第2章 同じ扱いで?
刻印盤を前にした空気は、昨日とよく似ていた。
正確には、同じではない。ただ、似ていることに気づいてしまう程度には、私はもう慣れてしまっていた。
条件は揃っている。
数値も基準も、問題ない。
刻印を使えば、処置は早く、安全に進む。
「……」
誰かが言い出すのを、皆が待っている。
その沈黙が、前より短くなっていることに、私は気づいた。
医師が盤を見てから、すぐに視線を上げる。
迷う様子はない。
ただ、確認するように、その先を見る。
桐生さんは、昨日と同じ位置に立っていた。
近すぎず、遠すぎない。
その距離が、いつの間にか“正しい”と感じられるようになっていることが、少しだけ怖かった。
「刻印は使わない」
判断は、昨日よりも早かった。
言葉も、同じだった。
医師は頷き、すぐに動く。
記録係のペンも、迷わず走り出す。
処置は滞りなく進み、結果も悪くない。
誰も異論を挟まない。
問題は、何も起きなかった。
それなのに。
「……確認です」
記録係が、淡々と口を開く。
「今回も、刻印は未使用で記録します」
確認というより、報告に近い声音だった。
「ええ」
桐生さんは短く答える。
それで、この件は終わった。
私は刻印盤を見る。
盤は静かで、何も映していない。
昨日と同じ。ただ、それだけのはずなのに。
――“使わない”という判断が、
いつの間にか、特別なことじゃなくなっている。
その事実だけが、胸の奥に残った。
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