黙秘剤
ここはある国の諜報部。
そこに突然、製薬会社から薬を売りにきた男がいた。
拷問や自白剤による情報の流出を防ぐため、
自白剤の効果を防ぎ、どんな拷問にも耐えることのできる
新薬が完成したので持ってきたのだそうだ。
「いかがでしょう。私どもは『黙秘剤』と名付けました。」
諜報部の人間は、にわかには信じられないという顔で、
その製薬会社の男を出迎えた。
「こちらがそのサンプルになりますので、
ぜひ一度お試しください。」
男はこの薬が売れる自信があった。
自分たちでテストしてみたところ、
薬が効いている一定の時間、
どんな自白剤にも、どんな拷問にも、
耐えることができたという結果がでている。
あとは、実際に効果の程を試してもらうだけだった。
後日、諜報部からその製薬会社に電話があった。
もちろん、その薬の注文であった。
急いで男は諜報部に頼まれた量の薬を届けに行った。
「どうです? 効き目はバッチリでしたでしょう?」
自信満々に薬を渡したところ、思いも寄らぬ返事が返ってきた。
あの薬が情報流出を防ぐのに、全く役に立たなかったのだそうだ。
つい先日、敵に捕まってしまった諜報部員が、
実際に恐ろしい拷問にあったそうなのだが、
そのとき、例の黙秘剤を持っていて飲んだらしい。
確かに効果は絶大で、どんな拷問も全く苦にならず、
自白剤を使われても決して口を割ることはなかったのだが、
相手が拷問に疲れてしまい、手を休めたとたんに、
薬の副作用で、拷問されていないことが、
逆にとてつもなく苦しく感じるようになり
拷問されることを望んでしまうようになったのだ。
結果、その諜報部員は、
「何でも言いますから、もっと拷問をしてください!」
と言って、あっさりと情報を漏らしてしまった。
情報を正直に言ったために、その諜報部員は命を落とさず、
諜報部に帰って、そのことを伝えたらしい。
そういえば、確かに拷問をしていない時のテストをしていなかった。
男は役に立たない薬を作ってしまったことを悔やみ、
また恥ずかしく思い、諜報部にお詫びを言った。
だが、ふと素朴な疑問が頭に浮かんだ。
「では、なぜ今回また、この黙秘剤を注文されたのですか?」
「自白剤に使えると思って。」
「ああ、なるほど。」
2本目の投稿となります。
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