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判断は、正しさではない。ただ、引き受け続けることだ。  作者: 科上悠羽


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第18章 それでも、刻印は残る

刻印盤は、撤去されなかった。


誰かがそう提案したこともあった。

「もう使われていないのなら」

「役割は終えたのではないか」


でも、その意見は通らなかった。


盤は、そこに残った。

光ることはなく、判断を下すこともない。

それでも、必要だと判断された。


条件を示すために。

基準を揃えるために。

考えるための、起点として。


私は、その決定に異を唱えなかった。


盤は、悪くない。

最初から、何も選んでいない。


「……不思議ですね」


フィオが、盤を見ながら言う。


「前より、見なくなったのに」


「うん」


私は頷く。


「なくなると困る気がする」


「それは」


フィオは、少し考える。


「考える前提が、そこにあるから、ですか」


「たぶん」


私は、盤から目を離す。


「考えなくていい道具じゃないから」


刻印は、条件を刻む。

数値を揃える。

選択肢を可視化する。


でも。


「選ばない」


私は、はっきりと言った。


フィオが、こちらを見る。


「盤は、選ばない」


「……はい」


「だから、残る」


私は、歩き出す。


「人が、選ぶから」


廊下の先で、人が行き交う。

判断を仰ぐ声も、議論も、以前と同じようにある。

でも、その中心は、もう道具じゃない。


「リーナさん」


フィオが、少し遅れて声をかける。


「はい」


「……完成、ですか」


その問いに、私は少しだけ笑った。


「いいや」


即答だった。


「まだ、途中」


「でも」


フィオは続ける。


「ちゃんと、立ってます」


私は、その言葉を否定しなかった。


刻印盤は、そこにある。

判断も、そこにある。


でも、それをどう使うかは、

これからも、人が決める。


――盤が示すのは、条件だけ。

――選ぶのは、人だ。


判断は、人がする。


それだけは、もう揺るがなかった。


完結

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