさいますよ? 姉上がそんなに心が小さいとでも?」

「違いますよ。ヒスイさんは、身長は低いですが心は大きいですので。自分の身を顧みず、見知らぬ子供を何度も助けるぐらいですからね。そのため余計なアルフレッド様などを惹きつけてしまうのです。余計な男に目を付けられヒスイさんを盗られるぐらいなら、やはりいっそのこと、僕とヒスイさんしか居ない場所に……」

「兄上! 駄目ですから! 本当にお願いします。姉上を檻に入れるとか辞めて下さい!」

もう必死で兄上の両肩を掴んでその物騒な思考を阻止。

部下達の「檻っ!?」という悲鳴に似た叫びも無視だ。それどころではない。


「しませんよ……檻なんて……実は別荘用に土地を買っていたんです。ヒスイさんと過ごそうと思って。山奥ですが、森に囲まれた自然豊かな所です」

「え? そうですか、それはよい買い物ですね」

何故話がそれたのだろうか? でもそれでいい。明るい話題の方が。

俺はやっと安堵の息をついた。


かと思いきや、

「別荘を建てようと思いましたが、ヒスイさんと二人で住む家にします」

「!?」

もうその台詞の怖さときたら、語れない。

頭の中ではもうすでに拉致監禁という言葉と、地下室で鎖に繋がれている姉上の姿が映しだされていたのだから。

姉上はご存じないかもしれないが、俺達兄弟の中で最も資産を持っているのはライト兄上だ。


研究所の給料というよりは、不動産投資等多岐に渡る収入源より莫大なる資産を築いている。

そのため兄上が働かなくても、かなりの額が不労所得という形で金が舞い込んでくるようになっていた。

だから俗世間から離れ、姉上と山奥で暮らすといってもお金に不自由はしない。


「あ、あ、あっ、兄上! まさか地下室とか作るおつもりではありませんよね!?」

「ありませんよ。考えましたけれども。ですが、ヒスイさんをそんな太陽の光が浴びられない場所で生活させるなんて出来ません」

「で、ですよね」

そうだ。いくらなんでも兄上とて、ちゃんとしている。

環境研究など、いつも国のために更なる発展を目指して研究してくれている尊敬する兄だ。

兄弟の中でも一番真面目な兄だ。


「……まさか、部屋に格子を嵌める等しませんよね?」

そう確認したのは念のためだ。


「しませんよ」

「そうですよね。申し訳ございません」

「部屋はちやんと自由に出入りできます。その代わり窓には格子を嵌めますが。ちょっと監獄のような外観になりますが、仕方がありません。格子のデザインを拘れば見た目も少しは良くなるかと思いますし」

「兄上! 監禁・軟禁は辞めて下さいって言ったじゃないですかっ! 姉上にも止められたんでしょう!」」

やっぱりそっちか!

メサイアの時は見ていられないぐらいに落ち込んでいた。

その時、いっその事怒鳴り散らすとか、そういう負の感情を出して欲しいと願った事がある。

あの頃は、「無」だったから。

怒りも悲しみもせず、ただ空気に解けて行きそうな兄上。

そんな兄上を見ているのが辛かった。


けれども、今回の姉上に関しては病みがちの方向になっている。

しかも兄上に関しては実行しそうで怖い。


まさか、軍事用の双眼鏡もそのため……?


――駄目だ。これを止められるのは、俺には無理! 


城についたらライト兄上を部屋へ案内し、父上・兄上達を叩き起こして家族会議をしよう。




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